第14話
「クラリッサー!ありがとー!クラリッサは命の恩人だよ!!」
「カリン、げんき、よかった」
目を覚ましたカリンは暫く呆然としていました。
夢でも見てたのかな?と呟きながら体を見回して、ところどころやぶれた服に首を傾げてます。
そして大地さんから状況の説明を受けたらしく、私に飛びついてきました。
「奇跡の石か…そんな貴重なものを花梨に使ってくれたのか…どれほど礼を言えばよいか」
「いいっていいって、こっちも助けられてんだからおあいこだよ」
「おお、おお、花梨、クラリッサ…」
おばあちゃんはカリンと一緒に私を抱きしめて涙を流します。あったかいなぁ…
「しかし貴重な石なんだろ?」
「ん、ああ、まあなあ…」
ソーヤ様がこちらを見てきます。
そんなソーヤ様に私は微笑んで頷きます。
元の世界に戻れないかもしれない、だというのに、私の心は以外と落ち着いています。
たぶんそれは、すぐ隣にソーヤ様が居てくれるから。
聖女様やリサに会えないのは悲しいけれど、きっとソーヤ様はそれ以上の嬉しさを与えてくれる。なぜかそんな予感をしてしまう。
「カリン、たすかった、それだけでいい」
「くらりっさー!」
カリンが泣きながら抱きしめてきます。
「とりあえず包帯を取ってくる」
「えっ、もういらないんじゃ?」
「外の人に説明できないからな。蘇生の件はソーヤが医療の心得があるで済むだろうが、傷については説明できんだろう」
「なるほど、まあ、説明しても信じないよね」
「そういうことだ」
大地さんが持ってきた包帯をカリンに巻いていきます。
「暫くはこれでごまかせよ。いらん問題を起こすことになるからな」
「うん、分かってる!」
ふと見るとおばあちゃんが頭を床につけて土下座しています。
「お、おばあちゃんなにを」
「お二方、花梨の命を救って頂いてまことにお礼のしようもない。老い先短いこのばばあだが、なんでも言ってくだされ」
『止めて下さいおばあちゃん、私はただ…ソーヤ様、ちょっとお願いします!』
「ばあちゃん、頭をあげてくれないか。花梨とオレ達は友達だぜ?友達同士の付き合いに礼もなにもないって」
「じゃが、さきほどの様子、きっと取り返しのつかないことになっておるじゃろ」
さすがおばあちゃん、伊達に長く生きていません。
「…まあなあ、実はこの石、クラリッサの故郷にいけばいくらでも落ちてるんだけど…戻るためにはこの石が必要でね…帰るに帰れなくなった」
「えっ!?」
おばちゃんたちが驚いた表情を見せます。
「とはいえ、向こうからのお迎えがあるかもなんで、まあ、それまで、ここに居させてくれませんか?」
「このようなあばら家でよければいつまでも居てくれて構いませぬ」
「あっ、勿論畑の手伝いはするから」
「いや、命の恩人にそのようなことは…」
「オレとカリンは友達だよ?友達同士に貸し借りはなしだ!だよなカリン」
「うんっ!ソーヤは私の友達だよ!畑も手伝ってね!」
カリンのその言葉に皆が笑顔を見せます。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「ねえ、私の体って、本当に魔法で治ったの?」
「ああ、そうだぞ。服なんて血だらけだったんだからな。心臓まで止まっていて、こっちの心臓も止まるかと思ったぞ」
「魔法かあ、見てみたかったなあ。ね!クラリッサ、なんか魔法使ってみてよ!」
聖女さんが困ったような顔でこっちを見てくる。
まあ、一個くらいならいいか?
オレはマジックバックの中を覗く。ふむ、まだそこそこはあるな。
「魔法を使うには、この魔石というものが必要なんだ」
オレはその内の一個を取り出す。
「ここに転がっているのもそうか?」
大地さんが先ほど花梨ちゃんの蘇生に使った魔石を拾って聞いてくる。
「魔石には魔法の素となる魔力が入ってる訳だけど、そっちのはそれが抜けた状態、ほら、色が違うだろ」
魔素の抜けた魔石は灰色、魔素の入っている魔石は真っ黒である。
大地さんは二つの石を見比べてうなっている。
「魔素が入ってる方は、なんか黒曜石?みたいな感じだな。で、抜けてるほうは只の石ころだな」
黒曜石かぁ、こっちの世界の黒曜石、魔素入ってないかなあ。
今度宝石店に連れて行ってもらおう。
『クラリッサ、花梨が魔法を見てみたいんだって』
『宜しいのですか?』
『一度ちゃんと見せて、オレ達の事情をきちんと説明した方がいいだろ』
『分かりました』
クラリッサが大地さんより魔石を受け取る。
『レビテーション!』
その瞬間オレ達の体が浮き上がる。
「うわっ!わわわ!浮いてる!?」
「うおっ、すげぇ…なんか、年甲斐もなくワクワクしてきたぞ」
ばあちゃんは無言でわたわたしている。
「すごいだろ、このお方、国では聖女って呼ばれてんだぜ。各国の王様が頭を垂れるほどの大物なんだぞ」
「ほんとに!?すごい!クラリッサすごいよ!」
「そんな大物と駆け落ちかよ。お前なかなか見所があるな」
なんで駆け落ちになってんだよ?




