SS新生『望まれる誇り』
「おおっ、これはまた大繁盛してるな」
「新生『望まれる誇り』先月オープンしたばかりじゃ」
クレーターとなった世界最難関の迷宮だが、じいさんとシュリの手伝いによりようやく迷宮として復活する事になった。
「しかしなんだこのドーム球場のようなもんは」
その新しく出来た迷宮だが、クレーターを囲むように高い壁が設置され、天井はドームのように蓋をされている。
その見た目の珍しさか、複数ある入り口は冒険者たちが行列をなして並んでいる。
「ふっふっふ、中に入ったら驚くぞう。さあ、はよう入らぬか」
「あの列に並ぶのカー」
「あっちにVIP用入り口があるわ」
「…あんな目立つような入り口から入りたくありません」
入り口が並んでいる中央、でかでかとVIP用とかかれたネオンサインが。
扉は金色、その回りから色鮮やかな光が溢れている。
誰だよあの入り口考えた厨二病は…
とりあえずオレは普通の入り口に並ぶ。
待つこと数十分ようやくドームの中に入る。
「なんだあれ、売店?」
ドームの中には部屋のようなものがあり、そこには所狭しと売店が並んでいた。まるで空港のロビーみたいだな。
「おおソーヤ、やっと来たのか」
「パパー、こっちこっちー」
遠くでじいさんとシュリが手招きをしている。
オレは二人のとこまで歩いていく。
「この売店はどうしたんだ?」
「準備したに決まっておろう」
「ほら、迷宮で怪我したり、冒険者の適正がなかったりした人にも労働の場を作ってやったのじゃ」
ほう、迷宮が人間のことを考えてくれてるのか。それは嬉しい限りだ。
「わしらは人の為に魔素を集めてやっておる。ならば人はわしらの為にお金を落とすべきだと思ってな」
「しょうばいをはじめることにしたのー」
「うむ、うまいものには金がかかるからのぉ」
なるほど。しかし、商品の仕入れはどうやってんだ?
「冒険者どもの遺品じゃ」
何売ってんのぉ!
「ダメだろそんなことしちゃ」
「ちゃんと許可はとってとるぞ」
「は?」
じいさんは丸い石を懐から取り出す。
「これは生還石といってな、ソーヤの転移魔法に、アーチェのリザレクションを合成して付与したようなものだ」
「これをもってるとねー、死んだときにね、蘇生されたうえに、復活の間に戻ってこれるの」
「ただし素っ裸じゃがな。命を保障する代わりに持ち物を頂くという寸法じゃ」
なんたるあこぎな商売。
「石自体は無料で配っておる。持って行くか持って行かぬかはその者次第じゃ。ソーヤもどうじゃ一つ」
「…一応もらっておくかあ」
「これもってるとねー、気がおおきくなっちゃうのか、無理する人おおいんだよー」
「おかげでがっぽがっぽじゃ」
…やっぱやめとくかな?
「使えるのはわしら3つの迷宮のみじゃからな」
「もちだし禁止にしてるんだけどねー。こっそりもってっちゃう人もいるから」
そういうのはでかでかと配布場所に貼っとけよ?
間違って他で使えると思われたら目もあてらんねーぞ。
世の中説明書読まない人が多いからな。オレも人の事は言えないが。
まあしかし、身包み剥がれるとしても、冒険に命の保障があるってのはいいかもな。
そのせいでこんだけ流行っているのか。
「そんなことより、ソーヤに見せたかったものはこれではない。聞いて驚け!見て驚け!コレが新生『望まれる誇り』の姿じゃ!」
手を引かれて連れられた先には…
「ソーヤの記憶から作り出した、コレが!機械ステージじゃあ!」
いくつもの尖塔がそびえたちその間にはパイプやらベルトコンベアなどが乱立する、近未来ステージの迷宮であった。
なるほど、クレーターを利用して縦横無尽に通路を設置したという訳か。これならば土の中にある必要もない。
そしてドーム上に蓋をすることにより常に夜を演出できる。
これならば普通のダンジョンと同じように明かりの魔法も必要だしな。
あちこちに明滅するネオンサインがいい雰囲気をだしている。
そして極めつけは中央にそびえる機械城。
目指す場所はあの天守閣か。これは只単に下がればいいって訳でもなく、上がればいいって訳でもない。立体的な動きが必要となりそうだな。
なかなか楽しそうな場所じゃないか。
「おおお、こりゃすげえ!つかちょっとまて、今オレの記憶がどうとか言ってなかったか?」
「男が細かい事をきにするのでないのじゃ」
細かくねえよ!なんでお前らは勝手に記憶のぞくのぉ!?
じいさんの迷宮も地上のお城部分はオレの記憶から作り出したらしいし。
まさかシュリまで…
「んー、シュリの迷宮は弟にまかせっきりだからわかんない」
だったら大丈夫か…大丈夫か?
おおっ、モンスターもロボ系か!?
遠くで冒険者が戦闘をしている。
しかしあれ…モンスターが銃を構える、そこから無数の弾丸が…冒険者さんが蜂の巣に…
「お、さっそく遺品ゲットじゃな」
「難易度高すぎじゃね?」
「うむ、そうじゃのぉ、調整は今後の課題じゃのう。なかなか攻撃パターンが多彩で冒険者どもも戸惑っておるからなぁ」
と、冒険者さん達もやられてばかりでなく、ロボに反撃を加える。
ロボから血しぶきが…えっ、血しぶき?
「さすがに中身まで機械はむりじゃった」
「あのすがたで機械なんてうごくはずないよねー」
「なので、ロボの姿をした普通のモンスターじゃ」
見た目だけかよ!




