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アイ・ファンタジア  作者: ぬこぬっくぬこ
第三部◆攻略せよ!異世界迷宮!!◆
42/90

第十二章 オレ達の冒険はこれからだ!?

◆◆◇◇  視点変更◇ソーヤ  ◇◇◆◆


「ソーヤ君、ファネスとシルシィを見なかったかね。昨日出かけたっきり帰って来ないのだよ」

「え、ファ達が?どこ行ったんだ。おいアーチェ、そろそろ手を離せよ。にまにますんなって」

「えー、もうちょっといいじゃない。ソーヤったらほんとテレ屋さんなんだからー」


 うるさいよ!ほんとにもう祝福のなんたらは勘弁してください。心がまる見えってどうなんよ?どうしてこれが祝福なんよ?

 じいさんが持ってきた祝福のリング、なんでも、オレがアーチェの魔力を使えるようになるとか。で、使ってみたらコレよ?

 つーか、これだけ魔力あんなら、別に転移魔法じゃなくて普通に気流操作でいいじゃね?そう思って、オレはアーチェに気流操作を教えてるとこだ。


「しかし二人とも転移石持ってんだろって、そのうち帰ってくるじゃ」

「あ、お父様、そういえば昨日、幼女を連れてアステリアの迷宮に向かうって言ってました」


 幼女ってアレか?ここの迷宮の?

 しかし、アステリアか…あっちだと転移石も意味無いか。まあ、あの幼女連れてんなら大丈夫だとは思うが。


「ちょっくら見に行ってくるか…」


 と、いう訳でやって来ましたアステリアの迷宮『最も深き豊穣』。しかし、またしてもやってしまいました。

 …どうしてオレは一人で来たんだろう?

 転移魔法の便利さにすっかり忘れてたが、アステリアからパルテニアスまで飛べねーよな。せめて外に設置してくるんだった…

 アレだな、よくネトゲで、始まってからアイテム持ってくんの忘れたとかいうやつだな。違うか?

 つーか、まじでヤバイ。切れる!オレの魔力切れちゃう!隠蔽解ける前に脱出せねば!!

 と、そこへ冒険者風の二人組が。良かった、あの人たちに助けをって、あれ、どっかで見たような…いつぞやのアサシンさんとファイターさんじゃねえか。やべえ、こんなとこで見つかったらやられちゃう。


「おや、そこにいるのはソーヤではないか」


 そういやこの隠蔽魔法、モンスターにしか効いてなかったんだっけか…


「いやー、今日はいいお日柄で…」

「迷宮の中でお日柄もどうもないであろう?」


 ごもっともで。


「そんなにびくびくせずともよい。誤解はきちんと解けた」

「そうだ、聖女様を巻き込まぬ為に、単身モンスターの波に立ち向かうなど、我々はお主のことを誤解しておったようだ」

「うむ、これまでのことは深く謝罪する」


 そうか、誤解は解けたのか。それは良かった。本当に良かった。これで枕を高くして寝れるな。


「ところでお二人はなぜこんな浅い階層で?」


 二人とも高レベルの冒険者だし、こんなとこでやることなんてないはず?


「うむ、クリスに頼まれごとをされてな」


 クリスってーと、委員長の妹さんのことか?


「なんでも祝福の小石を集めて来いとな」


 …今度はどんなオチだよ?


「祝福の小石とはな、このような浅い階層のモンスターの魔石が、拾われることなく迷宮に残り、自然と魔素が抜けきった石のことをさすのだ」

「浅い階層のモンスターと戦うものは大概初心者だ、どんな魔石であろうと大切に拾って帰る。そして一旦外に出れば空気中の魔素を吸い込み抜けることはなくなるのだ」

「大抵、よほど慌てての取り忘れか、相打ちか…どっちにしろあまり無い物でな。それを偶然に見つけるとは幸運だということで、祝福の小石と呼ぶようになったのだ」


 へえ、で、その使用用途は?


「うむ、これがな、一旦抜けきってしまうと、どんなに魔力を込めてもすぐ抜けてしまう魔石になってな。これに毒魔法などをしこませ、枕元におけば…暗殺の痕跡なく完全犯罪の完成だ」

「何に使ってるのぉ!」


 由来はともかく、使用用途がとんでもないな!


