第三章 ザ・ニューパーティ
◆◆◇◇ 視点変更◇神父様 ◇◇◆◆
「えー、お兄ちゃん王様って、ほんとなのー」
「うん、パパはねー、いずれ世界を支配するていおうになるんだよー。シュリもね、今はこんなんだけど、本当はおっきい火の鳥なんだからねー」
「えー、見てみたいー」
さてと、また耳栓をするですかな。
「おいシュリ。何吹き込んでんだよ。オレは王様でもないし、世界を支配する帝王になぞならないからな」
「ファンレーシアは応援するって言ってたよー」
「…あのお方の言うことは真に受けないように。って、神父様どうして耳栓を?」
聞いてしまえば戻れない気がしましてな。
「そんなの耳栓しても無駄だと思うわよ」
なにゆえ、耳栓してもあなたの声だけは聞こえるのでしょうか…
「ゴッドパワーに決まってるじゃない」
「何がゴッドパワーだよ。ゴッドバカの間違いじゃないのか?」
「ブッコロ」
神様ですか。私も神帝国の神父として色々経験致しましたが、実際にお会いすることができるとは…しかし…あの羽を飛ばしながら、子供を追い掛け回してるのが…
「神父様…私夢を見ているようです。これは現実なのでしょうか」
現実が現実ではなくなるですか…
「しっかりしなさい。あなたはこの院のお姉さんでしょう。これは、今ある現実ですよ」
「それじゃあ、ほんとにシルシィは…もう、諦めていたのに…」
「ほら、泣くのはおよしなさい。神の奇跡に感謝しようではないですか」
「はい!」
そうですな。私もいつまでも現実逃避はできませぬな。たとえ姿がモンスターであろうとも、たとえ子供の服を剥ぎ取ろうとしていても。あれが神よ。
「見てないで助けてよ!」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「いやー神父様のようないい人と出会えてほんと良かったよ」
「そうですかな。私は何もしていませぬが」
「いやいや、ここに置いてくれるだけでもほんと助かるよ」
いえいえ、神とその使徒のお方を御泊めできるのは光栄なことですよ。
「あのね、オレは別にあいつとは関係ないから。あと、異世界の神様なんで、こっちとも関係ないから。別に敬う必要はないかと」
「しかし、実際シルシィをお助け頂きました」
「うん、それは助かって良かったね。その分オレも助けられたからおあいこさ」
さすが使徒様、謙虚であらせられる。
「ああ、もう。おい、お前が変なこと言うからおかしなことになってんだろが」
「別に私が変なこと言ってなくても、今までだっておかしなことになってたでしょうが」
「そうか?まあとにかく、使徒様はやめて、ソーヤでいいから」
そうソーヤ君は言う。
「それよりこれからどうするかだなあ」
「あんた迷宮で稼いで来なさいよ」
「お前が行けば?」
「私だと自分のしか取って来れないよ?」
「ほんと役立たずなのな」
「どっちがよ」
また喧嘩を始める二人。こう見てるとほんと普通の姉弟としか見れないですね。
「で、真面目な話、どのくらいなら泊めてもらえます?ここの食料状況とかは?」
「見てのとおり蓄えはあまりありません。その日その日を子供達がお手伝いなどして現物を頂いてくるくらいしか。このような場所では寄付などもほとんどありませぬ」
ここは迷宮都市。集まるのは冒険者など日銭で暮らしている者達ばかり。裕福な者などこの街には居ませぬ。
「やっぱオレが稼いで来るしかないか」
ソーヤ君がですか。やはり使徒様はお強いので?
「いや、オレは見た目どおり、モンスターの一匹も倒せねえ」
「それでよく迷宮行くなんて言えるわね」
「お前が行けって言ったんだろが!健忘症か?いでで、羽飛ばすなよ!」
それではいったいどうするおつもりで。
「パーティ募集だよ!誰かに連れてってもらうんだよ」
残念ながら、子供をパーティに入れてくれることなどありませんが?
