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21話 背景②


「な…何だお前ら!!? 何しに来やがったぁ!!!?」


 俺達の姿を見た栗田は矢倉(やぐら)の上から第一声、悲鳴にも似た声でそう叫んだ。

 しまった……と俺は思う。

 いきなり大人数で集落に近付いたため、思いっきり警戒されてしまった。

 俺が彼の立場なら、連合して攻めて来たと思う。

 ただでさえ人間不信の栗田ならば、なおの事……。

 最初は単独、もしくは、ごく少数で行くべきだった。

 だがもう遅い。

 こうなったら、事情を話して何とか解ってもらうしか無い。


「……俺が彼と話すよ。」

「大丈夫ですか、士苑さん……?」

「あ…あの人、こっちに向けて弓矢を構えてるけど……まさか本当に攻撃して来たりしないわよねぇ……?」

「……。」


 して来るだろうな……というか実際、過去にされた。


「……やってみる……。」


 それだけ言うのが精一杯だった。

 そして俺は一人、栗田の集落の方へと近付いていった……。


 彼の集落は空堀、土塁、木柵で囲まれ、土塁の表面からは先の尖った丸太が無数に突き出していた。

 一見、防備だけなら水野の集落より固いんじゃないか……と思うが、よくよく見ると、それらはまだ所々建造中らしく、守りは鉄壁ではない。

 むしろ全部が中途半端で、逆に言えば、どの方向にも隙がある。

 頻繁に馬場に資源を奪われていたようなので資材も足りなかったのだろうが、一番の原因は全部一斉に作ろうとしていたからだろう……。


「……すいません!栗田さん!我々はあなたに敵意はありません!俺の話を聞いてください!」


 そう言いながら俺は彼の集落へと歩み寄っていく。

 だが……


「だ…黙れぇっ!!!!そんな見え透いた手に乗るかぁ!!!そうやって人畜無害なフリを装って、裏では何か企んでるんだろう!!? 僕は騙されないぞぉ!!!」


 そう叫ぶと栗田は俺に矢を放った。


「わわわ……っ!!!?」


 俺は慌てて逃げるしか無かった……。


「だ…駄目だ!取り付く島が無い!」

「じゃあもう栗田さんは仲間に引き入れるのは諦めましょうよ。」

「そうね……居ても居なくても大した戦力差にはならないと思うし……。」


 俺、亜里亜、刈谷の三人が諦めようとした時、水野が口を開いた。


「……僕に任せてくれないか。」

「水野さん……?」


 水野は持論を展開し始めた。


「僕が思うに、彼が士苑君を攻撃したのは、士苑君の方にも彼を警戒する心があったからだ。」

「はあ……。」


 そりゃあ、まあ、弓矢向けられてましたからね……。


「……そうではなく“裸の心”で向き合えば、きっと彼も我々を信じて心を開いてくれると思うんだよ。」

「裸の心……ですか。」

「まあ、見ていたまえ……ちょっと、これ持っててくれ。」


 そう言うと水野は、クロスボウと、背負っていた矢筒と、腰に差していた石のナイフを俺に手渡した。

 そして彼は両手を広げて栗田の集落の方に歩み寄って行く……。


「……この通り私は丸腰だぁ!!何も恐れる必要は無い!!我々を信用して出て来なさぁい!!!」


 確かに丸腰だが、語調が脅迫しているみたいだ……。

 当然、栗田が信用するはずが無い。

 むしろ俺の時より警戒感を強めた。


「……死ねえぇぇっ!!!」


 栗田の手から再び放たれる矢。

 それは水野の頬を掠めて後ろの地面に突き刺さった。


「水野さん……っ!!?」

「……大丈夫だ!!心配いらない!!……士苑君の事をどうこう言えないな。どうやら僕も裸の心になりきれていなかったようだ……。」


 そう言うと水野は信じられない行動に出た。

 何とその場で着ていた服を脱ぎ始めたのだ。

 いや、何も実際に裸にならなくても良いんじゃあ……。


「やだぁ~!もぉ~!」


 亜里亜は両手で目を覆った……が、指の隙間からちゃっかり覗いているのがバレバレである。


「な…何て大胆な……てゆうか、けっこう良い体してますねぇ……。」


 刈谷も頬を赤らめながらも水野の体を食い入るように見ている。

 確かに裸になった水野の肉体は全身よく鍛えられていて……俗な言い方をすれば“ムキムキマッチョ”である。


 ふと俺は自分の腕を見た。

 この世界に来てから、けっこう筋肉ついたと思っていたが……。

 少し鍛えようかな……と俺は思った。


 一方、水野はとうとう全裸になった。

 彼は両手を広げ、栗田の方へと近付いて行く……。


「大丈夫!!怖くない!!怖くないよぉ!!君も裸の心になれ!!心を開けぇー!!」

「ひ…ひいぃぃ~~っ!!!? く…来るな!!来るなあぁ~~っ!!!」

 栗田は半ばパニックに陥っている。

 確かにマッチョの男が全裸で近付いて来たら俺だってパニックになるかも知れない。

 彼は文字通り“矢継ぎ早に”次々と矢を放つ。

 その内の一本が水野の肩に刺さった。


「ぐ…っ!!!?」


 水野の体がグラッと揺らいだ。


「み…水野さん…っ!!!?」

「もう良いですよ!!戻って来てください!!」

「そ…そうですよぉ!なんか彼、本気みたいですし……!!」

「……いや、駄目だ!!ここで諦めたら、彼は永久に心を閉ざしてしまう!!今しか無いんだぁ!!!」

「「「……。」」」

 いや、また別の機会に改めて出直すとか……何度も接触を図りつつ少しずつ距離を縮めていくとか……いろいろ方法はあると思うよ?

 一体何が彼をそこまで突き動かしているのだろうか?

 ……ていうか俺、もう一人でイヴ助けに行って良いかなぁ……?

 そう思い始めた時だった。


「……う……うぅ……。」


 矢倉の上の栗田に変化があった。

 弓矢を取り落とし、うずくまっている。

 見ると……彼は涙を流して泣いていた。


「……こんなに……こんなに僕のために本気で接してくれた人は、今までの僕の人生で居なかったぁ!!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!僕が間違ってましたぁ!!!」

「わ…解ってくれたのかぁ!!良かった!!本当に良かったぁ!!」

「うわああぁぁぁ……っ!!!!」


 栗田は号泣した。

 水野の熱い想いが彼の凍りついた心を溶かした瞬間だった……めでたし、めでたし。


「「「……。」」」


 そして俺、亜里亜、刈谷の三人は、その感動モノ(?)の光景を、呆けたようにポカーンと眺めていた……。

 水野の体を張った《交渉》のお陰で、俺達は晴れて栗田の集落に迎え入れられた。

 話してみると栗田は人の良い憎めない男で、フルネームを栗田くりた 三郎さぶろうといった。

 彼は何度も水野に謝罪した。

 水野は笑って許した。

 いきなり裸になった時は驚いたが、やはりこの男には(色んな意味で)適わないと思う。


 こうして、俺達の“連合軍”が結成されたのだった……。

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