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アイ・ファンタジア  作者: ぬこぬっくぬこ
第三部◆攻略せよ!異世界迷宮!!◆
39/90

第九章 決戦!

◆◆◇◇  視点変更◇受付穣さん  ◇◇◆◆


「ねえレミア、なんであんた逃げなかったの?てっきりギルド長と一緒にとんずらこくものとばかり」

「なにをおっしゃっておられるのでしょうか、マリーさん」

「あだだだ、やめて!アイアンクローは許して!」


 まあ、ほんとは最初に波が来るって聞いたとき逃げようと思ったんだけどね。

 でも、そのあとソーヤ君の魔法を見て…私がなんの為にここに来たか思い出したの。

 私だって最初からすれた女をやってない。冒険者になることを夢見て…


「ダメだな。そんな筋力では剣を振るえまい。魔力も無い。悪い事は言わん冒険者は諦めるのだ」


 登竜門でいきなりそんなこと言われて。

 それでもやっぱり冒険者と関わる仕事がしたくて…でもダメね、冒険に出かけている人を見ると嫉妬して。

 その内なんかどうでも良くなって来ちゃって。

 ああ、ってばかりねえ。

 それに、ソーヤ君があんなに必死なってヘルカトラスさんを治していく姿を見て、ああ、私に欠けてるのは筋力でも、魔力でもない、仲間を、冒険者を大切に思う心なんだなって気づいたの。


「ねえレミア、冒険者になろうって思ってたんじゃない?」


 この子鋭いわねえ。


「まあね。ギルド長が次々と魔法を教えてくれるんで、私にもって思ったわよ」


 でもね、


「それでもやっぱり私はここがいい。ここでこうして冒険者達を見送るのがいいの。これが私の仕事よ」


 他の事もやれると分かった、でもやっぱり今の仕事がいいって思った。

 なんだかんだで今の仕事も大切に思ってたんだなあってしみじみ痛感したよ。

 ここで私は欠けてるものを補っていくの、そうギルド長と一緒に!


「レミアさん、また一人転送されてきました」

「分かりました、至急、B―4のベットへ」

「ちょー、俺かすっただけ、ほら、かすり傷にもほどがあるだろ」

「かすり傷を受けたあなたが悪いのです。ここへ連れ戻されたくないなら、ギルド長と同じように一切の攻撃を受け付けなく…」

「ちょー、オレ転送させてどうするのよ!ちょっとくらっただけじゃないか。こんなのリザで…あれ?美人の受付穣さんがこっちを睨んでいる?オレなんかやったっけ?」



◆◆◇◇  視点変更◇ハゲの係長  ◇◇◆◆


 ふむ、攻勢は上場だな。


「係長」

「なんだね」

「ギルド長が攻撃を受けて転送されました」

「…………」


 だれが転送させたの?うちの旗印だろ?


