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アイ・ファンタジア  作者: ぬこぬっくぬこ
第一部◆やり直し、チートなし!◆
6/90

第六章 パーティ結成。オレはお姫様役

◆◆◇◇  視点変更◇ソーヤ  ◇◇◆◆


 はい、即効でばれましたとも。


「先ほど迷宮管理官よりだな「「ごめんなさい」」」

「……」


 こういう場合はとにかく、まっさきに謝ることが大切だ。

 なにせ今回、オレ達は巻き込まれただけだしな…だよな?大丈夫だよな??


 メリ姉はしばらく黙っていた後、はぁ、とため息をつき、


「まあ、私の予想よりはましだったから良しとするかね…」

「メリ姉の予想とは?」

「一週間かよくて一ヶ月かと」


 信用ないな!まあ分かるが…


「マジックリビングアーマーを倒したそうだな」

「ん、なんかそんな感じの奴だった」

「そうか。まあ事の顛末は聞いた。最後はあれだったが、道中では十分押さえていたようだな」

「うん、そりゃもう。私達、常識はもう十分だと思うの」

「ハァ、まあ多少はましになったし、というかこれ以上は抑えておけないか…」


 そう言うとメリ姉は、


「来週より休日は迷宮探索の訓練を行う。その歳で迷宮に挑もうというのだ、休みなんてあると思うなよ」

「おおー」

「ねえ?なんかボクのけ者になってない?やっぱ同じ学院に通うんだったなあ」


 ユーリが寂しそうに言ってくる。


「なに言ってんだユーリ、オレ達今回のことで痛感したよ。魔術師がいくら居たって迷宮では役立たずなんだと」

「うん」

「ユーリが剣士を目指してくれたからこそ、迷宮探索が可能になるんだ。ほんと感謝してるよ」


 そう言うとユーリは嬉しそうに、


「ほんとう、ボク頑張るよ!」

「ああ、ユーリだけが頼りなんだ」

「うん!うん!」


 ほんとユーリはかわいいな。まるで犬のように尻尾をふっている幻覚が見える。

 オレはユーリの頭をなでながら、


「オレ達3人が居れば迷宮なんてちょちょいのちょいさ!いでっ」

「調子に乗るな。3人で攻略なんてできる訳がないだろう」


 メリ姉はオレの頭にげんこつを落とし、


「まずは迷宮についての講義だ」


 そう言った。



「まず迷宮に行くには下準備が大事だ。装備の点検、食料・水など、十分な余裕をもって用意しなければならない」

「ふむふむ」

「迷宮内では、モンスターを食料とはできない。なので食料は十分に注意すること。迷宮で迷えばいつ出れるか分からないしな」


 ソウダネ。もっと早くに知っていれば…


「まあ、ここ王都にある迷宮『最も深き豊穣』は、80階層までなら地図が出回っている。無駄に走り回らなければ迷うことは少ない。とはいえ、51階層以降の地図はあまり当てにならないがな」

「普通、迷宮の地図ってものすごく高そうなんだけど」

「ここ王都では、魔石の研究が盛んだ。よって、迷宮からとれる魔石が大事な産業になっている為、国が地図を格安で配布しているのだ」

「おお」


「それに、50階層までなら、王国の騎士共がゲートを作ってくれている。自分達の実力にあわせた階層で戦えば危険も少ない」


 いたれりつくせりだな。


「その分、51階層からは急に難度が上がるがな。後、ここの最下層は87階だ。81階層以降は敵のレベルがそれまでと比較にならない程、高難易となっている」


 そこでメリ姉はオレ達を見回し、


「そこまで行けるとは思わない…思わないが…いいか行こうと思うなよ?」

「まかせといてよ!」

「ああ、ダメだなこりゃ…」


 そんな芸人の前振りのようなことすると、フラグになりますよ?


「いいか?かつてこの迷宮が攻略されたのは150年以上前の事だ。それ以降一度も攻略されていない。それほど高難度なのだぞ」


 そんなにか。


「命が惜しければ、自分の実力と敵のレベルをしっかりと見極めろ!」

「はいっ!」

「返事はいいんだがなあ…」


 ほんとにな。


「次に戦闘についてだ。やっちゃダメなことはおいおい言っていくが、今回のことで結構参考になっただろ」

「うん、まず結局魔法はさほど重要視できないってことだね。魔術師は回復役として待機しておいた方がいいと思う」

「うむ、その通りだ。敵は主に剣士が相手をする。魔術師はサポートをメインに立ち回る。あそこの生徒会長はあんな厨二病だが、腕だけは確かだ」


 やっぱ厨二病なんだ…


「火魔法は連発するな、空気が無くなる。水系はとりあえず使うな。傾斜でどこに溜まるか分からん。風系は壁に当てるなよ?特に天井にはな。土系は迷宮の中でおいおい説明する」


