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第30話

「いやー、バスの中だとちらちら見られるだけだったからいけると思ったんだけどねー。町に着いたらすごい人だかりになっちゃった」


 笑いごとじゃないっすよ。


「でもちゃんとシュリちゃんは小鳥に変身してもらったよ?」


 虹色の小鳥は存在しないっすから。

 それに加えアーチェの髪、虹色に光ってるからどういう理屈かと人が集まってきたらしい。

 麻呂姫の衣装もどこのコスプレかと大人気だったそうな。


 せめて花梨ちゃんの服貸してもらって変装しとけよ。

 あといい加減その髪やめろよな。


「なんかね、こっちがディフォルトになっちゃってね。というかソーヤ、またなの?ほんと何度繰り返すの?」

「そうでおじゃる。いい加減、麻呂達の堪忍袋もキレルでおじゃる」


 お前らすでにキレッキレじゃね?あ、いや、ごめんなさい。


「ソーヤ様、こちらの世界には誰も連れて来ないとお約束したはずですよね」


 そのつもりだったんですが…どうやらアーチェの方が一枚上手だったようで。


「まるで浮気現場を押さえられたような状況だな」

「ようなじゃなくて、そのものじゃない?」

「へえ、この二人がソーヤの奥さん?とってもかわいいじゃない、ほんとなんでソーヤなんだろね?」


 花梨さん、意外と毒舌なんですね。

 花梨ちゃんは暫く見つめていた後、大きなため息をついて、仕方がないなあって顔をする。


「ねえねえ、二人ともソーヤの奥さんってほんと?どうしてソーヤなの?ちょっと聞かせてよ」


 そういいながらオレ達の間に入ってくる。


「ふむふむ、アーチェさんは幼馴染なんだぁ…いいなあ、幼馴染から結ばれる、そういうのって憧れるなー」

「そう?なかなか分かってるじゃないこの子!」


「ふむふむ、ソーヤは命の恩人?へえ、そんなことがあったんだ。それじゃあ私も惚れるかもね!」

「そうでおじゃる!ソーヤは麻呂にとって恩人どころか世界の全てでおじゃる!」


 3人は随分意気投合しておられる。

 もしかして花梨ちゃん、オレに助け舟を?おお…神様、仏様、花梨様やぁ。

 花梨ちゃんはオレに目配せをしてクラリッサの方を向く。


「クラリッサはそっちでなんとかしてよね」


 イエッス!マム!


「花梨はただ単に話が聞きたいだけだと思うのだが…」

「むしろソーヤはもっと責められるべきだと思うのですけど」


 オレはクラリッサにひたすら許しを請う。

 一応きちんとオレしか使えないように魔方陣に細工をしていたはずなのだが。

 それに、こっちにくるときはちゃんと隠蔽魔法で隠れてきていた。


「分かっています、私の我侭だってことくらい…」


 そう言って俯くクラリッサ。


「ねえ、あなたが冒険者の頂点である聖女って奴なの?」


 アーチェがクラリッサに話しかけてくる。

 だからそう思ってるのはお前だけだって。


「え、冒険者の頂点ですか?別に私は冒険などしていませんが?」

「勿体無いわね。せっかく力を持ってるんでしょ?それ使わないと錆付いちゃうわよ!」

「は、はあ?」


 クラリッサは随分困惑されておいでだ。

 アーチェはその後も冒険者について熱く語っている。


「冒険ですか…」

「そう、未知との出会い!ハラハラドキドキな探索!全力を出し尽くして生きる人生!素晴らしいと思わない?」

「思う思う、花梨もいろんなとこ行きたい!」


 あんまりクラリッサを悪の道に誘うなよ。


「私はただ人々の役に立てればそれでいいと考えていました」

「その人々の中にはもちろん自分も入ってる訳でしょ?」

「あ、え、そんなことは考えたことも…」

「自分一人幸せに出来ない人はね、誰かを幸せにする権利はないと思うのよ。良く考えてみなさい、仮にソーヤが自分を犠牲にしてあんたを幸せにしようとして、あんたはそれで幸せになれると思う?」


 クラリッサははっとした顔をする。

 あんまりアーチェの話を真正直に聞かないほうがいいぞ。

 そいつ勢いだけで言ってるから。


「アーチェは勢いだけでしゃべってる割には、以外と的を得たことを言うでおじゃるからなあ」

「詐欺師の才能があるんじゃね?」

「誰が詐欺師よ!」


「私、なぜアーチェ様が聖女と呼ばれるのか分かったような気がします。私は結局、自分のことしか考えていない狭量な人間でした」


 クラリッサはそう言ってアーチェの手をとる。


「ソーヤ様を…お願いいたします」

「全然分かってないじゃない。あなたはどうしたい訳?恋は戦争よ!奪えるものなら奪ってみなさい!」

「っつ、はい!」


 あ、火種を増やしやがったこいつ。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「クラリッサ、そろそろ学校いくよ」

「はいっ」


 あれから数週間が経ちました。

 ようやくこちらの学校にも慣れてきたところです。


「ふぁー、いってらっさいー」

「アーチェ、お前も学院があるだろ、ほらいくぞ」


 アーチェさんはあれからたまにこちらに泊り込みで遊びに来ます。

 その際はソーヤ様も一緒なので私もついウキウキしてしまいます。


 それにしてもアーチェさんは過激なお方です。

 天真爛漫という言葉はこの方の為にあるのではないでしょうか。

 なんだかアーチェさんと話しているとこちらまで元気が出てくるような気がします。


 私もすっかり聖女アーチェス・アイファンタジア様のファンの一員です。


「いいの?恋のライバルなんじゃない?」

「そういうカリンだって、アーチェさん好きでしょ?」

「なんか憎めないんだよねー」


 バスから降りて学校へ向かう途中ふとこちらをつけている気配がします。

 最近多いのですよね。どうも私の容姿がここの人たちと違いすぎることもあり注目を集めすぎているようです。


「カリン…」

「またなの?いいよやっちゃえ」


 私が魔石を握り締め魔力と溜めようとしたところその人が物陰から出てきます。

 あれは…確か以前デパートで会った…たしか店長さんとかいってた人?


「やっと会えたよー、良かったぁ。えーとクラリッサちゃんだったかな、実は少し頼みごとがあるんだけど…」

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