「おい、それでいったい何するつもりなんだ!?」

「そこまでは聞いておらぬな。まあ、あやつなら悪い事には使わんであろう。さっきのはあくまで一例だ」


 こわいよ!その話を聞いた後だと、とてもいいように使うとは思えない。


「ところでソーヤこそ、たった一人で迷宮とは、どういう風の吹き回しか」


 アサシンさんが聞いてくる。そこでオレは事情を説明し、


「ふむ、幼女を連れた二人組みの女の子か、会ったぞ」

「えっ、どこで?」

「迷宮の入り口でな。なんでも上に向かうとか言っておったぞ」

「上?」


 上ってなんだ、もしかして迷宮じゃなくてお城の見物に行ったのか?だったらもう帰って来ててもいい頃じゃ…


「そういえばお主は暫くここを離れておったのだったな」

「お前のお城、迷宮になっておるぞ」

「ええっ!」


 じいさん、城の中まで迷宮にしたのか?


「今のこの迷宮は、地下87階層、地上20階層の100階層以上の迷宮に」


 そりゃまたスケールのでかい…


「しかしその3人、上に向かえたということはそこそこできるのであろう」


 ふむ、確かに。ファが前衛、シルシィが後衛、迷宮幼女がスカウト役か…結構バランスとれてんな。というかその3人、余裕で迷宮攻略できんじゃね?


「なんで、上に向かうとできると分かるの?」

「入り口ではじかれるからな。上はここの81階層以上のレベルだ。少々の能力では2階に上がってすぐアウトだ」


 …じいさんよぉ、一つ上がったらいきなり最高レベルはねえだろよぉ。どっかのくそゲーかよ?


「というか入り口で説明されるはずだが?」

「ああ、オレ隠蔽魔法でスルーしてっから」

「…入り口ぐらい普通に入れよ」


 だって、オレ一人だと通してもらえないしな。


「それで、一人で来てるの後悔してりゃ、世話ないわな」


 ごもっともで…


「よし、我らも石拾いには飽きて来たとこだ。一緒に探してやろうではないか」

「万が一があってもまずいしな」


 マジで!それは助かる!

 そして、受付を通り、お城の2階層に来たのだが、


「なにあの鬼武者、すっげーつええ」


 そこに現われた鬼の仮面をかぶった武者が強いのなんのって。一流のファイターさんが手をこまねいている。


「いきなりボスクラスか?また例のスキルか?」

「何を言っておる。あれはこの階層の雑魚クラスだぞ」

「えっ!?」


 アレが雑魚?こないだのモンスターどもの中でもこれほどの敵は居なかったぞ?


「今のとこ、誰一人、3階層に上がれた奴は…」

「なんて難易度だよ!」


 じいさん、攻略させる気ないなこりゃ。

 なんとか3人で鬼武者を倒す。雑魚一匹倒すのに20分くらいかかったぞ。


「こんな奴がぞろぞろ居るの?」

「ぞろぞろは居ないがな。基本部屋がくぎられておるから、数は少ない。まあ同時に出ても4、5体と言ったとこか」


 アサシンさんがそう言う。


「そんだけ同時に出たら詰むがな。2体で精一杯だなこりゃ」


 ファイターさんがそう答え、


「まあ、一体でもここの上位固体、夜叉が出たら手に負えんがなあ」


 そう付け足す。


「夜叉って?」

「手が6本あって、魔法まで使ってくる。俺とクリードの二人掛かりでも撤退を余儀なくされた」

「何度か交戦して、経験をつめば分からぬが…その前にこっちが死にそうであるしな」


 あの3人大丈夫だろうか?


「つーか、そんな難易度なら誰も挑戦しないだろこんなとこ」

「そうでもないぞ。なにせここの迷宮を攻略し、天守閣に到達できれば」


 できれば?


「なんでも帝王ソーヤとかいう者が、どんな願いでも叶えてくれるらしい」

「………………」


 誰だよその帝王?もしかしてオレじゃねえだろな?




