第七章 英雄と呼ばれし者
◆◆◇◇ 視点継続◇ファネス ◇◇◆◆
「ソーヤ…ありがとね。でもよく見とくんだよ。冒険者なら必ず行き当たることさ。仲間を失う場面は…」
ソーヤがお師匠さんへ回復魔法をかける。でもお師匠さんは諦めたようにソーヤに笑いかける。
「誰もが行き当たり、誰もが乗り越える。そうして一人前になっていくんだよ…」
そう言ってお師匠さんが瞼を閉じ…
「おいっ、どういうことだ!内臓が再生していくぞ!!」
「えっ!」
お師匠さんが驚いて目を開ける。
「なっ、これは…」
「くっ、オレの魔力じゃ組織を再生するだけで精一杯だ!ヒールだ!使える人はヒールを頼む!!」
「再生…だと!?」
ほら、皆見てないでソーヤを手伝ってよ!
「わ、分かった。使える奴はかけるぞ!」
『『メガヒール!』』
見る見るうちにお腹の傷が塞がっていく。さすが上級冒険者、魔術師達は皆メガヒールが使えてるね。
「これは…まさか…伝説のリザレクション?」
「だから、最初からそう言ってるだろ?」
と、ソーヤの体がふらっと横に倒れそうになり、私はすかさず支えて、
「ソーヤ、大丈夫?」
「まだだ、まだ手足が残ってる!」
『リザレクション!』
そしてさらに回復魔法をかける。
「ついでに、回復してる人にも」
『アポカリプス・エクステンド!』
ソーヤは回復している魔術師と、お師匠さんに補助魔法もかけた。
「な、なんだこれは…急に体に力が…これならもう一段階上の回復魔法も…」
「急に体が暖かく、そんな輝いている!?」
ソーヤの補助魔法はピカイチだからね!
そうしてあらかた再生が終わり、ソーヤが私に倒れこんでくる。
うん、お疲れ様。
「いったい何者なのその子…」
「お師匠様、もう体は?」
お師匠さんは手足を恐る恐る動かして、
「なんともないわね。まさかこんなとこで伝説のリザレクションを使える子に出会えるなんて…それに、その子、詠唱してなかったわよね?」
「良かったですな。ソーヤ様々だな。詠唱ですか?そう言えばソーヤが詠唱してるとこは見たことないですな。魔術って詠唱しないとダメなのですか?」
「あんた…何年、私も元で盾役やってたのよ!?詠唱の時間かせぐ為でしょうか!」
「え、いや、ソーヤが使ってる魔法はどれもコレもアレでして…」
え、魔術って詠唱が必要なの?え、盾役って魔術師の詠唱の時間稼ぐ為なの?
「…後でその子が起きたら、きちんと迷宮での戦闘について話をしましょうか」
お師匠様は呆れながらそう言う。
もしかして私達、常識外の方法で迷宮探索してたの?転移魔法だけじゃなく。
「おい、ソーヤ、ソーヤ様。アステリアの国軍は!?」
ちょっと、私のソーヤを揺すらないでよ!今疲れてんだから!
ギルド長が寝ているソーヤの肩を揺すろうとする。
「あががが」
「何をしているので?」
「ギルド長…今のソーヤにちょっかいかけるなら我々が相手しますが?」
「がっはっは。ぶっころだぞ」
マッスル3人衆がギルド長の頭をつかんで放り投げる。いいのかなあ。
「いや、すさまじいなその子。もしかしてお前達が30階層突破できたのは…」
「ああ、ほとんどソーヤのおかげだ。オレ達の武器を選択してくれたのもこいつだしな」
今のマッスル3人衆の武器については、ギルド内で大変話題になっているのよね。
模擬戦でも敵無しだし。
「ちょっとあんたあの子、前にパーティ募集してた子じゃない。なんで入れてあげなかったのよ」
「そういうお前も笑ってスルーしてただろ」
冒険者達は寝てるソーヤを囲んでわいわい言っている。
いまさら遅いんだからね。ソーヤは、私達のパーティなんだからね!
