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アイ・ファンタジア  作者: ぬこぬっくぬこ
第二部◆前略、…異世界で嫁が出来ました!?◆
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第十一章 お姫様役再び

◆◆◇◇  視点継続◇リーシュ  ◇◇◆◆


「えーと、迷宮の管理者か何かでしょうか?あとチンしたのオレじゃないんで、なにとぞよしなに」


 ソーヤがびくびくしながら初老の人物に問いかけるでおじゃる。


「違う違う、迷宮そのものなのだ。大きな迷宮にはな、意思が宿り、それがこのように姿をとることができるのじゃよ。今はお主らに合わせて、人として形どっておる訳じゃな」

「あら、シュリはもう父上様のものですから、この姿こそが本当の姿ですわよ」

「…向こうの迷宮はどうするつもりじゃ?」

「弟が残ってますから問題ありませんわ。新たにラスボスも設置するようにして来ましたし。今は鋭意、魔素を集めてるとこですわ」


 二人が説明してくれるには、この世界の古い迷宮には人格のようなものがあり、それがそれぞれの迷宮の特徴となっているとのことでおじゃる。

 自分達のように、迷宮のラスボスとして登場することもあれば、まったく放置状態のとこもあったり、入って来る冒険者をただからかうだけの迷宮とかもあるらしいとのこと。

 そう言えば、どっかの迷宮は人をおちょくるようなトラップばかりで、とっても意地悪な作りだけど、そこで死んだ人間はいないとか聞いたことがあるでおじゃる。


「まあ、わしらはいわゆる、迷宮という生物と思ってくれて良いじゃろ。ほらそこいらにいる犬や猫と一緒だ」


 スケールが違うでおじゃるがな。


「しかし、ということは、迷宮という生物が魔素を食ってくれてるおかげで、地上は人が住める環境になってるってことか…その上、たまった魔素を結晶化し、人々が再利用できるようにしてると、迷宮様々だなー」


 ソーヤがそう呟く。


「ちなみに、魔素の濃い、魔境の方には迷宮は無いの?」

「うむー、あっちの中心にはのう、メイズ・オブ・ラビリンスイーター、すなわち、迷宮を喰う迷宮があってな。回りの迷宮を自分にとりこんでしまう物があるのだ」

「共食い?」

「まあ、そんなもんだ。我々のように古き者ならともかく、新しい迷宮はすぐに取り込まれる。いくら広大でも、一つの迷宮では魔素の吸収もしきれぬでな」


 ふむふむ、魔境にはとんでもない物がおるのだのう。それはもう、迷宮という名のモンスターでおじゃるな。


「んー、そこの迷宮攻略したらどうなるの?」


 また、ろくでもないことを考えているでおじゃる。さすがに魔境はまずいでおじゃるぞ。


「ふむ、それは名案だのう。攻略されて力も弱まれば、奴とて…」

「父上様、危ないことはおよし下さい。向こうの迷宮はこことは桁が違います」

「いや、聞いただけだって。誰も行こうって言ってないよ?」


 そんなこと言ってまた、ファンレーシアのようになるんでおじゃろう?また、麻呂は置いてけぼりでおじゃるか…。


「ほら、またブルーになって来てる。置いて行きゃしねーって」

「ほんとうのほんとでおじゃるか」

「ほんとうのほんとだって。いやまて、だから行かねーって。あっちのモンスターひでーんだから」


 そう言えば、ソーヤは前世で魔境、経験済みでおじゃったな。


「ようーし、そうと決まれば、お主、わしが直々に特訓をしてやろう」

「聞けよ!行かねーつってんだろ!!」

「なあに、500年もすれば、お主とて立派な迷宮だ!」

「…え?オレをどうするって?人間やめるの?」


 何言っておるかこのじじい。人間は500年も生きられぬでおじゃるし、迷宮にもなれんでおじゃる。いかなソーヤとて…無理じゃろ?