◆◆◇◇  視点変更◇シルシィ  ◇◇◆◆


「ちょっと誰よ、わらわが居るから、モンスターが襲って来ないのじゃって言ってた奴は!」

「そ、そんなはずはないのじゃ。ほーら、怖くないのジャー、わらわは主らのご主人と同じじゃぞー。イダー!わらわは食べるのは好きでも、食べられるのはイヤなのじゃー!」


 なにやってんだか…


「ほら二人とも、遊んでないでちゃっちゃとやっちゃってよ」

「そうは言うけど、なかなかの強敵よ。魔刃剣がなければ倒せないような奴ね」


『魔刃剣・閃!』


 そう言って一瞬で間合いを詰め、真っ黒な犬の胴体を輪切りにするファネスお姉ちゃん。


「ほら大丈夫?うわっ、ちょっとこっち寄んないで、涎が…」

「ひどいのじゃ!身を挺して敵の動きを止めたわらわに向かって!」

「身を挺してというか、自滅しただけじゃ…」


 それにしても結構たったっちゃったなあ…、なんとか昨日一晩はこの幼女のおかげで、隠蔽かけて眠れたけど。

 外泊するなんて始めてかも…神父様心配してないといいけど。


「ねえ、やっぱり戻らない?いくらなんでもみんな心配してるんじゃないかな」


 ファネスお姉ちゃんがそう言ってくる。そうだよね。でもね、


「ダメだよ!帰ってここのことがソーヤ兄ちゃんに知られたら、きっとあのルール変更されちゃうよ?」


 そう、この迷宮にはあるルールがある。それは…迷宮を攻略し頂点まで上り詰めたら、なんと!ソーヤ兄ちゃんがなんでも言うこと聞いてくれるんだよ!

 なんにしようかな…やっぱお嫁さんかなぁ。あ、でもそれはファネスお姉ちゃんが先かな?


「そうじゃそうじゃ。わらわはソーヤに、一生涯おしいものを作り続けてもらうのじゃ」


 それは聞いてくれるかなぁ…この幼女の一生涯ってどんくらい?たしか数万年生きてるんだよね?

 あとなにげにそのセリフ、プロポーズっぽいね。この子もソーヤ兄ちゃん狙ってるのかな?


「いいお姉ちゃん、これはチャンスなのよ!誰にも文句を言わさずソーヤ兄ちゃんのお嫁さんになる!」

「そ、そうなの?お嫁さん…お嫁さんかぁ…」


 そう言ってにまにま笑うお姉ちゃん。あいかわらずちょろいよね。


「しかし、このままじゃと何日かかるやも知れぬな。一日でたった一階層。しかも2から3階じゃ。上になるにつれもっと時間もかかるじゃろう」

「たしか受付の人は、20階とか言ってたよね?最低でも20日かあ…」

「さすがに何も準備してないこの状況で、何日もは無理よね。転移石も使えないし」


 そうだよね。やっぱり無理かなあ。一旦帰って準備して来るとか?


「どっかに隠し通路とかないかなあ。上まで直行できるやつ」

「それじゃ!あやつならきっと作っておるはず!せっかく作ったお城、きっと自分だけ上まで行ける直通通路があるはずじゃ!」


 ドラゴンになれるんだし、空から上に行けるんじゃないの?


「そんなもんは迷宮のプライドにかけてやらんであろう。ただ高いとこに行きたきゃ、普通にドラゴンになって空から眺めればよかろう。お城は昇ってこそなんぼのもんじゃわい」


 直通通路も一緒だと思うんだけどなあ。

 そう言って周りをキョロキョロと見回す迷宮幼女。


「たしか、地下の方は天井に設置しておったのじゃったかな」


 迷宮幼女は天井に張り付き、あちこちを叩いている。

 しかしこの子、見た目はほんと人間みたいだけど、モンスターなんだね。羽も無いのにフワフワ浮いてるし。さっきも普通の人なら一噛みで死んじゃいそうな奴に、ガブリといかれても平気な顔してるしね。


「ギャー!なんじゃ吸い込まれるぅ!」


 と、天井に吸い込まれそうになっている迷宮幼女が!

 私とファネスお姉ちゃんは、慌ててジャンプして幼女の足にしがみ付き、


「ギャー!痛いのジャー!伸びるのジャー!!」

「ちょっ、私たちまで浮いて…なに!?吸い込まれる!」


 私達は一緒に天井に吸い込まれて行きました。




◆◆◇◇  視点変更◇ファネス  ◇◇◆◆


「ここは…?」

「どうやらここが隠し通路のようじゃな」


 ここが隠し通路?なんだか真っ暗でよく見えないな。


「ねえ、シルシィ、明かりの魔法は?」

「うーん、さっきからやってるんだけど、全然つかないの」


 シルシィがそう言う。シルシィでもダメってことは別に私の魔力が低いから点かないって訳でもないんだね。


「そうだ、ファネスお姉ちゃん、例のレインボーは?」

「シルシィだっても持ってるじゃない。いいけど」


 私は天羽々斬を抜き、防御結界を発動させる。


「ダメだねー。虹色しか見えないや。というか、その虹、体から発しられてるんだね。ファネスお姉ちゃんのプロポーションが丸見え」

「ええっ!?ちょっとこっち見ないでよ!」


 もしかしてこの子、それを見越して私に?まさかね?