◆◆◇◇ 視点変更◇テンコ ◇◇◆◆
「えっ、オレ一週間も寝てたの?」
「そりゃ、限界以上の魔力を使ったからね。ほんとあんたは自分の身も少しは考えなさいよ?」
「テンコが優しい…?こりゃ明日は大雨か。あだだ」
まったく、無茶ばかりするんだからねえ。ただでさえ…
孤児院の子供の病気を治したとき、結構ごっそりいっちゃったんだよねえ。え、何がだって?そりゃ寿命。あの時の代償…ソーヤの寿命の8割ぐらい持ってかれたのよね。
私も代償を伴う神の力って使うの初めてだったから。まさかそんなにいくとは思わなかったんだけど。
代償を用いる力なんて使うもんじゃないわー。もう使わないわよこんな力。
「なんだよ、人のことじっと見つめて?もしかして今のオレ、結構ヤバイのか?そんなにあの時魔力使ったのか」
いやー、やばいのはもっと前からなんだけどねえ。あと2、3年?生きてられるの。
私はソーヤの肩をポンポンと叩き、
「気をしっかり持つのよ」
「なんだよぉ、はっきり言えよぉ」
まあ、私の初めての使徒だし、なんとかしてあげるけど。
この世界の信仰を集めれば結構いけそうだし。アーチェの信仰もらったときはびっくりしたわぁ。ほんと破壊神に成れそうな気がしたねえ。
でもその力、ほとんどソーヤに分けたんだけど。それで少しは寿命もなんとかなったんじゃない?
「私に感謝しなさいよぉ」
「なんの感謝だよ?」
「ふふふ、全知全能たる私と共に過ごせることに!」
「なーにが全知全能だよ。さっき食ったご飯のことも忘れるくせに」
「あたしゃ、ボケ老人かい?」
「いひゃゃ、ひっぴゃるなおう」
へらず口などこうしてやる。
「あれ、テンコ姉ちゃん、ソーヤ兄ちゃんの口に指つっこんで何してるの?」
「え、なに!?ソーヤ起きてるの!」
そこへ子供たちが雪崩れ込んでくる。
「ソーヤ!よかったソーヤ!!」
ファがソーヤに抱きつく。それにつられて子供たちもソーヤに抱きつき、
「うわっ、ちょっ、ひー重いー」
「誰が重いって!?」
「あだだだ」
ほんとソーヤを見てると面白いわぁ。
「ソーヤ、私、決心したよ」
「なにを?」
ファはソーヤの前に剣を置き、
「私、帝王様の一の配下となる!」
「は?」
「ていおーさまー、ていおーさまだー」
ソーヤはぎっぎっぎと私の方へ顔を向ける。
「ああ、言い忘れてた。あれからファンレーシアの女王様って人が来て…」
「ああ、もういいわ。オレもう少し寝るから、その人、帰ったら起こして」
◆◆◇◇ 視点変更◇ファネス ◇◇◆◆
「あらあら、これはなんの集まりでしょうか?」
マッスル達のお師匠さんの治療が終わって、冒険者達が寝ているソーヤを囲んでわいわい言ってるとこに、一際立派な服装をした女の人がギルドに入って来た。
「あら、そちらの腕に抱かれてる方はソーヤ様じゃありませんか?」
「えっ、ソーヤの知り合い?もしかしてアステリアの!?」
「アステリア?いえいえ、私はファンレーシアの者ですわ」
ファンレーシアの?ソーヤとファンレーシア?たしかアステリアってファンレーシアからものすごく遠いんじゃなかったっけ?いったい何の関係が。
「このお方はサテラ・エウスティ・ファンレーシア、ファンレーシア女王その人である!」
御付の真っ黒な鎧を着た騎士がそう言う。
…あれ?私、今日はまだ夢見てるのかなぁ。そうだよね、これきっと夢だよね。
目が覚めたら王子様じゃない、いつものソーヤがそこにて、今日も迷宮で稼ごうぜなんて言って…
「プレミセンズ…皆さん静まりかえってしまったではありませんか。そういうのはもっと溜めて言う物ですよ」
いやいや、溜めたらさらに静まり返るかと。
「ふ、ファンレーシアのお方が何ゆえこのようなとこに?」
「ソーヤ様が辺境でお困りになられてると伝達があり、連れに来たのですわ」
ええっ、ソーヤを連れ戻しに来たの!?
