20話 背景①
※これは17話から18話の間に起こっていた出来事です。
「ちょっと私の話を聞いてもらえますか……。」
命を懸けて馬場に復讐戦を挑み、イヴを救い出すと言った俺に対し、亜里亜は一つの提案をした。
「……確かに悔しいでしょうが、ヤケを起こしちゃ駄目ですよ。ちゃんと作戦を立てて事に当たれば、士苑さんは命まで懸けなくても、ちゃんとイヴさんを助け出す事だって出来るはずです。」
「むぅ……。」
俺は何も言えなかった。
彼女の言葉はもっともである。
……どうやら俺は冷静さを失っていたらしい……。
俺は自分で自分の頬をピシャリと叩いた。
「……ありがとう。お陰で目が覚めたよ。……それで、どうやってイヴを助ける?」
「そ…それは分かりませんけど……。」
「な…何だ……《作戦》なんて言うから、てっきり何か妙案でもあるのかと……。」
「すいません……で…でもどうすれば良いかは判りますよ!他のプレイヤーの人達に協力をあおぐんです!ほら!三人寄ればナントカの知恵って言うじゃないですかぁ!数が揃えばきっと良いアイディアも浮かびますって…!」
「他のプレイヤー…ねぇ……。」
俺はこの近辺のプレイヤー達の顔を思い浮かべてみた。
他人には干渉しないと明言していた水野……どうも馬場の面倒を見る事に生き甲斐を見出してしまっているらしい刈谷……そして人間不信で未だにまともな接触すら出来ていない栗田……。
「……協力してくれそうな人が一人もいねえ!!」
「いやいや!ちゃんと頭下げて誠心誠意お願いすれば、きっと助けてくれますって……!」
「そうかなぁ……。」
「そうです!」
……という訳で俺と亜里亜は皆への協力を仰ぐべく、行動を開始した。
だが一つ一つの集落に立ち寄っている時間は無い。
俺が水野、亜里亜が刈谷の集落に行く事にした……。
※
「……着いた。」
数時間後、俺は水野の集落に辿り着いた。
既に場所は知っているし、直線距離なら一日以内で行ける。 とはいえ到着時には既に日が暮れていた。
「やあ、士苑君じゃないか。……一体どうした?」
出迎えてくれた水野は俺の表情から、何かがあったと察したようだった。
俺は事情を説明する。
「……という訳です……。」
「……何て事だ……酷い……。」
馬場の蛮行を聞いた水野は眉をひそめて嫌悪感を露わにした。
「……お願いします!水野さん!あなたが他人に干渉しない主義なのは知ってますが……どうか今回だけ俺に力を貸してください!あなたの力が必要なんです!」
「……。」
水野は神妙そうな顔をして黙り込んだ。
俺は水野の前に両手をつき、深々と頭を下げて懇願した。
「この通り……お願いします!この一回だけで良いですから!どうか……!」
「……。」
水野は何も言わない。
こりゃあ駄目かな……彼の信条みたいだもんな……俺は諦めて頭を上げ、静かに立ち上がると軽く一礼して立ち去りかけた……その時、ようやく水野が口を開いた。
「……待て。」
「……え?」
「……今回……だけだぞ……。」
「!!!!……水野さん!!ありがとうございます!!ありがとう!!本当にありがとう!!」
「か…勘違いしないでもらいたい!僕はただ、その馬場という少年を放置しておく事が、今後この地域一帯に良くない影響を与えると思ったからこそ、このような結論に達したに過ぎない!だから別に個人的に君を助ける事には当たらないのであって…!」
なぜかツンデレ化する水野。
……いや、全く可愛くはないけど……。
だが理屈はどうあれ、協力してくれるというのであれば、これはもう、こんなに有り難い事は無かった。
そして強力な味方を得た俺は水野の集落を後にしたのだった。
途中で亜里亜と、彼女の説得に応じて協力を約束してくれた刈谷と合流した。
亜里亜は俺に囁いた。
「……士苑さんが前に私に言った“脅し文句”を使わせてもらいましたよ……効果抜群です♪」
「ははは……。」
俺は笑うしか無かった。
そして、俺達は残る一勢力……今まで頑なに他者を拒み続けて来た栗田の集落へと向かった……。




