第三章 始まりの村完結
◆◆◇◇ 視点変更◇ホーネスト ◇◇◆◆
(ずいぶん久しぶりであるな…)
私の名はホーネスト・バシェード。王都の学院の教師をしている者だ。
最近古い友人からしきりに家に来るよう誘われていて、今日やっと長期休暇がとれたので友人のところへ向かっている途中である。
(ほんとに矢のような催促だったであるな)
普段、筆不精な友人から何度も手紙が届くようになり、なにか起こったのか心配であったが、なかなか長期の休暇がとれず数ヶ月経ってしまった。
急ぐように道を進みもう少しで村に着く頃、
「おい、止まれ。お前いったい村になんのようだ!」
急に現われた少年達に馬車が囲まれた。
(ふむ、かなり訓練された者達のようだ。私が気づかないとは…。しかし盗賊には見えないな、どちらかというと騎士か、兵隊のよう動きだな)
「お前達はなんだ、私は王都の学園の教師をしている者である。と同時に魔術師でもある」
一泊おき、
「私と私の物を傷つけようとするなら、それなりの覚悟を持つのである」
私は魔術師だ。こう言っておけば大抵は引き下がる。
だが、彼らはそうではないようだ。少し魔法を使うか?
「俺はこの先の村で、自衛隊隊長をしているロックバート大佐だ」
「自衛隊とな?」
「そうだ。村を守るための部隊だ」
ふむ、警邏部隊のようなものか。
「私はただ、古い友人より村を訪ねるよう催促を受け、ここに参っただけだ」
「分かった。ならば村までの警護を行おう。おいお前、先に村に知らせに行け」
「サー、イエッサー!」
少年とは思えぬきびきびした態度であるな。
いったいこの村では何が起こっておるのか。
「警護とは物騒であるな。このあたりは魔物でも出るであるか?」
「いや、このあたりの魔物はすでに一掃している。余程の事がない限り襲われることはないだろう」
「一掃とな…いったい誰がそのようなことを?」
「俺達だ。ここ数ヶ月の訓練により力を増し、付近の魔物を一掃した」
いやいや、ムリだからそれ?子供のいうことだからか?せいぜい数匹を倒してそう思っておるのかもな。
「しかし、ソーヤ殿の指導はすごいですね。俺達の伸びしろを見つけて最適な方法を教えてくれる」
「うむまったくだ。数ヶ月前まで、空いばりしていた頃が懐かしい」
ソーヤと言う者がこの子達の親分でもしておるのか。会ったら少しお灸をすえてやるのも良いかもしれんな。
村に着くと、
「やあホーネスト殿、遠路はるばるようこそおいで下さった」
「久しぶりであるな」
そこには古い友人であるこの村の村長が迎えに出て来ていた。
「とにかく、すぐにでも家に来て下さるか」
「わかった赴こう」
「ロック君もありがとう。引き続きパトロールよろしく頼むよ」
「サー・イエッサー!」
家に着いた私達は早速話をすることにした。
「話とは他ならぬ娘のことだ…」
「アーチェス殿のことか」
「うむ、実は…娘には魔法の素質があったらしくてな」
ふむふむ、確かにここの村長の家系は、遡れば王宮魔術師に辿り着く。素質はあって当然であろう。
「それがどうしたであるか。王都で魔法でも学ばそうということかね」
「いや、どうであろう…たしかに道徳は学ばせたいが…魔法はすでに…」
「歯切れが悪いであるな。私とお主の中だ、多少なら口聞きできよう。ただ本人を見定めてからになるがな」
「そ、そうだな。本人に会ってもらうのが一番かもな。ちょうど今の時間は…」
そう言って案内された場所は、森に入ってすぐの場所、かなり整備された空間であった。
そして、そこで行われていたことは…
「………………っは、私は今何を見ておるのだ!?」
「人を傷つけずに無力化するには、電撃が一番だ。まあショック死はあるだろうが、距離も場所も問わずに使える便利な魔法だからな」
「でも、この髪が逆立つの何とかならないの。もうほんとやになっちゃう」