「あんたバカ?誰が子供を連れてってくれるの?」
「何言ってんだよ。なんか忘れてないか、オレの称号を!なにを隠そう、オレは伝説の荷物持ちって称号を持ってんだ。ほらマジックバックもあるしな。ちょっと裕福なパーティにでも」
「やっぱりバカじゃない。かもがねぎしょってどうすんの?」
マジックバックですか。そんな高価な物を持って行けば、それを奪われて迷宮にポイでしょうなあ。
「えっ、マジで?」
「少ないながらも寄付をしてくれている冒険者も居ます。彼らに当たってみましょうか」
「ほんとに、それはありがたい」
しかし、荷物持ちだけで子供を連れて行くことは…
「でも、オレあのスキル持ってるからなあ。ここ最難関の迷宮だろ。ちょっとやそっとのパーティじゃ厳しいかもな」
「あのスキルとは?」
「ああ、なんか天使の祝福っていって、レアモンスターに出会いやすくなるスキルをね」
「ああ、それ私がつけた奴ジャン。私のようなレアな存在に出会いやすくなるようにってね」
ソーヤ君はテンコ殿をじっと見つめ、
「そうかー、そうなのかー、今まであったあれやこれやは全部お前のせいなのカー。コノウラミハラサデオクベキカ」
◆◆◇◇ 視点変更◇ソーヤ ◇◇◆◆
ということで、神父様に冒険者を紹介してもらったんだが、
「何言ってんだよ神父さん。俺達、子供達が危険な目にあわないようにって寄付に来てんだぜ。子供連れてったら本末転倒だろ?」
「ほらぼうや、お姉さん今日はちょっとがんばったのよ。奮発してあげるから危険なことはよそうね」
とか言って取り合ってくれない。
「ほらにいちゃんきいおとすなよ。俺らが畑仕事でがんばってくっから」
「そうだね。にいちゃんはシルシィの命の恩人だし。どっか遊んでても良いよ」
うう、子供達の優しさが痛い。
「ほらほらー、順番よー。そーらジェットコースター!」
「あははっ、早い早いー」
「テンコ様は子供達の面倒をよく見てくれますな」
くっ、いつのまにか仕事を見つけている天使もどきにシット。
まずいぞ、オレだけなんか無職な感じ。無職が転生して張り切って生きるどころか、転生して無職になったら世話ないな。
とにかく、ここに来る冒険者は、神父様の人徳か、いい人ばっかで話にならない。こっそり冒険者ギルドに行ってみるか。
ということで、やって来ました冒険者ギルド。なにげにギルドって来るの初めてだな。
「はぁ?パーティを組みたい?おとといきやがれ!」
いきなり、入り口でダメだしを頂きました。
だがしかし、オレにも後がない。
「冒険者に年齢制限は無い!実力さえあれば誰もがなれるはずなのだ!」
「はいはい、子供は帰って寝る時間だよ」
まだ日は昇り始めたばっかりなんですが。
「おいおい、子供がこんなとこになんのようだ?はっはっは、冒険?ワロス」
「こらこら笑っちゃだめじゃない。ぷくく」
などと言ってギルドに来る冒険者には笑われる始末。
「オレオレ、実はリザレクション使えんだ。ほら魔術師は品薄だろ?」
「ほう?じゃあちょっとこの傷直してくれるか」
『リザレクション!』
「ヒールじゃねえか!」
だってぇ、オレのリザじゃその程度の効果しか…
「まあ、子供が魔法を使えるのはめずらしいが、魔術師ならここ迷宮都市ではごまんといる。ここは冒険者のメッカだからな」
「悪い事は言わない、なんか事情があるのかしらないが、他の仕事を探すんだ。何事も命あってのものだねだぞ」
「どうした、何か揉め事か?」
「あ、係長。実はこの子が…」
そこへ剥げたおっさんが登場。
「…ハゲではないぞ。剃ってあるのだぞ?」
どっちも一緒じゃね?
「ふむ、こういった子供には言って聞かせても無理だろ。一度怖い目を見ないと分からんたちだ」
怖い目なら普通の人以上にあってると思うがなあ。アーチェとかアーチェとかアーチェとか…
「そうだな、魔術師か…よし、あいつらを紹介してやろう」
ハゲはオレにニヤリと笑いかけ、
「おい、例の3人組を呼んでこい」
「例のと言われますと?」
「魔術師欲しがっていただろ」
「ああ…」
職員さんも苦笑い。何が来るの?あんま変なのは勘弁して欲しいんですが。
「係長…」
おお、別嬪さんじゃないか。うむ、こんな辺境にもったいなくらいの美人だな。こんな人とパーティ組めるなら願ったり叶ったりかな。
「連れて来ました」
あれ?その後ろごっついのが…
「おお、俺達とパーティを組みたいと言うのはどいつだ」
「ようやく我々にも魔術師が参加であるな」
「がっはっは。我輩は猫である」
うわ、どこの筋肉マンだよ。つーか最後のセリフなんなんだよ?
そこには、筋肉モリモリのマッスル3人衆が。
「ああ、お前達、ちょっと子守を頼まれてくれないか」
「ふむ?」
「この子がな、魔術師志望でパーティを求めておってな」
あ、オレ用事を思いだ・
「そうかそうか、俺も若い頃は冒険者に憧れて結構無茶もやったけな」
「お前は他の人間と自分を一緒にするでないぞ」
「がっはっは。肉食え肉」
オレは筋肉マンずに連れらて迷宮に行くことになった。これ絶対、俺のような無茶言う子供に対するお仕置き用メンバーだろ!?
◇◆◇◆◇◆◇◆
「係長よろしかったので?」
「まあ、あいつらなら大丈夫だろ。なにげに能力は高いからな」
「しかし、力に偏りすぎで…満足に攻撃もあてられないじゃないですか」
「当たればでかいがな。だが、いざとなったら肉の壁にもなるだろう」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「ほうほう、やっぱ3人とも前衛で?」
「ああ、俺はファイター。見ての通りこのバスタードソードが得物だ」
「私はウォーリアー。この斧でまっぷたつだ…当たればな」
「がっはっは。俺様はスナイパーであるう」
ふむふむ、剣士、斧、弓?
