第9話 神帝国迷宮編スタート!
「えっ、迷宮攻略の手伝いを依頼したい?」
ある日、聖女さんと前聖女さん、そして教皇の人が来られてそう言ってきた。
「はいっ!我が国の帝都の近くに5大迷宮の一つに数えられる『彷徨える原点』という迷宮があります」
神帝国にあるという迷宮『彷徨える原点』、この迷宮の特徴は『ない』らしい。
広さはそこそこあるのだが、階層は普通、敵のレベルも普通、難易度もさほどではない。
迷宮内は全て普通の洞窟。突拍子の無いステージなんて1層もない。
過去に何度となく攻略もされている。
ならばなにを持って5大迷宮の一つとされているか。
それは迷宮の復活の早さにある。
通常の迷宮ならば、一度攻略されたなら元に戻るのに数十年かかるところ、この迷宮では1年も経たずに元の状態に戻ってしまうとのこと。
迷宮を攻略し続けない限り、迷宮攻略の恩恵は授かれないということだ。
しかしながら、難易度は普通とはいえそうそう攻略できるものでもない。前回の攻略も50年ぐらい前だ。
あれだな、迷宮のゾンビ?みたいな?
叩いても叩いても起き上がってくるような感じ?
「うちの冒険者チームを呼ぼうか?」
「それなんですが…できればソーヤ様のみの救援として頂きたいのです」
聖女さんのおっしゃることには、迷宮攻略にアステリアや他の国の助けを借りたとはしたくないとか。
あくまで、神帝国主体で攻略を行いたいとのこと。
ちなみにこの迷宮、神帝国の許可がある者しか入れないようになっている。
じゃあ、オレもダメじゃね?って感じなのだがー。例のアレだ、伝説の荷物持ち?の称号で、荷物持ちとして雇うってことなので問題ないとか。
確かに荷物持ちしたからといって迷宮攻略に貢献しました、とは言えないもんな。
「えーと、その、私、迷宮攻略なんて始めてなんです。そ、そのー、できればソーヤ様についてきてもらいたいなぁと…」
上目遣いでそう言ってくる。いじらしいじゃないか、もちろんオッケーデスよ。
聖女さん、元の姿に戻ったあと随分性格が変わっていた。最初あった頃の元気花丸系から、おとなしい、守ってあげたくなる系に。
例の体交換の魔法は、どうやら交換先の体に性格が引き摺られてたらしい。
やっぱ女の子は清楚可憐だよな。この世界にきて初めてじゃないか?こんなタイプ。
オレが出会ってきた女性…みな逞しすぎたからなあ。
こんな子ならば、オレに戦闘を挑んでくる事もないだろう。…ないよね?
「ねえソーヤ、そんな簡単に私達が行かすと思ってるの?」
「そうでおじゃるぞ。麻呂を置いていくとは承知しないでおじゃる!」
デスヨネー。
そこに前聖女さんが話を挟んでくる。
「それではこういうのはどうでしょうか。パーティをいくつかに分けて攻略を競い合うというのは」
「ふむふむ」
「我が国の迷宮の難易度は普通、とはいえ、迷宮は普通の洞窟です。強力な魔法があれば進める、力さえあれば進める、というものではりません」
「へえ」
「パーティメンバーの募集から、迷宮探索、モンスターの討伐、罠の解除、そう冒険者としての資質がもっとも問われる場所なのです」
「ほうほう」
「この迷宮を真っ先に攻略する事!それは即ち、冒険者の資質が最も高い者ということになります!」
「「なんとっ!」」
このおばさん、焚きつけるのうまいなあ。
戦力を集中させず、ばらばらに攻略させればアーチェたちとて神帝国のメンバーに勝てるかどうか。
冒険者としての能力なら一枚も二枚も向こうが上手だろうしな。
「そして、真っ先に攻略したパーティリーダーには、神帝国から生涯遊んで暮らせるだけの報奨金を出しましょう」
「うーん、どうせなら…」
アーチェがこっちを向く、あっ嫌な予感。
「優勝したパーティリーダーはソーヤになんでも言う事を聞いてもらうってのはどう?」
それどっかで聞いたセリフだな。
「なるほど…そうでおじゃるな、寝室は麻呂と一緒にしてもらうのはいいでおじゃるな」
「あら、それはいいですわね!なぜか、知らないうちにアーチェさんと一緒になってましたしね」
委員長、どこから沸いてきたの?
「ちょっと待ってよ、それは正妻の特権でしょ?」
「誰が正妻ですか誰が。アーチェさん、昔の偉い人は言っていました「勝てばよいのだろう、勝てば」と」
「ええっ、でもそれ私、勝負受ける意味ないじゃない?」
「アーチェさん、あなたは冒険者の頂点を目指すお方でしょう?その頂点を競う争いに背を向けると?」
「むぐぐぐ・・」
さすが委員長、駆け引きさせたら右に出るものはいませんね。
「良かったですね、同じ寝室で寝泊りさせてくれるそうですよ」
「えっ、いえ、そんなっ…」
前聖女さんが聖女さんに耳打ちしている。
それを聞いた聖女さんが真っ赤な顔に。
えっ、神帝国メンバーの報酬もそれでいいの?




