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1話 はじまり

「……な…な…なんじゃこりゃあぁぁ~~っ!!!?」


 俺は清々しいまでに晴れ渡った青空に向かって大声で叫んだ。

 俺の名前は佐倉さくら 士苑しおん20歳。

 女みたいな名前だが、れっきとした男……三流私立大学(たぶん名前を言っても分からないだろう)に通う学生だ。

 今、俺の目の前には信じ難い光景が広がっている。

 青々と生い茂った緑の木々、そして丸太を組み合わせて作られた草ぶき屋根の粗末な二階建ての建物……。

 それの一体どこが“信じ難い光景”なのかって?

 当たり前じゃないか。

 俺は今の今まで下宿の部屋のパソコンの前でゲームをして遊んでいたのだから……。

 いや、より正確を期して言うのであれば“遊ぼうとしていた”だ。

 いつものようにゲームスタートのボタンをクリックした途端、目の前が真っ暗になった。 

 そして気付いたら森の中だ。

 訳が解らない……。

 ちなみに俺がやろうとしていたのは“歴史シミュレーションゲーム”だった。

 いわゆる“箱庭ゲーム”で“RTS(ゲーム内の時間がリアルタイムで進んでいく)”の要素もある。

 具体的にどんなゲームなのかというと、一つの“民族”……ひいては“国”を育てていくゲームである。

 原始時代から始まって、食料や木、石、そして金属などの資源を確保し、人口を増やし、国を治めながら、文明を進化させ、軍隊を組織し、他国と覇権を争う……といった内容だ。

 プレイヤーは“労働者ユニット”や“軍事ユニット”に指示を与え、自分の国を強く大きくしていく。

 一種の“育成ゲーム”と言えない事も無いだろう。

 さらに“経営(内政)”や“戦略”の要素も入っている……総合的なゲームだ。

 そんなゲームを始めようとしたら、この森の中に立っていたという訳である。

 事情はサッパリ理解できないが、目の前に建つ粗末な建物には、何となく見覚えがあった。


「これって……ひょっとして、あのゲームに出て来る建物じゃないか……?」


 それはスタート時点から建っている唯一の建物で、プレイヤーはそこを中心として自分の都市を作って広げていく……その名も“町の中心”という。

 この“町の中心”は労働者ユニットを生産する建物で、敵が攻め込んで来た際には立て籠もって戦う“軍事的拠点”にもなる極めて重要な施設だ。


「……で、何でそんな物がここに……?」


 俺の目の前にある建物は、まさにその“町の中心”を実際に再現したかのような外見だった。


「まさか……。」


 俺の頭の中に一つの仮定が思い浮かぶ。


「……ここは、あのゲームの中だっていうのか……っ!!?」


 ……って、そんな訳ないよな。

 ゲームの中の世界に飛ばされるなんて有り得ないだろう、常識的に考えて……。

 たぶん、夢だな、これは……。

 まあ良い、夢なら夢で楽しんでやろう。

 とりあえず俺はそう結論付けて、この問題に関してはそれ以上考えるのをやめた。


「……さて、ここがあのゲームの中という事は、近くに労働者ユニットが居るはずなんだが……。」


 俺は辺りを見回してみた。

 ゲームスタート時点で町の中心の建物と共に2~3人の労働者ユニットが居るから、まずは彼らに指示を与えて必要な資源を集め、人口を増やす事から全てが始まるのだ。


「……いた!」


 俺はさっそく一人を発見した。

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