「もっと慣れれば、オレのように本人に影響を及ぼさないようにできるから…つーかもっと威力落とせ。オレが死ぬだろ!」
「ほんとアーチェは不器用だね」
「笑い事じゃねー」
そこでは3人の少年達が魔法を?使っていた。しかも見たこともないような魔法をだ。
それぞれの間で激しい火花が散っている。辺りは雷が落ちたような状況だ。
「もう今日はおしまい!最後に…「おいやめ…『サンダーフレア!』」
少女が魔法を発動した瞬間、あたりに雷撃を撒き散らしながら、一本の木が粉々に砕け散った。
「いったー、なにすんのよ」
「森林破壊スンナ」
「そ、村長殿、これはちょっと私の手には負えないでござる!」
思わずござる語になるのもしかたがない。
◇◆◇◆◇◆◇◆
と、とにかく冷静になるでござる。
ここはどこ。答え、王都より馬車で4日ほどの距離にある、ハーヴェスト村でござる。
わたしは誰。答え、王都の学院の教師をしている、ホーネスト・バシェードでござる。
今見てるのは何。答え、………………。
いや現実逃避をしてもダメでござるな。というかもうござるはよいであるか。
「あなた誰?」
「おおう、私か…私はだな…」
「この方は王都で教鞭を振るっているホーネスト殿だ」
しどろもどろになっていたところを、村長殿がサポートしてくれる。
「王都の教師?」
「う、うむ、そうである」
「なんでそんな人がこんなところへ?」
「それはだな…」
村長殿は答えづらそうにして、
「とにかく一度家に戻って、ゆっくり話をするかね」
そう言って全員で家に戻って行った。
「まずはだな、ホーネスト殿へ頼みたい事があるのです」
「ふむ、まあ先ほどのことを見れば大体予想がつくであるな」
「ええ、アーチェはすでに魔法を極めています」
「えっ、極めてんの?」
「いやいや、極めてはいないって」
少年の一人が言う。
「君は?」
「オレはソーヤ、まあこの3人のまとめ役みたいな?」
「誰がまとめ役よ?」
「君がソーヤ君か。ん?ここに来るまでに会った自衛隊の少年が言ってた子かね?」
ソーヤ君はビクッとなり、
「いや…あれは…その…そんなつもりはなかったんだけど、そう、空想話をしてたら、結構のりのりになっちゃって」
そこで顔を上げ、
「やった事は反省している、だが後悔はしない!」
「かっこよく言ってもやりすぎは、やりすぎだよね」
「最近ユーリがつめたいよ!」
もう一人はユーリ君と言うのか。
「とにかく、君達は先ほど何をしていたのかね」
「うん、なんか村長さんが、子供が魔法を使えるとそれを攫いに来る人がいるかもって言ってたんで、自衛の手段を身につけようと」
「全然自衛じゃないよね!?」
「なんか最近、アーチェがめきめきと力をつけてきて…」
そう言うとソーヤ君はアーチェス君を見、
「最初はちょっとした電撃を教えただけなのに、かってに雷撃まで進化させちゃった」
「させちゃったって…そんな簡単な物ではないはずだが」
「うふふ、なにせ私って天才だしー、いずれ聖女と呼ばれるのも時間の問題よね!」
「うざ、アーチェうざー」
「うざくないわよ!」
「聖女?アーチェは聖女になりたいのか?」
村長さんは驚いた風に訊ねる。
「え?当然でしょ、冒険者目指すならその頂点である聖女を目指すのは当たり前よね!」
「…アーチェよ、聖女とは冒険者ではない」
「な、なんだってぇー!?」
「聖女とは神帝国の正教会の頂点である。数多の聖職者を導く者だ。冒険などするはずがなかろう」
「ええー、マジでー!」
「アーチェぇ…」
二人とも呆れておるみたいだな。
「まあ聖女になぞ、なりたくてもなれるものではないであるしな」
「それが、そうとも言いきれなくてなあ…」
「ふむ…」
「こないだソーヤ君の治療でリザレクションを使って見せたのだ」