「ほんと話を聞かねーじじいだな。おい、めんどくさいことになる前に帰るぞ」

「そうですわね、父上様の魔法陣でうっ、ふにゃ」


 じじいが手を掲げると、シュリのボンキュッバンの体が縮んで…もとの妖精並みの大きさになって、そのまま眠ってしまったでおじゃる。


「おい、何すんだ!ん?何これ、見えない壁が!?」

「そ、ソーヤ!?」


 ソーヤが空中を叩いておるでおじゃる。む?これは、麻呂とソーヤとの間に見えない壁が!


「なんかパントマイムみたいだな」

「そんな、のんきなこと言ってる場合でないでおじゃろ!」


「そちらのお嬢ちゃんは…まあ、いいかの。地上へ送り届けよう。わしは女子より男の方が良いしの」


 そのセリフを聞いたソーヤは蒼白になり、


「助けてくれ麻呂姫!やばい、このじじいヤバイ!!ひぃいい、くんあ、こっちくんなって!」


 随分、ぱにくっておる。


「なあに、痛いのは最初だけじゃ」

「ひぃいいい、た、たっけて麻呂姫ー」

「ソーヤ!今、助けるでおじゃる!でびるだ…」


 と、その時、急に風景が変わって、ここは…?迷宮の外?


「姫様…?」


 メリ姉?それにアーチェ達まで…あのじじい、麻呂を迷宮外へ転送したでおじゃるか!?



◇◆◇◆◇◆◇◆


「あれ?姫様だけ?ソーヤは?」

「そ、そうでおじゃる!ソーヤが、ソーヤの貞操がピンチでおじゃる!」

「ええ!?」


 麻呂は迷宮でのことを説明する。


「そんなことが…にわかには信じがたいね。でも、ゲートも無い、魔方陣も無い、こんなとこにいきなり転送できるとすれば…」

「88階層?どうやって行けばいいのよ?」

「それが…麻呂は手を引かれていただけでおじゃって…」


 あの場所はどう行ったか覚えておらぬでおじゃる…


「とりあえず、最下層まで行ってみましょ。あとは掘るとか?」

「だめだよアーチェ。迷宮の地形を変えると、崩壊の危険が…」

「今は背に腹はかえられないでしょ?大丈夫よ、いざとなったらユーリのアイギスで受け止めればいいじゃない。そのあと私か、おじゃる姫の魔法で…」

「麻呂は行かんでおじゃる…」

「えっ?」


 そう、アーチェが行けば麻呂が行く必要は無いでおじゃる…ソーヤにはアーチェさえ居れば…

 と、突然麻呂はアーチェに張り飛ばされ、


「ちょっ、アーチェ!」

「何するでおじゃるか!」

「ハンッ、なっさけない顔ね。こんだけみんなに心配されてまだ分からないの?ソーヤには私さえ居ればいい?なにそれ!それこそ私がずっと不安に思ってたことと一緒じゃない!」


 ど、どういうことでおじゃるか?


「ソーヤにはユーリが居ればいい、ソーヤにはメリ姉が居ればいい、ソーヤには脳筋が居ればいい。ソーヤには!おじゃる姫だけが居ればいいって!私が居なくても何も問題は無いってずっと、ずっと思ってたわよ!」


 アーチェは一筋、涙を流し…


「ソーヤってあれでしょ、結局のところ、私が居なくても、なんでも自分で解決しちゃうじゃない?私達と違って大人っぽくて…私ってなに?居ても居なくてもいいじゃないって」