 魔法の使用はいろいろ制限があるな。


「基本、剣で敵をなぎ払い、どうしてもと言う時に魔法で対抗する。まあそんな感じだね」

「ううむ、なかなか活躍できそうにないのね」

「その分、ボクががんばるから!」

「うむむ」


「ユーリ一人では全然ダメだろうな。まあその内迷宮でイヤというほど分からされる」


 だろうなあ。迷宮の敵、結構団体さんが多かった。


「迷宮でのパーティはだいたい6人から10人くらいだな。前衛3名、中衛2名、後衛1名が最もスタンダートだ」

「剣士3名、弓又は魔術師2名、ヒーラー1名って感じ?」

「まあそんなとこだ、基本魔術師はそんなにパーティに居ないから、中衛は私のようなスカウトなり、アーチャーなりが多いな」


 ということは、前衛ユーリ、中衛メリ姉・オレ、後衛アーチェか。…アーチェが後衛ってのはなんか怖いな。


「いやアーチェは中衛がいいだろうな。雷魔法での攻撃も期待でき、魔力も高いからヒーラーを兼務しても十分足りるだろ」

「じゃあオレは?」

「……今の実力なら…荷物持ちか…」


 なんでだよ!


「い、いや、荷物持ちは結構重要だぞ。なんせ食料などの、パーティの生命線を持ってるからな」


 それだけじゃねーか…


「大丈夫、ソーヤのことはボクとアーチェがばっちり守るから」

「おい、オレが戦力にならないって言いたいのか?」

「…ソーヤはお姫様役でいいと思うんだボク」

「えええ?」


 なんでそうなるの?


「プッ、お姫様役か、いいえて妙だな、ククク・・」


 メリ姉ぇ…

 アーチェがオレの肩に手を置き、グッとサムズアップし、


「黙って私達に守られてなさい!」


 おっ、男前やんけ、惚れてまうわぁ。ってなんでそうなるんだよ!



◇◆◇◆◇◆◇◆


 学園に通いだして1年が経ち、オレも8歳になった。

 オレは迷宮探索の為に、クラスにパーティを組んでくれそうな子が居ないか目を光らせていた。

 さすが最上級クラスだけあり、みんな才能はピカイチだ。


 だがしかし!ここは魔法学院だ。いわゆる魔法使いが通う学校だ。ちなみに魔術師ならアーチェで十分である。

 すなわち、必要な前衛が居ない!

 剣士どこだよ?戦士は?タンクは居ないのお?


 さすがに前衛がユーリ一人では無理がある。メリ姉からの課題でも、最低前衛3名確保と厳命されている。

 だからユーリに、


「なあユーリんとこ剣士いっぱい居るんだろ?でも貴族が多いんだっけかな?誰か気さくでオレ達を手伝ってくれそうなの居ないか?」


 ああ、言ったさ、そう言ったとも!だからといって、


「我の名は、フィフス・フォン・アステリア、この国、アステリア王国の第2王子であるぅ!」


 何連れて来てんのお!?


「おい、おま…ちょっとなにこれ?」

「いや、その、ボクが迷宮潜っているって話したら付いて来ちゃって…」

「来ちゃってじゃないよ、これはヤバイ」

「……」


 ほらメリ姉も絶句してるだろ。


「…ユーリ、ちゃんと拾ってきたとこに返してきなさい」


 メリ姉もたいがいだな!


「おまえがユーリがよく話をしているソーヤとかいう奴か」


 殿下はオレのことをギョロリと睨み、


「これからユーリを賭けて我と決闘を行え!」


 何言ってんのお!?


「おい、なんだこれ?」

「ちょっと殿下何言ってるんですか!ここに来ても、何もしないって言ってたじゃないですか!」

「ユーリには我が近衛兵にこそ相応しい。このような者共と冒険者など片腹痛いわ!見てみろ筋肉などほとんどついとらん」


 この殿下、もしかして脳筋なのか?


