第42話
「クラリッサを撃退するとして、今のお前で勝てるのか?オレは戦力にならないぞ?」
「あら、それを選ぶの?てっきり2番目を選ぶものかと」
なんでだよ、まだクラリッサと神の力?とやらは結びつきが弱いはずだ。
今ならば、最初の奴一択じゃねえか?
「結びつき、に時間は関係ないわよ?彼女の想いと世界の想い、それがどれだけ重なっているか。私の見立てでは…強ってとこね。あ、最初のを選択したのはソーヤだよね」
「てめー!わざとあんな風に言ったな!?」
テンコがクラリッサに攻撃を仕掛ける。
しかし、その攻撃はまったく届いていない。
対してクラリッサの攻撃はテンコのあちこちに傷を付けていく。
「ちょっと手伝いなさいよ。大丈夫、強だからといって必ず消滅するとはかぎらないから」
「手伝えって言われてもなあ」
光線の撃ち合いにオレにどう参加しろと?
「私の盾になってよ」
「なんでだよ!オレが盾になったところで貫通して終わりだぞ?」
「いいからいいから」
やめろこっちにくるな!危ないだろが!
オレは必死で逃げる、テンコから。
と、一瞬、射線に入ってしまう。
オレは死を覚悟して目を瞑ったが、
「でかしたわソーヤ!いくわよ」『フロストスパイク!』
テンコから今までの光線ではなく無数の氷の塊が射出される。
「どんどんいくわよ!」『ストーンバレット!』
テンコから無数の魔法が射出される。
クラリッサは光の盾を出し、防御に専念しているようだ。
「ふふふ、こっちの世界の力ならあなたには敵わない。でもね、私には向こうの世界の信仰がある!異世界の魔法、これならば勝ち目があるわ!」
だんだんとクラリッサの光の盾が削られていく。
「おい、ほんとにクラリッサは大丈夫なんだろな?」
「大丈夫!カモシレナイ」
「カモシレナイってお前!」
いかん、なんだか不安になって来た。
「まあ、彼女が地球の人間ならダメでしょうけど、異世界人でしょ?たぶんリューリューシアがなんとかしてくれるわよ」
そ、そうなのか?
リューリューシアが?…待てよ!
「テンコ!オレは4つめの選択肢を作り上げるぜ!」
「えっ!?」
『召喚魔法!リューリューシア!!』
◇◆◇◆◇◆◇◆
そう召喚魔法だ!異世界からの召喚魔法、それをオレは一度見ている。そうオレを異世界に呼び出したあのミイラが作り出した魔方陣だ。
それにオレが今回の件で得た、異世界から物を取り寄せる転移魔方陣。
この二つの魔方陣を描き出し重ねあわす。
魔力の元は、自分で神だと言ってるテンコから引き出した。
「えっ、召喚…された!?お兄様、なんて無茶を!」
魔方陣から出てきたリューシアがオレの手をとる。
そのオレの手は…枯れ木のように干からびていた。
『リザレクション!』
リューシアがオレに回復魔法を掛けてくれる。
枯れ木のようだった腕がだんだんと元に戻っていく。
「良かった…なんて無茶をするんですか!異世界の神を召喚だなんて…テンコお姉様に神人とされていなければ、今頃命を失っていたとこですよ!」
ん?いま聞き捨てならないフレーズが入ってたような?
いや、今はそんなことよりクラリッサだ!
オレはリューシアに事情を説明する。
「なるほど、今ピンチになっているお姉様にそんな事情が」
「ちょっとソーヤどうしてくれんのよ!あんたが召喚魔法に魔力使った所為で、また光線の打ち合いになったじゃない!」
「4つ目の選択肢…ですか?」
「ねえ、私今、ピンチなの?無視しないで?」
テンコはがりがりと削られている、羽はすでにぼろぼろのようすだ。
「お姉様、二つ目の選択肢、居なくなるっていっても一時的にですよね?」
「ギクッ」
ん?どういうことだ?
「確かに私がクラリッサさんに加護を与えれば、神の力と共に消滅することはないでしょう」
ほんとうか!
「しかしながら、それはテンコお姉様にも言えること、両世界の神の力をお持ちのお姉様はどちらかが消滅してももう片方の力で蘇る事ができます」
「ギクギクッ」
つーことはあれか?いったんテンコに消滅してもらって、再度異世界で復活すれば地球の神の力は消えるが誰も死なずに済むってことか?
良く考えてみたら、テンコが自分に不利になるような説明をする訳がないか。
こいつほんと詐欺師の才能があるのではないだろうか。
「そういうことですが…お兄様は第4の選択肢をお望みですよね?」
あっ、なんか嫌な予感。
「私もまたテンコお姉様と同じ加護をお兄様に差し上げます」
そう言うとオレの体が光りだす。
待って、待ってよ、その話の続きは聞きたくないっす!
「私としては邪魔な異世界の神の力がなくなることは万々歳なのですが…テンコお姉様だと少々てこずりそうで…」
「………………」
やだよ?痛いのは勘弁してください。




