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2話 生めよ増やせよ俺のため

 まず見つけたのは若い女性だった。

 年齢は俺と同じくらいで20歳前後といった所か……。

 背中まである綺麗な金髪で、獣の皮を身にまとっただけの、いかにも“原始人”といった感じの服装だ。

 どうでも良いが、顔はかなり可愛い。

 いや、どうでも良くないな……重要な事だ。

 何せ“俺の民”なのだから。

 俺はさっそく彼女に話しかけてみた。


「こ…こんにちは!僕、佐倉 士苑って言います。よろしく!……えっと、君の名前は……?」

「……。」


 だが、彼女は何も答えなかった。

 無表情で突っ立ったまま、目も合わせてくれない……。


「……あ…あのぉ……。」

「……。」

「す…すいません。初対面の方に馴れ馴れしかったですよね……。それで、あの……失礼ですが、あなたのお名前をお伺いしたいのですが……。」

「……。」

「……もしも~し? 聞いてます~?」

「……。」


 ……完全無視だ。

 ヤバい、俺、泣きそう……。

 とりあえず気を取り直して他の労働者ユニットを探してみる。

 町の中心の周りで、もう二人見つけた。

 同じく20歳前後の男女だ(ちなみに男は茶髪、女は黒髪で、人種は良く判らないが二人とも整った容姿をしていた)。

 他に人は居なかった。

 さて、この三人が我が民族の始祖となる訳だが、どういう訳か彼ら、こっちが何を話しかけても全く反応を示さない。

 ……とはいえ、完全に無反応という訳でもないようで……


「……あ…あのぉ……とりあえず皆さんには…その…食料を…集めていただきたいのですが……。」


 ……と(すっかり弱気になった)俺が言うと、初めて彼らの口が動いた。


「「「わかりました。食料の採集を実行します。」」」

「……っ!!」


 それだけ言うと、彼らは無表情のまま、黙々と行動を開始した。

 俺は気付いた。

 彼らには自分の頭で判断して動く知性や感情といった物が備わっていないのだ。

 ただただプレイヤーの指示に従い、プログラムされた通りに動く忠実なゲームのコマという訳である。

 だから命令には応えるが、それ以上の会話は成立しない。


「そっかぁ……シカトされてた訳じゃなかったんだな。良かったぁ……。」


 ……いや、ちょっと待て。

 元がゲームのAIだから仕方ないとはいえ、これは人間的には孤独だぞ……。


 ※


 さてこのゲーム、俺は既に何回かプレイしているので、だいたいの要領は把握している。

 序盤は人口を増やし、社会基盤を整える事に重点が置かれるのだ。

 人を増やすには資源としての“食料”が要る。

 食料は労働者ユニットが鹿や猪などの野生動物を狩ったり(海や川などの水場が近くにあれば)魚を獲ったりする事で手に入るのだが、ゲームスタート時には町の中心のすぐ近くに“果実の木”(そのまんま)なる樹木が生えていて、これがゲーム序盤の貴重な食料源となる。

 同時に資源としての“木”の確保も平行して行う。

 木は建物を建てるのに必要だからだ。

 この先、用途に応じた様々な建物が必要になってくる。

 とりあえずは人の住む“家”である。

 ……というのもこのゲーム、増やせる人口に上限があって、目的に応じて労働者ユニットや軍事ユニットを生産していくと、すぐに頭打ちになってしまうのだ。

 そこで家だ。

 家を建てる事によって、この人口の上限を引き上げる事が出来るのだ。


 ※


 そして(俺も加えて)4人で資源集めを開始した。

 このゲーム内における俺の立ち位置は不明だが(族長? 王? 神?)今は人手が少ない時……俺も労働力として働かねばならない。

 とりあえず女2人に果実を集めさせ、俺は男と一緒に木を集める。

 しかしどうやって木を切るかな……と考えていると、男が(最初から解っていたかのように)“町の中心”から石の斧を持ち出して来た。

 調べてみると“中心”には、石斧、石槍、石のナイフなどが複数あった。

 その他にも釣り竿や網、カゴ、ロープなど……いずれも粗末な物だったが、とりあえず今(石器時代)の技術で作れる様々な道具が一通り揃っていた。


「こ、これで何とかしろって事かよ……。」


 俺は石斧を手に取って、半ば呆然とつぶやく。

 こんな石器じゃあ、木一本切り倒すのにも一体どれだけの労力が必要なんだ?

 これじゃあ家一件建てるのも一苦労だ。

 あぁ……考えただけで気が遠くなって来た。

 だが、望みはある。

 人手……すなわち労働者ユニットの数が増えれば仕事の効率も上がるのだ。

 俺は「よしっ」と言って、男に振り返って声を掛けた。


「それじゃあ、とりあえず木を切りに行こうか。」

「解りました。木の採集を実行します。」


 ※


 俺達は日が暮れるまで、各々の作業に没頭した。

 ちなみにゲームだった時は常に昼間だったが、今はちゃんと朝、昼、夜……と、一日の時間の流れが存在しているようだ。

 ならば季節……すなわち春夏秋冬の四季から成る一年も存在しているのだろうか?

 それに関しては、まだ確かめようも無いか……まぁ、いずれ判るだろう。

 それよりも嬉しい事に、女達は一日掛けて、かなりの量の果実を集めてくれた。

 この量なら……そう、新しい労働者ユニットを生産できるはずだ。

 いや……と言っても、具体的な数値を確認する術が無いのだが、たぶんイケるだろう…と俺は踏んで“中心”の建物に向かって命じた。


「よし!この食料で新しい労働者ユニットを生産だ!」


 すると、後ろにいた男と女(黒髪の方)が揃って口を開いた。


「「わかりました。労働者ユニットの生産を実行します。」」

「……えっ!? き、君達が“生産”するの……?」


 労働者ユニットの生産は“町の中心”の機能なはずじゃあ……俺は何となく嫌な予感がした。

 予感は当たった。

 女はおもむろに四つん這いになり……男はその後ろから、毛皮の服の裾を捲り上げて……そして二人はその場で、労働者ユニットの“生産”の“行為”を始めたのである。

 そう、つまり“子供を作る行為”を……(ちなみに相変わらず無言・無表情のままで、まるで規則正しく動く機械みたいだったが…)。


「……え…ええぇぇぇ~~~っ!!!?」


 俺は思わず叫んだ。


「……ユ、ユニットの生産って…そういう事なのぉ…っ!!?」


 あぁ、そうだよな……新しい命をこの世に生み出すという事は、つまり“そういう事”だ。

 そして俺も悟った……“これはゲームであって、ゲームではない”と……。

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