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29話 演説

「……?」

「ブン…メイ……?」

「次の…段階に…進める……?」


 俺の宣言を聞いた皆は一様に不思議そうな顔をした。

 そりゃそうだよな……彼らには、自分達が“文明”の担い手でそれを進歩させていかなきゃならない、などといった意識など無い。

 俺も少し先走りすぎた。


「……聞いてくれ。俺達は今様々な問題に直面しているだろう。人口の停滞、多発する犯罪……その他にも色々挙げていけば切りがない。だがそれらを一気に解決する方法がある!」

「そりゃあ一体何です!?」

「教えてくださいシオンさん!」


 俺は力説した。


「要するにだ!俺達の社会は今持っている技術力・生産力で養える人口の限界に達してるって事だ!人口過密だがこれ以上は増えられない……つまり飽和状態なんだよ!」

「……何を言ってるのかさっぱり解りません……」

「私も……」

「俺もだ……」


 ……何と血の巡りの悪い連中だろう。

 いや、彼らの理解力ではなく俺の説明力の問題か?

 いずれにせよ今の俺には彼らに道理を理解させる事は無理だと悟った。


「……まあ、理屈は解らなくても良い!とにかく今起きている諸問題を解決する方法がある!これを見てくれ!」


 俺は懐から“ある物”を取り出した。

(ちなみに最初に着ていた服はボロボロになったため、今は俺も彼らと同じ獣の毛皮を着ている。)

 それは自然銅(前話参照)であった。


「見た事ある者もいると思うがこれは金属という物で、常温だと非常に硬いが高温だと軟らかくなって色々な形に加工して利用する事が出来る!例えば農具、それに武器だ!」

「そんな物を使わなくても石で良いのでは……?」


 一人が疑問を口にする。

 俺は答えた。


「いや、金属は石よりも硬く鋭い!つまりコイツで作った道具を使えば木の伐採や土を耕す作業、麦の刈り入れなんかが今までより各段に早く楽に出来るようになる!(やじり)や槍の穂先に付ければ殺傷力も増す!」

「「「おぉ……っ!!!!」」」


 話が具体的な内容になってくると皆は目を輝かせて俺の話に聞き入り始めた。

 自分達の生活が向上すると聞いて喜ばない人間はいない。

 ちなみに弓矢や槍などと言っても今の所は専ら狩りに使うばかりだ。

 現段階では集落同士の戦争というのは起こっていない。

 集落と集落の間は数キロは離れているし、一つの集落のテリトリー内からは集落の運営に充分足る資源が採集できたからだ。

 俺は皆に言った。


「解ったか!? この“金属”という物質は必ず皆に豊さと幸せをもたらしてくれるだろう!技術の進歩は生活水準を上げ、社会規模を拡大させる!そうすれば余裕が生まれ、犯罪は減り、結果、社会はより拡大・発展するんだ!」

「おぉ~~っ!!」

「また何言ってるのか解らなくなってきた!」

「でもとにかく今より良くなるらしいぞ!」

「解りました!皆でその“キンゾク”ってヤツを探して集めれば良いんですね!?」


 皆は大いに沸き立った。


「……半分正解だ!自然に落ちている物を拾い集めても高が知れている!それよりも鉱脈を探すんだ!」

「……コウミャク……?」

「鉱脈というのは大地の中にこの金属が混ざって溶け込んでいる部分の事だ!残念だが金属の大部分はそういう目に見えない分かりにくい形でしか存在していない!そこを探し出すんだ!」

「「「おおぉぉ…っ!!!」」」

「これには多くの時間と手間を費やす事になるかも知れない!だがどんなに大変でもやり遂げよう!この作業にはそれだけの価値がある!!」

「「「おおぉぉーっ!!!」」」


 こうして俺達の『脱“石器時代”計画』がスタートした。

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