ソーヤ抹殺計画
「なあクリード!頼む、この通りだ!ぜひ協力してくれないか!!」
私の名はクリード。漆黒の蒼刃と呼ばれているアサシンだった。
「100億!100億なんだぜ。たった一人暗殺するだけで!!」
「残念だが他を当たってくれ。私はアサシンから足を洗ったのだ」
そう今の私は、聖女様親衛隊のメンバーの1人だ。
「しかし100億だと?どっかの国の王様でも暗殺するのか?」
「それが聞いてくれよ。なんか今回、ここの姫様に見初められた平民らしいぞ。見たところ大した能力も持ってないし、さっくり終わりそうなんだ」
「なら、なぜ1人でやらない?」
ふむ、リーシュフェール姫様に見初められた者とな。しかも平民が?たったそれだけで100億も出すものなのか?
「どうやらここの聖女様が懇意にしている奴らしくてな。それ以外でも八星、守護者とも関わりがあるようで、なかなか1人にならないんだよ」
どこかで聞いた話だな。
「名前はソーヤ・アングローバー。期限は姫様と婚姻を結ぶまでだ」
「ソーヤ…?アングローバー…だとう!?」
―――ガシッ!
「お、おい急にどうした?ちょっ、痛い、痛いって!」
「どういうことだ?なぜ、あのソーヤという者の名前の後にアングローバーと付く!!」
「そ、そういやこっちじゃ、緘口令が敷かれてるのだったか…」
緘口令?何のだ!言え!言うのだ!!
「く、苦しい…ちょ、離して、離してくれないと話せないだろ!」
おおっとすまない。少し興奮していたようだ。
「あんたホントに、常に冷静沈着、アステリアの凶星とまでいわれたあのクリードなのか?」
昔の話だ。
「いやなに、そのソーヤとかいう者、ファンレーシアでここの聖女と婚姻を結んだらしくてな、しかもこっちじゃ姫様ともそうするとk・ギャー!!」
また、つまらぬものを斬ってしまった。
「あら、クリードさん何やっていますの?殺生はダメですわよ?早いとこ聖女様のとこ行って直してもらって来なさい」
「む、お主は…確か八星の1人の妹とか言っていた…というより、どうやって入ったのだ?隠蔽魔法をかけてたはずだが?」
「クリシュナ・レイ・セトバナよ。つーか、なに隠蔽魔法かけてますか。他の親衛隊の人が入って来れないですわ」
親衛隊のメンバーがぞろぞろと拠点に入ってくる。さすがは聖女様と同じ学び舎だけあるな。私の隠蔽魔法を解除するとは。
「すまぬが誰かこの者を聖女様の下へ連れて行ってくれまいか?」
「あなたが行けば宜しいではありませんか?」
「なーに少し野暮用ができてな。おお、そうだお主、聖女様と同じ学び舎なのであろう。なぜ黙っておった。聖女様とソーヤとかいう死体が婚姻していたことを」
「もう死体決定ですの?」
当然であろう。まだ聖女様は12歳だぞ?それで婚姻とは、きっと政治的陰謀があるな。しかも!二股だとうぅ!!ゆ、ゆるせん!!
たとえ、聖女様が許そうとも、この私が許さん!
アサシンとは法で裁けぬ悪を、天に代わって裁く職業なのだ。
「アサシン辞めたのじゃなかったですの?」
細かい娘は嫌われるぞ?
「しかし、あの男の暗殺ですか…暗殺はいきすぎですわ。聖女様をシングルマザーにする訳にもいきませんしね」
ん?シングルマザー?