「いいなー、私にもそれくらいあればなあ…」

「なにがよ?あ、言わなくていいから」


 ほんとこの子は。


「仕方ないのじゃ、わらわに掴まるとよい。ちょっ、髪はやめるのじゃ!痛いのじゃ!」


 あっ、ごめん。小さいからほかに掴むとこが…


「ちっさいゆうな!わらわだって、わらわだってぇ!あのようなことにならなければ!びっくりぐらまーなのじゃぞぉお!」


 いや、私はそっちが小さいと言った訳じゃ…

 それにしてもこの子、この暗闇の中、私達の手を引いてまったく迷わずに進んで行く。


「ねえ、あなた本当にあの迷宮の本体?」

「何じゃ今更?わらわはこの世界の誇り、迷宮『望まれる誇り』その者じゃ」


 なんだか未だに信じられない。迷宮に意思があって、話ができるなんて…


「あの、一つ聞きたいんだけど…」

「なんじゃ?」

「5年くらい前に、私のパパとママが…」

「すまぬが、わらわは迷宮の管理をしておる訳ではない。中で何が起こっておるかは分からんのじゃ」


 そうなんだ…今回のモンスターとの戦闘で、全員迷宮から脱出させて、すでに誰も居ないことも確認したんだよね…じゃあ、やっぱり…


「そう落ち込むでない。お主の両親は冒険者なのであろう?最初から覚悟はしていたはずじゃ。覚悟も無い者が冒険者などにはなれぬ。お主の両親は誇り高く、冒険者として生涯を全うしたのじゃ、残されたお主が誇らぬで、いったい誰が誇るのじゃ」

「冒険者の誇り…かぁ」

「でもソーヤ兄ちゃんなら、誇りより生きて何ぼって言いそうだね」


 言いそう。


「あやつは冒険者ではない。傍観者じゃ。おっ、うまいこと言ったのではないか、わらわ」


 ソーヤが傍観者?


「そうじゃ。あやつは冒険をする為に迷宮に来てはおらぬ。冒険の雰囲気を楽しむ為に迷宮に来ておるようだ。それこそゲームか何かのようにな」

「ソーヤが?そう言えば緊張感も何も無いような気も」

「うむ。普通ならばそんなやからは即効お陀仏なのじゃが。なぜかあやつは平気で生きておる」


 そういえば、私も冒険者なんていつ死ぬか分からない、常に危険と隣り合わせて生きていかなければならない職業だと思ってたけど…ソーヤと一緒に迷宮行くようになって…すっかり危険も何も無いような気に…


「ほんに変わった奴よ。それが良いか悪いかは別にしてな。世界の常識を塗り替えおる。誰も死者の出ぬ迷宮探索など、ゲームと同じじゃ。おっと、お主ら人間にこのようなことを言えばヒンシュクを買うか?」

「誇りある者が冒険者、それ以外はただの傍観者か…」

「そこまでは言わんがな。あやつにもあやつなりの誇りは持っておるようじゃしな」


 そうだよね、自分の命を犠牲にしてまでその世界を守ろうとしてるんだ。誰も死なない世界を。それがきっとソーヤの誇りなのかも。


「ねえ、迷宮はなぜ、人を飲み込むの?いったいなんの為に迷宮ってあるの?」


 シルシィが核心を突くようなことを聞く。


「別に迷宮は人の為にある訳でも、モンスターの為にある訳でもない。われらの目的は唯一つ」


 迷宮の目的?


「神の石の作成じゃ」

「「神の石!?」」



◇◆◇◆◇◆◇◆


「神の石ってなに?神様でも生まれるの?」

「なんでもそれを作れば、世界を作り直すことができると言われておる」

「「ええっ!?」」


 世界を作り直す?どういうことなの?


「神の石を作り出せれば、己が好きな世界を。それこそソーヤが前世で居たとする世界でも、誰も死ぬこともない世界でも、悪鬼が跋扈する世界でも、好きな世界を作り出せるのじゃ」

「そんな石が…それは魔石を加工するの?」

「いや、魔石そのものが神の石となる。われらはその為に世界中から魔素を集め、魔石を作っておるのじゃ。その魔石を横取りしようとする人間など敵以外の何者でもなかろう?」


 そうだったんだ。と、いうことはほっとくと世界が勝手に変わるってこと?


「そこに居た人達はどうなるの?」


 シルシィが迷宮幼女に聞く。


「どうなるのじゃろうな。ただ居なくなるだけじゃなかろうかな」

「それって死ぬのと同じ事じゃ…」


 迷宮が神の石を作り出すと、世界中の存在が死滅するってこと?


