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春祝祭

作者: 悠桜

この季節は大概そうです。

感傷的になってしまうのです。



桜が咲く前の一週間から散った後までの一週間あたりまで。

特にそう、桜が咲いて散るまでは…。


私は桜が好きです。桜を見ていると、まるで現と夢の境界線がぼやけるような…。生と死の線引きが一気に薄くなるような…そんな感覚にいつも襲われます。

揺蕩う感覚…。小さい赤子が揺籠に揺られているようなそんな錯覚にさえ、思われてしまうのです。


そもそも、私はそこまで生に執着をしている人間とは思いません。

生きると言う感覚が普段の時から希薄に思われて仕方がないのです。

そう、言うとまるで懺悔みたいですが…。

懺悔と思われますか⁇

もし、そう思われてしまったら申し訳有りません。


私。神という存在一切信じていないのです。

もしいるのなら、そうですね。死神くらいでしょうか⁇

死神の鎌に首を擡げられるのなら、これほど嬉しいものはありません。


そう、私は臆病な人間なのです。

シニタイ、トツブヤキナガラ、シネナイオクビョウナニンゲン。


その憂鬱にいつも、苛まれている私にとって桜の季節はその憂鬱な気持ちさえ、あの薄紅色の花葩を見ているだけで、自分の生の感覚が薄くなる…花に魅せられ、まるで誘われているような…。噫、もし本当に誘われるのならこんなに嬉しいものはないでしょうに…。


桜がもう直ぐ満開になります。

今年の桜はいつもの薄紅色とは違う色です。

桜の根が人の血を吸い上げているようなそんな朱い色。

私の体もだんだん桜に溶けてゆくような錯覚に落ちてしまいそう…。


私はこの時はっきり見たのです。桜の幹から白装束を着た狐のお面をつけた人が現れて、私の耳元で囁きました。

「さあ、春を祝う祭りへ行こう」


私の体は桜に溶けて行きました…。


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