第8話
「只今戻りました」
「なに?いくらなんでも早すぎではないのか?」
翌日私は神帝国に戻ってきました。
「実は…すべて見破られまして」
私は事情を教皇閣下に説明し、元の姿に戻してもらいます。
「聖女様、あ、前聖女カーリン様、どうかこれをお受け取りください」
「これは?」
「これは魔力の器の変わりになるペンダントです。これを身につけていれば寿命が短くなることがないそうなのです」
「なんと…!?先に調べさしてもらっても良いか?」
「はい」
教皇閣下が調べた結果、ソーヤ様のおっしゃるとおり、置いているだけで周りの魔素を吸収しているようで、事実魔素が人体に悪影響があるというのなら、これで解消ができるのではないかということでした。
「ふむ、普通の人が持っていたらこっちに魔素をとられ魔力が弱ってしまうな。いやまてよ、これは…魔力欠乏症という病気の特効薬になるのではないか!?」
魔力欠乏症とは、魔力をうまく扱えないが為に体のあちこちに不具合が発生する病です。
てっきり魔力が足りないが為に発生する病だと思われていたのですが…生まれつき魔力の器が小さいとかの可能性がありますね。
「まずいぞ、こんなものを流布されたら…不治の病を完治できるなど神の所業に近い、我が神帝国の致命的なダメージになりうる…」
「教皇閣下、少々これを見てくれませんか」
私は前聖女様に近づき、
『リザレクション!』
「リザレクションだと!?そんな一瞬で?しかもほぼ魔力が減っておらんではないか?」
「クラリッサ、あなた…」
「お体はどうですか?」
「ええ、随分楽になりましたわ」
昨日一晩、ソーヤ様に手伝ってもらって覚えてきました。リザレクションの調整方法を。
ソーヤ様に触れられ魔力を流して頂いて…それで威力の調整などを…私、男の人に触れられたの初めてです。
「あらあら、たった一晩で女の顔になってますわね」
「え!いえ、そんな!」
「フフフ」
「き、教皇閣下、私にこのペンダントの件お任せ願えませんか?ソーヤ様は私達と敵対するおつもりはまったく有りません。お願いすれば、このペンダントは我が神帝国から流布させることが出来ると思います」
私は急ぎ話題を変えます。
「それはほんとかね?」
「はい、これから戻り再度打ち合わせしてきます」
「あらあら、そんなにその子のところへ行きたいのかしらね。フフ」
「えっ、ち、ちがいますよぉ」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「どう思われますか猊下」
「こんなに簡単に差し出してくるとはな」
私達はクラリッサが抱えてきた大量のペンダントを見やります。
当のクラリッサはまた用事があるからと例の子の元に戻っています。
「規格外、としかいいようがないな」
「そもそも、転移魔法ですか?あれ自体も規格外でありましょう」
「うむ」
アステリアの聖女ばかりを気にしていましたが…転移魔法、私達の魔法も見破られ、それにこの魔素吸収のペンダント。
それはすべてはたった一人の男の子がなしえている事。
「彼はあのような子供の成りをしてますが…聖人なのではないでしょうか」
そうとなれば全てに説明がつく。
我が国の聖女を作り上げたのが聖人であれば、アステリアの聖女を作り上げるのも聖人なら容易であろう。
「いろいろ調べてみたのだが、どうやらアステリアも手を焼いている様子。アステリアは一人娘を差し出すことにより同盟を維持している状態だとか」
そればかりではなく、ファンレーシアは言いなりの状態。ベルガンディアも血筋の者を嫁に差し出したとか。
なんでも女を与えておけばおとなしいだとか、大丈夫でしょうかクラリッサ…
「さしずめ、我が国はクラリッサを差し出すことになりそうだな」
「彼女は聖女ですよ?」
「逆に考えれば、聖女ほどの存在を差し出すことにより他国をぬきんでる事にはなる。とりあえずこれだけでも十分な成果であろう」
猊下はペンダントを指差します。
不治の病を癒す事が出来る神の所業を演出できる素材を。
「どちらにしろクラリッサの気持が優先でしょう」
「すでに傾いているとは思うがな」
そうですね…あの子帰って以来、ずっとソーヤ様のことを話してばかりです。
「そうだな…クラリッサと聖人との間に子供でも生まれれば…」
「猊下…」
「コホン、まあ、仮の話だ」
しかしクラリッサの子供ですか…大層可愛いでしょうね。あの子の子供の時もそりゃ可愛かったですし。
「男と女…狭い空間に寄り添って…迷宮などどうでしょうか?」
「なるほど…我が国の迷宮探索をクラリッサと一緒に行ってもらうか……おぬしもワルよのぉ」
「いえいえ、猊下ほどではありませんわ。ホホホ」