「そんなに重症だったのかね?」

「いえまったく」


 …ほんと誰だよ。


「仕方ない指示は私が出そう」

「了解いたしました」


 しかし、ギルド長の思惑とは違って初出の者達も頑張っているな。このままでは冒険者達の出番なく終わりそうだな。


「ちょっと係長。こいつら俺達顔負け並みの戦闘やってんだけど、いったいどんな訓練したんだよ?」

「こりゃ、マッスル達があれだけ短期間で上達したのも頷けるな」

「イーリス教よ、イーリス教に入ればあなたも明日からムキムキマン!」


 テンコ様…こんなとこで布教するのはよしてくれませんかねえ。



◆◆◇◇  視点変更◇お師匠さん  ◇◇◆◆


「みなさん、戦いは我ら優勢で運んでいます。この様子だとあと1時間もせずに終局しそうです」

「ファネス、どう、防御結界は問題なく稼動してる?」

「ああ、お師匠さん。うん大丈夫、モンスターの攻撃なんてものともしてないわ」


 ほんとすごいわねー、ワイバーンのブレスでもまったく解けるそぶりもないわね。


「引き続き防御結界の維持お願いします」

「ええ、まかしときなさい」


 とはいえ、一回起動したらしばらくは何もすることないのよね。


「ねえ、ファネス。ソーヤとはキスぐらいした?」

「ええっ、こんな時に何を!?」

「今がチャンスよ、どさくさにまぎれて、私大怪我を負ったの、ソーヤ最後の口付けをとか」

「口付けの前にリザレクションかけられるよ?」


 そう言えばそうだったね。


「でもまあ冗談じゃなく今のうちだよ。なんでも、もうすぐ嫁さん連中が来るらしいじゃないか、その前に物にするのよ!」

「ええっ!そんなこと言われても…」

「女は度胸!大丈夫、ソーヤはあんたのこと良く思ってるから、ちょっと薄着でもしてしなだれかかれば一発よ」


 ファネスは顔を真っ赤にして慌てふためいている。純情ねえ。


「既成事実さえ作っちゃえば後はなんとでもなる!いけいけ」

「ちょと姉さん、あんま若い子を焚き付けたりしないで」

「いやいや、わしは良いと思うぞ。ソーヤなら不幸にはせんだろう」


 みんな暇だから一緒になってファネスを弄りだしたわねえ。



◆◆◇◇  視点変更◇ファネス  ◇◇◆◆


 今がチャンス、今がチャンスなのかなぁ…

 ソーヤ、結界に穴開けてすぐ、モンスターに一発もらって即効転送させられたのよね。

 そりゃ見た目はあれだから、だれもギルド長だと気づかないよね。旗でも担いでりゃ良かったのに。

 そんでなかなか帰って来ないから呼びに来たついでに、結界作りの人達のところへ寄ったんだけど。


「ほらこれなんてどうだい?うちの丸秘中の丸秘だよ?」

「ちょっと何出してんだいあんた。子供に何させようってのよ?」

「男はなあ、弱いものに魅かれるってこともあるんじゃよ。そんなに肩張っておらんでちょっと弱いところを見せればな」

「あんたは男と言うよりじじだけどね」

「なんじゃとぉ!」


 いやいや、みんな今は戦闘中だよ?そんなことで盛り上がってる場合じゃないんだよ?

 でも、そうかー、弱いとこカー。私ソーヤに意地張ってるとこばっかしか見せてないかも?


「ソーヤ、私ちょっと酔ったみたいなの…」

「なんだいハニー、それならオレの膝を枕にするといいさ」

「ああ、ソーヤ…」


 ないわぁ。


「ソーヤ、私ちょと酔ったみたいなの…」

「なに、飲んでんの?『リフレッシュ!』ほらさっさと寝ろよな」


 うん、こっちがソーヤよね。


「ファネス。もしなんかあったらいつでも言いに来なさい。マッスルの弟子は私の弟子も同じ。どんな相談にも乗るから」


 神妙な顔をしてる私を見て、マッスル達のお師匠さんがそう言ってくる。


「ありがとう、でも大丈夫。私はソーヤの一の配下として生きることに決めたから!」


 そう、石に噛り付いてでも付いて行くんだから!



◆◆◇◇  視点変更◇ソーヤ  ◇◇◆◆


 うっ、ブルブルブルなんだ急に寒気が?


「だから、早く前線に戻らないと!」

「もうここにいらっしゃたらどうです?前線に行ってもやることないでしょ?」


 …受付穣さんきついなあ。あるよきっとオレにもやれることが!あるかなあ…


「伝達、伝達です!モンスターどもが、モンスターどもが逃げ去って行きます!」

「「おおー!」」


 どうやら、戦闘は終結したようだな。伝令さんの言うことには、誰一人犠牲もなく終わったようだ、よかったよかった。

 あれ?オレ結界に穴開けた以外何もしてないぞ?



◇◆◇◆◇◆◇◆


「皆此度は良くやってくれた!初めての戦闘を経験した者も居るだろう、たとえ冒険者といえどもこのような大規模戦闘などしたことがない者がほとんどであろう」


 ハゲの係長が勝鬨をあげている。


「それにも関わらず、だ。一切の死者、犠牲もなくこの波を乗り越えた。それは誇っていいことだと思う!」

「「おおー!」」


 一斉に歓声があがる。


「これまで、何度も、本当に何度も、滅ぼされて来たこの街、初めてだ…初めての死守だ!我々は勝ったのだ!あのモンスターの波に打ち勝ったのだ!!」

「「おおー!」」


 いや、まだ終わった訳じゃ…

 つーかなに、なんでハゲ係長が勝鬨あげてんの?アレ、オレの仕事じゃね?