「そうとも言えるじゃろうなぁ。分かったか、われらとおぬしらは決して相容れぬ存在であるのが」

「ね、ねえ、あなたは一体どんな世界を作ろうとしているの?」

「わらわか?…どんな世界であったのじゃろうなあ。人間どもに魔石を奪われるのが悔しくて、せっせと迷宮を改良しているうちにすっかり忘れたわ」


 えー、何の為に魔石作ってんのよ?


「もし今、神の石とやらを手にしても、案外、今と同じ世界を望むかも知れぬな」


 ほんと意味無いじゃん!


「お、そうこうしてる内に着いたようじゃぞ」


 闇の隙間から光が溢れ出してくる。

 そこには…


「うわぁ…すごい!部屋が金ぴかだ!」


 部屋の中がきんぴか。そこに色々な物が飾ってある。


「趣味が悪いのぉ」

「すごーい!アステリアの街が一望できるよー」

「ほんとだー!すごい眺め!」


 天守閣の周りには、アステリアを一望できるテラスが。

 どこまでも広がるその風景は、まるで世界を手にしたかのような錯覚が。

 ソーヤと一緒に見れたらなー。


「おーこりゃ絶景だなー」

「あれっ!?ソーヤ!」


 隣を向くとそこにソーヤが!私の夢が現実になったの!?


「ああ、なんか、体が光り出したかと思ったら急にこんなとこに」

「うむ、一瞬あせったぞ、自爆でもするかと」

「しないよ!」


 そこにはソーヤと一緒に、二人の男の人が。


「どうやら迷宮攻略者が現われたら、ソーヤが呼ばれるようになっておったみたいじゃの。その二人はついでじゃろ」

「そんなことできんのか!…そういや、オレの転移魔法も元々迷宮にあったやつを解析したんだっけか」


 と、いうことは、これでも一応、迷宮攻略したことになるの?


「それでは私は聖女様の側近に」

「俺は聖女様の筆頭近衛兵に」

「なに?なんでそんなことオレに言うの?」

「お主が願いを叶えるのだろう?」

「やっぱりかよ!つーかあんたら攻略してねーだろ!」


 ま、まあ私達も同じようなもんだし…


「ソーヤ!わらわには一生涯おしいものを作り続けるのじゃ!」

「無茶言うなよ」

「ソーヤ兄ちゃん。私はねー、ずーと一緒に居たいな」

「シルシィはいい子だなー。なんでみんな無茶ばかり言うんだろな」


 ソーヤはシルシィの頭をなでる。でもねその子、ずーと一緒って…言い方はかわいらしいけど、それ、嫁にしろと言ってるのと一緒よ?


「ほらお姉ちゃんも」


 シルシィは私にそう言ってくる。いいのかな?いいんだよね?


「あ、あのね、そのね、私はね、そのー、ソーヤのね、およ、およめ…」


 ううん違う、そんなのは、こんなずるしてなるものじゃないよね。私は…


「ソーヤ!私と戦って!!ソーヤの本気で相手をして欲しいの!」



◆◆◇◇  視点変更◇ソーヤ  ◇◇◆◆


 ええっ!またこのパターンかよ!なんでみんなオレを攻撃しにゃきゃおれないんだ?


「お願いソーヤ、私だってソーヤの為に何かできるってことを知ってほしいの」


 いやいや、十分ご存知ですよ。

 ほんとファはよくやってくれている。モンスターの戦闘の時も先陣を切って戦ってくれてたし。

 あと何かってーとオレを守ってくれる。


「私なんて全然ソーヤに敵わないかも知れないけど…それでも、私という存在を知ってもらいたいの!」


 そういやファってオレが弱いってこと知らないんだっけ…


「ソーヤ、おなごが一大決心をして自分を知って欲しいと言っておるのじゃぞ。まさか受けぬなどということはあるまいな」

「そうだぞ、ここで男をみせずしてなんの人生か!」


 迷宮幼女とアサシンさんが言ってくる。

 そんなこと言ったってオレがみじん切りになっちゃうよ?


「仕方のない奴じゃな。よし、わらわが一肌脱ごうではないか!」


 その瞬間、世界がセピア色に!?


「仮想空間を作ってやったぞ、この空間では体に一切傷はつかぬ。頭の上のゲージが無くなれば負けということで良いじゃろ」

「なんかカクゲーみたいだな。これなら問題ないか…?」


 ファが剣を構える。大丈夫だよな?ほんとに大丈夫だよな!?あいつの剣、神剣なんだがほんとに大丈夫だろな?