 アーチェがそんなことを考えて…?普段の態度からはとても想像もできなかったでおじゃる…


「そ、そんなことないだろ?ほら、迷宮でも、こないだのグリフォンでも、アーチェが居なければ…」


 メリ姉がアーチェにそう言うけど、


「そんなことあるわよ!私がやらなきゃ、きっとソーヤは別の方法でなんとかしてるもん!」

「アーチェ…」

「そんな中でも、おじゃる姫は…一番ソーヤに頼りにされてたじゃない!迷宮でもずっとおじゃる姫のターンだったじゃない!」

「それは、アーチェを危険な目にと…」


 麻呂がそう言ったとたん、またアーチェに張り飛ばされた。


「あのソーヤが!?馬鹿言ってんじゃないわよ!その気になれば死人すら蘇らすのよ?どこに心配する必要があるのよ!」

「痛いでおじゃるぅ」

「はっきり言って私はおじゃる姫が憎かったわよ?突然現われて、私のソーヤを取って行くんだから」

「麻呂だってアーチェが憎いでおじゃる!麻呂はアーチェほどソーヤに想われおらんでおじゃるぅ!」


 麻呂とアーチェは抱き合って泣いて、


「うわぁああん!」

「わぁあん、うぁああ!」


「ソーヤはもう、帰って来たら折檻だね」

「うん、刺されてもいいと思うよ」




◆◆◇◇  視点変更◇ソーヤ  ◇◇◆◆


「………………」

「随分愛されておるのう」


 アーチェがそんな風に思ってたなんてな…なんだかんだ言ってもメリ姉が言ってたことが正しかったって訳か…アーチェがあんな無茶するのもオレが原因だったんだな。


「人生の先輩から、ぜひアドバイスをください」

「わし、人でないんだがのう」


 麻呂姫が消えた後、オレがごねるモンで、外の状況を見させてもらったんだが、まさかの修羅場。これもう、助けてなんて言える状況じゃないな。

 ちなみに、さっきのホモっぽい発言は単に、女より男の方が気兼ねなく鍛えれるって意味だったらしい。…だよな?じゃないとオレも泣くぞ。


「しかし、見れば見るほど、才能の無い男じゃのう」


 オレをじろじろ見ながらそう言いやがる。そんなことは言われなくても分かってんだよ!


「どうやってここまで来たのじゃ?おぬしの能力では1階層もあやしいであろうに」


 そうだよ。1階層で死にそうになってんだよ。いくら鍛えたからって、迷宮相手に勝てる訳ないだろ?


