宵闇綺談 大江山伝承
資料というと、ネット上が多いのは事実ですが、紙の書籍や、友人との話しもありますね。特に今川義元については、天才という評価は、駿河の方々には、当たり前のことのようです。つまりは、桶狭間というのは、二人の天才が対決した話ということになります。
好男子ではなく、講談師という奴は、見てきたように嘘を吐くと申しますが、それも時には、真実が混ざっていたりするものであります。
「ねぇ、この世界での大江山伝承って、どんなお話なの」
「今は昔、平安の世に渡辺綱あり。嵯峨源氏の源融が流れにして、弓を良く引き、清和源氏の流れにして摂津源氏の長、源頼光が臣として渡辺党を率いる・・・」
「渡辺党?」
「摂津国渡辺湊を中心とする渡辺党だ。あたしの曾祖母様も、渡辺党の血を引いているんだ」
「あぁ、鬼を嫁にしたから?鬼の血が流れているの」
「えぇっと、渡辺党っていうのは、渡辺綱は四人のあやかしを妻にしたんだ。だから妻によって大きく四つの血を引く流れがある」
「四人の妻かぁ、全員があやかしだったの?」
「そうさ。ひとつは、正妻として迎えた、大江山酒呑童子の一人娘、祐姫彼女を母とする血族。あたしもその一人だ」
「鬼を嫁にしたってことだよね、他には」
「ひとつは、大江山酒呑童子の妹、茨城童子を母とする血族、これは九州松浦党を含めて海にでて瀬戸内を中心とした血族」
「茨城童子かぁ、鬼を二人嫁にしたの?」
「え。茨城童子は、鬼といっても三輪の流れを組むみずちの一族だよ」
「みづちってことは水が操れるとか?」
「あぁ、あたしは祐姫と同じ鬼族で、鬼火を使うからね」
「じゃぁ、ほかの二つは?風と土?」
「颯は葛城の流れだから、土蜘蛛だから土を使えるけれど、もう一人は葛葉様だから御狐様だよ」
「あれ、葛葉様って・・・安倍晴明の母上じゃなかった?」
「あぁ、信太神社の稲荷狐が葛葉様だ」
「えっと、あやかしというのは死なないのかな?」
「いや、死ぬよ。確かに茨城様は五百年くらい生きてたらしいし、葛葉様とかは、二千年くらい生きてたって言われるけど、死んで信太神社に祀られてるよ」
「五百年に二千年かぁ、長生きなんだねあやかしって」
「そんなに生きるあやかしはほとんどいないさ。鬼や天狗は人と同じくらいかな。狐や狸は人よりは短いし、貉も似たようなものだったかな」
「人だって、百年くらい生きるのはいるし、肉を失っても生きている者もいるさ。そういう時は、祟り神にならないように社へ祀るのさ」
「えっと崇徳院とか」
「あぁ、讃岐に祀られているな」
「祟り神は災いを呼ぶのかな?」
「あぁ、人が恨みを持つと瘴気が生まれる。恨みを持ったまま死ぬと、生まれた瘴気は消えないで、様々な陰気取り込んで溢れていくんだ」
「瘴気が溢れる?」
「あぁ、恨みや妬み、そういった瘴気が溢れると、獣や人に憑くと魔物に変わって、周囲を取り込んでいって、祟り神になってしまう」
「じゃぁ、どうするの?」
「瘴気を焼き祓って祟り神をださないようにするのが、渡辺党で鬼の血を引く者の務めさ」
「焼き祓うんだ」
「あぁ、あたしら鬼は焼いて祓う。みづちは清め祓う、土蜘蛛は喰らい祓う、天狗は散らし祓う。たいていの瘴気は、焼いて祓うか清め祓うかのどっちかだね」
「戦国の世だと、仕事も多いのかな」
「それほどでも無い。生気が強くないと、陰気は強くならない」
「どういうこと」
「生きている間に、自分自身の生気を練って鍛えないと、恨みにまみれて陰気に堕ちてもも、そんなに強い瘴気にはならないのさ」
「つまりは、魂を鍛えないと、瘴気にもなれないってこと」
「そうだね。戦場で出た屍骸を焼いたり埋めたり川に流せば、瘴気が消えるから、祓うまでいかなくても、たいていは大丈夫だね」
「そういうものなのか」
「それに、剣気を纏った鋼の刀で斬られたり、気を宿した鋼の鏃で射られても、瘴気は祓われるからね、戦場じゃあまり瘴気はあまり溢れたりしないさ」