「え?スナイパーって弓じゃないの?なんかそれらしき物持ってないけど」
「ああ、こいつの得物は槍だ」
…槍なのにスナイパー?
「槍も弓もたいして変わらんだろ?ちょっとリーチが違うぐらいだ」
そのリーチが大事だと思うんだがー。
「ん、敵がくるな。ゴブリンか」
「お前、索敵ができるのか?」
「ああ、一応スカウトって職になってるからね」
そういや、これ正式にオレのスカウトデビューなのか?アステリアではずっとメリ姉が居たし、ファンレーシアはアレだったしな。
「がっはっは。俺様のスナイパー術を見せてやろう」
そう言うと槍の人は、
『スピアーザアロウ!』
とか言ってブン投げた。槍を。おい、それ投げてどうすんだよ!一本しか持ってないだろあんた!しかもはずしてるし。
投げた槍はモンスターの後ろの壁に深々と突き刺さっている。
この3人…力のパラメータは凄いが…
「おらぁ!」
斧の人がゴブリンに一撃を見舞う。しかし、ゴブリンごと地面に斧が突き刺さって…なんでゴブリンごときに全力すんだ?
「いくぞぉ!」
剣の人は…もう説明いらないかな。ようは3人とも力のみが突出して、その他のパラメータが軒並み低い。ゴブリンに攻撃避けられるとかどんだけー。
まあしかし、
「むむ、ゴブリンどもが倒れていく」
そう、防御はしっかりしている。ゴブリンの剣を鎧や盾、剣などで受け止めてくれるから、
「お主クロスボウが扱えるのか!?」
オレのクロスボウの出番だ!メドゥーサですら倒した、オレのクロスボウ劇を見せてやるゼ。
やっぱ前衛が居てこそ光る武器だよな。3人ともアタッカーとしてはともかく、壁役には最適だ。
『リザレクション!』
「回復魔法まで!?」
最初に魔術師て言ってただろ?まあ忘れてんだろうけど。
オレは3人の攻撃の合間をぬって、攻撃、回復を行う。瞬く間にゴブリンの集団を殲滅し、
「うむ、すまなかったな。子供だと思ってバカにしていた。もう立派な戦士であるな」
「本当だな。我々よりも迷宮に詳しいとは」
「がっはっは。槍を抜いてくれて感謝してるぞう!」
槍の人、オレが居なかったらどうする気だったんだろな。根元近くまで刺さってたぞ。
「しかし、3人とも今までどうやって迷宮攻略していたので?」
「依頼があれば前衛をこなしておった」
なるほど、壁役に使われてたと。
しかしもったいないな。力は結構あるのに。
「ん、また敵の反応。これは…オーガか!」
やっぱ発動したか、例のスキル。あの天使もどきいつか覚えてろよ。
「こんなとこでオーガだと?」
「ああ、しかも団体さんだなこりゃ。さすが最難関。レベルはともかく、出てくる量がぱねえな」
「オーガの団体など聞いたことがないのだが…」
え、そうなの?このスキルほんとレアもんだな。悪いほうに。
「仕方ない撤退するぞ。もう十分冒険はすんだだろ。先程のゴブリンの報酬は全部お前のものだ」
そう言って魔石をくれる。まあ、これくらいじゃ一回分にも満たないけど。みんな良い人だな。
「ようし!器用さと、命中に特化させて…あ、知能にも振っとかないとな」
『アポカリプス・エクステンド!』
「な、なんだ。体から光が…」
「おお、なんだ急に斧が軽く…今なら蟻にすら当てられそうだ」
「がっはっは。なんか怖い…」
「おい、来たぞオーガだ!」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「いったい我々に何をしたのだ?」
「ああ、補助魔法をかけたんだよ」
オーガたちをさっくり片付けた後、3人が聞いてくる。
いやー、当たるようになるとかなりの威力だな。かったいオーガの体がバターのように切れてたし。
槍の人が投げた槍には数体串刺し。というか投げんなよ!もっと知能に振った方が良かったか?
「補助魔法だと?今まで補助魔法を散々かけてもらったことはあるが…そりゃ多少命中が上がることもあったが、これほどの物は…」
「命中のみに絞って補助をかけたからね」
「そのようなことができるのか!?」
あれ?普通できないんだっけか。まあ、一応伝説の魔法だし。
「どうです?いまならお買い得ですよ?一家に一台、オレどうですか。お安くしときますよ?」
「その謳い文句はどうかと思うが…しかし、10歳の子供か…うむう」
もう一押しか。
「いざとなった時やはぐれた時がな。我々でもこの迷宮では危機に陥ることがだな」
「それなら良い手がありやすぜ旦那」
オレは地面に転移魔方陣をセットし、
「これは!馬鹿な!!転移魔法だと!?」
びっくりマークが多いな。
ここに来る前に孤児院に転移魔法をセットしておいたのだ。
「これでいつでも迷宮から脱出!しかもセーブポイント作っておけばそこから開始も可能ですぜ」
「「「………………」」」




