表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

フェリスと風邪

//*** 5 ***//

「フェリス様が風邪を引かれました」

 フェリス付きの侍女は症状は軽いのですが、と言う。食欲が無いらしく、朝食も今日は不要らしいです。


 サファドとサティはすぐに、麻薬であるサマの葉を知らせるために、夜中に出歩いていた事に思い当たる。

 身体が弱いのかもしれない、という王と王妃の誤解を解き、サティはサマの葉の事件について告げる。


「サファド、婚約者が風邪を引いたのだ。きちんと様子を見るようにな」

「病気の時は誰も不安になるもの。その不安を埋める人には好意を持つわよ」

「……解ってますよ」

王と王妃の言葉に、サファドは頷いた。


 フェリスは部屋の布団で転がっていた。寝間着は自国から持ってきた物で、薄い生地の物だ。

「フェリス、入るぞ」

 コンコンとノックされ、サファドの声が聞こえる。直後、フェリスの部屋のドアが開けられる。

 サファドとサティが入り、二人は布団に入ったままのフェリスを見て、心配そうな顔を浮かべる。

 

「フェリス姉様、大丈夫?」

 サティがフェリスを伺う様に顔を出す。

「うん、大丈夫」

 サティはフェリスの横に座り、覆いかぶさるようにおでこをくっつけて体温を測る。

 サティの綺麗な顔を身近で見て、フェリスが顔を赤くする。

「少し熱があるみたい。顔も真っ赤だわ」


 フェリスの様子を少し離れた所から見るサファド。

「今日は休んだ方がいいだろう。それと、昨日はサティが世話になったな」

 サファドがサマの葉の事を言ったつもりだった。

 夜中に男装して外から声をかけた事を言っているのか、とフェリスは青ざめる。


「大変、顔が青くなってるわ。相当苦しいのね」


 そこへ、部屋がノックされ一人の女性が入ってくる。


「王宮医師のリズです」

「ああ、早く見てくれ……」


 フェリスは熱のある頭でリズを眺めながら考える。

 医者?すごい美人さん。こんな医者ならいくらでも診察されたい。って、医者!?

 バレる!バレちゃう!!


「あ、あああ、あの、医者、大丈夫」

 片言で医者はいらない、大丈夫だから、と言ったつもりだった。


「そうよ、フェリス姉様。リズは名医だからもう大丈夫よ!」

 そして、伝わっていない事に絶望の表情を浮かべ、諦めた。


 もうどうとでもなってしまえ……。


 リズは、フェリスのおでこに手を乗せる。

「……この吸い付くようでいてサラサラな肌質は、凄いわ」

 リズは興奮したように、フェリスのおでこを撫でまわした。


「えっと、これ。体温計。口に咥えてね」

 消毒した体温計をはむっと咥えるフェリス。この場にいる男女問わずを魅了する表情で。

 しばらくして、体温計から音が鳴り、リズは体温計を抜き取った。


「フェリス様、熱は少し高いみたいですね」

「リズ先生、私も熱があるかもしれません」

 そう言って、フェリスの体温計を見つめながら口を開けるサティ。


「そう」

 若干表情が赤いサティを、リズは新しい体温計をサティに咥えさせる。

 舌打ちするサティ。


 フェリスの目を広げて、舌を出させて、と診察は続く。


「では、触診をしますので、フェリス様は前をはだけてください」

 そしてリズはチラチラとサファドの方へと目をやる。

「あ、ああ……わ、私は出ていよう」

「私は残るわ!」


 そして室内には、サティ、リズ、フェリスの三人が残される。

 いくら女性のような顔立ちをしているとはいえ、性別は男。

 服を脱げば身体つきで絶対バレてしまう、とフェリスは青い顔になる。


「上半身だけだから。脱がしてあげましょうか?」

「い、いい、です。自分で」


 そう言うフェリスを二人の女性が剥いていく。


 どこか気まずそうに、目を逸らす二人。

 バレた、絶対バレた……。胸も無いし……絶対バレた。


「……はい、いいですよ。食後にこの薬を飲んでくださいね」

 そう言って、リズは部屋を出ていく。


「ごめんなさい、フェリス姉様……」

「……いい、いいです」

 どっちにしろ、いつかはバレていたのだから、と拗ねるような顔で言うフェリス。

「フェリス姉様、私は絶対言わないから!」

 そう言ってサティは外に飛び出していく。

「ありがと……サティ」


 しかし、女性の振りをしている変態だというのに、男性だと解っても黙っていてくれるという。

 サティは容姿だけではなく、心も優しいんだな、とますます好きになったフェリスだった。




 部屋から外で待っていたサファドは、サティが焦って飛び出してくるのを捕まえて言った。

「どうしたんだ?」

 きまずそうに顔を逸らすサティ。

 不安になり、サティに詰め寄るサファド。

「一体何があった?フェリスの身体に何かあったのか?」

 黙っているサティにサファドは、何があった?と問いただす。


「絶対に言わないんだから!。綺麗な身体をしていたのに残念なくらい絶壁だなんて!」


 フェリスの予想は外れ、男性である事は全くバレていなかった。

 女性にはありえないくらいの絶壁である胸部も、フェリスとして見ると男性という発想は一切出てこない。

 それは何人もの男女の身体を見てきた医師……リズにとっても同様であった。

 ありえない絶壁の胸と、ありえない程の綺麗な裸体を持つ女性、という認識であった。


 フェリスの性別がバレるのはまだまだ先になりそうであった。


読んで頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