48話 玲①
今回は今まで比較的影の薄かった刈谷 玲視点です。
皆さん、こんにちは。
刈谷 玲です。
ある日とつぜんゲームの世界に飛ばされ、そこでリアルにそのゲームをプレイさせられるという不条理きわまりない境遇にもめげず、今日も健気に生きています。
このゲームというのを簡潔に説明しますと、まずプレイヤーは一国を治める指導者となって、内政や外交、そして時には戦争を行いながら、他国と争ったり手を取り合ったりしつつ、自分の国を発展させていくという、いわゆる“リアル・タイム・ストラテジー”というジャンルで……え? もう知ってる? いえ、なら良いのですが……。
今日はご近所の国の佐倉 士苑君が「大事な話がある」とかで、ここら辺り一帯の国の皆に集合をかけたので、こうしてやって来た訳です。
それにしても、久しぶりに来てみたけど、士苑君の国、とても大きいですねぇ。
人も多いし、商業、工業といった二次産業も発展しているようです。
私の所は主な産業が農業しか無い田舎国ですから……。
まあ、それでもこの国で消費される食糧の約半分は私の国で生産されてるんじゃないかな。
つまり、その気になればいつでも…………。
「……あ、刈谷さんじゃないですかぁ~!こんにちは、お久しぶりです~♪」
「あらぁ~、亜里亜ちゃん、久しぶりねぇ~♪」
不意に後ろから声を掛けられたので振り返ってみると、そこにいたのは美波 亜里亜ちゃん。
頭の中が年中お花畑…………もとい、いつも明るくて朗らかな女の子です。
たぶんこの子は、自分では最高に可愛いと思ってる自撮り写真に「あたしマジブス~落ち込むわ~」とかコメント付けてアップして炎上させちゃう……そんな子です。
例えが良く解りませんでしたね。
忘れてください。
まぁ悪い子ではないです。
「…そう言えば刈谷さん、近ごろ私の領内で、ちょくちょくユーマ帝国の兵隊がウロついてるのを目にするんですけど、刈谷さんの所はどうですか?」
「あら、それは嫌ねぇ。こっちを偵察に来てるのかしら……。まぁウチはユーマ帝国からも遠く離れた奥地だし、そんなのは見かけないけど……」
「そうですか……。たぶん今日、紫苑さんが皆を呼んだのも、その事で話し合うためなんじゃないかなぁ……」
「嫌ねぇ、帝国と戦争…なんて事にならなきゃ良いんだけど……」
案内された部屋に行くと、既に士苑君と水野さんが来ていて、腰を下ろしていました。
ですが二人とも険しい表情を浮かべています。
「……士苑君……君の考えは、僕的にはちょっとあり得ない……」
「……いや、俺には水野さんの意見の方が理解できないんですけど……」
…なんか既に雰囲気、険悪だし……。
私達に気付いた士苑君は少し笑顔を作って言いました。
「あ……やあ、刈谷さん、亜里亜。今日は良く来てくれたね」
「……」
水野さんは難しい表情を浮かべ、黙ったままです。
亜里亜ちゃんが尋ねました。
「どうも……それで、あの、話って何ですか?」
「実はさ、ちょっと難しい事になっちゃって……」
士苑君の話を要約すると、こうです。
つまり、ユーマ帝国が私達に服属を迫ってきた……取るべき道は二つ……帝国の求めに応じて大人しく傘下に加わるか、それとも服従を拒んで戦うか……。
私は疑問を口にしました。
「その……例えば帝国に従うとなった場合、どうなるんですか?」
士苑君が答えます。
「……一独立国としてではなく“属州”として扱われる事になります。定期的に一定量の資源を貢ぎ物として納めなければならなくなり、保有できる兵力は領内の治安を維持できる最低限に制限され、さらに帝国からの命令があれば自分の領民を兵役や労役に提供する義務も……」
「そ…それは……」
正直、キツイですね……。
「……まぁ、そういう事だよ」
水野さんが腰を上げました。
「……紫苑君は帝国に降る気らしいが、僕はそんな制約だらけの支配を甘んじて受け入れる気は無い!例え帝国と一戦交える事になったとしても自立自尊の道を行くつもりだ。勝手にこっちの事を“ユーリア国”なんて呼ぶ連中に従えるか……」
「水野さん……!!」
士苑君の呼び掛けに振り返りもせず、水野さんは部屋を出ていってしまいました。
「あちゃあ……ここに至ってとうとう分裂かぁ……」
…と小声で呟く亜里亜ちゃん。
ほんと、私達これから一体どうなっちゃうんでしょうか……?