「しつこいやつは嫌われるぞ、ほら始め!」


 ファが突っ込んでくる。オレはとっさに避けながら、


「イデーッ!なんだこれ超イテーぞ!」


 避け切れなくてサクッといった。


「リアル感を持たす為に痛みは残しておいた」

「そんなリアルはいらねー!痛みだけでも人は死ぬんだぞ!」

「そうでもせんと、おぬしは本気にならんじゃろ?せめて本気は出せ。その者は己の誇りを掛けて戦っておるのじゃぞ」


 くっ、こいつ。サクッと負けようとしたオレを見破ってやがったか。

 だが、こいつの言う通りだな。おおかた、全力で向かって来ているファに、顔向けができなくなるとこだったな。

 よし、オレも本気を…あれ?オレ素手なんですが?転移に頼りっきりでクロスボウすら持って来てないぞ?


「ほんに脇の甘い奴じゃのう。迷宮に行くのに素手とか…それで攻略されたわらわは…泣きたくなって来たのぉ」


 泣きたいのはこっちだよ!

 ファが次々と斬撃を加えてくる。


「さすがソーヤね、私の攻撃をことごとくかわすなんて…剣聖様でもこうはいかないわ」

「うむう、あの素早さで、器用にかわすのぉ」


 感心してないで何とかしてください。オレの全力って何すればいいのよ?

 と、ファが腰に力を溜めだす。

 まずいぞ、何かする気だ。オレの全力って逃走でもいいのかな?


「良いわけないじゃろ?」


『魔刃剣・散!』


 すると、ファから前方一面に無数の剣撃が迸った!




◆◆◇◇  視点変更◇迷宮幼女  ◇◇◆◆


 ほう、すさまじいのう。ソーヤごと後ろの壁までずたずたじゃな。

 これじゃ、さすがのソーヤも…ん?


「くー、いってえ。おいこれちょびっと残ったぞ。今の完全に終わってるだろ?これ細工してないか」

「ないない。かっこうそ」

「うそとか言いやがったなてめえ!」


 いやまあ、ほんとに細工はしておらぬよ?あの斬撃で致命傷を回避したか。こやつ一応リザレクション使えたのじゃな。本当の戦闘ならこれはどうなったか分からぬな。なにせファネスは、


「くっ、私の全力が…さすがソーヤね。ことごとく急所は避けて」


 今にも倒れそうなくらい疲労しておる。


「今度は今の倍、ううん3倍!」


 それでもさらに力を溜める。


「その状態でまだやる気か?うーむ…」


『アポカリプス・エクステンド!』


 なんと!ファネスに補助魔法だと?

 ソーヤがファネスに補助魔法を掛ける。


「どういうつもりソーヤ?」


『インビジブル・ファースト!』


「えっ、ソーヤが消えていく…これは隠蔽魔法!」


 なんじゃあやつ、こそこそと壁の方に向かって、まさか逃げる気じゃあるまいな。


(おい、こっち見んな。場所がばれるだろ!)


「何を言っておるのじゃ?」


(オレはいま人間にしか効かない隠蔽魔法かけてんの!)


「はっはっは、そんなものあるわけないじゃロー」


(あるんだよ!あっ、やべっ)


「そこねソーヤ!」

「ほらお前がじっと見るからバレただろが」


『魔刃剣・散!』


 ファネスから再び無数の剣撃が迸る。今度はさらに緻密に、広範囲に!

 と、城の一角が吹き飛ぶ!


「まずいな、崩れるぞ」

「わらわの傍によるのじゃ」

「くっ、天井が落ちてくる!まさかこれを狙って!?『神剣・天羽々斬!』」


 ファネスから虹色の防御結界が展開される。

 そして、轟音と共に天井が崩れ落ちて来た。


「ファ、お前の防御結界な、一つだけ欠点があるんだわ」


 すべてが崩れ落ちたその後、立って居たのは、


「それは自分が防御するものを選ぶってとこだ。物理的な防御でない分、自分に危機が無い物は素通りしてしまう。今のオレのようにな」


 立っていたのはファネス、じゃがその後ろにはソーヤがファネスの首に手刀をあてておった!