「困ったのう、お主では5千年かかっても無理じゃな」

「わざわざ口に出して言うなよ!もういいだろ?さっさと外に出してくれよ」


 ほんと失礼なじじいだな。もう一回チンすんぞ。


「まあ、まあ、そう急ぐ事もなかろう。うむ、せっかくだ、わしがお主らのこじれた糸、ほどいてしんぜようぞ」


 あ、やな予感…




◆◆◇◇  視点変更◇メリンダ  ◇◇◆◆


 ほんとソーヤはこんな子供の頃から女の子を泣かせて、ろくな死に方しないよ。

 私はそっとため息をついた。

 それにしても二人とも、憎い、憎いと言いながらもしっかり抱きしめあってまあ。結構うまく行くんじゃないかねえ。


「メリ姉さん、ここはボク達だけでも行って様子を見てくるしか」

「そうだね」


 と、突然地面が揺れ出したかと思うと、一部が崩れ落ち…


「階段…?」

「これは…罠かな?」


 かもねえ。


「私が様子を見てくる。3人はここで待ってな」


 私はそう言い階段を覗き込んで、


「待ってメリ姉、私も行く。おじゃる姫、あんたさっき身を引くみたいな言い方してたけど、ソーヤの居ない世界なんて堪えられるの?」

「それは…」

「私は堪えられないわよ。500年も迷宮に囚われてなんて、させるもんですか。私はソーヤの為なら命だって惜しくないわよ」

「麻呂も同じでおじゃる!元々ソーヤに貰った命、ソーヤの為なら!」


 アーチェは姫様に手を差し出し、


「なら、行きましょう。私達二人、まるで光と闇ね。きっとどっちが欠けてもダメなのよ。そしてその二つがあれば、どんな困難だって乗り越えられるわ」

「そうでおじゃるな。麻呂とアーチェは二人で一つ。そうしてソーヤを支えて行くでおじゃる!」

「いい顔するようになったじゃない。それでこそ私の影」

「言うでおじゃるな、麻呂の光。あれ?なんか麻呂、不利でおじゃらぬか?なんか麻呂がアーチェの影武者のような…」


 普通は逆だわね。王族が影武者とかー。


「ちょっと待ってよ二人とも、ボクだってソーヤの為なら命を賭けることは厭わないよ」


 あわててユーリが言う。今の二人に入っていくのは無理じゃない?あんた男だし。


「人種差別だよ」


 性別の壁は厚いよ?

 まあともかく、この3人ちょっと危ういかもねえ。そこはソーヤがなんとかするんだろうけど。


「とにかく行ってみるでおじゃる。ソーヤの事でおじゃる、きっと5分くらいで帰って来て、実は仮想空間で500年分修行したんだって言いかねないでおじゃるし」


 いやー、漫画じゃないんだから。ありえない…よね?




◆◆◇◇  視点変更◇ソーヤ  ◇◇◆◆


「あなん言っとるが、仮想空間で500年修行するか?」

「えっ?仮想空間作れるの?」

「うむ、作れるぞ。ただし、時間は外と一緒だがな」

「意味ねーじゃん!」


 つーか500年も修行なんて堪えらんねーよ!よく、漫画やラノベでそういうシーンあるが、よく考えてみろよ?500年も娯楽無しで同じとこに居れると思うか?5年だって無理だぞ?


「おい、シュリ、シュリってば、いつまで寝てんだ、早く起きてよ」

「無理だぞ。魔素の供給を止めておるからな。しばらくは休眠状態だ」


 そうこうしている内に、アーチェたちが88階層に辿り着く。


「ここだ!ここでおじゃる。ここが、88階層でおじゃる!」

「そうなのかい?外から入ったからなんか実感が沸かないけど…確かに、この壁、見たこともない材質だね…これはまさか!オリハルコン!?」

「えっ、あの賢者の石っていわれてる?」


 メリ姉が壁に手をついて材質を調べている。オリハルコン?おお、ほんとだ、サーチしたらそうでるな。ユーリも驚いて辺りを見渡している。


「よく来たな冒険者ども!」


『マイクロウェーブオーブン!』


「うぉっ、あぶなっ!いきなり何するのじゃ!」

「ちっ、はずしたわね。よし、もう一度」

「ちょっ、ちょっと待つである。挨拶中に攻撃は無いであろう?ほんと話を聞かぬ娘じゃな」


 じいさんはドラゴンの姿をとってアーチェ達を出迎えたのだが、有無を言わさぬアーチェの攻撃に呆れている。

 だが、オレに言わせれば、じいさんもどっこいどっこいだと思うぞ。


「お主らこれが見えぬか!」

「ソーヤ!?」


 じいさんは檻に入れられたオレを見せる。うん、お姫様ポジション全開だなーオレ。


「ソーヤ…待ってなさい、すぐに助け出してあげるから!」


 アーチェがオレを指差して言う、うん、アーチェはいつ見ても男前だなあ。あれ?これ普通、逆じゃね?


「フッ、お前達、この者を助けたければ、我にその力を示すがよい」


『マイクロウェーブオーブン!』


「熱っ、ちょっ、やめっ」


 もしかしてこのお方、オレを助け出した方にとか考えてたんじゃねーだろな?即効でやられてるぞ?