「もうすでにお子が…」
「殺す!あの小僧、絶対殺す!!」
「落ち着きなさいって」
む、なんだ体が動かぬぞ。
「私もあの男にははらわたが煮えくり返る思いですわ。お姉さまだけでなく聖女様まで」
「二人とも興奮しすぎではないのか?聞いた話ではその者、迷宮では大活躍。ファンレーシアの迷宮攻略では英雄とかいわれておるぞ?」
私の旧知のファイターがそう言う。
「みなさん騙されているのですわ。いいですか、あの男、迷宮で聖女様のパーティに会った時、何かしているとこを見た事ありますか?」
「ふむ、そういえば見たことないな」
「私が調子に乗って迷宮挑戦して窮地に陥ったとき、聖女様がお助け下さりました。瀕死の重傷を負った私を見返りもなく…そうまさに神のように輝いていましたわ」
そういえば最近、聖女様は我々と会うと後光とやらを発しておるな。うむ、とても神々しい。
「それをその男、頭をはたいてましたのよ!まったく恐れを知らぬにも程がありますわ!その後もじっと観察してましたけど、ずっと後をついて歩いているだけで、まったく何もしなかったのですわよ!?」
なんと、ひものような状態とは聞いたことがあるがそれ程とは!
「あれをなんというかご存知で?あれこそ『寄生』というのですわ!!」
なんと、迷宮で寄生とな!迷宮探索は遊びではないのだぞ。それを…やはり、亡き者にせねば。
「しかし、この間のなんだったか?王都を襲ったメテオを受け止めた魔法、あの魔法の開発者ではないのか?メテオを受け止めることができる魔法を開発しただけでも十分な功績であろう」
「それは違いますわ。あの男は失敗するとばかり思って試させたのですわよ?それを完成させたのは、ひとえに中心に居たお姉さま、聖女様、姫様の3名の功績ですわ。ほんとクラスのみなさんも騙されているのです」
「おい、いいかげん私にかけている魔法を解かぬか。奴を抹殺できんではないか!」
「ですから、抹殺はいき過ぎと言ってますでしょう」
ならばなんとする?このままでは聖女様はいいように使われているだけだぞ。
「私に妙案がありますわ。ここはぜひ私にお任せください!」
◆◆◇◇ 視点変更◇委員長の妹さん ◇◇◆◆
ほんと、お姉さまは家に帰ったら、ソーヤ様、ソーヤ様って、どこがそんなにいいのか。見た目はパッとしない。優しさの欠片も無い。といって男らしいとこなんて見たこともない。いつも聖女様や、回りの方の影に隠れていて、ほんとだらしない。
あんなのはお姉さまに相応しくない!聞けば、聖女様、姫様と来て、今度はお姉さまを含む八星全員を狙っているとか。どこのハーレム王ですか!
このクリシュナ、そんなことは決してさせませんことよ!
「はぁ、あなたはまたそんなこと言って。今後私の変わりに、クラスのまとめ役をするのですよ。いつまでもそのような子供のようなわがままを言ってもダメですよ」
「どこがわがままですか!いいかげん目を覚ましてください!!ほらお父様達もなんとか!」
「良いではないか。アルシュラン陛下も、兄上も、ソーヤ殿の評価は高い。クリスも覚えておるだろう、たった一日でマリセが雷の魔法を覚えて来たのを」
「そんな物は私だって覚えましたわ…少し時間はかかりましたけど」
そうですわ、あの日、お姉さまが帰って来てからですわ。あの男のことばかり話すようになったのは。きっとあの男に悪い魔法をかけられたに決まってます!
くっ、こうなったらいよいよあの件を実行に移す時が来たようですわね。
「まだ、クリスにはクラスのまとめ役には荷が重いのではないか?」
「大丈夫ですわ!この子ならやってくれます。ええ、私はクリスならやってくれると信じてます!」
お姉さま!そんなに私のことを…
「ということで、私は気兼ねなくソーヤ様と婚前旅行へ」
お姉さま!!まさか、私をスケープゴートに?くっ、これもきっとあの男の影響ですわ!早々に決別させねば!!
◇◆◇◆◇◆◇◆
「うわぁああん、うわあぁんん!」
「ほら泣くなって、大丈夫、帰る方法ならちゃんと」
「この役立たずと一緒なんて!うゎああん、お姉さまぁ!こんなゴミと一緒の最後なんてまっぴらですぅう!!」
「…………こいつもう、置いて帰ろうかな?」
しかして、例の案件を実行に移した訳です。その案件とは、
「えっ?オレと迷宮探索?」
「はい、今度私、新たにパーティを組んだのですよ。それでぜひ、スーパー顧問にアドバイスを頂きたくて!」
「…スーパー顧問はやめろな?それならアーチェ達に頼んだ方がいいんじゃないのか?」
「聖女様達だと、私が触れる前に敵が蒸発してしまうでしょ?」
「…それもそうか」
そう、その案件とは!この男を迷宮に誘い出し、1人にしたところでみっともない姿を魔道具で記録し、大体的に公表してやるのです。そう!いわゆる『晒し』というやつですわ!