「転移魔法でファネスの防御結界の中に転移したか…攻撃をかわすと同時に防御に入るか、あの咄嗟の場面であそこまで…」

「見えたのか?」

「目はいいほうでな」


 アサシン風の男がそう呟く。


「ゲージは減ってないが、もう十分だろ。お前の力しっかり見せてもらったよ」

「ソーヤ…私、私こんなんだけど、傍に居てもいい?」

「もちろんだ!むしろ今一番傍に居て欲しいのはファ、お前だ!」

「ええっ!」


 なになに、ファネスが唯一言う事よく良く聞いて、無茶もしない。誤解さえ解ければきっとオレの大戦力だだと。お主、女心をなんと思っておる。


「心を読むなよ!」


 まあ、それ以外でもちゃんとファネスのことも想っておるか。


「だからやめてください…」


「なんじゃこれはーッ!!」


 そこへこの迷宮の主が下から昇って来た。


「天井がぁ!天井が無いぞぉー!!」

「うむ、この大空がすべて天井だ」

「なんか迷宮が壊されておると思ったら、何やっとんじゃー!」


 ま、まあ、落ち着くのじゃ。これはわらわの仮想空間、現実はなにも問題は…


「お主、空間を解いてみよ」

「ふむ」


 わらわは仮想空間を解いた、そこには、先ほどと変わらぬ色のついた風景が。


「おかしいのぉ。たしかに仮想空間の出来事のはずじゃが?」

「その空間ごと切り裂いたのじゃろう」

「さすが神剣じゃのう。はっはっは」

「笑い事じゃねー!それ一つ間違うと、オレもこの風景の仲間入りだろが!」


 と、そこへぞろぞろとソーヤのパーティーメンバー達が上がって来た。


「なにこれー、おじいちゃんてんしゅかくはー?」

「眺めはいいわねー。すっきりして」

「このゴミじゃまでおじゃるな。ふっとばすでおじゃるか」


 三者三様じゃのう。確かにこやつらに比べれば、ファネスは女神さまかものぉ。

 しかしすべては、ソーヤから生まれたもの。


「ようし決めた!ソーヤ、お主をわらわの魔石とするのじゃ!」

「は!?」


 そう言うとわらわはソーヤを掴み、上空へ逃げる。


「お父様!」


 シュリがフェニックスに変わる。


「おっと、動くでないぞ。何かすればソーヤに当たるぞ」

「お主も学習せぬのぉ。ソーヤに手を出すと痛い目にあうのは自分じゃぞ」


 アステリアのがそう言ってくる。じゃがな、


「忘れたのか我らの主命を!我らが何の為に存在しておるか、その意味を!」

「なんじゃと!?」

「わらわは神の石を作る、このソーヤを元としてな!」

「人間を元に魔石を作る気か…!?そのようなこと!」


 できるかどうかは分からぬ、じゃが試してみる価値はあると思うのじゃ。

 ソーヤは常に世界の常識を塗り替えて来ておる。こやつから魔石が取れれば、きっと世界を変えることのできる。そう、神の石が手に入るはずじゃ!


「なんだよ神のいしって?いしならもう持ってるじゃないか?」

「「「は!?」」」


 どこに持っておるのじゃ?


「いしだよいし、意識の意に、思想の思。意思、もう持ってるじゃないか?」

「いやわらわが言っておるのは…」

「お前達、テンコと同じような存在なんだろ?神様側の。それが迷宮として存在して、力を蓄えれば意思をもつ。そういう意味じゃねえの?」


 なん、じゃと…


「ちょっ、ちょっと待つのじゃ、それじゃ何の為に迷宮にこもって魔石を…?」

「別にこもって魔石作る必要ないんじゃないの?シュリもそこのじいさんも外で自由にしてるぞ?」

「か、神の石を手に入れた者は己の世界が作れるのじゃ!」

「意思を手にした時、それは己の世界ができたってことじゃね?」


 なん、じゃと…


「お、おい、アステリアの!お主、最古の存在じゃろ!神の石は!」

「ううむ、わしも物心ついた頃には…しかし、意思と石か…たしかに発音は同じじゃの。われらは魔石に気をとられすぎて、石だと思い込んでおったのかも知れぬな」

「そうですわね…実際、神の石など、かの魔境の迷宮ですら完成してませんもの」


 そ、そんな…ならば、わらわはなぜ今まで躍起になって冒険者どもの相手を…


「そもそも作りたい世界も思い浮かばんしな。つーか世界なんて無理じゃろ?」

「ええ、私もそんな物などすっかり…それに、たとえ作ったとして、その後どうなることやら」

「お主には作りたい世界などあるのか?世界を創造できるほど全てを知っておるのか?」


 わらわは…

 と、ソーヤがわらわの顔に手をあてて、


「なんか知らねーが、問題は解決したんだろ?コレまでのことはコレまでのこと、ほら未来志向ってよく言うじゃないか。だから降ろして」

「ほんと、おんしは…」


 なんか考えるのがバカらしくなって来たの。


「ソーヤ」

「なんだよ」

「わらわはこれから、ずっとおぬしに憑いていくぞ」

「字が!」




◆◆◇◇  視点変更◇ソーヤ  ◇◇◆◆


 ふう、最後にひと悶着あったが、無事に済んでなによりだ。さっそくファの誤解を解いとかないとな。


「おやソーヤ、このようなとこにおったのか。しかし、これはまた…」


 そこへアルシュラン陛下達が昇ってくる。

 つーかお前らどうやってここに来てるの?