「もしかしてこの娘、わしを即効でチンした張本人か!?」

「そうだよ、ちなみに1人でな」

「………………」

「あ、あと、麻呂姫も同じの使えるから」

「………………」


 争いごとで物事を解決しようとしない方がいいと思うぞー。この二人を争わせたら、この迷宮なんてあっというまにチン(沈)だぞー。



◇◆◇◆◇◆◇◆


「う、うむ、争いごとは良くない、良くないな。ちょっ、やめっ、やめろと言うとろうが!」


 そこでやめるような奴らならオレは苦労していない。


「お、おい、お主からもなんとか」

「なんとかー」

「ふざけるでないぞ!」


 とりあえずオレを開放するとかどうかね?

 じいさんはアーチェの攻撃を避けながら、話題を変えようとする。


「おい、お主ら、悩み事があたったのではないか。どうだ、一つわしに人生相談でも。なんせこの世界で最も長く生きておる存在の一つなのだぞ?」


 あんた、人じゃねーだろ?


「悩み?なんのことよ?」

「先ほど、この者を取り合って喧嘩しておったのだろう?」

「それならちゃんと決着付いたわよ?」

「そうでおじゃるな」


 なんと、いつのまに。それはヨカッタ。オレ刺されなくてもいいんだよね?


「そんなことよりさっさとソーヤを返しなさいよ!」

「そうでおじゃる。ソーヤはこれから大変でおじゃるぞ!」


 …オレ刺されないよね?

 じいさん、なんとかー。

 じいさんはオレを見て、


「うむ、わしにも最古の迷宮としてのプライドがある!このまま返す訳にはいかぬな。よし、出でよわが眷属よ!!」


 じいさんが手を前に突き出すと、前方に無数の光が集まり…


「これは…!この迷宮のボス連中!?」


 そこには、ここの迷宮のボス達がずらりと並んで居た。あ、なんかフラグ立ったな。


「ふふふ、どうだ。これ程のモンスター、いくらおぬし達でも倒せはしまい」


 ばしばしフラグを立てまくるじいさん。オレもう知らねーぞー。


『サンクチュアリ!』


「目がぁー、目がぁぁー!」


 オレとメリ姉達はもちろん回避済みだ。馬鹿なじいさん…


『デビルダム!』


 アーチェと麻呂姫によって次々と倒されていくボス連中。だから争いごとはやめろっつったんだよ?


「言ってないであろう?思っただけであろう?むむむ、仕方あるまい、わしを本気にさせたその報いというものを、思い知るが良い!」


 ああ、またフラグ立てて。頼むからオレを巻き込まないでよ?


「最も古き、最も単純で、最も強力な魔法じゃ、その名も…」


『アブソリュート・フレア!』


 と、じいさんの正面に、小さな赤い光点ができたかと思うと、一瞬で膨らみ、迷宮のボス連中ごと燃やし尽くしながらアーチェ達に向かって行く。

 これは…フレアの上位版か?凄い威力だな。つーかこんなとこでこんな魔法を使ったら…


「ちょっ、ちょっと、これはやばいんじゃないのか!?」

「ふふふ、今更慌てても遅い!わしの力、思い知ったか!」

「いやいや、迷宮崩壊するんじゃないのか?ちゃんとオレを地上に戻してよ?」

「えっ、そっち?お主、仲間のことはどうでも良いのか?」


 ん、アーチェ達のことなら大丈夫だろ。向こうにはユーリが居んだから。それよりこっちは大丈夫なのかよ?


「なーに案ずることはない。この部屋はオリハルコン製だぞ、どのような魔法であれ崩壊の心配はないわ」

「それはいいことを聞いたわね」

「なんだと!?無傷だと…?」


 魔法はすでにアーチェたちに到達している。だがしかし、まあ案の定、透明な盾がアーチェ達を守っている。オレもその魔法欲しいなー。


『サンダーバースト!』『ディスペル!』


 おいっ、今何しよーとした!その魔法、核爆発並みの威力あんだぞ!?こっちにはユーリ居ないんだぞ!死ぬだろ、オレが!!


