第26話
新連載『メガたま。』もよろしくお願い致します!
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「きっさまあぁ!我が孫娘をダシにして神帝国を乗っ取ろうだなどと!我が剣の錆にしてくれるわ!」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「ど、どうされたのですかソーヤ様、そんなぼろぼろの姿で、すぐに癒しますのでってもう、魔法は使えないのでしたか…」
ソーヤ様が元の世界に戻って数日が経ちました。
もしかしたらもう、こっちの世界に戻ってこないのでは?などど、やきもきしていた日、やっとソーヤ様が姿を現しました。
しかしながらその姿が、顔がぼこぼこに腫れていて、体のあちこちが骨折したかのように添え木にささえられています。
そして突然私の前に土下座されたかと思うと、
「どうか!どうか、神帝国に戻ってきてください」
と言うのでした。
なんでも誤解が生じたらしく、ソーヤ様が神帝国を乗っ取ろうしていると噂が生じたとのことで、その誤解を解くために一緒に戻ってきて欲しいとか。
「なんだお前、魔法で怪我治るんじゃなかったのかよ?」
大地さんがソーヤさんにそう問いかけます。
「いやー、この怪我、痛み倍増、回復魔法が効かない魔道具を据え付けられて治らないのですわ。アーチェに頼めばまあ、なんとかなるだろうが、そんなことしたら戦争になりそうで…」
「それにしても痛そうだねー」
「いたっ、やめっ、マジで痛いんで勘弁してください。しかしあいつら、その日のうちに噂が広まるってどうなのよ?ほんと口にチャックでもつけてやろうか…おっと、そうだ、これ」
と、おもむろに聖女の器を私に差し出してきます。
「これは…お返しいただけたのではないのですか?」
「次の聖女たる人物が決まるまでクラリッサが持っていて欲しいんだって。この状態でいつまでもおいとくとまずいので、今のところはクラリッサが聖女のままでお願いしますと言ってた」
「えっ、前聖女カーリン様がいらっしゃるじゃ?」
「どうやらお腹にお子さんがね」
ええっ、ちょっと待ってください、まだ聖女を降りれれてからいくばくも…いくらんでも早すぎ…はっ、もしかしてカーリン様、すでに…
そういえば、今回の聖女の代替わり、カーリン様が強く推し進められたとか…まさかっ、確信犯!?
「しかし、私はもうあちらの世界に戻らないと決心したばかり…」
「そこをなんとか!このまま手ぶらで帰ったら、こんどこそなまず斬りにされちゃう!あの爺さんの剣筋、まったく見えないのよ?」
で、でしたら、ソーヤ様も私と一緒に、この世界で暮らしていけば…
「そうしたいのはやまやまなんだが…知ってるか?たった一週間ちょい空けただけで、あいつらよその土地で戦争おっぱじめてたのよ?」
ソーヤ様のお話では、迷宮の上にお城を建て、天空城と戦争を始めていたとか。しかも仲間内どうしで。
いくらなんでも作り話がすぎるのじゃないでしょうか?いやでも、ソーヤ様が態々そんな嘘をつく訳もありませんでしょうし…
あちらの世界に戻れば…ソーヤ様とその奥方達の仲睦まじい姿を見るのはきっと耐えられません。
いまでも張り裂けそうなこの想いがきっと暴走してしまいます。
ふと見るとソーヤ様がヴァレリーさんを熱い眼差しで見ています。
くっ、こんなとこにもライバルが!?そうですよね、ヴァレリーさん、見た目だけ、ならいいですものね。
「ねえクラリッサ、あなたも何か失礼なこと考えていません?」
ん、ソーヤ様、ヴァレリーさんを見つめているのじゃなく、その手にもってる…本?
えっと、げっかんマリッジでしょうか?確か、結婚についての情報が載ってる本とか言ってたような。
「…大地兄ちゃんごめん」
「あ?」
ソーヤ様が突然大地さんに謝ります。大地さんも急に謝られて困惑しています。
「ちょっとあねさん、実はいいお話がありましてね」
「なにでしょうか」
「異世界で結婚式、挙げる気はないですか?」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「ソーヤてめえ、俺を巻き込みやがったな」
「だから先に謝ったじゃん?」
「お前なあ…」
オレは閃いた、ヴァレリー姉さんが手にしている結婚情報誌を見て。
そうだ、異世界であねさんと大地さんの結婚式を執り行えば、クラリッサだって出席しない訳にはいくまい。
しかもだ、神帝国の教皇さんにその件を連絡したところ、なんと!神帝国の神殿で、無料で結婚式を執り行ってくれることになった。
いやあ良かったですねえ。異世界で最高峰のおもてなしですよぉ?
「楽しみですわ!クラリッサが神父?をしてくださるのでしょう?」
「ええ、はい」
そう言ってこっちを恨めしそうに見てくるクラリッサ。
なんでも前聖女さんとお手紙をやりとりして、クラリッサが式を執り行うことになったらしい。
聖女としての初のお仕事だとか。
また、今後、聖女として仕事が入ればその都度、神帝国に出向いて行事を執り行うことを約束させられたらしい。
やり手だなぁ、あのおばはん。
「お二人は私の大切な人です。ですから緊張もしていますが、私が聖女として執り行えることを光栄に思います」
だけど切り替えたように笑顔になったかと思うと、ヴァレリー姉さんに向かってそう答える。ほんとええ子やぁ。
「ソーヤ様はあとでお話がありますので」
…お手柔らかにお願いします。
「いや待てよ、俺たち出会ってまだ一月も経ってないんだぞ。それなのに結婚とかいくらなんでも早すぎだろ?」
「私のご先祖様は、出会った初日に役所に出向き婚姻届を提出したこともありましてよ」
「どんなご先祖だよ?その二人うまいこといったのか?」
「生涯仲睦まじく暮らしましたとさ」
「ほんとかあ?」
ヴァレリー姉さんの目が泳いでいます。
まあでも、大地さんとヴァレリー姉さんとなら相性はぴったりだと思うのだけどね。
「はあ、しかしこんな急だと指輪の用意すら…」
「大地兄ちゃん、オレ実は指輪作りの実績もあるんだ。今ならお安くしときますよ?」
ちょっと魔法が掛かってたりするかもだけど。




