第27話 神帝国結婚式編スタート!
『ヴァレリー、いくらなんでもこれは散財しすぎだろう』
『そうよ、ママ達の資産だって限りがあるのですから、これはいくらんでも…』
『大丈夫ですわ。今回の式場、まったく料金が発生してませんの。しかもこのドレスだって、無償でいただけるのですわよ!』
いやあねさん、確かにそれくれるって言ってたよ?だけどね、それ地球上に存在しない素材で作られてるから持って帰っちゃダメですよ?
「男が細かいこと言わないの!」
やばいんですって。バレたら揉め事が起こりそうな気配しかしない。
ちなみに此度の結婚式、来賓の方々に向けたストーリーはこうだ。
遠方からお忍びできていた小国の重要人物が山で遭難していた。
そこを通りかかった大地さんが家に案内して手厚く向かい入れた。
暫くはそこで暮らしていたところ、地震に合い、土砂崩れに巻き込まれる。
そこを大地さんとヴァレリー姉さんが協力して命がけで救出する。
それに感動した小国の重要人物は、お二人を国に招き盛大なオモテナシをしたいと。
そこでちょうど二人が結婚式場を捜しているとのことだったので、ぜひ我が国で開催さしあげようと。
実はその重要人物、小国の宗教の頂点に立つお方だった。
という設定で。
『こんな場所見たことも聞いたこともない。それに小国だと?これほどの催しが出来るなどありえんであろう』
小国って設定は無理があったかな?
いやでも、大国だったら皆知ってなきゃいけないだろうし。
神帝国の結婚式場、えらい張り切りようだった。
初の異世界人ということで、王族クラスのセッティングをされたようだ。
そして新聖女の初舞台ということもあり、国中の人々が押し寄せてきた。
今回、大地さんとヴァレリー姉さんの親戚をご招待するにあたり、バレないようにこっちに来た場所を遠方のところにして、海の上を船で遠回りしがなら近隣の港で降り、馬車で帝都に向かったのだが…
帝都についたとたん人々が押し寄せてきて、聖女様、クラリッサ様と合唱し始めた。
そして式場である神殿がこれまた派手な飾り付けを行い、中にはところ狭しと様々な料理が並べられている。
唯一の救いは、その料理がきちんと加工されたものばかりだったところか。丸焼きやそのままの姿の料理が並べられていた日にゃ、地球上に存在しない、その存在はなんだってことになってたからな。
「クラリッサってほんとに凄い人だったんだぁ…なんだか話しかけるのが怖くなってきちゃった」
「止めて下さい花梨。私は私ですよ」
「ほんとに?後から怖い人が出てきて、オウ、うちのクラリッサになんて口きいとんじゃワレェって言われない?」
「言われません!」
花梨ちゃんもあまりもの豪華さにてんぱっているようだ。
「そ、ソーヤ…なあこれ、まさか俺達の為のセッティングじゃないよな?」
大地さんが恐る恐る聞いてくる。
何言ってんですかー、全部大地兄ちゃんの為に用意されたものですよー。
大丈夫、基本立ってるだけで済みますから。
「済むわけないだろうが!挨拶やら、なんやら…どどど、どうすれば…」
ああ、そういやオレのときは親戚とかいなかったらかオレがしゃべることって何も無かったんだよな。
『すごい、すごいわヴァレリー!私もあやかりたいものだわ!』
『あのいき遅れのヴァレリーがこんな素晴らしい式場を用意してもらえるなんて…』
『誰がいき遅れですか、誰が!』
あねさんは友人に囲まれて上機嫌である。
「大地おめえ、棚から牡丹餅がすぎるんじゃねえか?」
「しっかしまあ、こりゃ晒しもんだな。まあ、バチがあたったんだろ、あんなべっぴんな嫁さんもらった」
対して大地さんは友人に弄られて、カチコチになっておられる。
「そ、ソーヤ、今からキャンセル…」
「できるとお思いですか?」
もう腹をくくりましょうや。
「そういえばソーヤ、ソーヤの奥さんってどこに居るの?」
花梨ちゃんがそう聞いてくる。
「ああ、今回は連れてきてないぞ」
なんせ連れてきたらなにやらかすか分からないからな。
「えー、見てみたかったのに!」
「また今度な」
「そ、そうだ、ソーヤのような子供だってなんとかなっているんだ、俺だって大丈夫だ…」
その意気です。
あとでこっそり補助魔法かけといてあげよう。
「ソーヤ、ちょっと通訳頼めないかしら」
ヴァレリー姉さんがオレにそう言ってくる。
どうやら教皇様がこられたらしく、詳しい段取りを説明されるそうだ。
「あ、通訳なら私がしますよ」
クラリッサがそう言ってくれる。
大地さんと花梨ちゃん、おばあちゃんと、ヴァレリー姉さんとそのご両親は別室へ向かった。
オレはとりあえずすることがなくなったので、あたりをぶらぶらしていたところ、
「ちょっとソーヤ、あんたこれなに?なんで向こうの世界の人達がこっちにきてるの?」
テンコに呼び止められた。
ああ、そういや、コイツに詳しい説明してなかったな。
 