「なんと!いや、それに似た魔法であろう」
「じゃあ使って見せようか?」
「おい、やめ…」
「サクッとな」
「いでー!だから何でお前はオレを人体実験に使おうとすんだよ!しかもサクッとじゃなくザクッといったぞ!!」
『リザレクション!!』
「聞けよ!くそっ、最近身体ステータスまで上がって手に負えねえ」
おお、確かにヒールとは違った魔力であるな。巻き戻したように飛び散った血も消えていく。それにザクッといった傷はヒールではこんなに短時間で直らないである。
「確かに、彼女が野に出れば大変なことになるであるな」
「しかもユーリ君もだね」
「彼まで使えるのかね!」
「試してみる?」
「おいっ!」
「やらない!やらないから!アーチェもそれ引っ込めて!」
しかし、アーチェス君はなんと言うか…少々道徳を勉強するべきではあるな。
「まあ、そんな訳で、この村では娘達を匿っておれなくてな」
「なるほど、そこで王都にでも行って正式に学院生なり、兵士なりになり、身を守ろうということであるか」
「そういうことです」
ふうむ。とはいえ、レベルが違いすぎる。へたに公表すれば大事になりそうであるな。
「とりあえず常識はずれな魔法は隠すとして、学院にでも通ってみるであるか」
「おお、お願いできますか?」
「ちなみに彼女らの年齢は?」
「娘が8歳、あとの二人は6歳です」
「むむ?アーチェ君はいいが、一般の学院では7歳にならぬと入学できぬであるな」
「おお、そうでありましたな…」
私達が思案していると、そこへ、
「閣下、アーチェ閣下!一大事でございます!!」
「何事なの?」
「ゴブリンが、ゴブリンの集団が現われました」
「やっぱり来たわね…ソーヤの言う通りになったみたいね」
そう言うとアーチェ君は立ち上がり、
「よし!決戦の準備をせよ!わが自衛隊の威力を、見せてつけてあげましょう!!」
◇◆◇◆◇◆◇◆
え、え、どういうことなの?
引き続きホーネストござる。
急に少年が飛び込んで来たと思ったら、ゴブリンとか。
「どういうことだね!?」
「この村にゴブリンの集団が向かって来てます!」
「なんと!数は?」
「100ほどかと」
100…ばかな!このままでは村が全滅してしまう。
「至急避難を!」
「すでに避難は別の者が指示しております」
「分かった、私の馬車も使うとよい」
「え?いえ馬車は必要ありませんが?」
「む?馬車がなければ逃げれないであろう」
「逃げる必要はありません。ここではゴブリン100など、物とも致しませんから」
そこには、ほがらかに笑う少年がいた。
これは危機管理ができておらぬのか。
「村長、これはまずいのではないか?」
「なぜ私より先に娘に報告なんだか…」
「それでは私も防衛に行きますので」
そう言うと少年は家を出て行った。
アーチェ君達3人もすでに居ないな。
「これはまずい。子供達はモンスターのなんたるかを理解しておらん。これはごっこ遊びですむ問題ではないであるぞ」
「そうですなあ…あ、ホーネスト殿はどうされますか?」
「とにかく子供達を連れ戻し、至急王都へ応援の依頼を出す。私の魔法があれば多少は持ち堪えれるかも知れん…」
そう言い、私は王都へ魔法で伝達を行い、家を飛び出し子供達の居る場所へ向かった。
「いい!?いよいよ決戦が始まるわ!ここにいる全員欠ける事なく戦いを終わらす!」
「「おお!!」」
そこには、まるでこの村の子供達全員が集まっているようであった。
「それでは全員持ち場につけ!」
「「おおお!!」」
そう言うと子供達は一糸乱れぬ行動で散会して行った。
「ちょ、ちょっと待つである!」
「あ、先生。早く避難してくださいね」
「いや、避難するのは君達だろ!」
「大丈夫ですよ。ここは完全防備の要塞ですし」
一人の少年が答える。というか要塞?どういうこと?