「即効リタイヤした奴が贅沢言うわねぇ」


 いやだって、仕方ねーだろ。結界に穴開けんで必死だったし。


「それにしても、もっとそれらしいカッコしてりゃよかったんじゃ?」

「それらしいってどんなだよ?」

「ハゲにして、付け髭つけるとか?」


 …もう、あそこのハゲがギルド長したらいいんじゃね?


「おお、ギルド長ではないですか?傷はもう大丈夫なのですかな。いやはや、ギルド長の大活躍で、この街もこうして形を変えず残ることができました。なんとお礼を言っていいか」


 ハゲの係長が壇上から降りて来てそう言う。大活躍って…それは嫌味でしょうか?


「ほらすねないの」

「それにしても係長も凄い活躍じゃない、前線を指揮して。もういっそのことギルド長は…」

「はっはっは、冗談は顔だけにして下さい」


 ええっ、俺の顔って冗談っぽいの?


「いまさらっ!」

「なんだよぉ、お前なんて存在自体が冗談みた・あだだ」


 やめろよ!間違ってねーだろが!


「ソーヤ!ここに居たの。なかなか帰って来ないから心配したじゃない」

「ファか。おまえだけだよオレにそんな優しい声をかけてくれるの」

「どうしたのソーヤ?どっか打ち所でも悪かった?」


 なんでだよ!


「ようし今夜は無礼講だ!本部の酒樽を空にするぞ!」

「「おおー!」」


「ねえ、ソーヤ」

「なんだよ?」

「私が酔ったら介抱してくれる?」

「子供が飲んじゃダメだろ?」

「ダヨネ」



◇◆◇◆◇◆◇◆


 それからも幾度となく、モンスターの波を撃退する冒険者達。しかし…


「きりがねーなこりゃ」


 そうなのだ、終わる気配がまったくない。どっから沸いてくんのやら。

 街の外はモンスターの死体だらけだ。


「迷宮のモンスターと違い、血肉のある者だからな。実際、戦闘中より死体の処分の方が魔力を使う罠」

「なんか向こうにも指揮官とか、これを率いてる親玉とか居ないの?」

「波については詳しいことは分からんのですわ。なんせ毎回白紙にされてましたからなあ」


「おおソーヤ、もう30階層のボス倒すのにも飽きたぞ」

「そうであるな。もう寝ながらでも倒せるようになったであるぞ」

「がっはっは。もうかんべんしてください」


 マッスルブラザーズも随分弱ってんな。仕方ない、


「ちょっくら魔境に様子を見に行ってくるわ」


 という訳でやって来ました魔境の奥深く。

 もちろん隠蔽魔法でやつらの索敵はシャットアウト。魔力が切れたら転移魔法で戻る。

 うん、30階層のボスがいい魔石を落とすんだよな。ここんとこずっと狩ってるからいっぱい溜まっている。それで転移魔法使い放題だ。

 確か、上級冒険者への登竜門とか言ってたような気もするが、今じゃ雑魚扱いだなあ。月日の経つのは早い早い。


「油断してると足元すくわれるわよ」

「…お前こそ大丈夫なのかよ?」


 テンコは普通にオレに付いて来てくれている。


「何言ってんの?私神様よ、死ぬ事もないし、傷一つつけれる奴も居ないわよ。…あんたの作ったあの化け物以外は」


 化け物扱いはひどいんじゃね?アーチェは立派な淑女ですよ?ちょっと人の話を聞かないだけで。


「そこが重要なんじゃない?」

「そんなこと言うが、お前だってアーチェに力を与えたじゃね?」

「あたしのはただの宴会芸よ?」

「それにしてはえらい目にあったんだが。きっと今ごろ、物質をレインボー化とか言って、原子分解してんじゃね?」

「ちょっとやめてよぉ!変なフラグ立てないでよ!」


 それにしても多いなー。あたりはモンスターだらけだ。しかも今回、レッサーデーモンとかケルベロスとか結構な大物が多いな。やっこさんもいよいよ本気を出してきたか。


「グギァーオォオー!!」

「ギィー、ギャー」


 なんだありゃ?うぉっでかっ。

 そこには遠くの方からモンスターを追い立てている、これまで見たことない大きさの真っ黒なドラゴンが!