「これは…ソーヤに無効化された?何すんのよ!」

「それはこっちのセリフだ!こっちが消し炭になんだろうが!」

「ソーヤ…分かったわ。そいつに操られているのね。大丈夫!私がなんとかしてあげるから!」

「聞けよ!頼むからオレの話を聞いてください。おい、やべーぞ、これオレが消し炭になるフラグじゃないか!?」


 メリ姉、やっぱりアーチェがこんなんはオレの所為じゃないと思うんだ。なんで助けにこられて敵対してんだよ?ほんと勘弁してください。


「おいっ、早く降参しろ!じゃないとお前もオレもあの世行きだぞ!」

「いや、わしにもプライドと言うものがだな」

「だったらオレを巻き込むなよ!いっとくがさっきの魔法、発動してたら、あんたの自慢の最終魔法とやらの10倍は威力があんだぞ!」

「いやいや、そんな馬鹿な…」


 くおー、こうなったら魔方陣だ!なーにオレのなけなしの魔力を振り絞れば、このじじいの結界などやぶってみせる。…みせないと死ぬしな。


「いいんでおじゃるか?」

「相手はあのソーヤよ!私達が束になっても勝てるかどうか…大丈夫、たとえ塵となっても復活させるから!」

「分かったでおじゃる!」


『サンダーフレア!』『デビルダム!』


 うん、同時はムリ。



◇◆◇◆◇◆◇◆


 アーチェと麻呂姫が同時に魔法を放ってくる。オレに…なんでこっちなんだよ!?


「天罰じゃない?」


 それはないよぉメリ姉…

 しかして二人の魔法がオレに届く寸前、オレの目の前に炎の壁が立ちふさがった。

 ん?壁じゃないな、これは…火の鳥…フェニックスか!


「ご無事ですか父上様」


 そう言って火の鳥が縮んで人型になる。そこには、シュリ(アダルトバージョン)が。


「シュリか…助かったよ。でも、じいさんに封印されてたんじゃ?」

「父上様の危機を察しまして、こういうときの為に溜めていた魔力があるのですよ」


 危機…危機かあ…あいつらマジでオレを殺しにかかって来たのか?ひでー。


「また1人増えたわね。なにあいつ」


 アーチェが麻呂姫に問いかける。

 麻呂姫はシュリの胸元を見つめ、


「…知らない人でおじゃる」

「おいっ!」


「まいったわねー。やっぱりソーヤが相手だと一筋縄ではいかないわね」

「うむ、こうなったら、麻呂とアーチェの魔力を一点に集中して…」


 …ああ、死兆星が見える。


「もう、そろそろ許してあげたら?」


 ユーリ…やっぱりお前だけだよ!頼りになるのは!


「なに言ってるのよ。早くソーヤを開放してあげないとだめじゃない」

「そうでおじゃるぞ」

「…あれ?振りじゃなかったんだ。いいかい、二人とも。別にソーヤは操られてなんて…」


 そいつらに言って聞かそうとしても無駄だぞ。


「いくわよおじゃる姫!」

「分かったでおじゃる!」


 ほらな。


『『デュアルスペル・ライジン!』』


 おおーすげー、教えてもない複合魔法つかってら。雷が人の形をとり襲い掛かってくる。おおっ、かっけー。


『アイギス!』


 と、オレとシュリの前に半透明な盾が現れる。人型の雷は何度もその盾に雷の剣を振り下ろしている。一撃当たるたびに、辺りにはとんでもない電撃がちらばってるな。

 無限にも思える時が過ぎ、やっと人型が薄れていく。あ、ちょっとちびったかも。


「ば、馬鹿な、オリハルコンの地面が…」


 人型が立ってた所は地面が陥没していた。


「何すんのよユーリ!」

「二人とも違うでしょ!狙うのはソーヤじゃなくてあっち!!」


 ユーリがじいさんを指差す。うむ、そうだぞあっちだぞ。


「えっ、わし?いや、もちろんわしだな…うむ、…降参します」


 プライドはどうしたじじい!

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