「そうかぁ・・・棒を振るくらいしかしてないから、祓えたりはしないんだろうな」
戦国の世と言っても、生気を練り込めるほどには鍛えられないってことかぁ・・・厨二病にかかって、四尺の棒を振り始めたのは無駄だったかなぁ。
「棒を振るって、鍛錬でもしてたのか」
「まぁ、少し」
「どのくらい続けたんだ」
「二年くらいかなぁ」
「明日、見せて貰えるか?」
「うん。良いよ」
「たぶん、かなり使えると思うぞ」
「え、どうして」
「篭淫気に溢れているから」
「淫気って?」
「大江山伝承の始まりは、酒呑童子と貴船の巫女長が結ばれて、交接で京洛の瘴気を祓うことから始まるんだ」
「母君は巫女で、交接でも祓えるの?」
「そうだ。そして祐姫が生まれたんだ」
「交接の中で、酒呑童子が瘴気を集め、母君が祓う流れができていたんだ。だけど、母君が亡くなってしまった」
「じゃぁ・・・瘴気は祓えなくなった」
「そういうこと、大江山に瘴気が溢れ、魔物が出没するようになってしまった」
「だから、大江山に行ったんだ」
「そうさ、大江山で渡辺綱と祐姫が婚姻し交接を使って瘴気を祓ったのさ」
「それが、大江山伝承」
「淫気でも祓えるんだ」
「たぶん、篭との交接でも祓えるぞ」
「へ。そなの?」
「あぁ。お互いに淫気に溢れ、淫らに交接すれば、瘴気は淫気に変わるさ」
「渡辺党だけじゃないさ、あやかし達は、様々な場所で様々な形で瘴気を祓うことを生業にしてきた」
「様々な形?」
「河原者達だと、謡いや踊り、奏でるといった方法も使われているし、銭が鳴る音ですら祓えるよ」
「なんか、ほんとに一杯あるんだね」
「サンカ、カワラモノ、エタや商人といった人達が、祓って来たんだ」
「商人?」
「銭の鳴る音でもって言ったろ」
「凄いなぁ、じゃぁ渡辺党は商人もいるんだ」
「難波や堺には、多いんじゃないかな」
「堺って、南蛮船とか来ているの?」
「あぁ、かなり多いって聞いてる」
「じゃぁ、天主教っていうのかな、南蛮人の神様を教える人も来ている?」
「あぁ、なんだか有り難いって話は聞いたことがあるよ」
えっと、キリスト教も布教が始まっているんだ。それって、ヤバくねぇ・・・南蛮人にとって、鬼とか天狗って、悪魔みたいなもんじゃねぇのか?
「天狗とか鬼って、南蛮人に逢ったりしたのかな?」
「さぁ、天狗や鬼は、人前にはあまり顔は出さないよ。湯女狐くらいじゃないかな」
「湯女狐?」
「あぁ、狐火を使って湯舟に入れた水をお湯にして、風呂にしたんだ」
「あぁ、この暖かいのは、狐火なの?」
「そ。あたしの鬼火だと、水が蒸気になっちまうからな。狐火で湯にするんだ」
「じゃぁ、こっちには風呂があるんだ。入れるの?」
「冬は寒いからな。狐灯篭で湯を造ると、部屋を暖められないから、水桶を湯にして拭くくらいかな。杜湯なら、湯を造るのが優先されるけど」
「そっかぁ・・・残念」
「明日は、風呂を焚こうか?」
「え、大丈夫なの」
「狐灯篭は、鬼火で暖められるから、彩女達に湯舟を暖めて貰えば風呂に入れるよ」
「明日、入りたいけど、良いのかな?我儘じゃない?」
「いいさ、その程度で、篭が嬉しいなら」
「あ、ありがと。祐・・・」
「あたしも、水垢離で汗を流すよりは、風呂の方が好きだしな。それだと、今宵のあたしは、篭が欲しいな」
「へっ」
あれあれと言う間に、押し倒されてしまいました、とさ。
翌朝、薪として蓄えていた、樫の棒を祐姫から借りた小太刀で削っていた。一寸くらいの太さで長さ四尺ほどの棒から、握りを手に合わせて太さ八分くらい、長さ一尺三寸程に削り出していった。
「そんな普通の棒で良いのか?木刀もあるぞ」
「うん。これで良いんだ」
訓練方法は、簡単でないと続かないからって、立ち木打ちだけだし、恥ずかしいから声は出さなかったけどね・・・いわゆる示現流の鍛錬方法である。
