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第7話

「うわっー…すごい!これすごいよっ!」


 聖女さんが大はしゃぎで尖塔のモニタールームを走り回っている。

 あれからアーチェと麻呂姫を天空城に送り、今はハーヴェスト村の尖塔でくつろいでいるところだ。

 さすが電気の町というだけあって、町の夜景は芸術的な模様をさらしている。

 それを見て聖女さんは目を輝かせて眺めていた。


 テンコに聞いたところ、やはり入れ替わりの魔法が使われてるとのことで、こちらのリサさんはやはりクラリッサという聖女さんが肉体に宿っているとの事。

 アーチェや麻呂姫のサーチでは魔力が少なく見えたのは、そう見える魔道具を装備していたらしい。

 で、オレのサーチがそれを見破ったことについては、


「あんたのサーチは特別だからね。あんた、魔力とか力とか数値で見えてるでしょ?それ向こうの世界でそういう環境に育っているからできるのよ。こっちの人たちは少ない、多い、かなり多いとか漠然とした結果しか返ってこないのよ」


 ということらしい。

 数値で見えるオレのサーチは、そういった物をブロックしてる魔道具をスルーしたようだ。


「お兄様…さっそく女の子を連れ込んでいますわね」

「そう言うなよ、VIPな客人だぜ?ちゃんともてなさないとな」

「あのー…もしかしてバレてます?」


 まあバレてるが、


「さあ、なんのことか知らないな」


 とりあえず知らないフリはしとこう。見ザル、言わザル、聞かザルっていうだろ?


「見て、聞いて、言ってるような気もしますがねー」

「ありがとうございます!人体実験をしてるからどんな悪人かと思ってたのですが、以外といい人?」


 なんで人体実験してんだよ?


「だってあれほどの魔力、犠牲無しに作り上げる事など不可能でしょ?」

「犠牲カー、あー、犠牲はなぁ…一応死人は出てないぞ?」

「死ななきゃいいってもんじゃありません!」


 ごもっともで。


「一体どのような手段を講じたのですか?」


 オレはこれまでの事を話して聞かせる。


「えっ、それじゃあ普通に?魔力を使っていただけ?」

「普通かどうかは別として、特別な術とか、怪しい儀式なんてものはしてないぞ」


 そっちと違ってな。その魔力、寄せ集めだろ?

 サーチした魔力の数字、その下にいっぱいカッコで囲まれた数字が出る。


「お兄様を悪人など、どの口がおっしゃるのですか?悪人はあなた達ではありませんか!」

「そ、それは…」

「魔力を他人から奪うということは、間接的に人殺しをしているも同じ、あなたは、前聖女を殺した重犯罪者でしょう」

「言いすぎだって」


 うちの妹様は少々正義感が強すぎるなあ。


「べ、別に死ぬわけじゃ…」

「死にますよ?この世界には魔素が空気中に含まれています。そして魔素は人の体を蝕みます、それを中和してくれるのが魔力の器。それがない人間は…体がモンスター化します」


 えっ?


「魔族をご存知ですか?半人半獣の彼らを。彼らは魔力の器を持ちません、その為あのような風貌と化していまう。そして体を維持するため、魔力の薄い場所では生きていけない」

「そ、それじゃあ聖女様も魔力の濃い地域へいけば…」

「魔族は魔力の器が無い代わりに、魔力を体内に取り込む器官があります。それの無い只の人が行った所で…ただ体の変貌を早めるだけでしょうね。そしてその変貌に耐え切れない普通の人は…死を待つだけです」

「わ、私、そ、それじゃ…」


 聖女さんは大粒の涙を流し、大声を上げて泣き出した。

 暫く泣き続けた後、ぽつりぽつりと語りだす。


「分かっていたんです。覚悟もしていました。こんなに泣くつもりなんてなかったんですけどね…どうもこの取替えの魔法は、移った先の人物の感情に左右されてしまって…」


 そう言って悲しげな瞳を揺らす。なにもかも諦めた、そんな瞳をしている。


「魔力を戻す方法はないのか?」

「テンコお姉さまから力を返していただければ可能だと思います」

「テンコに直接頼むか?」

「あのお姉さまが動いてくれますかね?」


 無理かな?無理だろうなあ。


「えーと、リサ、いやクラリッサだったか、まあどっちもリサでいいか。諦めることはないぞ、前聖女さんはなんとかなると思うから」

「力を返していただけるので?」

「いや、魔力の器がないなら作ればいいじゃないか?」

「は?」


◇◆◇◆◇◆◇◆


 魔素が体に悪影響を与えるというのなら、その魔素を別のもので吸収できればいいんじゃないか。

 そして、それに適したものが、


「ほら貰ってきたぞ」

「これは?」

「魔石の原石で空石というらしい」


 そう、ダンジョンの魔石は魔素を吸収するっていってただろ。


 迷宮の主たちはコレに魔素を集め魔石を作り出しているとのこと。

 そしてこの石はそのまま人間の魔力の器に通じるものがあるとか。

 魔素に体を蝕まれないよう、コレを身につけて魔素を中和してやればいい。

 これを身につけている限りは魔素は人体に向かわず、この石へ向かうはず。

 一応じいさんにも聞いてみたが、まあ大丈夫じゃね?とか言ってた。大丈夫かな?


「もしこれで駄目なようだったらリューシアに頼むかね」

「無償じゃイヤですよ?そうですね、毎晩添い寝してください!」


 お前、今も普通にオレの布団に潜って来てるじゃねえか。


「そ、それじゃあ、聖女様はコレを身につけていれば…」

「普通の暮らしをする分には大丈夫じゃないかな。ただし、この器から取り出さないこと」


 なんでも器がモンスターだと。その器のモンスター、討伐されると只の魔石になるから注意ね。


「こんな大層なものほんとに頂いても?」

「その為に作ってもらったんだからいいよ」

「わ、私、今はこんな姿で大したお返しも出来ませんが、いずれ必ず!このご恩はお返しいたします!」

「そうか、期待して待ってるよ」

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