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32話 ついに戦争

※ 今回は残酷な描写や人が死ぬ描写などを含みます。

「そ…そんな……嘘だろう、栗田さんが……!?」


 俺は全く信じられなかった。

 だって栗田はさっき「集落に帰って皆で話し合ってみる」と言ったじゃないか!

 あれは嘘だったというのか!?

 あるいは話し合いの結果、やはり独占しようという結論に達したのか……いや、それにしては行動が早すぎる。

 恐らく栗田はあの場で戦えば自分達の方が人数的に不利と考え、穏便に退くための方便として提案を受け入れたのかも知れない。

 しかし俺は矢倉の上の見張りに尋ねた。


「攻めて来たというのは本当に間違い無いのか!? 交渉のための使節か何かじゃあ……!?」

「そ…その可能性は否定出来ませんが、しかし20人近くの武装した男達で……ぐぁっ!!!?」


 見張りの男が突然叫び、彼は矢倉の上で倒れた。

 その胸には矢が突き立っていた……。


「……シオンさん!!もはや彼らの敵意は明白です!!」

「指示を出してください!!」

「……くそぉっ!!!女子供は家の中へ!!男は全員武器を取れぇ!!戦いだぁ!!!」

「「「おおぉぉーっ!!!!」」」


 俺の号令に男達が哮る。

 俺自身も腹の内が煮えくり返っていた。

 それは栗田への怒りか、はたまた彼の嘘を安易に真に受けて舞い上がっていた馬鹿な自分への怒りか……それは俺にも判らなかった。


「士苑くん……っ!!!!」


 男性にしてはややかん高い声が響いた。

 栗田の声だ。


「……聞いて欲しいんだ!!!僕は君達と戦いたくないんだよ!!!頼むから降伏してくれないかなぁ!!?」

「……」


 ……何を言ってるんだ、あの男は……。

 武器を持って大勢で押し掛けて来て、こちらの人間を殺しておいて『戦いたくない』だと……。


「栗田さん……」


 俺は彼の問に応えた。


「……これが俺の返事だぁ!!!!全員、攻撃いぃーっ!!!!」

「「「おおおぉぉぉーっ!!!!」」」


 俺の言葉を合図に皆は一斉に槍を投げ弓矢を放った。


「ぐああぁぁ……っ!!!?」

「ぎゃああぁぁ……っ!!!?」


 栗田の集落の男達がバタバタと倒れていく。


「ひ、怯むなあぁっ!!!!やり返せええぇぇっ!!!!」


 栗田が金切り声で叫んだ。

 敵の反撃が始まり、こちらにも矢や槍が飛んで来る。

 中には火の付いた矢を放って来るヤツもいた。

 こちらの柵や建物を燃やす気だ。


「火を消せぇっ!!燃え広がったら終わりだぞ!!」

「「は、はい!!!」」


 俺達は応戦のみならず消火活動にも人手を割かれる羽目になった。

 このままでは負けてしまう……俺は本気で敗北も覚悟した……。


 ところが、劣勢と見えた戦いは徐々に優勢へと転じていった。

 初め俺はそれが何故なのか解らなかったが、双方の戦いの様子を見ている内にその謎は解けた。

 それは“武器の差”だった。

 敵の矢はこちらを傷付ける事は出来るが、よほど急所にでも当たらない限り致命傷は負わせられなかった。

 一方こちらの矢は敵に当たると深々と突き刺さり、たちまち即死か戦闘不能に追い込んだ。

 そう、亜里亜との取引で手に入れた黒曜石が役に立ったのだ。

 いつしか家の中に隠れていたはずの女子供達までもが中から出て来て、建物に付いた火の消火に当たっていた。

 もはや集落の全員が戦いに参加していた。


「……ひ、退けえぇーっ!!!!退くんだあぁーっ!!!!」


 ついに栗田は苦渋の決断をした。

 退却を命じたのである。

 栗田の集落の生き残り達(おおよそ十人程度)は、ほうほうの体で逃げて行く……。

 だが俺達はここで戦いを終わらせる気は無かった。

 このまま逃がせば彼らは後日、必ずや復讐戦を挑んで来る事は目に見えていた。

 それも今回より強力な武器を装備して……。

 戦いに敗れた者の復讐の可能性……その恐ろしさに関して俺ほど良く知っている人間は恐らくこの辺りにはいないだろう。

 ゆえに俺は残酷な決断を下す必要があった。


「……敵が逃げたぞぉ!!!追えぇ!!!一人も逃がさず皆殺しにするんだあぁ!!!!」

「「「おおおぉぉぉーっ!!!!」」」


 俺達は背を向けて逃げる敵に対して容赦の無い追撃を始めた。

 人間を射るのは鹿や猪などより遥かに簡単だった。


「うぐぅ…っ!!!!」

「ぎゃあぁ…っ!!!!」


 次々と上がる悲鳴……。

 十人が見る間に八人、六人、四人……と数を減らしていく。

 そして……。


「……いぎあああぁぁぁ~っ!!!?」


 誰かの放った矢が栗田の背に刺さった。

 栗田はバッタリと倒れた。


「仕留めた……!!」


 俺は皆に命じた。


「もう追撃はいらない!!栗田を確保しろ!!その他の負傷者には急いで手当てを!!」

「「「はいっ!!!」」」


 俺は栗田の元へと急いだ。


「う、うぐううぅぅ~…っ!!!!」


 栗田は血の海の中で泣きじゃくりながら苦しみもがいていた。


「しっかりしろ!いま止血をしてやるからな!」


 だが矢の突き刺さった場所が最悪だった。

 ちょうど心臓の位置だったのだ。

 これは……いくらプレイヤーでも助からないんじゃないか……。


「ううぅぅっ……し、士苑くぅん……ごめんよぉ……ごめんよぉ……」


 栗田は泣きながら何度も俺に謝った。


「……あなたは謝る事なんて無いよ……」


 俺は言った。


「……もちろん俺もあなたに謝るつもりなんて無い……俺もあなたもこの世界で生き残るために出来る限りの事を精一杯やったんだ……ただそれだけだよ……」

「……士…苑…くん……」


 栗田は弱々しく言った。


「……君…は……生き残れ……」

「……」


 俺は黙ったまま深く頷いた。

 栗田は天を仰いでつぶやく。


「あぁ……結局……僕達…は……一体……何…の…ため……に…………?」


 そして彼は息絶えた……。

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