「えーと、その人たちがパーティメンバー?うわっレベルたけえ!って、アサシン?え、なんかこのレベル見覚えがあるようなないような」
「ほ、ほら、早く行きましょう!」
「ちょっと押すなって。つか、方角違うんじゃ?」
「ここアステリアにある迷宮は【最も深き豊穣】だけではありませんわ。あそこ以外にも様々な迷宮がありましてよ」
そう言って向かった先では…
「うわっ、ボロっ。ここ、大丈夫なのか、あちこち陥没しまくってるぞ?」
「使ってはいけないといわれてる魔法とかバンバン使ってしまった結果ですわね。一部水没してたりもするらしいですわよ」
「なんでまたこんなとこへ?」
そりゃー人知れず、あなたをまっさ・ごほん、
「いえ、こういった所も経験しときたいと思いまして」
と、そこまでは良かったのですが…
「おおっと手が滑ったぁ」
「うぉっ、あぶね!なにオレを攻撃してんだよ!敵なんて居ねーだろ?最近オレを攻撃するのがはやってんのか?」
「ちっ、ちょこまかと」
「…まじでオレ狙ったの?ちょっとこれどういうこと?ん、良く見たらいつかのアサシンさんじゃねーか!」
今頃気づきましたわね。ふふふ、能天気に付いてくる方が悪いのです。さあ天罰の時間です!
「仕方ない、ちょっと距離をとって転移魔法で…」
おおっと変な事はさせませんことよ。
私はその男に近づき、
「おい、あまりそっちに行くな。迷宮内は陥没の危険があると言って置いただろう」
「へっ、きゃぁああ!」
突然地面が陥没し、
「うわっ、こっちまで崩れ…」
「…落ちたぞ、どうする?」
「…尊い犠牲であった」
「おいっ!」
と、いうことがあり、今の私はその男と二人っきり、勢いがありすぎてかなり下まで落ちてしまったのです。
「まあ、よくあるパターンだわな。ほら、泣き止めって。『リザレクション!』」
「ぐすっ、リザレクション使えるの…?」
「まあな。といっても威力は普通のヒール並だがな」
威力はヒール並み?じゃあヒール使えばいいのでは?
「無駄な事してるように思えるか?まあ、リザレクションには大量の魔力が必要って言われてるしな」
「そんな魔法使う魔力なんて持ってますの?」
「ないよ?リザレクションが大量の魔力を必要とするのはそれなりの効果があるからだ。よって、その効果をヒール並みに絞るとな…」
絞ると?
「ヒールの数分の一の魔力で同じような効果が得られるのだ!」
「ええっ!?」
そんなこと初めて聞きましたわ。
「なんせほら、オレって才能ねえからな。なんでも工夫して使わないとあっと言う間に魔力切れだからな」
「才能…才能ですか…私にも才能があれば…」
「ん、才能ならあるじゃね?王立学園のトップクラスだったんだろ?しかも選抜メンバーに選ばれて」
「それでも、お姉さまに比べれば…お姉さまは凄いのです。美貌も、頭脳も、体力も、どれ一つとして私が敵うものなんて…ありません」
そう、私はいつもお姉さまに置いてけぼりです。どんなにがんばっても、どんなに苦労しても、お姉さまの域に辿り着くことなど。
それなのにお姉さまは、王立学園の推薦を蹴って一般の魔術学院に行ったり、誰もが振り向く美貌を持ちながら、こんなパッとしない男になびいたり、才能があるのに、ほんと才能の無駄遣いですわ。
「姉妹のコンプレックスかー。できの良い姉に、できの悪い妹。いや全然できが悪い訳じゃないが、比べてしまうんだよな」
「はい…」
「まあ確かに、お前の姉ちゃん完璧超人だしな。欠点という欠点が見当たらない」
そうでしょうとも!お姉さまは完璧なのです!
