第20話
迷宮で閉じ込められとき、または土砂崩れなのどのトラップに巻き込まれとき、まずは空間の確保。
私は大地さんの後ろの柔らかい土を硬くします。
その次には空気の確保。
しかし、横穴はさきほど崩れたばかりの土で穴を空けてもすぐに塞がってしまいます。
ならは…地面、下をくぐって穴を開けます。
召喚魔法は…魔石一つでは無理ですか。ソーヤ様申し訳ありません。
私は二つの魔石を作ってモグラを召喚します。そしてモグラに穴を掘らすと同時に、周りの土を硬くしていきます。
そして次は救援の依頼。
私は召喚したモグラに強い光を放つ魔石をくくりつけます。
残る魔石は3個…いざというときはこれを全部使って土を爆破するしかありません。
「クラリッサ…先ほどから何を…そのモグラ、魔方陣の上に突然?」
「あー、なんだ、クラリッサは実は忍者の末裔でな」
「クラリッサは日本人じゃないでしょ?」
「…お前、さっきまでそれで納得してたじゃねえか?」
あとはソーヤ様の救援を待てば…ソーヤ様、このクラリッサはどのような罰でもお受けいたします。奴隷となれというのなら…ぽっ。ああ、いや、命を差し出せといわれれば喜んで差し出します。
だから、このお二人を、どうかお助けください!
◇◆◇◆◇◆◇◆
「どうしよう!GPSが反応しないよ!やっぱり戻って村の皆と救援に行くしか!」
「いや、クラリッサの場所なら分かる。問題はどうやって掘り出すかだ」
オレと花梨は土砂降りの雨の中を駆け続ける。
「えっ、何?赤い糸で結ばれてるっていうの?ソーヤって以外とメルヘンー」
ちげーよ。山中に魔力が渦巻いている場所がある。たぶんオレに発見されるよう魔法を使い続けてるってとこか。
今から引き返して村に救援を求めてる間に魔力が尽きるかもしれない。そうなれば、一刻を争う事態に間に合わない。
なお、ばあちゃんは村の皆に救援を求めに行ってる。
オレ達には動かないように釘をさされているが…逆にオレ達以外が発見した場合、魔法が使えず身動きがとれなくなる可能性もある。
「というか花梨は家で待ってろよ」
「なに言ってんの!クラリッサの一大事だよ!じっとしてられる訳ないじゃん!」
なんとかオレ達は魔力の渦に到達する。
そこには、光る魔石をもったモグラが控えていた。
「お前、もしかしてクラリッサの召喚獣か?」
コクコクと頷くモグラ。
「わー!かわいい!ねえこの子なでて大丈夫?」
「後にしろよな」
ということはここの奥に…オレはモグラが抱えている魔石を受け取る。
この魔石で穴をあけるか?しかし、へたに威力をあげると中に居るクラリッサ達がまずいか。
と、もぐらが穴をしきにりに指差している。その穴か!?
「クラリッサ!聞こえるか!」
オレはその穴に向かって大声で呼びかける。
「ソーヤ様!聞こえます!外の土の上部を硬質化してください。それで中から採掘します」
「分かった」
俺は急ぎ崩れていた土を魔法で硬質化させる。
「硬質化させたぞ」
「少し離れていてください」
「了解」
オレ達が少し離れた後、モグラのいたあたりの土が勢い良く噴出してきた。
そして中から、お姉さんに担がれた大地さんとクラリッサが這い出してきた。
「うぉっ、こりゃひでえ」
大地さんの背中が真っ赤に染まっている。
「クラリッサ、リザレクションを」
「…ソーヤ様、魔石がもう2個しか残っていません」
「まだ2個もあるじゃねえか、早く」
「っつ、はい!」『リザレクション!』
クラリッサは残った2個の魔石を使って大地さんを癒していく。
「えっ、忍術?えっ、手品?えっ、そんなのあるのぉ!?」
お姉さんが大地さんの治っていく傷を見て目を回している。
と、そのとき、突然地面が揺れだす。くっ、こんなときに地震!?
「踏んだり蹴ったりだなあ…」
オレは崩れてくる山の上部を見やる。
あの土砂こっちに辿り着くのはどれくらいか…
山頂から雪崩のように土砂が迫ってきている。
「クラリッサ、魔石は?」
「全部…使いました」
こうなりゃ、ぶっつけ本番でこっちの魔力を使って…
『レビテーション!』
と思っていたらクラリッサが魔法を使う。えっ、魔石は残ってなかったんじゃ?
「まだこの辺りには魔力がうっすらと残っています。これならなんとか…」
オレ達は空に浮く―――クラリッサを残して。
「…クラリッサ」
「ここから離れれば魔力が途切れます…これはきっと罰なのです。ソーヤ様どうかご無事で…」
くそっ、
『レビテーション!』『レビテーション!』・・
オレは必死で魔法を唱える。くっ、全然反応しやがらねえ。
「ソーヤ!ソーヤって!クラリッサが!」
「分かっている!」
クラリッサが土砂に飲み込まれる寸前、オレの瞳にある物が映った。
あるじゃねえか!魔石!しかも飛びっきりの奴が!
『アブダクション!』
◇◆◇◆◇◆◇◆
私は今、ソーヤ様の腕の中に抱かれている。
確か、土砂に飲み込まれたはず…
ああ、神様、こんな罪深い私を許してくれたのでしょうか。
このような幻想に抱かれ逝くことを許して頂けるなんて。
私の胸は幸福感でいっぱいになります。
「ソーヤ様、お慕い申しておりました。もっときつく、もっと強く、私を抱きしめてください」
「えっ!?いやほら、みんな見てるし、そ、その…今度でも?」
えっ、みんな?
私は恐る恐る辺りを見回します。
そこには…
羨ましそうな目でこっちを見る大地さんと、
歯軋りして睨んできてるヴァレリーお姉さんと、
にやにやしながら目を三角にしている花梨が居て、
「くっーーーーっ」
私は思わずソーヤ様の胸に顔を押し付けて隠れてしまいます。
「あははは、クラリッサ、照れてるー、照れてる」
「もう、花梨ったら。でも、ソーヤ様これは一体?」
確かもう魔石は無かったはず。少なくとも私の感知できる範囲には?
「ああ、これだよコレ、こいつオリハルコンで出来ててさ、魔力もアーチェがふんだんに注いで・って、どうしたクラリッサ?」




