SS資金調達編
「えっ、もう資金がなくなってきている?」
アーチェと麻呂姫に話があると言われて会議室に集まったんだが、そこで言われたのが資金が底をつきそうだと。
よくよく考えてみたら、自衛軍に冒険者部隊と結構な大所帯。運営資金だってばかにならない。
だというのにオレたちの収入源は何もない。
今までは、アステリアとファンレーシアの迷宮攻略の報奨金で凌いできていたらしいが、どうやらそれがもう余り残ってないとのこと。
「仕方ない、双方ともいったん解散して、どっか雇ってもらえそうなとこにあたってみるか」
「バカ言ってんじゃないわよ。もっと真剣に考えなさいよ」
「そうでおじゃるぞ、帝王たるものが部隊を持たないなどありえないでおじゃる」
だって帝王なんてなったつもりないしー。もう皆も忘れてる頃じゃね?
それにない袖は振れないぞ。食糧についてはまだまだベヒモスのお肉が余っているだろうが…毎日あればかりはきついだろうし。
お給料だって出さなきゃならないだろ?
「シュリ達みたいになんか商売を始めるか?」
「うーん、確かに私たちの魔法を付与した魔石とかは結構売れるかもねー」
「やめた方がいいでおじゃる、世界のバランスが崩壊するでおじゃる。やはりここは税収アップというものを…」
えっ、税収?誰からもらってんの?えっ、自衛軍や冒険者部隊の人達?えっ、お前らなんてことしてんのぉ!?
ダメだろ!本来こっちからお給料出さなきゃならないのに、逆にお金もらっているとか、クーデター起こされても文句言えねえぞ!
「ちょっと委員長呼んでくる」
オレは急ぎ、うちのブレイン役たる委員長を呼びに走る。
「やはり税収といえば民衆でしょう。この天空城をもっと広げて城下町とか作ってはどうでしょうか?」
「なにぃ!城下町とな!それはよい考えかも知れん!」
委員長…そういやこのお方、生粋の貴族様であらせられたか。
あと、委員長の城下町という発言を聞いて、迷宮のじいさんがすっ飛んできた。
城下町を作りたくてうずうずしておられる。
「これ以上手を広げてどうすんのよ?城下町なんて運営できるの?」
「そこはアステリアかファンレーシアに協力を仰ぎましょう。あ、おじいさん、どうせ作るならこんな町にしたいと思うのですが」
「ふむふむ、良いな!やはり城があるなら町もなくてはな!」
やめようよ、どうやって浮かせるのそんな大きなもの。
今だって8人に魔力分けてもらってやっとなんだから。
「そんなもの、住んでる住人から魔力を巻きあげればよかろう」
「それはいい考えですわ」
「魔石はどうすんのよ?」
「世界にはまだまだ迷宮はごまんとある。そこから魔石を巻き上げればよかろう」
やめてあげようよ。迷宮さんたちも必死で魔石を作ってんだろ?
それを横からかっさらうなんて…
「その横からかっさらった張本人が言う言葉じゃないのう」
おや、これは迷宮幼女さん。その節はどうも…いやー、あれはテンコに脅されて仕方なく…
「おい、その城下町、もちろん機械ステージもあるのじゃろう!」
「シュリもー、シュリも考えるー」
…これは早急に資金調達の方法を考えた方がいいな。
こいつらが実行に移す前に。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「帝王閣下、竜騎軍大将ロックバード、ここに参上つかまりました」
「帝王はやめろな」
「猊下、冒険者部隊総括レミアリティ、ただいま到着しました」
「猊下もやめてね?今日はハゲの係長は?」
「総督は自分が行っても役に立たないだろうと」
…まあ、そうかもしれないけど、考えるそぶりぐらいはしようよ。いいけどさぁ。
とりあえず二人に現状の説明と状況を伝える。
「別に給与など必要はありませぬ。ちょっとそこらへ護衛にでも行けば収入は確保できる故」
「まあ、私たちも迷宮に稼ぎにいけばよろしいですし」
自衛軍は、国からの護衛任務などを請け負って資金を調達、冒険者たちは迷宮に潜り魔石を稼いできてるとか。
「そこの自衛軍、もしかして国と国との争いにちょっかい出してないよね?」
なぜか目を反らすロックバード君。
「迷宮に魔石稼ぎって言ってるけど、他の冒険者の邪魔とかはしてないよね?」
なぜか目を反らす秘書さん。
うん、やっぱり組織としてきちんと運営しないとね。大事にならないうちに。
今後は窓口を一本にして許可制にしとこう。
委員長にでもお願いすれば大丈夫かな?なんか会計士さんでも雇わないとなあ。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「………………」
翌朝、目が覚めると大地が広がっていた。
なんやら恐ろしげな風景となっておられる。
そういや昨日、資金のめどがついたらやんなよって念おしとくの忘れてたなぁ…
いやでも、たった一日で実行に移すなんて想像つかないよね?いや、奴らならやるか。
あと、その立派な魔石たちは何?
「なんか各地の迷宮の主たちが、どうぞお納めになってくださいと来おってな」
「おおかた、お主のようにクレーターにされたくないと思ったのではないか」
「なかなかクレーターに迷宮を作るのも楽しいのにのぉ」
まるでまるヤな人達みたいだな!お前ら脅して回ってないだろうな。
「よし、次は住人集めじゃな」
「今度はどこに脅しに行くか」
「ストップ、ストップ!後はオレがやるから!」
なんだろう、オレの仕事がどんどん増えていく…