「でもそんな姉ちゃん持ってるお前こそが、うらやましいけどな」
「えっ?」
「オレにできないことをやってくれる。だからオレは別のことができる。お姉ちゃんが居てくれるから、オレは安心してこっちのことを任せれるんだ」
任せる…?
「迷宮で寄生してるのも任せてるからなのですか?」
「…いや、否定しないけどな。否定できないけどな。オレだって何かしようとはしてるんだぜ?でもな、良く考えてみろよ、あのパーティでなんか役割あると思うか?たぶんお前の姉ちゃんでもやることないと思うぞ」
…王国でも屈指の剣士、王国一の盾、聖女とまで呼ばれる回復係、最強と言われる魔術師、
「じゃあ、付いて行くなよって話になるんだが、元々、オレが始めたパーティだしな。というか、無理にでもひっぱって行かれるんだが?って、敵が来たな。『インビジブル・セカンド!』」
え、敵?へ、ヘルハウンドの大群…そんな!あんなの私達じゃどうしようも…お姉さま先立つ不幸をお許しください。
「泣くなって。大丈夫、ほら、寄って来ないだろ」
ええ?そういえばいつまで経ってもこちらに来ませんわ?
「隠蔽魔法かけてるからな。よし、さっさと移動するぞ。この魔法、がりがりとオレの魔力食うからな」
隠蔽魔法?ヘルハウンドっていえば、索敵のプロ。そこんじょそこらの隠蔽術じゃ…さっきのリザレクションといい、もしかしてこの男、そこそこできるとか?
「で、なんの話だったか。そう、姉ちゃんの話だったな。うん、姉ちゃんと同じ事をしようとするからダメなんだ。どうだ、闘士とか。そのパラメータだと、魔術師や剣士より、武術家の方が向いてるかもな」
「武術家ですか?」
「そうだ、お、おあつらえ向きの奴がいるな。『アポカリプス・エクステンド!』」
と私に魔法をかけて来て、
「今から言う方法であいつを倒してきて」
「ええ!あそこに居るのヘルタイガーじゃないですか!?上級の冒険者でも数人がかり必要ですよ!」
「大丈夫、大丈夫。ほら、これ」
そう言って私に棒きれを渡してきます。え?この棒きれでアレと闘えと?え、マジで?
「杖術だ、使い方はな…」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「すごい、こんな簡単に…」
「タイガーって言ってもしょせんはにゃんころ、動きさえ見えれば対応の仕方は知れてる。お、ほらあっちにもいるぞ」
「はいっ」
私はヘルタイガーに駆け寄り、えっと、振り上げてきた爪を先端で受けてっと、くるっと回転させてっと。
「うん、やはり筋はいいな。武器の扱い方も短期間でかなり上達してる。色々試せば面白い事になりそうだな」
「もっと色々あるのですの?」
「ああ、武術ってのは千差万別。場面によって使い分けてこそだ。そうだな、靴に鉄でも仕込ませて、蹴脚術ってのもいいかもな」
初めて聞く名前ですわ。ふむふむ、なるほどこうやって闘うのですね。彼は映像を使って説明してくれます。というかこの映像も実はすごい魔法なんじゃ…
「よっと、こんな感じでいいか」
そう言って改造した靴を渡してきます。
「後でアーチェなりユーリなりにちゃんと作ってもらっとけばいいよ。オレの魔力じゃ大したのできないからな。お、ヘルハウンド達がこっち来たな。よし、試してみれ」
「ええっ!?」
そ、そんな急に。そう思いながらも私はヘルハウンドの群れに駆け寄り…これは、風の魔法が付与されて?
私が高速で動き回り、一撃を見舞うたびに、ヘルハウンドの首が飛んでいきます。どこが大した物じゃないの?
というか、どうして私、高速で動き回れるので?そう言えば最初に、なんか私に補助魔法をかけてくれたような…?