できた棒で、垂直に立てられた立ち木を打ち込み始める。
カンカンカンカンカンカン、カンカンカンカンカンカン・・・気合いだけを込めて、一心不乱に、ただ速くただ強くと鍛えながら、延々と続くような立ち木に打ち込まれる音だけが響く。
最初は、二百も打てば、腕が上がらなくなったものだけど、一年も続ければなんとか朝夕千回くらいは打ち込めるようになった。一時間で千回越えてからは数えてないけど・・・
カンカンカンカンカンカンカン。
「ふぅ・・・」
「終わったのか」
「うん。どうかな」
「凄いものだな。その鍛錬は、なんか若殿とかとは違う」
「若殿って、氏真様かぁ・・・確か塚原卜伝に習ったんじゃなかったっけ」
「良く知ってるな。若様は木刀で斬るような感じだけど、篭のは叩くのだな」
「ぼくの剣は、ただ速く、ただ強く、それだけを一心に想い打ち込むだけだからね」
「ただ速く、ただ強く?」
「うん。斬り合う時、相手より速く強く打てれば、自分は討たれないし、相手を倒せるでしょ」
「それは、確かにな・・・」
「だから、速く強くだけを目指して、打ち続けていくことだけで、鍛えていく剣。技とか術とかは関係なく、ひたすらに己を信じ、己を鍛え上げる」
「それを二年続けたのか」
「うん。最初は百回も打てなかったと思う。二百回、三百って増やしていって、千回を越えたら、数えるのではなく、気合いの続く限り打ち続ける。林の中とかを走りながら、打ち続けるっていうのもやってたかな」
「目の前の相手を、ひたすらに斬り祓って進んでいくって感じかな」
「斬られたら?」
「それは、考えてはいけない」
「考えてはいけない?」
「うん。だって、斬られるってことは、自分より相手が速くて強いってことでしょ、そんなことは考えない。相手より速く強く斬ることだけを考え打ち込む」
「斬られるのは迷いか・・・」
「そういうこと。だって、斬られる前に斬る剣なんだから。相手の剣や槍といったことは考えない。考えることは負けることでしょ」
「そっか、考えることは負けることか」
「うん」
「その棒、あたしにも造ってくれるか」
「いいよ」
自分の棒よりも一尺ほど長い、五尺ほどの樫棒から一尺五寸程に削り出して、握りを合わせていく。
「長いな」
「戦場だと、鑓とかもあるから、扱うのに握りは長い方が良いかなって」
柄一寸に利ありって、なんか読んだ気がするけど、誰だったっけなぁ・・・
「握りが長い方かぁ、長巻きや薙刀かな」
「まぁ、杖術とか棒術っていうのもあるけどね」
「棒術かぁ、茨城童子は、鋼の棒を使ったって言ってたな」
「鋼の棒だと重くないかな」
「あたしは重さは気にならないかな」
「それは、凄いなぁ・・・」
膂力は、鍛錬次第って言うけど、こっちだと男女差が無いのかな。
「握りはさ、左手で棒の端を持ち、八寸から一尺ほど離して右手で握るんだ。握り方とかは自分で工夫していくから、最初は気にしないで打ち込んでみて」
カン、カン、カン、カン、
「思ったより、強く打つのは難しいな。強く打てば打つほど、反動が凄い」
「そうだね。全力で叩く。その反動を抑える膂力を得ることも鍛錬のひとつ。二撃目を打つことも考えてはいけない、すべて初太刀で相手を倒すと信じて打ち込む」
カン、カンカン、カンカン、
「ただ、速く強く、今の一撃よりも、次の一撃が最速最強を目指して鍛錬する」
カンカン、カンカンカン、カンカンカン
「・・・少し休んでもいいか」
ふぅって、息を吐いて、力を抜く祐姫は、真剣な表情をしている・・・
「あぁ、最初は休み休みで良いよ。それに、あんまり無理しないで。最後の方は、ぼくがやってた鍛錬法だから」
「いや、なんか単純だし、氏真から習った鍛錬と違うけど、あたしはこっちが好きだな」
「ほ、ほんと?」
「ただただ、鍛錬を繰り返すのと、素直なのが良い」
「素直?」
