19話 裏切り
俺は亜里亜の集落で彼女の帰りを待っていた。
彼女は今、俺のために狩りに行ってくれているのだ。
「上手く獲物が捕れたら今夜はパーティーにしましょう♪」と張り切っていたが、大丈夫かなぁ……?
「士苑さぁ~ん!戻りましたぁ~!」
亜里亜の声がした。
「……戻って来たようだな……行ってみようか、アダム。」
「……はい、シオンさん!」
俺達は彼女を迎えに集落の外に出ていった。
「「……。」」
俺とアダムは目の前の光景に思わず息を飲んだ。
彼女の隣には……馬場とヤツの労働者ユニット達が立っていた……。
馬場は満面の笑みを浮かべながら俺に言った。
「……ま、こういう訳なんだよ、佐倉 士苑。お前はもう終わったんだよ。今まで必死こいて頑張って来た事も、ぜぇ~んぶ無駄だったってコト……ほんと、ご苦労さん♪……まぁ、俺はこれから亜里亜と仲良く、お前の分まで楽しい人生送らせてもらうぜぇ……♪」
「……。」
俺は何も言えなかった……。
「……何だよ? 絶望のあまり言葉も無いってかぁ? まあ良いや……死ね♪」
そう言って馬場は弓矢を俺に向けて構えた。
俺は思わず身を強ばらせる……。
……だが、その弓から俺に向かって矢が放たれる事は無かったのだ……。
「……そこまでよ!!武器を捨てなさい!!」
「……っ!!!?」
馬場は突然の事態に目を白黒させている。
亜里亜が背後から彼に向けて弓矢を引き絞っているからだ。
「お…おい!亜里亜……!? これは一体何の冗談だよぉ……!?」
「はぁ……年上を呼び捨てにすんな中坊が!!“亜里亜さん”でしょうが!!」
「え…っ!!? えぇ…っ!!!?……あぁっ!!!!ま…まさかお前、裏切ったのかぁ!!?」
ここに至って馬場はようやく気付いたようだ。
騙されていたのは自分の方だったという事に……。
亜里亜は弓矢を構えたまま少しずつ後退り、馬場からの距離を取る。
「チ…チクショウッ!!!!チクショオオォォォ…ッ!!!!テメェらグルだったのかよぉ!!!?」
「いや、俺達だけじゃない!」
俺は言った。
「皆さん!出て来てください!」
それを合図に今まで身を隠していた二つの集団が姿を現した。
「……ついに追い詰めたぞ。」
「……ご…ごめんね、馬場君……私は本当はこんな事したくないんだけどぉ……。」
水野 優柳と刈谷 玲……それに、それぞれの労働者ユニット達だ。
全員が馬場に向けて弓矢とクロスボウを構えている。
「う…うぅぅぅ…っ!!!?」
馬場は半ばパニックに陥っている。
水野が言った。
「馬場 理音君!君は調子に乗り過ぎた。君が士苑君の集落を壊滅させた事で、我々全員は君を脅威とみなし、排除する事に決めたんだよ。」
「……ふ…ふ…ふざけやがってえぇっ!!!!オイ!!玲!!お前は俺の味方だろう!!? 俺を助けろぉ!!!コイツラ殺せえぇ!!!」
「……ご…ごめんなさあぁぁいっ!!!!」
そう叫びながら刈谷は弓矢を放った。
……え!? マジで……!?
全員、一瞬、焦った。
だが狙いが正確でなかったため、矢は馬場の足元近くの地面に突き刺さる。
「ひ…ひいぃぃ……っ!!!?」
馬場は腰を抜かして尻餅をついた。
一同、ホッと一息つく。
いくら悪いヤツだからって、殺すのは流石に無しだ。
水野は再び口を開く。
「……我々だけではない。今ごろ栗田さんの率いる別働隊が君の集落を襲撃し、完全に破壊している事だろう。難無く集落内に入る方法は君が教えてくれたしね……つまり、君が今まで必死に頑張って来た成果は全て無駄になった訳だ……ご苦労さん。」
「……そ…そんな……そんなぁ……ああぁぁぁ……っ!!!!」
馬場は呆けたように脱力してその場にくずおれると、そのまま号泣し始めたのだった……。




