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45話 あゝ無常

 その後、俺と亜里亜は一週間ほど田中の国に滞在し、軍事のみならず様々な分野の最先端の知識を学んだ。

 例えば、この地域では既に銅に(すず)を混ぜた“青銅”が使用されていた。

 これは是非とも国に持って帰って取り入れたい技術である。

 他に天文、治水、建築、医学、農業に関する知識も得た。

 それらは全て“文字”によって粘土版に記されていたが(それは日本語ではなく、この国の人々が自ら作りあげた独自の文字で)俺は読めないため、田中の臣下の書記に読んでもらった。

 この地域では既に体系化された文字が使われており、戸籍や納税などの記録、それに過去に起きた出来事(すなわち国の歴史である)などが、それによって付けられていた。

 ちなみに読み書きが出来るのは国の中でも書記(複数人いる)だけだという。


 もっと長く居て色々と学びたかったが、あまり国を長く空けておく訳にもいかない。

 俺達は帰る事にした。


「田中さん、本当にありがとう。この国で得た知識、大いに国作りに活用させてもらいます」

「いえいえ、お役に立てて何よりです」

「私達の国が今よりもっと発展して、この地域の国々にも負けないぐらいになったら、今度は田中さんを招待しますね」

「それは嬉しいなぁ。その日を楽しみに待っていますよ……」


 それから田中は少し遠い目をして言った。


「あぁ……こんなに楽しい日々は本当に久し振りでした。実を言うとこの地域ではね、プレイヤー同士の交流は殆ど無いんですよ。たまに会う事があっても、お互い腹の探り合い……だから同じプレイヤーっていう立場なのに、ほぼ利害関係の無いお二人との出会いは、僕にとっても本当に貴重なものでした……本当にありがとう」

「田中さん……」


 そのとき俺達は田中の……いや、プレイヤーという存在の孤独と哀しさを瞬間垣間(かいま)見たような気がした。

 俺達だって、たまたま割り当てられた土地が良かっただけで、これからの事なんて分かりはしない……。


「昔はみんな、そこそこ仲良かったんだけど……いつからこんなになっちゃったのかなぁ……。佐倉さん、美波さん、あなた方は僕達のようにはならないでくださいね。お互いを信じられず、憎み合い、争い合う……そんな事をしなくても人は幸せになれる、共存共栄の道だってあるんだという事を証明してください」

「……ええ、やってみますよ……!」

「私も……!」


 俺達は力強く(うなず)いた。

 それは果たせるかどうかも分からない……ともすれば限り無く困難な事なのかも知れない。

 だがそれを試みる事……その実現に向けての努力を続けていく事は、とても大切な事だと思う。

 だから俺は迷う事無く頷いた。

 きっと亜里亜も同じ気持ちだったのではないだろうか……。


 ※


 それから間も無く、この国は他国との戦いに敗れて跡形も無く滅ぼされた。

 俺達が去った、わずかひと月後の事だった……。

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