「あぁ。あたしは考えるのは苦手だ。敵を真っ向から叩き潰すというのは、あたしの性に合ってる」
すっと、立ち上がって、立ち木に向かって、振り下ろして戻り、また振り下ろしていく。
カンカン、カンカンカンカン、カンカンカンカンカンカン。
流石、戦国期だけあって、何も言わなくても、普通にナンバ歩法だなぁ・・・右手と右足、左手左足。すごく綺麗だなぁ・・・
ふぅーっと息を吐いて整える。
「凄いな。腕がしびれるようだ」
「そろそろ止めといた方が良いよ。時間が経つと、しばらくは腕が上がらなくなる」
「そうなのか」
昨日、障子に見えた彩女さんかな?手拭いと竹筒を持って来た。竹筒は水筒かぁ、飲んで水桶の水は少し温められていた。
「風呂の用意もできておりますが、よろしいでしょうか」
「わかった。ありがと。行こ。篭」
「うん」
手拭で、身体を拭きながら、一緒に続いていく。
へぇ、史実だと無かった、戦国期の風呂かぁ、どんなのだろ。少し、離れのような建物に入ると、白い漆喰で固められた土間にすの子が並べられている。その奥に、大きな木桶が置かれていた。竹で編んだ船籠?が置かれていて、中に狐灯篭が入っていた。つまりは、狐火で狐灯篭を温めて、熱で水をお湯にするっていうことか。
「京洛あたりだと、本当に船形を造るそうだが、遠州じゃこのくらいだ」
「いや、凄い。壺の中で狐火を焚いて、熱で水を湯にするのか」
「触るなよ。いくら狐火と言っても、火傷するくらいには熱いからな」
「だから触れないように、竹籠で編んで囲んでいるんだ」
狐灯篭の竹籠にかかる様に竹樋から水が流れ込んで、木桶から溢れるお湯を外へ流しているんだ。ようは、かけ流し温泉を自前で造るような構造ってところかな。白い漆喰で固めているから、簀の子の下をお湯が流れていって天然の床暖房?になっているのかな。
奥にある湯舟から入り口に向けて漆喰に勾配が少し付けられているみたいで、湯舟からお湯が入り口に向かって流れてくる。凄いなぁ・・・入口の脇に籠が壁に付けられている。祐が、服を脱いで、籠に入れる。
「えっと、ぼくも?」
「一緒は嫌か・・・」
「嬉しいけど、恥ずかしいかな」
あれ、普通は、女の人の方が恥ずかしいんじゃないかな
「あはは、あたしも恥ずかしいからな、あんまり見ないでくれると嬉しいな」
「そなんだ」
あ、でも豊かな膨らみに、どうしても視線が行ってしまう。祐が手桶で体にお湯を流して、湯舟に入ると、ぼくを手招くから、手桶で体にお湯を流して、そのまま祐の隣に入る。木桶の長さが一間くらいのだから、畳二枚くらいかなかなり大きい。二人でもゆったり入れる。
「彩女は、伏見の稲荷神社に御狐灯篭勧請をおこなって来て貰った湯女狐の一人だ」
「御狐灯篭勧請?」
「あぁ、狐火が使える狐は、稲荷狐と呼ばれて、神社の眷属だからな。狐灯篭を使いたい家は、稲荷に御狐灯篭勧請って寄進をして来てもらうのさ」
「それが、御狐灯篭勧請かぁ。お金が無いと風呂に入れないってこと?」
「まぁ、神社では御狐灯篭を設置して風呂を開いて、商売をしているところも多い。京洛だと焼け落ちたところも多いけど、八坂あたりには何軒か残っているって聞いたな」
八坂は、八坂神社あたりってことかぁ。つまり、銭湯が八坂神社には、既にあるってことかぁ・・・
「それって何時くらいからあるの」
「御狐灯篭は、安倍晴明って人が始めたそうだ」
「陰陽師の晴明って、平安時代の人だよね」
「あぁ、渡辺綱と同じ頃かな、晴明の方がかなり年上だったと思った」
「えっと、葛葉様って渡辺綱の妻で、晴明って人の母親ってこと?」
「そうなるな、まぁ二千年を生きた御狐様だからな。今は昔だと、最初の妻って描かれている」
「鬼火だと狐灯篭はできないのかな」
「鬼火だと、鉄も溶けるからな、灯篭には向いてない」
「鉄が溶けるの?」
「あぁ、ここの狐灯篭は、郷に居る鋳物衆のカグチに造ってもらったんだ」