「まあ、見てください」
少年の指差す方を見てみると、
「あそこに塹壕があります。それ以外に落とし穴や、様々な罠を設置しております」
「むむ…」
確かに、素人作りではなさそうな罠が多数ある。
よく見ると至るところに、防衛用の設備が設置されている。
「むむ、この村に入って来る時は気づかなかったぞ」
「そりゃー、外から罠が見えたら意味ないじゃないですか」
いやいや、そんな高度な…
「あと1時間で開戦だ。それぞれやることは分かってるわね」
「「はい!」」
っく、こうなったらもう仕方ない。私が子供達を守らなければ。
この村も幸運であるな。ちょうどゴブリンの襲撃時に私がおるのだからな。
「む、ソーヤ君は彼らにまざらないであるか?」
私は少し離れたところにいるソーヤ君を見つけた。
「まあ、オレは魔力も体力もないので、戦力にはならないからなあ」
「それならば、私と一緒に彼らを止めてくれないか」
「ここまできたらもう、あいつらに頼るしかないんじゃないかなあ」
「確かにアーチェ君の実力は高いであろう。しかし他の者は…」
「いや、みんなアーチェなみの実力者だよ?」
ため息をつき、
「なにせ数ヶ月で周辺の魔物を一掃したからなあ」
「その話、来る途中でも聞いたが、本当なのかね」
「ああ、一掃しちゃったからこその襲撃だから」
ふむ、
「周りの魔物を一掃したせいで、餌が無くなり森奥のゴブリンの集落に影響が出たんだろう。そんで今度は人間を餌にしに来たんじゃね?奴らからしたら、森の他の魔物も人間も、同じ餌だしね」
なるほど一理あるであるな。
「先生は回復魔法使えます?」
「うむ。リザレクションなどという伝説級は無理でも、メガヒールくらいなら大丈夫である」
「それならオレと一緒に後方支援お願いします」
「いやいや、私が前衛にでないと…」
その時、遠くでゴブリンの雄たけびが聞こえてきた。
「もう来たであるか」
「まあ、とりあえず様子見ててください。まずは状況を把握するのが一番でしょ」
雄たけびを上げながら次々と村に向かってくるゴブリンが見えた。
だがその瞬間、突然ゴブリンどもが消えた。
「ああ、落とし穴に落ちたな。やっぱ知能は低そうだな」
「落とし穴?一列に?」
「ええ、村を囲むように穴を掘って隠してるんですよ」
突然前衛が消えたことで、狼狽しているゴブリン達へ向かって、横から子供達が突進をかけるように現われた。
「まずい、子供達がたどり着く前に奴らを…えっ?」
ゴブリンにたどり着いた子供達は、まるでバターを切るようにゴブリンを輪切りにしていく。
え?輪切り?
「ちょ、なにあの剣?魔法剣?」
「魔法剣といやー魔法剣かも?ユーリが補助魔法かけてんだ」
その後もゴブリンを次々と倒していく子供達。彼らの方には、ほぼ被害はなさそうだ。
なんだ我が軍は圧倒的ではないか!あーはっはっは!!笑い事じゃないよ!
剣もともかく、王都の近衛騎士団もかくやという動きをしてるって、ありえないでござる。
そこに、ひときわ大きな声がしたかと思うと、ふた周り以上大きな固体のゴブリンが現われた。
「あれは、ゴブリンロード!?」
「やっぱ居たか…」
「さすがに子供達では無理で…ん?」
ゴブリンロードが出たと同時に子供達が撤退していく。誰一人向かって行こうとせずに?
なにこの軍隊?ほんとに子供なの?