私は知らず、ソーヤをぎゅっと抱きしめ、
「あらあら、ソーヤ様ったら、またですか」
「ファンレーシアはソーヤと関係ないでしょ!ソーヤはここで暮らすんだから!」
「どうしましょうか、プレミセンズ」
女王様は隣の黒騎士に問いかける。
黒騎士の人はこちらをじっと見つめ、
「ソーヤ殿は…ファンレーシアの英雄であり、聖女アーチェス・アングローバーの夫であり、アステリア王女、リーシュフェール・フォン・アステリアの夫でもある」
え、なに?今この人なんて言ったの?
「ソーヤが英雄?こんな子供がか」
ギルド長が唖然と呟く。
「つーか、今、夫って言葉が2回出なかったか?おかしくね?年齢的にも、回数的にも」
「ふうむ、やはりソーヤはジゴロであったのか」
「がっはっは。うらやましいのぉ」
マッスル3人衆は黙ってて!
私はさらにソーヤをきつく抱きしめる。
黒騎士は一歩前に出、
「なによあんた達、急に訳分からないこと言って!この子達は愛し合っているのよ!」
そこへ、マッスル達のお師匠さんが、庇うように前に出てくれた。
「あ、いや、それは…」
「おい、まずいのではないか、これは」
「がっはっは。今のうちに逃げないと…」
すると、ファンレーシアの女王様はため息をつき、
「プレミセンズ、下がりなさい。まったくソーヤ様と来たら。まあ帝王となるべきお方ならそれもまたありですか」
そう言う。なにが帝王?
「ソーヤ様はこの世界で始めて、5大迷宮の内、2つの迷宮を攻略されたお方。いずれ世界を担う帝王となられる野望の持ち主なのです」
「ちょっと、女王様。ソーヤが聞いたら怒りますぞ?」
「いいの、いいの、外堀から埋めていきませんとね」
「…私は知りませんからな」
ソーヤが5大迷宮の攻略者?そしていずれ帝王に?
「そんな…馬鹿な、こんな子供が…」
「ありえない。いや…リザレクションが使えるということは…ありえないこともないのか?」
「あら、リザレクションなんておまけですわ。この地上で唯一ソーヤ様のみが使える魔術、その名も真絶界!あの神話級のモンスター、メドゥーサですらまるで赤子のように!」
そう言って四角い箱のようなものを取り出し、
「これを見てください。これはアステリアで開発された、世界の一部を記憶しておく装置。その時の映像がコレです!なんと!メデゥーサの攻撃を一切受け付けない、その上こちらは攻撃し放題!これ以上の結界は存在しないでしょう!」
「だんだんノって来ておりますナァ…」
そこにはメドゥーサを一方的に攻撃しているソーヤの姿が!
◆◆◇◇ 視点変更◇シルシィ ◇◇◆◆
「ファネスお姉ちゃん?こんなとこで膝抱えてどうしたの?」
私が畑仕事の道具を取りに道具室に行くと、部屋の隅に膝を抱えて座り込んでる人が居た。
「あ、シルシィか…なんかね、ソーヤがね、王子様でね、奥さんが二人もいてね、英雄でね、帝王なんだって」
さっき孤児院で演説してた立派な女の人の話のことかな?
