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フェリスの到着

//*** 2 ***//

 イクォール国は、クーロン王国の隣国である。

 国境付近は資源に乏しく、クーロン王国と戦争は過去起きていない。

 イクォール王国には凄い王子が居る、と言われている。


 世界中で使われている、冷却装置は彼の開発であり、大きな反響を呼んだ。

 世界中に求められ、イクォールの財政を潤したのだ。

 また、彼が作成した協力な兵器は、各国の天才科学者が、自国よりも百年進んでいる、と言う。

 特に奪うほどの豊かな資源は無く、攻めるよりも協力を得る方が他国としてもメリットが高い。


 連日の開発と、新しい法の整備を行っている所で、サファドの妹が部屋へと入ってくる。


 サファドの妹は可愛らしく、優れた容姿を持っていた。艶やかな黒髪に整った顔立ちをしている。

 隣国のフェリス姫の事ばかりが讃えられているが、サティの容姿もあり得ない程整っていた。


「部屋に来るなんて珍しいな。うれしいよ、可愛いサティ」

 幼少から他国に劣化フェリスと呼ばれ比較されてきたサティの頭を撫でる。

 くすぐったそうにするサティを抱きしめ、微笑みかける。


「兄様、結婚するって本当?」


「……婚約だよ。一年の限定でね」

 フェリスのせいで劣化フェリスと呼ばれるサティに、シスコンであるサファドがいい感情を持てるわけがない。

 一年、という期間を強調しておく。


「あの、綺麗って評判の隣国のフェリス様なんでしょう?」

「ああ。評判はね。サティよりも賢くて美人なんて信じられないよ」

 そういって、サティを撫でまわすサファド。くすぐったそうにするサティの反応を見て、嫌な気分を払おうとする。

 

「兄様、本当に一年で別れるの?」


「こちらから申し込んだんだ弱みはあるけど。まあ、全然相手をしなければ勝手に出ていくさ」


 フェリスが到着した、という知らせが入り、サファドはフェリスを迎えに行く。


「これ程とは……」


 室内に居た全員が息を飲む。


 奇跡的な容姿。強力な魅了の魔法でも使われているかのように引き付けられる。

 サファドは、魂を鷲掴みされているように感じた。

 天使、妖精、という言葉がぐるぐると頭によぎる。人工的に作られたのではないか、という完成された。いや、完成されすぎた美貌のに、茫然とする。


「……はじめまして、フェリス、です。一年、お世話なります」

 サファドもサティも放心していた。

 片言のイクォール語を恥ずかしそうに喋るフェリス。


 サティも、茫然としてフェリスを眺めている。

 劣化フェリスというのも、本人を前にすると褒め言葉だったのではないか、という気すらしてくる。


 齢十六歳という年齢にして、完璧に完成されたあり得ない美貌だった。


 遠目に見ただけの大国の王子を骨抜きにして、自国に帰ってから執務をしなくなった、とか。

 急に表れた王女を見た警備兵が、あまりの美しさにで心臓が停止して死亡した、とか。

 彼女を手に入れるためなら、全てを捨てても構わないと大国の王子が叫んだ、とか。


 数々のエピソードを思い浮かべながら、全員がフェリスに目を向ける。


 『これならありえる……』と。


 まるで天使が歌うかのような美しい声色に、落涙する者までいた。


 サファドの方をちらりと向き、恥ずかしそうに頬を赤らめて目を落とすフェリスの様子を見て、イケメン死ね!と室内の男連中が心の中でサファドを罵倒した。


 フェリスが恥ずかしそうにしているのは、サティである。

 吸い込まれるような綺麗な顔立ちに、ほうと溜息を付く。一目ぼれだった。


「あ、あの。名前」

 フェリスが一歩、サファドの方ではなくサティの方に近付き尋ねる。

 はっとしたように、サティは挨拶を返した。


「……第一王女、サティリア。サティ、と呼ばれています、フェリス様」

 暗に姉と呼ばず、自分が兄の嫁として認めない、という気持ちを出した一言であった。


 悲しそうな顔を浮かべるか、と思ったらフェリスは嬉しそうに、サティに微笑みかけた。


 フェリスにとって、サファドの事はどうでもよかった。

 姉様、と呼ばれると微妙そうな顔を浮かべたかもしれないが、名前で美少女に呼ばれた事に嬉しかったのだ。


 笑顔のフェリスに、サティは言葉につまり、ごめんなさいと一言謝り、フェリス姉様、と言い直した。

「フェリス、フェリスでいい。私、サティと初対面。仲良くなりたい」


 フェリス様、サティと呼び合う自分の姿を思い浮かべて、ニヤニヤするフェリス。

 本人感覚ではニヤニヤだったが、周りは天使から魅力的に微笑みかけられているようにしか見えない。

 フェリスの整った笑顔に赤くなりながら、そっとサファドの後ろに隠れた。

 

 後ろから、チラチラと伺う小動物的な態度を取るサティに、フェリスは可愛い、と身もだえしたくなっていた。


「お前と婚約するサファドだ。一年、よろしくお願いする」

 サファドが、フェリスに一歩近づき、手を伸ばした。


「よろしく」

 サファドがフェリスの手を握った瞬間、目に見えてサファドが赤くなり、失礼すると言って部屋から逃げるように出て行く。

 怒らせた?何か怒らせる事したかな……と首を傾げるフェリスであった。


読んで頂きありがとうございました。

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