「出たわね!いよいよ私の出番ね」
そう言うとアーチェ君はゴブリンロードと睨み合い、
「いくわよ!「おいちょっとは手加減しろよ!」『サンダーバースト!!』」
アーチェ君が魔法を発動させたと同時、ゴブリンロードが居る一帯を包むような球体が現われ、カッと光ったかと思うと、その中を光が狂うように踊った。
それが終わり、跡に残ったのは黒い墨のような何かしかなかった。
「ふっ、ざまあみなさい」
そう言うとアーチェ君は後ろに倒れていった。
「おいお前達、閣下が命がけで得たチャンス、物にするぞ!全員我につづけー!!」
「「おおっー!」」
「ソーヤ君」
「はい、なんでしょう」
「もう帰ってもいいかね?」
「いいんじゃないですかねえ」
この村も幸運であるな。ちょうどゴブリンの襲撃時に私がおるのだからな。キリッとか超はずかしい…
それからしばらくして、
「村長殿」
「はい、なんでしょう」
「たしか、攫われる心配をしていたのですな」
「ええ」
「どこに心配をする必要があったのですかな?」
「……」
◆◆◇◇ 視点変更◇村長さん ◇◇◆◆
私の名はエクセス・アングローバー。東の魔女と呼ばれる、アーチェス・アングローバーの父であり、この村の村長をしておる。
うむ、何を言おうとしたんだったか、そう娘だ、娘の事だ。なんだか知らんが、わが娘は東の魔女と呼ばれるようになっていた。
ゴブリンの襲撃から数日後、王都より救援が来た。どうやらホーネスト殿が戦闘終結の報告をしてなかったらしい。
そこでとうとう詳しい話をしなくてはならなくなった。
わが娘は、リザレクションに加え、今までにない新たな魔法系統、雷系を作り上げ一躍有名になってしまい、王都よりすぐにでも魔法学院へ来るよう言われたのだが、
「えっ、イヤよ?ソーヤ達も一緒に行くならともかく、どうして私が学校なんて行かなきゃならないの?」
「アーチェは学校行くべきだと思うなあ」
「なによ、あんたは私が居なくなっても、なんとも思わないって言うの?」
「いや、そんなことないって、ちょっと…こうなんていうか道徳という物をだね…」
「ふっ、私はいずれ聖女と呼ばれる存在よ。道徳なんて後から着いて来る物よ」
「まだ言ってんのか?」
「聖女は冒険しない?はんっ、私は別に神帝国の聖女になんてなるつもりないし、私の時代は冒険者の頂点こそが聖女なのよ」
「オレ、アーチェのそんなとこ尊敬するわー」
そういう訳で、ソーヤ君とユーリ君が学園に入学できるまで保留となった。
「ふむ、ユーリ君はパラディンを目指しておるのであるか」
「はい、ボクは魔法はアーチェには及ばないし力もあまりないので、ソーヤの役に立てるなら、盾役のパラディンが一番いいと思ってます」
「そうか、ならば私が王立学院への紹介状を書こう。しかし、生半可な覚悟ではすごせぬぞ、なにせ貴族がほとんどであるからな」
「はい、覚悟ならとっくに済ませてます!」
「うむ、よい返事だ。君ならば王立学院でも十分やっていけるであろう」
ユーリ君は王立学園に行くことが決まった。
それにしても私の仕事が急に増えた。なにせアーチェの雷魔法を教えてもらう為に、各地から魔術師が集まって来たのだ。
というかもうここに魔法学園作ればいいんじゃね?
魔術師といえば貴族、それ以外でもめずらしいもの見たさの色々な人々が訪れる。毎日問題ごとばかりでハゲソウダ。
ソーヤ君とユーリ君の両親?彼らは我関せずをつらぬいておる。ちょっとは手伝えよう!
