第3話
「早いのはいいが…問題ありすぎじゃねコレ?」
街中を縦横無尽に走り回るジェットコースターだが、目的地まで一瞬で着くのはいいのだが、頭はふらふらになるわ、内臓が飛び出しそうだわ、これ小さいお子様やご年配のお方は乗れないんじゃないか?
あと、雨の日とか風の強い日とか危険そうだし。
「お兄様の魂の残滓ではこういった乗り物が流行りだとか?」
「あれじゃない?あくまで残滓だから、インパクトのあるものばかりが残ったんじゃない?」
なるほど、この妹様の常識、オレの記憶に強く刻まれた物を元に作られてるわけか。…まずいんじゃないのか?
「これはなかなか楽しいでおじゃるな!」
「そうね!ねえ、もう一周してみない?ほら、ユーリも行くわよ!」
「えっ、ボクはもうい・」
アーチェ達は随分気に入ったようだが…まあ、遊具のようなもんだから子供には大人気だな。
「ほら3人とも、ソーヤのご両親に挨拶するんでしょ。そっちはいつでも乗れるし、先にこっちを済ませるよ」
メリ姉がアーチェと麻呂姫の襟首を掴み持ち上げる。
なんだかんだでメリ姉もジェットコースターは気に入ったようだ。
後で乗り回すつもりらしい。
「いっそのこと、この町まるごとテーマパークにしたらいいんじゃない?」
「テーマパークですか!?テンコお姉様、その話詳しく!」
また禄でもないことを…
「あら、ソーヤじゃない、やっと帰ってきたの?」
「まったく便りぐらい出さんか」
家の中からオレの両親が出てくる。
手には鍬などを持っている。これから畑を耕しにいくとこみたいだ。
「いやー…そういやそうだな。なんでまったく里帰りしなかったんだろう?」
迷宮攻略とか忙しかった所為か?いやそれでも里帰りぐらいはする時間はあったはず…
「私が帰ってこないようそれとなく」
この妹様の所為か。
「そんなことより、お兄様もなんか言ってあげてください。せっかく新居を作って差し上げたのに、全然移ってくれませんのよ」
「…新居ってあれか?」
オレの家の隣に立派な屋敷が立っている。
築数百年は経ってそうなお化け屋敷のような立派さ。
「苦労しましたのよ、時間を無理やり進めたりして。おかげで私の神パワー大量にへっちゃいました」
なんに心血注いでんの?
中に入ってみると鎧がびっしり並べられて、壁にはおどろおどろしい絵が飾られている。
と、鎧の一つが動き出して…
「紹介いたしますわ。こちら門番のデュラはんさん」
「デュラ」
頭を取って挨拶してくる鎧さん。
「そしてあちらがお手伝いさんの、サキュばすちゃんとヴァンぱいんちゃんですわ」
「ネーミングセンスがさすが兄妹でおじゃるな」
「そうよねぇ」
「そうだよね」
なんでこっち見るんだよぉ。
つかなに?この館モンスターハウスなの?
「今の私に作り出せるのはモンスターだけですしね。もう少し大きくなれば人間も作り出せるかもしれませんが。そのときは協力お願いいたしますわ」
そう言ってお腹をさする妹様。
兄妹で子供は出来ないからな。
「えっ、お兄様の記憶の残滓ではそういったこともありましたが?」
「それたぶん禁断の物語だから」
ほんと碌な物が残ってなかったようだ魂の残滓。
◇◆◇◆◇◆◇◆
そんなある日、尖塔から流れる水で利用して作ったウォータースライダーで遊んでいたところ、村長さんが駆け込んできた。
ちなみに妹様の洗脳だが、全部が全部の人じゃなく、うちの両親や村長さん、ホーネスト先生などは洗脳してなかったらしい。
ホーネスト先生は研究所から出てこないし、村長さんも最近は落ち着いたなぁって見てみぬフリをしていたようだ。
「なにがあったの?」
「外に軍隊が!」
「えっ!?」
なんでもこちらに向かってアステリアの一軍が進行してきているらしい。
なんかやらかしたのかこの妹様。
水着姿でオレの膝の上に座ってアイスを食べている妹様を見やる。
「たぶんアレじゃないでしょうか。この町、今まで私の神の力によって隠蔽の魔法を掛けてましたの。でもその神の力、なくなっちゃったじゃないですか。きっと向こうでは突然得体の知れない街が現れたと」
「なんでそんな重要な事を黙ってるの?」
まずい、至急アルシュラン陛下に連絡をとって、
「とにかく一緒にきてくれまいか。ソーヤ君が顔をだせば向こうも諦めるだろうから」
なんでオレが顔出すと諦めるの?
オレは村長さんに引っ張られて城門へ向かう。
せめて服は着替えさせてくれないかなあ。
「なんだソーヤそんな下着姿で」
「これは下着じゃなくて水着、さっきまで泳いで遊んでいたんだよ」
そこにいたのはフィフス殿下だった。
「水着かふむふむ、水の中で行動が出来るとな。なに!?ユーリもその姿だと!これはすぐに向かわねば!」
「いやいや、どうすんのこの兵隊さん達?」
「おお、そうであった今度はなにやらかしたんだソーヤ」
だから何で全部オレの所為になるの?今回ばかりはオレは関係な…オレの魂の残滓からこうなったから関係なくもないのか?
とりあえずオレは事情をフィフス殿下に話す。
「またぞろ妙な事になっておるな…そしてその妹様は大丈夫なのか?」
「まあ、今は力をテンコに封印されているから…あとはテンコ次第?」
殿下は暫く考え込んだあと、害がないならいいかと呟いた。
「そんなことより、ユーリはどこにおるのだ!」
どうやら町のことよりユーリのことの方が重要なようだ。
アルシュラン陛下、送ってくる人選を間違えてるのではないだろうか?