「ん?天守閣への直通通路だが」

「え?そんなもんあるの?何でみんなオレに教えてくれないの?」


 いじめなの?ハブにするにも程があるよ!


「ソーヤお兄様、探しましたわよ」

「クリスではないか。ほら、祝福の小石だ」

「ありがとうございますわ」


 委員長の妹さんがアサシンさんから小石を受け取る。

 …それいったい何に使うんだよ。


「これですか、もちろん結婚式のギミックですわ。魔力が消える性質を使って色々なイルミネーションができますのよ」


 そうかー、それは平和な使い方だなー。聞かないぞ、誰の結婚式か聞かないぞ。


「式は来月の6日を予定してますから」


 そう言って一枚の紙を差し出す。


「うぉい!なんでお前のまであんだよ!」


 そこにはオレと妹さんの婚姻届が!


「ついでなんで。7より8の方が数字がよろしいでしょ?」

「そう言う問題じゃねえ!」


 そこへ麻呂姫が、


「そうでおじゃるソーヤ、自衛軍についてなのじゃが」


 横からそう言ってくる。


「自衛などと名前がついておるからダメなのじゃ。平和維持軍にせぬか?」


 …平和維持するほうが侵攻しちゃだめだろ?


「さすがファネスお姉さまですわね。天守閣が粉みじん。一緒に頑張った甲斐があります」

「うん、セイカちゃんのおかげで私も強くなれたよ!」


 もうそれ以上はカンベンな。


「あと4年…あと4年…」


 なんだか最近、ユーリが怖いんですが。


「ちょっとソーヤ、なにあんた、私よりファネスの方がいいとか思ってない?」

「お前、それ持って来たんか。つーか人の心覗くなよ!」


 誰だよアーチェにこんなもん持たせたの。例の祝福のリングを通してオレの手を握ってくる。


「おお、そういえば言うの忘れておったわ」


 アルシュラン陛下が急にそう言い出す。

 良いのよ、忘れたままで。


「いつまでも、家名がアステリアのままではまずいのでな。ソーヤ達の家名を変えたのだ」

「いつだよ?つーかそれ、オレの名前だよな?なんでオレになんの相談もないの?」

「うむ、大層良い名前にしておいたぞ」


 聞けよ!ほんと、どいつもこいつも。


「その名もアイ・ファンタジアだ。なんでもパルテニアスで、この幻想的な世界は、オレの作り出した世界だって言っておったと聞いてな」


 そんなこと言ったけかなぁ?


「そこで帝王らしく、この幻想的な世界はオレの物だって意味で」


 ヤだよそんな家名!




◆◆◇◇  視点変更◇テンコ  ◇◇◆◆


 また、面白い事になってるわねぇ。ソーヤ・アイ・ファンタジア?うわー、ないわー。

 しかしあいつ、ほんとこの世界に骨を埋める気ね。元の世界に戻りたいって思いはないのかねえ。

 ほんと、どうしようかなあ。え、何がだって?たまちゃったのよねえ元の世界に戻る力。

 信仰ってバカにならないわねえ。


 とはいえ、無理やり連れて帰るのもね。なんだか私までこの世界に愛着わいちゃったし。

 つーか、元の世界に戻るって、私とソーヤどうなるのかね。きっと塵と化して世界に溶け込むのかも?

 この世界に居ても、いずれ…数億年ぐらい?後はそうなるかもしれないけど。

 ま、仕方ないわね。あいつが飽きるまで付き合っちゃいましょうか。


 私はあいつの為に生まれた存在。あいつだけの神様。他の誰が消えていこうと私だけはあいつの傍に居続けるの。そう、何百年、何千年だろうと。

 えっ、人はそんなに生きられないって?なに言ってんの、ソーヤの寿命はもう0よ?それなのに生き続けてるよね。

 もう私が居る限り、死ぬこともないし、歳も取ることがない。ん、私このことソーヤに言ったっけ?まあいいか。いずれ気づくよね。

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