「なんか追い込み猟してるみたいねー」

「あれがやつらのボスかな?しかし、高層ビルよりでかいぞ」


 アレと戦うのかー。うちの連中でドラゴンスレイヤーになれそうな奴といえば…神剣を持ったファぐらいか。

 あれだけでかいと、レンジでチンもあんま効きそうにないしな。ほんと迷宮のじいさんの5倍はあんじゃね?


「ファに魔刃剣撃たすしかないんじゃない?」

「いや、オレあの原理知らないから教えられねーよ?」

「何あんた、この世のすべての魔法を知り尽くしてるんじゃないの?」


 だから、誰なんだよその賢者?そんな奴居たらこっちが教えて欲しいわ!


「ちょっと、ちょっとソーヤ」

「なんだよ?裾引っ張るなって」

「アレ、アレ!」


 テンコが指差したその先には…うん、これはもう諦めよう。



◇◆◇◆◇◆◇◆


「と、いうことで撤退します」

「なにが、と、いうことなので?」


 いやー、あれは無理ですわー。


「ちょっと魔境の奥まで索敵に行って来てな。敵の本陣を視察して来たんだわ」

「ソーヤ様…見かけないと思ったらそんな危険なことを?私の部隊の索敵では不満でしたか?」


 女王様がそう聞いてくる。

 そんなことないけど、オレが行った方が安全だしな。


「そこで見かけたのがな。ちょっと手に負えそうにないんだわ」

「ソーヤでも?」


 おまえらオレがモンスター倒したとこ見たことあるか?言っとくがこの波で一匹たりともモンスター倒してないんだぞ?