「これは、とんでもないな。まるでヘルハウンドが子犬のようだ」
「さすがは聖女様と共に学んでいるだけあるな」
そこへ、アサシンさんとファイターさんが現われそう言います。
「ちょっ、やめっ、だからなんでオレを攻撃すんだよ!」
最初、アサシンさんが手加減してるのかと思ってましたが、アレ本気ですわよね?どうして避けれるので?たしか、あのアサシンさんこの国でもトップクラスの腕前だったはず。
「もうそれぐらいで許してやれよ。なんだかんだでそいつになんかあったら聖女様も悲しむしな」
ファイターさんがアサシンさんを宥めて、
「そう言いながらも、こっちに剣を振ってるじゃない!?ほんとやめてよ!」
「お主の顔を見てるとつい」
「ついでやられちゃたまったもんじゃないぞ!」
あのファイターさんもすご腕なのですが。二人がかりでも、かすりすらしてませんわ。
私は二人と彼の間に入り、
「む!?」
靴で二人の攻撃を受け止めていきます。
「これでほんとに子供か!?我々の攻撃をこうも容易く…いったいアステリアの学院の学習方法はどうなっておるのだ?」
「私、これで闘うの今が初めてですのよ」
「は?」
そうです、学院での学習では大したものが得れませんでした。でもこの数時間で…一部、ほんの一部の方ですが、この男が聖女様や八星の方々を育て上げたと言ってましたが…まさか本当に!?
と、その時一際大きな咆哮が!
「なんだ?こんなところにボスか!?」
そこに現われたのは…
「ケルベロス…地獄の番犬じゃないか!こんな大物がこんなとこに?」
「あっちの方のボス部屋じゃね?扉壊れてら」
「まずいな、アレだけでかいと剣も通らないぞ。せめて魔術師が居れば…」
ええ?私一応、魔術師…のはず?
「まあ、あんな大物と戦う必要は無いわな」
そう言いながら彼は地面になにかを描いています。
「仕方ない、長期戦に持ち込むぞ!決して正面に立つな、常に側面を狙え。少しづつ削っていくぞ」
「だから、戦う必要は無いって」
「知らぬのか?あいつが地獄の番犬と言われている理由を。定めた獲物を地獄の底まで追いかけて来ることから名づけられたのだぞ。倒すしか道はない」
しかし、彼は私たちの背中を押し、
「いいから、ほらそこに乗って」
「な、なにを」
と、ファイターさんが突然消え、
「これは…!?転移の魔方陣か!」
アサシンさんも消え、私は彼に手を引かれ、
「じゃあ、帰ろうか」
迷宮を脱出することとなりました。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「お主、転移魔法が使えるのか?」
「ああ、やっとこないだ完成したんだよ。使い捨て魔方陣が。これで迷宮探索もぐっと捗るな。まあ、魔方陣描くのに時間かかるから、緊急時には使えないのがネックだが」
「いやいや、十分であろう」
そういえば、学院初日になんかそんな物、上映してましたわね。私、シュリちゃんに夢中でよく見てませんでしたわ。
「というか、最初からそれで脱出してれば良かったのじゃ?」
「…いや、最初はそうしようと、ごたごたしてて忘れ・、いや!忘れてないぞ!そう!自信が無さそうな妹さんに自信をつけてもらおうとな!」
慌ててそう言います。自信、自信ですか。
「私、コレを極めればお姉さまのお役に立てますか?」
「そりゃー魔術師は前衛が居てこそだからな。お姉さまはバリバリの魔術師だろ?決して剣持たすなよ?あぶないから」
お姉さま、暫く前から剣の練習もされてましたね。でも、スーパー顧問がそう言うなら間違いないのですわね!
「だから、スーパー顧問はやめろな?」
「私、目が覚めましたわ。あの完璧なお姉さまが選んだ方ですもの。その選択に間違いがあるはずがなかったのですわ!」
「なんか変なスイッチ入ったか?」
分かりました!このクリシュナ・レイ・セトバナ、全力でお姉さまをバックアップして差し上げますわ!
「うっ、ぶるぶるぶる、なんだ急に寒気が?おい妙な事考えるなよ?」
そうと決まれば、そうそうに叔父様(ベルガンディアの王様)に会って連携せねば。
「やめてよ?ほんとに勘弁してよ?」




