世界の対価
この世界には、対価というものが存在する。
食べ物がほしければ、お金。子が欲しければ、苦痛を伴う。
誰しもが思っている。対価を支払わず、楽に生きたい。
さて、ある一人の男が居た。その男は世界を欲しがっていた。
男は考えた。この世界を手に入れるには、何を失えばいいのだ。
そして彼は故郷の国に古くから在る大きな図書館へと足を運んだ。
その図書館には世界中の全ての本が保管してあった。
そして男は世界を手に入れる方法を四六時中探し回った。
実に、60年間をそれに費やした。そしてついに一つの古書に出会った。
その本には、ある術を行うことで世界を手に入れれる。そう書いてあった。
ゴクリ。思わずつばを飲み込んだ。これが、自分が探し求めていた、方法。
男はすぐさま用意をし、そして魔術を行った。
一瞬、周りは大きな光につつまれた。咄嗟に目をつぶり、次に目をあけた時に男は腰を抜かした。
悪魔がいたのだ。すると悪魔は真っ黒な口を大きくあけ、濁ったような声でいった。
「もう、この世界はお前のものだ。好きにするがいい。お前は十分な対価を払った。」
男はホッとし、術がうまくいったことに大きな満足感をいだき、そして頬をほころばせた。
もう、この世界は自分のものだ。好きにできる。自分は十分な対価を払った。
しかし、男は大きなミスを犯していた。そのミスは男をこれからずっと苦しめるようになる。
彼は、自分が支払った対価を、”時間”だと思い込んでいたのだ。
だが、本当に彼が支払っていた、対価は、「死」そのものだったのだ。
それから彼は、生涯。このままずっと、死ぬことなく、93歳という自由に体を動かすこともできない老体で、ずっと。ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと
生き続けるのだ。さあ、彼の幸運を祈ろうではないか。
Good luck