フェリスの婚約
久々に書きます!変な表現があっても許してくださいね!
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クーロン王国は、人口数万人の小国である。
土地は狭く、特産品は特に無く、経済的に潤ってもいない。
他国が気にする程の国でもない小国、クーロン王国だが、その王城には、今日も長蛇の列ができている。
クーロン王国には美しい王女が居る、と言われている。
全身は傷どころか、一片のくすみも存在しない。
背中まで届く、長い艶やかな金色の髪は後ろに流されており、一つにまとめられ、見る者はその美しさに息を飲む。
愛らしい整った顔立ちで、高く通った鼻に、大きな黒い目。白磁器のような白く透明感のある綺麗な肌。
聞く者がくすぐられるような感覚を覚える透き通るような綺麗な声には、誰もが心を奪われるという。
クーロン王国のフェリスはそういう人物である。
遠目に見ただけの大国の王子を骨抜きにして、自国に帰ってから執務をしなくなった、とか。
急に表れた王女を見た警備兵が、あまりの美しさにで心臓が停止して死亡した、とか。
そういう、到底信じられないようなエピソードが数多くある。
少々誇張が過ぎるのでは?と思われるかもしれない。確かに誇張もある。
遠目に見て骨抜きにされた王子だが、実際は執務をしていた。
もっとも一日の半分を王女宛ての恋文を書くに回したため、執務に割く時間が減っただけ。
警備兵が死んだというのも、女性慣れしていない警備兵が王女を見て、あまりの興奮で心臓麻痺を起こしただけ。
そう、実際に死んではいない。
そんな……嘘だろ?と誰もが疑うエピソードを持つ王女様には、一つだけ偽りがあった。
王女は実は男性……王子だったのだ。
昼下がり、フェリスはのんびりと自室で紅茶を飲んでいる所へ、姉のイフィリアが入ってくる。
珍しい、と思いながらイフィリアを見ると、少し困ったような苦笑いを浮かべていた。
「あれ、姉様。部屋に来られるなんて珍しいですね」
フェリスは侍女に言って、イフィリアの紅茶も用意してもらい、どうかしたんですか?と首を傾げた。
国王似のイフィリアと王妃似のフェリス。性別は逆だが、妙に絵になっている。
イフィリアは出てきた紅茶を口に含むと、決心したのか早口に言った。
「フェリス、あんたの嫁入りが決まったみたい」
「へえ、それはおめで……え、嫁入り?」
「隣国、イクォールの第一王子様がぜひ、とフェリスをご所望らしくてね。ほら、同盟結んだばっかりで関係悪化させたくないじゃない?」
王子!?王女じゃなくて!?ご所望って、断ってよ。以前に第一王子に男の嫁を出すつもりなの!?
「……いやいや、どうぞ、と王子の嫁として男を出すとか、それなんて宣戦布告なの」
「ちょっと、フェリス。あんな凄い男はいないんだからね?何が不満なのよ?」
顔が良くて頭が良くて、優しくて領民に慕われ、カリスマ性もあり、数々の発明もしているのよ、とイフィリア。
何ですか、その異世界転生チートっぽい王子様、という設定にフェリスは顔をしかめた。
「凄いのは解った。不満は男が男に嫁入りする事だけど?」
「大丈夫よ、イクォール国は宗教的な理由があって、一年間は手を出されないから」
どうやら、一年間の婚約を経て、正式に嫁入りするらしい。
触られなければバレないわ、と自信満々に頷くイフィリア。
いや、バレるってば……と頭を抱えるフェリス。
「仕草とか、話とか、そういう細かな挙動でも、男性と女性で違和感が出ると思うし」
そう言いながら、お淑やかな動作で、ムーっと非力な腕をふるわせて小口で食べれる程にクッキーを四つに割るフェリス。
「ふむ、一理あるわね」
大きく口をあけ、フェリスが砕いたクッキーの皿を持ち上げ口に流し込むイフィリア。
せっかく割ったのに!と恨みがましい目を少しだけ向けるフェリス。
「もしバレたら、ひどい事に、ならない?」
「あはは、そんな心配してたの?バカね」
そうだよね、バレるに決まってるんだから、手を打たないはずがないよね。
そう判断してフェリスは、安堵の息を吐く。
「バレなきゃいいだけじゃないの!」
そういって、親指を突き出すイフィリア。
え、何なの?何も考えてないの?
狼狽するフェリスに、イフィリアは豪快に一息で紅茶を飲み干していた。
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