27話 三年目の気付き
俺達は時たま各集落から等距離にある地点(特に何かがある訳でもない)に集まって情報交換していた。
ある時の会合の際の会話である……。
「ウチの村の子供がこんな物を見付けて来たんですよ」
そう言って亜里亜は“謎の物体”を取り出して俺達に見せた。
それは赤銅色で大きさは5cm程、ボコボコした形の奇妙なオブジェで、どことなく金属っぽかった。
「石……か?」
「でもちょっとメタルっぽい光沢感ありますよねぇ……?」
俺も刈谷もそれが何なのかサッパリ解らなかった。
「……ね? 変な物でしょう? 何なんでしょうコレ? 水野さんはどう思います?」
「う~ん……」
水野は少し考えていたようだったが、やがて何かに思い至ったように口を開いた。
「……ひょっとしたらそれは“自然銅”じゃないかな……。銅は人の手で精錬されない自然の状態で塊で存在する事が稀にあるらしいからね」
「「「銅…!!!?」」」
俺達は驚いた。
それは人類の文明を“石器時代”から“金属器時代”へと進めるための重要なアイテムだった。
「亜里亜!お前スゴイ物見つけたなぁ!」
「わ…私もビックリです!……まあ見つけたの私じゃなくて村の子ですけど……!」
彼女自身も興奮しているようだった。
銅は金属の中では比較的低温での加工が可能……簡単に言えば焚き火の中に放り込んでおけば軟らかくなり、石で叩いて好きな形にする事が出来る。
人類が史上初めて手にした金属である。
各々の集落へ帰った俺達は、さっそく銅の鉱脈を探し始めた。
ところが、これがサッパリ見付からない。
そう上手くはいかないようだ……。
※
また、ある日の集落での会話である……。
「……」
俺は畑に水をやりながら、同じく畑仕事に精を出すイヴを見ていた。
彼女の方もそれに気付く。
「……ど…どうしました、シオンさん? 私の顔に何か付いてます?」
「いや、イヴってさ……近ごろ前にも増して色っぽくなってきたなぁ~と思って……」
「えぇ……!?」
突然そんな事を言われ、イヴは顔を赤らめる。
戸惑いつつも嬉しいようだ。
俺はというと、別に彼女の機嫌を取りたくてそんな事を言った訳ではない。
本当にそう思ったからだ。
イヴだけではない、リリスも何となく“女らしさ”が増してきたような気がするし、アダムは逆に男らしく精悍になってきた。
このゲームがスタートしたばかりの頃の彼女達は、言うなれば“物凄く精巧に出来たアンドロイド”といった感じだった。
感情も無く、ただ与えられた命令を忠実に実行するだけの、文字通り“ユニット”だった。
あれから色々あった……俺は三年間の年月を振り返りながら感慨深げに語った。
「……いやぁ、本当に変わったよ。イヴも、リリスも、アダムも……」
イヴは笑って言った。
「でもシオンさんはずっと変わってませんね♪」
「…!」
その時、その言葉が俺の胸に深く突き刺さった。
「……」
俺は何も言えずに固まってしまった。
「?……どうしたんですか? シオンさん……あっ!ち…違いますよ!? “変わってない”って言ったのは“人間的に成長してない”とかそういう意味じゃなくて……“外見が”ですよ!外見が……!」
慌ててフォローするイヴ。
だが俺は別に彼女の言葉を深読みしてショックを受けた訳ではない。
文字通り“外見が全く変わっていない”のである……。
三年も経っているのに……。
俺は歳を取っていない。
その時、俺は悟った。
俺達プレイヤーは不老なのだ……。
考えてみればそれはゲームの性質上、当たり前の事である。
プレイヤーにはこの先、数千年に渡って自分の民族を導いて行かねばならないという使命がある。
だが彼女たちユニットは違う。
普通の人間と同じように老い、そして死ぬ……そうして世代交代していくのだ。
プレイヤーだけがその時間の流れの外にいる……。
つまり俺はいずれ彼女達と死に別れ、その子供達、孫達……子々孫々に渡ってその人生を、生と死を見送り続けなければならないという事だ。
そう思うと俺は何とも言えない物哀しさに胸が締め付けられるような思いがした……。