「こんな年端もいかぬユーリを迷宮に連れ出そうなどと、我の目の黒いうちは決して許さん!なーに我に任せておけ、脅迫だろうが、洗脳だろうがお前のことは我が守ってみせる」


 これはダメだ。きっと話を聞かないタイプだ。


「何言ってるんですか。ボクはボクの意思でソーヤに付いて行くと決めたんです!それに殿下と決闘なんて、できる訳がないじゃないですか」

「案ずるな。たとえ我が負けたとしても王宮からは何もない。なにせ我は脳筋であるからな。とっくに政治からは見放されておるわ!」


 自分で脳筋って言ったよ、この殿下…


「アーチェ」

「なに?」

「やっていいってよ」

『サンダー!』


「あばばばばば・・・」


 さすがアーチェ、躊躇しねえな。殿下は痺れてぶっ倒れた。


「くっ、卑怯だぞ。己自身でかかってこぬか!」

「アーチェもユーリもオレの一部だ!なにせオレ達ずっと3人で戦ってきたしな。オレ達は一心同体、従ってこの勝負オレの勝ちだ!」

「むむ?そうなのか??」


 あ、この殿下やっぱ脳筋だわ。


「やだ、ソーヤ、オレの一部だなんて…もう、まだ私達そんな関係じゃないじゃない」

「あばばばばば・・・」


 オレは痺れてぶっ倒れた。

 頬を赤く染めながら電撃放つなよ!どんな照れ隠しだ!


「ソーヤ…ボク達のことそんなに大切に思ってくれてたんだ…メリ姉さん、もっとボク達に特訓してください」

「はぁ、ソーヤ、ご飯までには帰って来るんだぞ」


 いや、痺れて動けないんですが…

 そう言うとユーリ達は宿屋の方へ向かって行った。

 おい、置いてくなよ!


「お主も、女子には苦労しておるようだな」

「も、ということは殿下も?」

「うむ、我は妹がな…」


 その夜、オレは寒空の下、殿下と語り明かす事となった。つーかこのショックの状態異常、いつまで続くんだ?



◇◆◇◆◇◆◇◆


「ということで、殿下がパーティに加わる事になりました」


 オレがそう言うと、メリ姉はこめかみに指を当て、


「私の人生も波乱万丈になってきたな…」


 そう言った。いいじゃないか波乱万丈、人は激しい変化にこそ、人生を実感できるのだ。たぶん。


「うむ、これからよろしく頼む!」

「ほんとに王宮の方は大丈夫なの」

「大丈夫だ!我は政にほとんど係わっておらん。王位継承権も放棄しておるしな。がははは!」


 そう言うと殿下はユーリを見やり、


「ユーリを一人迷宮になど行かせはせん。我がきっちり守ってやろう」


 いや一人じゃないし。つーか殿下のユーリを見る目が…こう、なんてゆうか…やべえんじゃね?

 確かに見た目は女の子にしか見えないが…


(おい、ユーリ。もしかして殿下お前のこと女の子と…)

(いやいや、ちゃんと自己紹介で男って言ってるよ)

(それにしては目がヤベエんだが)

(き、きっと気のせいだよ…ソーヤも変なこと言わないでよ!)


「殿下のお年は?」

「18だ。今年で学院も卒業となる。うむ、卒業する前にユーリに会えて良かったな」


 …ホモでショタとか、やべえどころの騒ぎじゃな…


「装備とか、迷宮での戦い方は?」


「我はこの大剣だ!」


 そう言うと、背後にしょった大剣を引き抜く。おい!部屋で刃物振り回すなよ!


「クラスはソードマスターだ。ようは、これで斬る、ぶっ叩く、ガチガチの前衛だな。というか我はそれしかできん。なにせ脳筋だしな!」

「殿下は王立学院一の剣士なんだよ」

「マジでか…えっマジ?」


 オレは殿下を2度見した。たしかに全身筋肉マンだが、そんなに凄いのか?


「兄上には敵わぬがな。学園では敵無しだ!ちなみに迷宮では50階層まで突破済みだ」


 おー、いきなり高戦力追加だな。

 アーチェも何気に学院一の魔術師だし、これは結構いけるんじゃないか?


「そういえばユーリは、学院ではどのくらいなの」

「なに!知らんのか!?」


 ん?なに?急に殿下が興奮しだした。


「ユーリはな、学院では『王立の聖なる盾』と言われておるのだぞ!」


 なにその厨二くさい称号…


「我が知る限り、誰一人ユーリの鉄壁の守りを崩した者は居ない。我が唯一倒せなかった者、それこそがユーリなのだ!」

「おお、いつのまにそんなに成長して」

「魔法有りの模擬戦では、ただの木の盾で、ミスリルの大剣を防ぎぎった猛者だ。学院始まって以来の快挙だな!」


「いや、ソーヤの言った通りにしただけだよ」


 オレの言ったとおり?なんだか知らないがスゲーな。


「その姿、輝く盾をもって『聖なる盾』と呼ばれるようになったのだ!」


 輝く盾?ああ、補助魔法をかけたのか。


「ただ惜しむらくは…」


 惜しむらくは?


