第22話
「ソーヤ様、これをお願いいたします」
「えっ、なにこれ?」
いろいろお試しした結果、なんとか天空城に設置している予備の転移魔方陣の半魔石を取り寄せることに成功した。
「ソーヤ、ちゃんとこのゴミ持って帰れよ」
その際、いろいろと変なものも一緒に取り寄せてしまった。
ゴブリンが出てきたときは家中大騒ぎであった。
クラリッサが魔法で一撃、魔石となって消えてくれた。
迷宮のモンスターでよかったよ、これが外のモンスターなら死体の処分でえらいことになるとこだった。
「ねえ、コレとか売ったら結構なお金になるんじゃない?」
ヴァレリー姉さんが金の聖杯を持ってそう言ってくる。
それ迷宮のじいさんが作り出したものだから、たぶん偽者だと思うぞ。
いくら、迷宮の主が神レベルだからといって本物の金なんか作り出せる訳がないよね。…ないよね?
それに万が一、異世界の品を鑑定なんかされて、まったく違う元素とかだったらしゃれにならないし。
だからあねさん、それ懐にしまうのは勘弁してください。
そして、使っていない車庫をひとつ貸してもらって、そこに転移魔方陣を作り出した。
あとはちゃんと機能してるか試してみるだけとなった日、クラリッサが5つの丸い輝くガラス珠を三角形に繋げた置物を取り出してきた。
「これは私の…いえ、聖女の魔力の器です。これを、教皇様にお返し願いたいのです」
「…心配しなくても、こっちに戻ってくることもこれでできると思うよ」
「いえ、どちらにしろ…私は向こうの世界には戻る気はありません」
えっ、なんで?
「昨日、花梨達とよく話し合ってそうすることに決めました」
何を話し合ったのぉ?
「クラリッサはね、ソーヤのことをね、ああ、もう!全部ソーヤが悪いの!」
そう言ってキれる花梨ちゃん。
「クラリッサは私と大地の養子にすることに決めたわ」
ヴァレリー姉さんが言う。
えっ、そんな話聞いてないよ?オレだけ仲間はずれなの?
「えっ、今なんつった、なんで俺とお前の養子なんだ?」
良かった、仲間はずれはオレだけじゃなかったようだ。
「おばあちゃんの許可はもらいましたから」
「ばあちゃん!」
「ふぉっふぉっふぉ、お前もいい年じゃけえ、ちゃんと身を固めるとええ。こないなべっぴんさんお前には勿体無いほどじゃ」
おめでとうございます。結婚式にはぜひおよび下さい。
「お前、人事だとおもって」
まあ、そんなこと言って、ほんとは嬉しいくせに。
なんだかんだでヴァレリー姉さん、見た目だけ、ならいいからな。
「性格もよろしくてよ」
あだだだ、つねらないで下さい。
「ただ、一つだけお願いがあります」
あらたまってクラリッサが言ってくる。
「ここに…この世界にはソーヤ様以外が来られないようにしてください」
「なんで?」
「私の…生涯のお願いでございます」
クラリッサが深々と頭を下げてくる。
「どうしてもとおっしゃるなら…このクラリッサ、全身全霊を持って…ソーヤ様の帰還を阻止する所存にございます」
えっ、クラリッサまでオレを攻撃対象にするのぉ?
いやまで、そうだ、ここに誰も連れて来なけりゃいいんだよね?
そうだな…アーチェとか来たら街中で普通に魔法をぶっ放しそうだし。うん、誰も連れて来ないようにしよう。
「分かった約束する、ここには誰も連れて来ない」
「っつ、ありがとうございます!」
なぜだか感極まって涙を流すクラリッサ。
いったい何が君をそうまでさせるのか。
◇◆◇◆◇◆◇◆
あれから無事に転移魔法を起動させ、天空城に戻ってこれた。
オレはその足で神帝国へと転移する。
そして転移した先で見たものは…
「なんか見覚えのあるお城が建ってるなあ…あれ、迷宮のあった場所のような気がする」
あれはなんだったかなあ…たしか西洋のお城十選とかの本に載ってたような気もするのだが。
うむ、コレくらいは想定内だ。うん、きっと許可はもらっているのだろう。
もらってるよね?もらってないのに建ててないよね?オレ神殿についたら拘束されないよね?
大丈夫、大丈夫だ、うん、転移魔方陣もそのままだし、きっと大丈夫。…大丈夫かなあ。
「よし、そもそもオレはあれに関与していない!大丈夫、オレはナニモ知らない、ナニモ聞いていない、うん、オレには何も見えません」
…そういう訳にはいきませんでした。
転移の間を出たところで門番さんがすっ飛んできて、両脇をがっしりと固められたまま本神殿まで直行便。
そこそこ豪勢な部屋に連れられて、心配しすぎかなって思ったところに、がちゃんと外から鍵が掛かる。
どうやら軟禁されたようです。
どうしよう…今のうちに転移魔法で逃げたほうがいいのかな?
悩んでるうちに扉の向こうからどたどたと走ってくる足音が聞こえる。
そうして、がたがたと扉が揺れる。
「早くここを開けるのです!」
そんなこと言われてもオレが掛けたんじゃないし。つーか内側から開くのかこれ?うん、開かないな。
「猊下、ここは外側からしか…」
「そ、そうであったな」
そして教皇様が扉を開けて入っている。
「いったい迷宮では何がおこっているのですかな!?」
それはオレが知りたいです。