その内、村に移住を希望する者もどんどん増えてきた。
なにせ、魔物一掃で脅威がほとんどない。なおかつ自衛隊のおかげで治安はたぶん、この国一番だ。
周囲の脅威が取り除かれたことで畑も広げれる。うむ、はたから聞けばいいことずくめだな。自分がそれを担当する当事者でなければな…
おっと愚痴ばかりになってしまったな。
「村長さんなんか最近、頭薄くなってきたね」
おい!
「私、お父さんがハゲとかやだよ」
「いっそ秘書とか雇ったらどうなの?」
「ちょっと村長さん、やってきた魔術師どもがなんか勝手に、研究所作ってんだけどどうなってんだ」
「おい、村長殿、頼んでおいた資材はどうなっておる」
「あ、あんたうちの村でなにやってんだよお」
秘書か…うむ秘書はいいな。そういえば知らないうちに財政が良くなっておるな。
私は現実逃避をしながら、
「よし秘書を雇おう!じゃあソーヤ君きみに決めた!!」
「ええっ」
「あとはよろしく!」
私をハゲ呼ばわりした罰である。
◆◆◇◇ 視点変更◇ソーヤ ◇◇◆◆
「フォーーーー!!!!」
思わず変な叫び声を上げてしまった。
だってあれなんだぜ、目の前に列車がある!それもすげーかっこいいの!!
いままでの村や前世での町などでは、思いっきり剣と魔法の世界で、てっきり文明レベルはそんなに高いことはないと思ってたのに、王都では城壁に大砲が設置されていた。
門を守る兵はなんと、肩に銃を担いでいた!
そして入ってすぐに、線路のレールみたいなのがあってなんだろなって思ってたら…列車が来た。それもずんぐりむっくりな箱型じゃなく、いたるとこに翼のような装飾がされ、所々キラキラ光ってる。まさに幻想的ってのが似合う姿だった。
「あれなに!あれ!?」
そこから出てきた人の内、数名が円盤のようなものに椅子がついた乗り物に乗っている。セグ○ェイかっ!
しかも円盤は宙に浮いておる。スゲー。
これはあれか、実は異世界じゃなくて超未来に飛ばされたってオチじゃないよな!?
「ははっ、王都に来た者はみなそのように驚かれるのだよ」
「いや驚くって、生活のレベルがあきらかに違うだろ。なんで村はあんなんだよ」
「ほら上を見てみろ」
「えっ?」
そこには…でっかい飛行船が飛んでいた。おお、飛行船まであるのか…
「どうして王都と他でこんなに差があるの?」
「モンスターのせいだよ」
「ふむ」
「世界にはモンスターがあふれているからね。列車を引きたくても線路はすぐにダメにされる。飛行船も飛竜なりにすぐ落とされる。すべてはこの城壁の中でしか使えないからね」
「なるほどー、しかし、雷撃の魔法が新系統とか言ってたから電気なんて無いと思ってたんだけど、そんなことはないんだね」
まだ明るいのに、町の街灯は明々と点いている。
「ん、電気?なんだそれは」
「え、電気で動いてんじゃないの?」
「あれらの動力は魔石だよ」
「ええっ!?」
ということは、魔法で動いてんのか!つーかはえーな円盤。
「あれぶつかったり、事故ったりしないの?」
「魔法で接触しないようにできているからね。目的地を念じるだけで移動してくれる」
ト○タも真っ青な性能だな!
「ほらそっちの二人も、ぽっかり口あけてると虫が入ってくるぞ」
「あわあわわ…」
二人には刺激がきつすぎるようだ。
「なにこれ…私達の村とは比べ物にならないじゃない」
「ほんと…ボク達こんなとこでやっていけるのかな」
「ふむ、もうすぐかな…」
「なにが?」
そのとき王都を囲ってる城壁が輝き始めた。
「おおお!」
「ええ!?」
「……」
そしてオレ達をここまで案内してくれていた茶髪のねーちゃんは輝く城壁を背にし、
「ようこそ、王都アステリア・バームへ!」
輝く笑顔でそう言った。惚れてまうやろ!?