第10話 とか思ってたら…
「へえ、これが転移魔法の作り方ですか?」
オレは今、神帝国の迷宮の外に帰還用の転移魔法を設置しているとこだ。
今回、攻略するメンバーが多いからな、同時に帰還も可能なように大きめの魔方陣を設置しなくてはならない。
「複雑な図形ですね。これに何か意味があるのですか?」
「ああ、図形が大事なんだ。こう一つの魔石をまったく同じ分量に2分割する。そしてまったく同じ図形に描く。そうすることによって魔力に繋がりが発生し、空間も繋がるということらしい」
あんまり簡単な図形にすると、どっかで同じものを使ってしまいそうでね。
前に一度別の魔石で同じ図形にしたら、全然関係の無いところに飛ばされた。
後でシュリに聞いた話では、下手したら壁の中とかあるから危ないよーって、こええよ!
「私にも出来ますか?」
「どうかな?アーチェでも無理だったから保障はできないかな」
「アーチェさんでも?それでしたらコレができれば、私はアーチェさんより優れているということになりますか?」
それはどうかなぁ。どう優れるかによると思うが。
少なくとも性格は優れてると思うぞ。
聖女さんはうーん、うーんとうなりながら魔石を使って魔方陣を描いている。
「まずは魔石を2つに分けないとダメだよ」
「あ、はい、そちらの方は数年の技術が必要そうなので…先に魔石の魔力を魔方陣に流す方法を練習していたのです」
数年の技術って、まあ実際真っ二つにするってのは難しいのかもしれない。
オレのサーチだと数値がでるから分かるが、テンコの話じゃこっちの人たちのは曖昧な感覚みたいだしな。
しかし…聖女さんが書いている図形…図形というより落書き?天は二物を与えずというが…そっちの才能がなさそうだ。
左右対称はおろか、線もみみずがのたくったような感じだ。
ん、だけどこれ、どっかで見たような気もするな?どこだったかなあ…
「それじゃ魔力を流してみます!」
「えっ!?」
ちょっと待って!真っ二つにしてないよね?行き先も設定してないよね?それ壁の中直行便じゃね?
「ストップ、ストップ!そのままじゃ暴走しちゃう!」
「そ、それが…魔力が止まらないんです!」
良く見ると魔方陣の隅っこがオレの魔方陣とひっついている。
そしてオレの魔方陣の上には作りさしの転移石が転がっていて…魔力を吸い上げていた。
「ま、不味い、このままではどこかに転移する!」
オレは咄嗟に聖女さんを抱きかかえる。
せ、せめてどっか…安全な場所へ…
オレはふと足元の魔方陣を見…あっ、思い出したコレ…
そのままオレと聖女さんは光となって消えるのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
思い出した、思い出したよ!聖女さんが描いてた図形…そう、これは…足元に広がる大地の図形…そう…地球のオレの、故郷の天気図だ!
今、オレの足元には遥かなる大地が広がっている。
海岸沿いにはビルが立ち並び、立派な屋根の家々が見える。
街には道路が縦横無尽に伸びて、そこを自動車が走り回っていた。
そう、オレは今…地球へと帰ってきたのだ!
転移魔法の暴走、まさか異次元を超えるとは…
だが、オレはまったく喜べない。
なにせオレの居る場所、遥かなる大地を見下ろす…雲の上だからだ!
うぉおおおお、おちるぅううう!
『フライ!』『フライ!』・・
ひたすら魔法を唱えるが、まったく浮く気配が無い。
腕の中の聖女さんはぐったりと気を失っている模様。
まずい、こっちの世界には魔素がない!即ち、魔法が使えません。やべぇコレ、超ピンチじゃね?
そ、そうだ!空気中に魔素がなくても…
オレはなんとか魔石を取り出す。
魔石には魔素が含まれているはず!
『フライ!』
おっ、ちょっと浮い…やべえ、オレの魔力じゃ止まりません。
『フライ!』『フライ!』・・
なんとかあの木々の方へ…
オレ達は大きな木に向かって突っ込んでいく。
バキバキッっと音を立てながら威力を殺しながら地面に向かう。
ぐはっ、刺さってる、枝が刺さってるよ。そりゃ刺さるか。
なんとか無事に地面に降り立ったわけだが…聖女さんはオレが抱きしめていた分傷は少ない。
しかしながら、オレの方のダメージがでかい。
フライで多少は威力を落とせたのだが、木の枝で減速は漫画のようにはいかなかった。
あれだ丸太を体に打ち付けられたような感じ?たぶん内臓がいってます。
あと折れた枝があちこちに刺さって超痛い。
ぺちぺちと聖女さんの頬を叩くが起きてきそうな気配が無い。
だんだん意識が遠くなって…とにかく大量の魔石をバックから出し、ダイニングメッセージを残す。
この魔石でリザレクションをと…




