49話 玲②
「はぁ……解ってもらえなかったか……」
士苑君は深い溜め息をついて言いました。
「……俺達みたいな小さな国はユーマ帝国のような大国と渡り合うためには一国々々バラバラじゃあダメなんだ……。それじゃあマトモに相手もしてもらえない。一つの大きな地域としてまとまってこそ、初めて帝国にとっても侮り難い存在になる。それが解ってもらえなくて……残念だ……」
「……紫苑さん!」
亜里亜ちゃんが士苑君に駆け寄り彼の手を取って力強く宣言しました。
「そんなに気を落とさないでください!私達は士苑さんに付いて行くつもりですから!」
……いや、私まだ意思表明してないんだけど……。
「……あ…ありがとう亜里亜……ありがとう刈谷さん……」
あれぇ……?
なんか士苑君も凄い感謝の念を込めた眼でこっち見てるし……。
これもう断れない流れじゃないですか。
いや本気で断ろうと思えば断れますけど……。
私も正直迷ってるんですよね。
服従か、不服従か……。
いきなり決めろって言われてもパッと決められる事じゃないですよ。
もっと考える時間が欲しいです。
……あれ?
そう言えば今まで疑問にも思いませんでしたけど、どうしてユーマ帝国は士苑君に“だけ”コンタクトを取って来たんでしょうか……?
何だかいつの間にか士苑君が“私達全員の代表”みたいな立ち位置になってるような……。
「……あ…あの、士苑君、一つだけ聞いても良いかな……?」
「何ですか? 刈谷さん」
「帝国が提示してきた条件で私達に何か隠してる事、無い?」
「はあ…っ!? か…隠してる事!? そ…そ…そんなのある訳無いじゃないですか…!!」
目に見えて激しく動揺する士苑君。
うわぁ……これ絶対何か隠してます。
大方“この地域一帯の支配権”でも約束されているんじゃないでしょうか……。
*
(※以下、士苑の言い訳パート)
……俺は刈谷さんに図星を突かれて焦っていた。
実は帝国は「属国(彼らはそう思っている)を従えて大人しく臣従すれば“シオニア”と呼ばれているこの地域一帯を統治する“総督”にしてやる」と約束してくれたのだ。
つまり帝国側からしてみれば今まで通り……だが俺からしてみれば治める地域が大幅に拡大する事になる訳だ。
……しかし当然の事ながら俺は帝国の威を借りて三人から国を奪うような真似をする気は断じて無い。
ただ“対外的には”俺がこの地域の総代のように振る舞う事になるだろう。
……それは三人に対しては悪いとは思う。
こういった役割は本来ならばちゃんとした場を設けて話し合いで決めるのが筋というものだろう。
だが今回の場合は状況が状況だ。
(俺ではなく)帝国側が俺を“地域全体の王”と認めた(というか勝手に勘違いした)のだから……。
だから俺も(前にも言ったと思うが)この勘違いを利用して“俺達はバラバラじゃない、一枚岩なんだぞー!”と帝国に思わせておいた方が何かと好都合だと踏んで、あえて訂正をしなかった訳だ。
もちろんそんな事をして三人にバレれたら俺の印象は限りなく悪くなるだろう。
だから事が全て終わって(すなわち四つの国が無事に帝国の傘下に収まって)それぞれの国の安泰が約束された暁には、ちゃんと俺の口から皆に説明するつもりだったのだ。
だが不幸な事に刈谷さんに事の真相を察せられてしまったものだから……。
もちろん俺だってこういう大事な事を一人で決めてしまう事に抵抗が無かった訳ではなかった。
だがもし今の段階で三人に打ち明けて、もし誰か一人でも“それなら自分は反対だ”と言って離反してしまう者が出たら……そうしたら全てが水の泡じゃないか……いや、実際もう水野さんに離反されてしまった訳なのだが……。
とにかくおr…………
(※以下、三十行ほど言い訳が続くため割愛します)
*
「……ねぇ、士苑君。正直に話してちょうだい。本当に何か隠してる事、無い?」
なおも尋ねる私に士苑君はとうとう口を割りました。
「……す…すいません……実は…………」
士苑君は全てを白状しました。
「……あぁ、やっぱり……そんな事じゃないかと思ってました……」
「士苑さんサイテ~!! 何でそういう事ちゃんと相談してくんないかなぁ~!?」
「も…申し訳ない!……確かに俺が間違ってたよ。こんな大事な事を俺一人だけで何とかしようと思ってたんだから……」
……まぁ士苑君の性格からして、私達を出し抜いて自分だけ上手く立ち回ろうとか、そういう悪どい事を企んでいた訳ではないという事は解りますが……。
「ハァ……こうなったら仕方ないですねぇ……」
亜里亜ちゃんが溜め息混じりに言いました。
「……帝国に殴り込み行きましょう!」
「「……へ?」」
……すいません。
私、今ちょっと彼女の言葉が理解できないです。
士苑君もキョトンとしています。
いきなり何言い出すの?
この子……。




