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39話 集落(むら)から都市国家(くに)へ

※ 語り手がコロコロ変わって申し訳ありません。今回からまたしばらく士苑の語りが続きます。

 栗田との戦いに勝利してから百年が経った。

 この間の俺達の集落の発展は実に目を見張るものがあったと言って良い。

 俺の予想した通り、やはり金属器(銅)の使用開始は文明発展の大きな転機点となった。

 石器や木製の道具を使っていた頃に比べ、農耕や資源採集、その他における作業効率は格段に上がった。

 また機織りの技術が導入され、人々が身にまとう衣は獣の皮から(まだ粗いが)植物の繊維で織られた“布の服”へと変わった。


 集落の風景もずいぶん様変わりした。

 集落を取り囲む柵は(いまだ木造ながら)より強固な“城壁”となり、一部の重要な建物(町の中心や兵士育成所など)は石造りになった。

 銅のつちのみの使用により、石の細かい加工が可能となり、思い通りの形にする事が出来るようになったからである。

 石は丈夫で長持ちする最高の建材だ。

 火災にも強い。

 石材の切り出しと運搬、建築時に手間と人手を要する事が難点だが、その点は心配いらない。

 今や我らが集落の人口はかつての倍以上に増加し、加えて食料生産事情の改善により労働力は余っている程だからだ。


 これも水野の集落との“技術提携”による成果と言って良い。

 水野達が開発した牛馬に牽引させるタイプの(すき)に、俺達が掘り出した銅で作った刃を付けて、実用的な鋤が完成した。

 これにより畑仕事は従来より遥かに少ない人数で出来るようになったという訳である。

 こうして完成した鋤は亜里亜の集落や刈谷の集落、さらに他の地域の集落にまで広く輸出された。

 こちらはその見返りとして資源やその地域特有の産物を受け取る。

 すなわち集落同士で本格的な“交易”が始まったのである。

 さらに銅鉱脈を押さえていた俺達は採掘した銅を精錬し、一定量の塊(インゴット)にして輸出する事も始めた。

 これは実に良い商品となった。

 かくして俺達の集落は商売繁盛、各集落との交易によって得た莫大な富を元にして、たちまちトップに躍り出て……


 ……という事になりそうな物だが、そう都合良くはいかないのが世の中である。

 銅による利益の代わりに俺達は“大切な物”を失ってしまった。

 ……と言っても別に“真心”とかじゃなく、本当に具体的な物……

 なんと集落周辺の植物が全て枯れ果ててしまったのだ!

 原因はどうも銅の精製の過程で発生する“亜硫酸ガス”という有毒物質らしいのだが……当然そんな知識は俺達には無かった。

 それで気付いた時には時すでに遅し……周辺の森と畑が死に絶えてしまっていた。

 これにより俺達は木材と食料(穀物や野菜)という生きていくために欠かす事の出来ない重要な資源を全面的に輸入に頼らねばならなくなった。

 せっかくの鋤も肝心の自分の集落で使えないというのは何とも皮肉な事である。

 何より周辺集落に依存しなければ立ち行かなくなってしまったというのは痛手だった……。


 だがそんな根本的な問題を抱えながらも、俺達の集落は発展を続けていた。

 人口はうなぎ登りに増加し、ついこの間「二百人を超えた」と聞いたと思ったら、数年後にはもう「五百人を超えた」という具合である。

 このまま行けば千人……そして一万人の大台を超えるのも時間の問題だろう。

 多様な“専門職業”が出現し始め、また各地の様々な物産が取り引きされる“市場”も設けた。

 こうなるともう“集落”という言葉は適当ではない、言うなれば“都市”であった。

 そう、俺達の集落は城壁に囲まれ、主権を有する“都市国家”へとステップアップしたのである。

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