「自分から積極的に攻撃をしないってことだな。守りは鉄壁でも攻撃をしなければ決着がつかん」

「ん?なんで攻撃しないの?」

「だってへたに攻撃したら、大怪我しそうで」


 ん?


「ボクが普通に攻撃すると、鎧も盾も関係なくバッサリいっちゃうから」

「……」


 ああ、そういや村で、鎧着たゴブリン輪切りにしてたなー、なつかしーなー。

 …あれ?オレあんま成長してないぞ?魔法も剣もからっきしだ。


 もうオレ、お姫様ポジションでもいいかなあ…



◇◆◇◆◇◆◇◆


 今まで10階層までを中心に潜っていたのが、殿下がパーティに入った事によりだいぶ進めるようになった。


 殿下が言ったとおりユーリも凄い。

 ユーリの体格は確かに小さいが、魔法で自分の倍近い大きさの盾を持って、さらにそれに補助魔法をかけている。

 基本受け流しだが、威力の弱い攻撃は反射させている。なんでそんなことできるんだ?


 ユーリが敵を引き付け、殿下がバッサリやる。基本それだけで大抵の敵は終わる。少々の数の差は物ともしない。

 ちょっと物理に強い敵はアーチェが雷で速攻する。

 メリ姉が、マップ管理、索敵、罠探知・解除を行う。

 そしてオレが荷物を持って後を付いて行く。


 …あれ?もしかしてオレって寄生?ほとんど何もしてないぞ。

 いやいや、ちゃんと戦闘時に背後の確認をして、バックアタックに注意している。バックアタックに会った事はないが…

 マジ何もしてねーなオレ?


 オレが落ち込んでいると、


「ちょっとソーヤあそこに敵が居るから。ちょっと私達疲れてて、ほら出番よ?」


 そこには小さなスネークが。っく、気をツカワレテイル…なんだか泣けてきた。


「まあ、今は私のやり方をよく見とくように。スカウト目指してるんだろ?まずは良く見る事が大切だ」

「うん、ソウダネ」


 なにげにメリ姉もハイスペックなんだよなあ。よし、とにかく今は、メリ姉についてきちんと学ぶ事だ。


 これでも浅い階層ではやることはあったんだよ!

 ユーリが引き付けているうちに、クロスボウでズバンとかね。

 でも10階層をこえると、少々矢を打ち込んでも敵が倒れやしない。

 まあその所為で10階層までしか行けてなかったんだけどな。


 ちなみに余談だが、3階層ではボスも含め、まったく敵が出なくなったらしい。…はい、反省しております。



 それからもどんどん進んでいくオレ達、ときに出会う冒険者達は、たいがいがオレ達を見ると注意してくる。

 なんでも家族連れで迷宮に潜っているように見えるらしい。


 メリ姉=母、殿下=父、オレ達=子供。


 子供連れで迷宮来るとは何事だってことらしい。


「なあ、我は老けて見えるのか?」

「……」

「メリンダ殿のような歳ならともかく…」

「あら、私のような歳ってどういうことかな?」

「30近…ぐぉ、いだだだ・・」


「24歳独身、ぴっちぴちよね?」

「ハイ、ソノトオリデゴザイマス」


 まあでも、オレ達の戦いを見ると皆真っ青になって帰って行くんだがな。


「メリ姉」

「なに?」

「これもう3人も前衛いらないんじゃない?」


 オレがそう言うと、


「うむう、確かに。そこんじょそこらの剣士が入っても、今のソーヤと同じだろうねえ」


 今のオレってなんだよ!

 メリ姉ってあれだよな、時々グサッと来るよな…殿下の時も猫扱いだったし。冒険者って皆こうなの?


「まあ、これなら50階層までは問題はなさそうだね」

「うむ、我もこれほどバランスのとれたパーティはそんなにないと思うぞ。これなら80階層も夢ではないな!がーはっは」

「ちょっと変な事言わないの。こいつらマジ本気にするから」

「ん?我は本気だぞ」

「…っち、この脳筋がっ」


 さすがメリ姉だな。王族に対しても容赦がない。


「お、ボス部屋だな」


 そうこうしてたら30階層のボス部屋に着いた。


「ここのボスは?」

「アイアンゴーレムね」

「うむう、アイアンゴーレムは剣が効きにくいからのう」

「アイアンってことは鉄?」

「そうだ」


「じゃあアシッドレインでいいんじゃね?腐食させれば剣も通るし、動きも鈍る。ユーリに補助魔法もかけてもらえば即効じゃね」


 30階層のボスも余裕でした。オレは何もしてないがな!




