表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/58

24話 俺たちは不死身じゃない

 亜里亜の集落では、既に彼女の労働者ユニット達が供宴の準備をしていた。

 彼女は奮発してくれた。

 食料の蓄えの一部を宴のために提供してくれたのだ。

 俺達は焚き火の周りに車座になった。

 酒の代わりに果実を絞って作ったジュースが皆に配られた。


「それじゃあ士苑さん、音頭取ってくださいよ。」

「俺が……?」

「そうだな、今回の連合はもともと士苑君の呼び掛けで集まったんだから、締めも士苑君にやってもらうのが筋だろう。」

「そうですね、私も賛成です。」

「そ…そうですか?……では……。」


 俺はコップ代わりの土器を掲げて言った。


「ええと……皆さんのお陰でウチのイヴも無事に戻って来ました。本当にありがとうございました!かんぱい!」

「「「かんぱ~い!!」」」


 そして飲めや食えやの宴が始まった。

 各自の労働者ユニット達も一緒なので、合わせて15~6人といった所か……。

 考えてみれば、こんな大人数で飲み食いするなんて、この世界に来てから初めての事だ。

 (主に俺が)失った物は大きかったが、その代わり皆の結束は深まった。

 今までは各々がバラバラで最低限の付き合いを何となくしていただけだったが、今回の件では皆で協力して事に当たり解決するという良い前例が出来た。

 何と言うか、これから先も何か起きたとしても、皆で力を合わせればどんな困難も超えて行けるんじゃないだろうか……。

 俺はそんな気分になっていた。

 きっと他の皆も、多かれ少なかれ同じ思いを抱いているに違いない。


 ※


 栗田が現れたのは、宴が始まってから二時間以上が経ってからの事だった。

 彼の衣服は赤黒い返り血に染まっていた。

 栗田は虚ろな目をして、つぶやくように言った。


「……僕じゃない……僕の血じゃない……。」

「ええ、知ってますよ。」

「しかしまた随分やりましたねぇ~。」


 皆、どうせどんな傷を負ってもすぐに治るものと思っているので、のん気なものだった。

 そもそも狩猟生活のせいで血を見る事自体には比較的慣れていた。

 水野が尋ねる。


「それであの少年、どうしました? まさか逃げられたりなんてしてないでしょうね?」

「……死にました。」


 栗田はあっさり言った。


「「「は……?」」」


 俺達全員、事態が飲み込めなかった。


 ※


 俺は水野と共に栗田を連れて、再び馬場の集落(跡地)へと向かった。

 そこで目にしたものは……変わり果てた馬場の姿だった。


「「「……。」」」


 誰も言葉が無かった。

 水野が馬鹿に歩み寄り、触って確かめてみてから言った。


「……。確かに死んでいる。」

「わ…判るんですか? そんな事……。」

「生きている人間の感触じゃない。君も触ってみれば解る。」

「遠慮しておきます……。」


 栗田は震えながら言った。


「こ…殺すつもりなんて無かった……し…仕方なかったんですぅ!!に…人間がこんなに簡単に壊れるなんてぇ!!僕、知らなかったんですぅ!!」

「この馬鹿が!!!!」


 水野はそう叫ぶと、栗田を思いっきりぶん殴った。

 栗田は一メートル以上ふっ飛ばされ、そのまま起き上がる事無く肩を震わせて声を殺して泣き出した。


「み…水野さん!!落ち着いて!!」

「……いや、士苑君。僕は冷静だよ……でもとりあえず彼は殴っておかないといけないと思った……。」


 そう言ってから水野は、ぽつりとつぶやいた。


「……本当に許せないのは自分自身だ……。」

「……。」


 俺は何も言えなかった。

 まさか死ぬとは……。


 ※


 その後、俺達は穴を掘って馬場を埋葬した。

 スコップなどの道具が無かったので、それほど深くは掘れなかったが……。

 彼の死は一つの事実を示していた。

 すなわち、俺達も不死身ではない、という事だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