第41話
あれからさらに数日の日々が流れた。
もうダメだな、もうダメだろうな。よし、オレはここでクラリッサと無人島生活を満喫するZE!
クラリッサも他の女の名前さえ出さなければ普通の女の子だ。
…朝起きて家の半分が吹き飛んでいたときは驚いたが、きっと寝言でアーチェの名前でも呟いてしまったのだろう。
不思議な事に、その家はその日の夕方には直っていたが…
料理の材料も冷蔵庫にいつでも入っている。
水道管がないのに水が出る、電気もガズも通ってないのにコンロが使える。
どんな魔術が用いられているのか?
オレも色々試してはいるのだが、まったく魔法が使えない。
絶対にはずれないはずのアーチェと麻呂姫の指輪も今はなくなっている。
もしかして夢の出来事かと頬をつねってみたが、普通に痛い。
しかしさすが無人島、やる事がねえ。
テレビもなけりゃパソコンもねえ。
漫画や小説ももちろんない。
あるのは自然!そして海!
どうしよう、暇で堪らない。
しかし、これをクラリッサに悟られたら今度は何が飛んでくるやら。
オレは毎日、この大自然を満喫した風を装っている。
今日も今日とて、餌も針もない、只の糸を垂らして魚釣りを満喫する風を装っていた。
と、そのとき、その糸が引かれる感触が?
どこのバカだ?糸しかないのに食いついたのか?
おもっ!なんだこれ?どっか引っかかったか?もう捨てるか?いや、せっかく作った釣竿だ!
とりあえず折れるまで引っ張ってやる。どうせ他にやることないしな。
と、ぐいぐい引っ張っていたらだんだん浮き上がってきて…なんだあれ?くらげか?いや……人間!?
と、バシャァって何かが海上から飛び出してきた。
「はあ、やっと入れたわ」
「どこのバカが食いついてたんだと思ってたら…テンコ?」
「誰がバカよ!?助けに来てやったのに失礼じゃない!」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「はぁ、苦労したわ、まあ、少しは予想してたけど」
「どんな予想だよ?」
「ほら言ったじゃない?異分子は排除されるようになるんじゃないかとね」
「そんなこと言ったっけ?」
ただまあここを乗り切ればなんとかなるかも?
私やリューリューシアの状況を見る限り、世界は一度は排除の方向で動く。
しかし、その結果がどうであるかは気にしてなさそうだ。
現にソーヤを放置していても次の一手は送り込んでこなかったし。
とりあえずやりました、結果は知りませんみたいな。どっかの出来の悪い公共事業みたいね。
一応、そうならないように私は地球行きは我慢してたんだけどね。
「つーてーとなんだ、ここはクラリッサとこの世界の神?が手を組んで作り出した新たな世界だと?」
私は現在の状況をソーヤに説明する。
「そういうことね。あなたと二人っきりになりたい、あなたを独占したいって一番強く思っていたクラリッサが利用されたようね」
さらに異世界を作り出し、そこに異分子を送り込んでいる張本人を隔離する。
そうすることによって状況の解決を測ったんじゃない?
クラリッサには十分な魔力がある、そしてそれを行うための大きな想いも持っている、性格も内向き。彼女以上の適任者はいないわね。
「つーてーとなんだ…オレってどっちの世界からも嫌われてるってこと?」
「そういうことになるわね」
貴重よぉ?世界自体に嫌われるなんて?しかも2つも!
あれよ!世界で只一人!ってやつ?
「全然嬉しくない」
と、遠くからこっちに向かって光の筋が無数に延びてくる。
「く、クラリッサ…!?」
そこには空高く浮かび上がったクラリッサの姿があった。
「さっそく見つかったわね」
「おい、やめろって!」
「言っても無駄よ。今の彼女は世界の力に操られているわ」
くっ、まずいわね、私のバリヤーが削られていく。
「おいテンコ、お前傷がついてるぞ」
「彼女の力は神の力、私の力と同等、いや近い分それ以上ね。このままだと…消滅させられるかもね」
ソーヤは驚いた顔を私に向ける。
あら、心配してくれるのかしら?
「ソーヤに3つの選択肢をあげる」
ひとつはクラリッサを私と共に撃退すること。
そうすれば神の力を失いこの世界はなくなる。
クラリッサはどうなるかって?それは結びつきによるわね。
弱なら普通に戻れる。中ならリザレクションなどで復活が必要。強なら…消滅するかもね。
ひとつはクラリッサと共に私を撃退すること。
私が居なくなれば、同時にクラリッサの中の神の力もなくなる。
えっ、なぜかって?それはね、私には未だこの世界と繋がりあるからね、ようは道連れ?みたいな形で神の力がなくなるのよ。
ひとつはクラリッサとこのままここで過ごすこと。
これは説明しなくても分かるでしょ?