◆◆◇◇  視点変更◇メリンダ  ◇◇◆◆


「うむ、ソーヤはなんというか、よく物事を知っていて、状況判断も的確にできている。まさに将軍職に向いておるような気がするな」

「剣や魔法の実力はないけど、そっち方面なら十分大物になれそうだね」

「メリンダ殿はそれを見込んで鍛えておるのか」


 そう殿下は私に聞いてきた。まあ、私はホーネスト先生に頼まれただけだからね。ホーネスト先生がどう考えているかは知らないけど。

 私と殿下は迷宮から出てきた後、宿屋で話をし始めた。

 子供達はもうおねむの時間だ。


「まさかアイアンゴーレムを、あのようにあっさり倒せるとは…我が以前挑戦した時は、学院の精鋭10名でやっとだったはずだがなあ」

「アーチェとユーリの実力もあるけど、実際にあの簡単な戦闘方法を編み出したのはソーヤね」

「本人には自覚がないようだがな」


 ほんとにね、私達がこんな話をしてると聞いたらどう思うかね。そう思うと少し笑えてきた。


「あの者にならユーリを安心して預けられる。そう思えてしまうから不思議であるな」


 あんたはユーリのなんなのさ?ソーヤが変な事言ってたけど、まさかねえ…王子様がねえ…

 ちょっと萌えるかも…


「ただまあ、ソーヤ、時々すごく抜けてる時があるからねえ」

「そうなのか?」

「能天気というかなんというか「とりあえずやってみた、今は反省している」ってよく言ってるしね」


 そこで私は真面目な顔になり、


「殿下、実際どう思われますか。私も冒険者の端くれ、この迷宮彼らなら…あんなことを言ってますが、本当は期待しております」

「……81階層以下か…行けるであろうな。今とは言わん、あと数年すれば十分に攻略できる実力を持つであろう」

「それまで、隠しておけますか?」

「我は政界には顔が効かん。兄上なりに知れれば…というか今の状況十分に不味いのだがな」

「というと」


 殿下は難しい顔をし、


「我が国の成り立ちと、その後の政争は知っておるか?」

「多少は」

「その昔、我が国は兄弟で政争を行い、国が傾きかけたことがある。それ以来、王族は兄弟といいえども心を許してはならぬ風習がある」

「貴族連中が好きそうな話ですね」


 うむと殿下は頷き話を続けた。


「実は今も我と兄上、妹姫は、仲が良くない。貴族連中もそれぞれに取り入るので大忙しだ。我は妹姫のおかげで一抜けができたが…」


 そう言葉を濁すと殿下は、


「今の状況はまずい。いくら脳筋の我であろうと、うすうすヤバイのではないかと思っておった。こないだ、ユーリに言われて気づいたのだ」

「ふむふむ」

「我がこの迷宮を攻略できるほどの戦力を所有しておると!そう、兄上でも、妹姫でも、持ち得ていない戦力だ!」


 ちなみにユーリはなんと言ったので?


「このまま突破できたら、殿下がこの国一番の有名人ですねとだ」


 そしてこう吼えた。


「チョーヤベエ!我せっかく一抜けできたのに、このままでは貴族連中の担ぎ御輿だ!」

「まあ別に殿下が王様になっても…」

「ほんとか?ほんとにそう思っておるのか??おい、こっち向かぬか!」


「そ、そんなことより、それじゃあ、だいぶまずい状況だね!」


 とりあえず話をはぐらかすことにした。


「うむ、我の戦力という訳ではないが、貴族連中はそうとしかとらぬであろう。とはいえユーリから手を引くつもりはない!」


 この殿下ちょっとアレだけど、芯はちゃんとしてるね。ここは曲げた方がいいとは思うが。


「なーに、ソーヤならなんとかしてくれそうな気がするのだ」

「…急に、他力本願になったね」

「我ができることは目の前の敵を斃すこと!後はソーヤの仕事である!ソーヤが我をパーティに招き入れたのだしな。責任は取ってもらおう」


 ソーヤは責任重大だね。

 はぁ、私も気をつけないとね。下手すれば暗殺ってことにもなりかねない。


「心配するな、今の所はただの放蕩王子だ。毎日迷宮に入り浸り、冒険者かぶれとしか思われておらん。連中もアーチェやユーリだけでは、ただの頭でっかちとしか思っておらん」

「ソーヤの存在がキーだねえ」

「でかい頭を使いこなす、中身があると知られないようにしなければな」


 そう言うと殿下は一言つけたし帰っていった。


「よほど、迷宮で有名ならぬ限り大丈夫だ!」


 どこかでピコンと音がなったような気がした。

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