第6話
さあ、どうしたものか…
お偉いさんに紹介された聖女さんだが、どうも様子がおかしいのでこっそりとサーチしたら、魔力の値がものすごく少ない。
先ほど演説の場で挨拶された人とは別人みたいだ。
まあ、影武者かなんかかなと思っていたら、もう一人紹介された子が演説で聖女として挨拶してた子と同じ数値の魔力だった。
どうやら警戒されて入れ替わってるぽい。
知らないフリをしてたほうがいいのかな?
「あだだだ」
「ちょっとソーヤ、また可愛いからって見惚れてんじゃないわよ」
「やだ、アーチェさんったら可愛いだなんて!」
アーチェと入れ替わってる聖女さんは随分打ち解けているようだ。
「まず、そちらの聖女様、アーチェ様といわれましたな。あなた様の力、少しばかり見せていただいてもよろしいでしょうか?」
「いいわよー、もがっ」
オレは急いでアーチェを羽交い絞めにする。
あぶねえ、何言い出すんだこのハゲ。死にたいのか?
「き、急にどうされましたかな?」
「迂闊な事は言わない方がいいでおじゃるぞ。以前迂闊な事をして町の頭上にメテオを降らしきたでおじゃるからな」
「えっ!?」
真っ青な顔でこっちを見てくる。
「あの時は、この世の終焉を見た」
オレは遠い目をして応える。
「またまたー、そんなの冗談でしょ?」
聖女さんが聞いてくる。
アーチェはすっと目をそらしながら、
「あてなきゃ大丈夫よね?」
「………………」
ちょっと引いてるぞ?
「いやいや、私達は攻撃魔法を見たいのではなくてですね。ほら聖女と呼ばれているならリザレクションなどの伝説の魔法を見たくてですね」
『サンクチュアリ!』
「目がぁー、目がぁぁー!」
オレと麻呂姫はとっさに机の下に隠れる。
「やると思ったでおじゃる」
「攻撃魔法じゃないわよ?」
「オレはあれを攻撃魔法と認識しているのだが」
目をおさえて地面を転がっている人たちをみやる。
ダメージは計り知れない。
とりあえずリザレクションで回復して回る。
「そ、そなたもリザレクションが使えるのか!?」
「ああ、うちの連中は大体使えるけど?」
「そんなバカな!その程度の魔力であのリザレクションが使えるはずが…」
「ああ、リザレクションの威力調整すれば魔力少なくてもいけるよ?」
「………………」
お偉いさんは絶句されておられる。
そういやリザレクションはここの専売特許だったか。
勝手に使ってっていい思いをしてないのだろうなあ。
「なんだったら、その方法を教えましょうか?」
「それは誠ですか!」
お偉いさんが随分食いついてくる。
「それでしたらこのリサにぜひお教え願えせんか。折り入ってそちらの技術をこのリサに教えてもらおうと思っていたところなのです」
リサさんは聖女クラリッサの幼馴染で、魔法の才能はあるのだが、魔力が極端に少なく途方にくれていたとのこと。
「確かに少ないわねぇ」
「そうでおじゃるなあ」
えっ、ちょっとまって、二人には少なく見えるの?えっ、オレのサーチ、バグってんの?
「ええ、魔力が少ないこの子なら、覚えれるものも知れてますでしょうし。勿論報酬はお支払いいたします」
まあ、教えるのはやぶさかではないが、少なくともオレよりは魔力があるわけだし。
◇◆◇◆◇◆◇◆
ふう、うまいこといきましたな。
「教皇様、ほんとうに先ほどのはリザレクションだったのですか?」
「確かにリザレクションの効果だったのだ」
まさかあんな小僧が使えるとは…村人に毛が生えた程度の魔力しか持っていないというのに。
「クラリッサ、大丈夫でしょうか?」
「アステリアの聖女を見る限り、人体に影響のある実験などはしておらんようだ」
最悪、クラリッサの魔力を前聖女に移す手段も講じておるしな。
しかし、このままでは我が教会の権威が失墜するのも時間の問題かもしれん。
私のサーチであっても判定不能な魔力、そこにあれだけの魔法の技術。
クラリッサがその技術を習得してこない限り、我が国の聖女の称号も安泰ではなかろう。
聖女無き教会にどれほどの人が集まることか。
もっと早い状態なら異端として駆逐もできたであろうが…大国アステリアにファンレーシア、その他大勢の国が認めている今となっては。
最終手段は聖女を我が国に…アステリアとは戦争となるやもしれんが、人非道な行いがされているなら、説得して取り込むこともできよう。
「教皇閣下、一つだけ気になることがあるのですが」
前聖女が私に問いかけてくる。
「リザレクションを使っていた男の子…人としての存在が希薄というかなんというか、魔力のなくなった私だからこそ感じられるのですが…」
「ふむ」
「彼は存在そのものが魔力のようなもので出来ているような気がするのです」
存在そのものが魔力だと?
そういえば聖女だけに気をとられていたが…アステリアの王も、ファンレーシアの女王も、気をつけねばならぬのはソーヤという少年の方だと言っておったな…