「さすがソーヤ兄ちゃんだよね。そりゃ、神様の使徒様だもの、そんくらいはあるよね」
「シルシィはあんまり驚いてないんだね…」
「だって、テンコ様から少しは聞いてたもん」
「えっ、いつ!?」
ファネスお姉ちゃんが驚いて顔を上げる。
「うーん、病気が直って少ししたあたりかな?」
「そっかー。シルシィは聞いてたんだー。はぁ、私ももっと早くに聞いとけばなぁ…はぁ、聞いてても変わらないかぁ…」
ファネスお姉ちゃんはまた、膝の間に顔を埋める。
「そんなに落ち込んでどうしたの?」
「だって、王子様だよ?帝王様だよ?ここで、ずっと一緒に居れると思ってたのに、そんな人じゃ…それにもう、二人もお嫁さんが居るんだよ?私なんて…」
「ファネスお姉ちゃんはここでずっと過ごすの?」
「えっ?」
私はもう決意してることがあるんだ。
「シルシィは今ね、神父様とテンコ様に、神官としての勉強を教えてもらってるんだ」
「ええっ!?」
「私はね、ソーヤ兄ちゃんとテンコ様の行くとこ行くとこへ付いて行くの。神父様も言ってたの、神官の頂点である大神官は、常に皇帝の傍に付き従っているんだって」
ソーヤお兄ちゃんには返しても返しきれない程の恩があるから…
「ソーヤ兄ちゃんは自分の寿命を犠牲にして私を助けてくれたんだよ」
「は?」
お姉ちゃんは驚いて立ち上がって、
「ちょっと、どういうこと!?寿命って!?」
「本来なら私の命はあの時潰えていたの。それを無理やり引き伸ばしたから…ソーヤ兄ちゃんの寿命、あと2、3年だって」
「そんな…あのソーヤが…」
ほんと言うと、そこまでして助けてなんて欲しくなかった。この世界はどこまでも厳しくて…パパやママも流行り病で亡くなって…やっと私も一緒の場所へ行けると思ってた。
でもそう言ったら、
「パパとママのとこならいつでも行けるだろ?もうちょっと寄り道して行こうぜ。そんな泣きそうな顔で行ったらパパとママもがっくりするぞ。どうせなら大往生して、笑顔でただいまって言ってやれ」
って言われて、なんだか涙があふれてきた。
その時思ったんだ、笑顔で大往生する為には、この人の傍に居なくちゃダメだと。この人の傍にいれば、どういう関係、結果になっても、きっと笑顔でいれるって。
「でもテンコ様が言ったの。ソーヤ兄ちゃんとテンコ様は繋がっているから、テンコ様に集まる信仰で何とかできるって」
「そ、そうなんだ、びっくりしたぁ…」
「だから私、テンコ様の神官になってイーリス教を広めるんだ!」
「いいのかな?そんな動機で神官になって…」
まだ、お金の為に神官になろうって言う生臭坊主よりましだって言ってたよ?神父様が。
「ねえシルシィ。皇帝様の傍に居ることができるのって大神官だけなの?」
突然、真剣な顔をしてファネスお姉ちゃんが聞いてくる。
「大神官以外かぁ…そう言えば、たしか護衛でテンプルナイトがいるとかなんとか…」
「ナイト…騎士か…」
「そうだお姉ちゃん!剣聖になってみない?昨今の剣聖はともかく、神帝国創設時には、皇帝に剣聖がぴったりと寄り添ってたみたいだよ」
「ええっ、そんな簡単そうに…」
そうだ、ファネスお姉ちゃんを中心としたテンプルナイトを作ろう!きっとテンコ様も喜んでくれるはず。お姉ちゃんも最近じゃ剣姫なんて言われて、めきめきと実力をつけて来ているし。
「大丈夫、お姉ちゃんならきっとなれる!ソーヤ兄ちゃんと一緒に居れなくてもいいの?」
「ソーヤと一緒に…うん、そうだよね…私が剣聖と呼ばれるぐらい強くなったら…きっと帝王様のお傍に居ても誰も文句が言えないはず!」
ちょろいわね。
◆◆◇◇ 視点変更◇ソーヤ ◇◇◆◆
「ってことがあったの」
…シルシィって将来、悪女にならないよね?
つーかなに?オレが冗談で言ってた真絶界をマジモンにしてんの?あれただの転移魔法ですよ?
そういや、弟さんに詳しい説明する暇もなかったかなあ…でも女王様は気づいてるはず。確信犯だな!
