第5話
「これ、どうしても行かなきゃダメ?」
「物事を穏便に片付けたいなら行くべきだろうな」
「あら、別に行く必要はありませんわ。むしろ同じ日に特別な催しをして、敵と味方をはっきりさせるのも乙ですわ」
乙ですわ、じゃないよ。
ファンレーシアの女王様は世界戦争でもおっぱじめたいのか。
とりあえずはアルシュラン陛下の言うように顔だけでも出したほうがいいか。
「行くのはオレとアーチェだけでいいんだよね」
「リーシュも連れて行ったほうがいいだろう、ほら、色々とな」
色々ってなんだよ。まあなんとなく伝わるけどさ。
「まかしておくでおじゃる!麻呂がちゃんとリードしてやるでおじゃる!」
不安だなあ…ユーリついてきてくれるかなあ。
「今回は各国の王族が勢ぞろいだ、平民のユーリは連れてはいけん」
マジですカー。
「ちょっと待って、オレだって平民じゃね?」
「まだそんなことを言っとるのか?」
ベルガンディアの王様が呆れたように言ってくる。
あの天空城って国になるのかなあ…
「神帝国は色々と煩い、参加者はソーヤ、アーチェ、リーシュの3名のみだ」
「シュリをこそっと忍ばせれば?」
「うむう、連れて行きたいのは山々だが…あっちは大層な結界が張っているからな。バレれば即戦争だぞ」
それは困る。まあいざとなったら転移魔法で…
「勿論魔石の類も持ち込み禁止だ、唯一儀礼用の刃を潰した剣だけが持ち込みできる。あとな…一応魔法禁止の結界も張られているのだが、お前らには意味をなさんだろう。くれぐれも念を押しとくが、魔法は使うなよ?」
そのセリフを聞いて全員の視線がアーチェに集まる。
「えっ、なに?それって前振り?前振りなの?やっちゃっていいの?」
ああ、こりゃダメそうだなあ。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「いいか、コレは前振りでもなんでもない、本当に使うなよ、絶対に使うなよ」
「しつこいわねー、大丈夫よ!きっと!」
そこできっとはつけないでくれないか。不安で堪らない。
「そういうソーヤこそ大丈夫なの?私はむしろソーヤがやらかしそうで不安よ?」
「そうでおじゃるなあ」
なんでだよ?魔法禁止の結界あんだろ?オレの魔力程度じゃ使おうとしても使えねーよ?
「だといいんだけどねえ」
とりあえず大広間に集まりなんか大層なお偉いさんらしい人が演説をされる。
その次に新しい聖女だという人が出てきて挨拶を行う。
しかし、あの聖女さんまだ子供じゃないか?オレ達と大して年齢が変わらないような気が?
そんなに早く聖女とやらになれるものなのか。まあ、魔力は結構あるようだが…
「ちょっとソーヤ、サーチも魔法の一つよ、使っちゃダメじゃない」
「えっ、そういやそうだな、って、魔法禁止の結界あるんじゃないのか?」
おかしいな普通に魔法が使えてるぞ?
「ソーヤは相変わらず常識が通じないでおじゃるからな。思ったとおりでおじゃったな」
アーチェと麻呂姫は魔法が使えないらしい。どういうことだろう?
まあ細けえこたあいいかぁ。
「全然細かくないけどねー」
お話もおわり、それぞれ2次会場へ向かう。
そこでは色とりどりの食事が並べられていた。
「こいつは豪勢だな」
「神帝国は森や大地の恵みが豊富でおじゃるからな」
オレとアーチェはとりあえず食事にかぶりつく。
マナーもへったくれもありません。
うめぇ!見た目ヨシ、味ヨシ、お値段ヨシ…なんだろなあ、きっと。
「ちょっと二人とも行儀が悪いでおじゃるぞ」
周りの人たちはそんなオレ達に眉をひそめている。
いいんだよ、こうしとけば今後オレ達を呼ぼうって思う人も減るだろ?
「食事は満足して頂けたようでなによりですな」
そこへさっきまで演説してたお偉いさんが寄ってきた。
そのお偉いさんの言うことにはこの後、オレ達と別室でお話がしたいとか。
同じ聖女同士、意見の交換をしたいとか。
また、この神帝国にも5大迷宮の一つがあるので、その攻略についても相談がしたいとか。
言ってることは一見まともなんだがー、こっちを見る目つきが穏便じゃないよな気がする。
どちらにせよ、一旦話し合っといた方がいいかもしれない。
せめてこちらには敵対する意思はないと伝えとかないとな。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「聖女様、ご気分はどうですか」
「クラリッサ、今はあなたが聖女なのですよ」
「あっ、そうでした」
ほんと私に聖女なんて務まるのでしょうか?
そこへリサを連れた教皇閣下が入ってきます。
「クラリッサ、魂の入れ替えの儀式を行う。お前はリサとしてアステリアの聖女の力の源を探るのだ」
「そんなこと私に出来るでしょうか?」
「大丈夫、大丈夫!私と入れ替わるんでしょ?性格もこの性格になるし、クラリッサの頭脳と私の性格が合わされば向かうところ敵なしよ!」
そうでしょうか?
まあ、リサはいつも明るくて誰とでもすぐに打ち解ける子ではありますが。
「あっ、でもねえ、私の体でエッチな事はやめてよ?」
やりませんよ!