 なんでみんなオレを転送するの?まあ確かにオレの攻撃じゃ知れてるっちゃあ知れてるが。


「今回ばかりはな。至急迷宮に避難するぞ」

「いやいや、いくらギルド長の言うことでも…ここまでやって来て撤退など」

「そうだよソーヤ。私たちの防御結界も様になって来ているだろう?」


 まあ、確かに固くはなってるな。穴開けるのも一苦労だ。

 だが、委員長達とは比べ物にはならない。あっちは輝いてたしな。こっちはまだまだ薄い。


「正直あそこまでの大物を出してくるとは思わなかった。あれだとここの王都の結界とやらも怪しいぞ」

「それほどに?しかし…納得がいきませぬ」

「そうですわギルド長、私達もっとやれます!」

「そうだそうだ!ここまで来て撤退などありえん!」


 冒険者連中は随分反対している。うむ、反対する気持ちも分かる、分かるが…


「じゃあお前ら、アレなんとかなると思うか?」


 そう言ってオレは会議室の窓を開いて魔境の方を指差した。


「「………………」」


 そこには、山のようなサイズのモンスターが地平線を埋め尽くさんがばかりにひしめいていた。



◇◆◇◆◇◆◇◆


「ギルド長、非戦闘員、全員非難終了しました」

「そうか、秘書さんも避難していいよ」

「いえ、私はここでギルド長のお帰りをお待ちしております」


 いやいや、ここに帰って来る予定ないから。


「で、あんたらほんとにあれとやる気?」

「おうよ!一矢も報いずに撤退などありえん!」

「そうだ!俺達だって強くなっている!たとえ山だろうと谷だろうと打ち勝つのみ!」


 谷はねーがな。


「仕方ないなあ。ただし防御結界が破れるまでだよ。結界が破れたらすぐさま転移石で非難すること。これが条件だ」

「「了解した!」」


 ほんとに分かってるのかなこの人達…いざとなったらオレが強制的に転移させるのかー、疲れるなぁ。


「ベヒーモスの集団ね。一応弱点は火だけど…フレア撃てる連中は防御結界にかかりっきりだしね」

「いっそのこと結界を放棄してガチバトルとかどうだ?」


 どうだじゃねえだろ?結界なくなったらゲームオーバーな。


「聖女様達はどうなっているので?」

「ああ、昨日の通信じゃ、まだ一週間ちょいかかるって言ってたな」


 それだけが唯一の救いか。


「ソーヤ!モンスターどもが、防御結界に到達したって!」

「えっ、あの山まだ大分向こうだが?」

「ベヒーモスは足が鈍いからねえ」


 オレはファの馬の後ろにのり、前線に向かう。

 結界近辺では激しくモンスターが体当たりをしている。


「ほら見てみろ、あいつらの体当たりなど我らの防御結界の敵ではない!」


 オレが言いたいのは向こうの山の攻撃なんだがなー。


「どにかく穴をあけるぞ。向こうの山が来る前に少しでも削っておく!」

「おうよ!まかせとけ!」


 結界に穴を開け、敵をおびき寄せる。が、


「なんだこいつら、くっ、今までと違って随分…」

「ぐはっ!くそっ、一旦もどってリザもらってくる!」

「なっ!私のフレイムバーストが効かない…」


 冒険者達は随分苦戦しているようだ。

 なんせ今回の敵は、AからSクラスの敵が多い。

 ケルベロス一体にしろ、数人ががかりだ。そんなのがうようよいるしな。

 と、そこへ、ようやく辿り着いたベヒモスが結界に攻撃を加えだす。近くで見ると肉の塊だな。こいつ一匹で周辺の食糧事情が解消されそうだな。


「ソーヤ!お願い!」

「あんま無理スンナよ。『アポカリプス・エクステンド!』」


 オレの補助魔法を受けたファが結界を飛び出す。


「いくわよ!『神剣・天羽々斬!』」


 ファの全身から虹色の輝きが発せられる。派手だなー。防御にはいいが、逃げる時には使えねーんじゃね?

 そのままベヒーモスに向かっていき、無数の斬撃を加える。


「いいなーあの虹、敵の攻撃シャットアウトしてるな。あれこそ真絶界じゃね。おいテンコ、オレにもアレくれよ」

「それ程のもんでもないわよ。あれはうまくファが攻撃と防御を使い分けてるの」


 ファがようやく一体のベヒーモスの首を落とす。

 と、それまでゆっくりとした動作のほかのベヒモスが急に暴れだした。


「うわっ、仲間がやられて怒り出したのか!?」

「そのようねえ」

「まずいな、結界にヒビが入って来てるぞ。おい、ファ!こっちに戻って来い!撤退準備だ!」


 悔しそうな顔のファが戻ってくる。


「ごめん…一体倒すので精一杯だった」

「いや、良くやったよ。これでファもドラゴンスレイヤーの仲間入りだな」


 次々と体当たりをかましまくるベヒモス達。どんどん、結界のひびが大きくなっていく。


「ここまでか…」

「兄ちゃん、俺悔しいよ…せっかく守ることができた街なのに…」

「街なら壊れても直せる。でも人はそうはいかないだろ。ほら泣くなって」

「人も直してるけどねー」


 あげあしとんなよ。

 と、その時!ドラゴンの吼え声と共に巨大な火球が結界を直撃し、結界が完全に吹き飛んだ!



◇◆◇◆◇◆◇◆


 なに!?後方からだと!まさか、回り込まれてたか!後方を振り返る、そこには……巨大なドラゴンが…なんだあれ?なんか引っ張って来て…どっかで見たような…どこだったかなあ…ありえないよなあ…


「アーチェたちの空中神殿ね」

「言うなよ!せっかくスルーしようと思ってたのに」

「あんたはスルーしたらなんとかなると思ってるの?」


 いや、そうだけど。

 そこには、ドラゴンに引っ張られた、虹をまとった空中神殿が浮かんでいた。


「いやー、すまんすまん。敵に当てるつもりが、結界に当たってしまったわ。わっはっは」

「笑いごとじゃねー!ってもしかして迷宮のじいさんか?」

「そうじゃ、アーチェに脅されてのー。せっかく作った城郭を守る為にのう…わしも落ちぶれたもんじゃのう」


 それはまた…ご愁傷様です。

 すると、空中神殿から無数の鳥が?いや、あれは…竜騎兵か!神殿から無数の竜騎兵がこちらに向かって来た。そして、そのままモンスターに向かって攻撃を始めた。

 その中の一際大きな一体がオレの方へ向かってくる。


「ソーヤ!待たせたわね!」


 白銀の色をしたその竜の背には、アーチェ達が…


「なんで?まだしばらくかかるって言ってなかったべ?つーか何その竜?」

「ああ、ソーヤを驚かそうと嘘ついたでおじゃる。びっくりしたでおじゃろう?」


 びっくりどころじゃねーよ!そんなとこで嘘つくなよ!こっちゃ命かかってんだぞ!?