「鋳物衆かぁ、鉄を溶かして、型に入れて造るってことだよね」
「あぁ、刀や鎌は鍛造だけど、鍋や釜とかは鋳物が多いからな」
「ふぅん。鬼火って使える人が、かなり多いのかな」
「鬼火の釜は、もともと丹波の鬼釜が始まりだ。鍛造にしても鋳物にしても、鬼六って鬼が造った釜が元だからな。ここはそんなに釜数は少ないけど、難波の住吉あたりだと、釜筒が並んでいるよ」
「昔ほど、一人で三日三晩釜を焚ける鬼は少ないけど、数人で釜を焚ける鬼なら、近くの伊平でも二十人くらいは居るかな」
「カグチさん人だと、一人で焚けるってこと?」
「あぁ、カグチは、あたしよりも鬼火が使えるからな」
「えっと、祐も焚ける?」
「どうだろ、流石に三日三晩の釜焚きは試したことが無いな」
「姫様・・・背中を」
おそるおそる声がかかる。肌襦袢を着けた彩女さんと狐耳の少女。そのまま狐の姿をした二人が床几を置いて用意をしている。桶に、手拭いとか何か用意しているようだ。
「わかった」
祐が湯舟を出て、床几に座ると、狐達が凄く綺麗な肌をした身体を拭いて行く。手拭に粉を付けて拭くと、泡みたいな感じが出てる。石鹸かなぁ? 小さな布袋を髪にあてながら、手際よく丁寧に櫛で梳いていく。
「やっぱり綺麗だなぁ・・・」
「そうか?あまり他の男に褒められた事は無いんだがな」
「ん~。ぼくの世界だと背が高い人も多かったからかな。美人って人達はたいていは、ぼくよりも背が高かったよ」
「面白いな、篭の世界では、篭が低い方なのか」
「そうだね、ぼくの背が160センチくらいだからこっちだと、五尺三寸かな。かなり低い方だね」
「ほぉ、ここでの篭は、かなり背は高い方だぞ。五尺くらいが普通だからな」
五尺っていうと150センチかぁ、あれ、調べてた時は、もう少し低かったような気がするけどな。
「ほら、篭も来い。あたしが洗う」
「え。はい・・・」
消え入りそうな声をさせて、祐の前に置かれた床几に座る。背中に手桶から湯をかけられて、手拭で背中を流し始める。
「その粉って何かな」
「ムクロジの粉だ、布袋の方は米糠だな。さすがに丁子や柿の葉や桑の葉とかは、普段使いできないからな」
「そうか、薬草かぁ、丁子って日本でも造ってたんだ」
「そうだな、興福寺近くの延命院や琉球の崇元寺とかだと色々な薬樹が集められて造られているよ」
「琉球って、南の島だよね遠いなぁ」
「まぁ、松浦党は、元寇で名を上げたものの、かなりやられたからね。唐船仕様の大型船が多いのさ。松浦党は琉球や平戸とかを拠点に船が交易に出てるよ」
「南蛮船も来てるのかな?」
「来ているって話はよく聞くね。何かあるのかい」
南蛮が既に来ているってことは、天主教も来ているってことか
「天主ていうか、南蛮人の神主みたいな人も来ているのかな」
「ん。ここらでは見ないけど、南蛮人にだって神さんは居るんだろ」
史実の時期的には、1540年代とか50年代かなぁ・・・?桶狭間は1560年だったと思うから、そんなに時間が無いんだよな。
「凄い、いきり立ちだな」
「へっ。あ、ごめんなさい」
「いいさ、あたしは嬉しいからな。それにしても篭の淫気は凄いな」
「え、淫気って」
「湯女狐は、すでに当てられているから、そこに眠っているぞ」
え。狐も腹みせが、降参の印なのかな。狐耳の少女も彩女さんも赤いなぁ。あれ、祐も赤いけど、なんか笑っているのが怖いというか・・・
「篭も良いよな」
「え、はい」
食べられました。疲れたけれど、とっても良かったです。
宵闇に講談師が語る。伝綺モノとしてみました。
戦国期の流れは、政教分離を目指した流れでもあります。既存政教一致権力の支配が一向宗徒やキリスト教とすれば、それを分離し政治権力を潰す方向で進めるのは、新興勢力としての基本的な考え方ということになります。
これを殺伐とすすめた流れが、史実の信長、秀吉、家康という流れになるかと思います。