「おいテンコ、なんで止めないんだよ?」
「なんで?面白いじゃない?」
…こいつに聞いたのが間違いだったな。
「僕達みんなイーリス教の信者だって」
おまえ、無垢な子供を…
「いいじゃない、私がこの子達の親になってあげる」
「…ちゃんと面倒見るんだぞ?めんどくさがるなよ?」
「いやねー、ちゃんと子供達の相手してるじゃない?」
遊んでるだけじゃねえか!まあ、それが子供達にとって大切なことかもしれないが。
「勉強だってちゃんと教えてるわよ?」
「ほんとにか?」
「うん、お姉ちゃんは天使…お姉ちゃんは神様…お姉ちゃんは…」
何教えてんだよ!いかん、こいつに任せとくとやばいことになりそうだ。
「おお、ソーヤ殿、やっと目が覚めたのですな」
「ああ、黒騎士さんじゃないか。久しぶりだなー」
そこへ、ファンレーシアで一緒に迷宮攻略した黒騎士さんが入って来た。
と、ファがオレと黒騎士さんの間に入り、
「私、決めたんだから!剣姫ファネステール、帝王ソーヤ様の一の配下よ!」
「ソーヤ…」
黒騎士さんがなんだか言いたそうな風でこっちに向いてくる。
オレが原因じゃないからな。主な原因はあんたの主君だぞ。
「そ、そんなことより、ほら、あれどうなったの。テイマーしたヒヨコさん」
「ああ、それがなあ。毎日魔力を与えてはいるのだが…」
そう言って鎧の隙間からヒヨコを出す。どこで飼ってるのぉ?
「ちょっと大きくなったか。今度アーチェが来たら、魔力与えてもらうといいんじゃない?」
「それはありがたい。私も魔力が多いと自負していたが、聖女様とは比べるまでもないしな」
ん、なんだ?急に体が重く…おいっ、何吸ってんだよ!オレの少ない魔力吸うなよ!
ヒヨコがオレの傍に寄って来たと思ったら、急にオレの魔力を吸い出した。
「ちょっと黒騎士さん、ちゃんと躾はしてよ!」
「うむう、今まで私以外から魔力を吸うことはなかったのだが」
どんどんオレの魔力を吸い上げていく。ひぃー、やめてー。
と、突然ヒヨコが輝きだし…
「おおお!これは!?いよいよか、いよいよなのか!」
輝きが収まった後には…ちっちゃな男の子が。ちっちゃくてもついてんのな、なにがとは言わないが。
「うわぁ、かわいいー、なにこれ妖精?」
「なになにー?シュリちゃんのお仲間さんなの?」
「ちょっと兄ちゃんこんなとこで生まないでよ?」
オレが生んだんじゃないぞ。いやそうなのか?
「ソーヤ…!そうか、そうなのか。一人では生まれないのだな。うむ、私とソーヤの愛の結晶だ!」
うぉい!なに言ってんの!!ほら子供達がぎょっとしてこっちを見てんだろが!
「ソーヤ兄ちゃん…もしかして、ファネス姉ちゃんが狙いなんじゃなくて、あのマッスルな人達を狙ってたんじゃ」
それはひどい誤解だ!
「ほうら私がママだぞぉ、そしてこっちがパパだ」
「黒騎士さんがママ役なんだね…」
「やめてよ!子供達が変な誤解してるだろ。いいかお前達、この人こんなかっこだけど、中身は女の人なんだぞ」
「でっていう設定ですか?」
なんでだよ!そのセリフはやってんのかよ?
「よいではないか、よいではないか!」
黒騎士さんは妖精さんを抱えて大はしゃぎだ。そして子供達はそれを見て超どんびきだ。
なんたって、ごっつい鎧の人が、妖精さんにほおずりしながら、飛び跳ねてんだから。
「ほんと、あんたの傍に居ると退屈だけはしなさそうだねぇ」
テンコがしみじみと呟く。
「アレはオレの管轄外だと思うんだが…」
「あんたが大本の原因を作ったんでしょうが」
「そうか?そういやお前も羽ついてんなー、いっしょに頬ずりしてもらえば?」
「ザケンナ」
いててて、羽で往復ビンタはやめて!