「この竜達はね、竜の谷とやらで捕獲して来たのよー」


 こないた戦ってたのはこいつらか。


「なんでもドラゴンのおじいちゃんがねー、自分だけじゃこれはしんどいって言うんでわざわざ寄って来たの」

「シュリがの、それならいっそのこと眷属として飼えばいいとな。徹底的に圧倒して、怪我を回復したら懐いてきてのぉ」


 ドラゴンは強い奴に従う習性があんだっけか。そらなー、この世界でお前らより強い存在って居るのかね。


「私達ね、ソーヤが居なくてもできるんだって、新しい魔法を覚えて来たの!」

「そうでおじゃる、ちょうどモンスターもわんさか居るでおじゃるしな」

「えっ、それはレインボー系?」

「ちょっと、何言ってんの。やめてよほんとに!」


 テンコが慌てて止めようとする。


「ん、レインボー系ってなに?」

「虹で物質を切断とか、物質を虹にするとかしてないの?」

「えっ、あれって宴会芸じゃなかったの?うん、今度試してみる!」

「もしかして、やぶへびっ!?」


 バカな天使だなー。


「見ててソーヤ、これが私の新しい魔法!」


『サンクチュアリ!』


 おいっ!オレは慌てて目を塞ごうとしたが、あれ?まぶしくないぞ?


「サンクチュアリが実際に使われたって国に行って来たの。そこで色々調べたら、サンクチュアリって元々アンデットの浄化を目的としたのじゃなくて、大規模戦闘用の…」


 大規模戦闘の穢れを払うって説明だよな?


「大規模戦闘用の穢れを払うのでもなくて、大規模戦闘用の兵士を強化する為に開発されたみたいなの。私はそれを完成させてきた!」


 浄化じゃなく、補助魔法ってことか。そういや辺り一面の地面が淡く輝いてるな。


「なんだこれは、体に力がみなぎる!」

「どうしたこと?魔法を撃っても疲れない?」


 竜騎士達と一緒に戦っている冒険者達が驚いている。うん、オレも色々考えすぎだな、いい魔法じゃないか。


「で、」


 で?


「続きもあったの!」


 続きとな?あ、なんかヤナ予感。


『聖戦!』


「おおっ、なんだ急に興奮して来たぞ!」

「ああっ、恐怖が消えていく…そして心の底から狂気が!」


 何やったんだよ!?


「あのね、これね。恐怖や痛みが一切感じなくなるの。そう…狂戦士の誕生よ!」


 うぉい!なにバーサーカー作ってんだよ!!しゃれになんねーぞ!


「大丈夫でおじゃる。そこで麻呂の出番でおじゃる!」


 麻呂姫が横からそう言ってくる。今度はなんなんだよぉ、というか早く解いて。


「麻呂は思ったでおじゃる。範囲魔法が欲しいと!それでデビルダムをなんとか範囲魔法にできないかと…」


 やめてよ、ブラックホールなんて作ってないよね?


「しかし、無理でおじゃった。そこで、麻呂は考えた、攻撃魔法がダメなら、回復魔法を範囲魔法にできないかと!」


 ふむ。それは平和そうな考えだね。


「リザレクションを範囲魔法にしてみたでおじゃる」

「ええっ!」

「とはいえ、普通には無理で、アーチェのサンクチュアリと掛け合わすことにより可能になったのでおじゃる」


『デュアルスペル・ラウンドリザレクション!』


「なんだ、受けた傷が見る見るうちに治っていく?」

「これなら…敵のど真ん中であばれても大丈夫だ!」


 敵の攻撃を受けた冒険者の傷が一瞬で治ったりしてる。さっきまで、レッサーデーモンに数人がかりだったのが今じゃ片手で…


「痛みも恐れもない、傷も一瞬で治り、人間の限界以上の能力を発揮できる!そう!」

「不死身の狂戦士のでき上がりでおじゃる!」


 うわぁ…とうとう、行きつくとこまで行きついちゃったかぁ…

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