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アイ・ファンタジア  作者: ぬこぬっくぬこ
第二部◆前略、…異世界で嫁が出来ました!?◆
23/90

第八章 結婚、そして子供が出来…?

◆◆◇◇  視点変更◇???  ◇◇◆◆


 わたくしは目覚めた時、すでにわたくしが成すべきことを理解しておりました。

 わたくしがなぜ、こうして生を受けたか…それはこの世界の異分子である、異世界人の排除、または封印。

 異世界人がこの世界に及ぼす影響…それはこの世界の存在その物を揺るがす可能性が…あるかも知れない。そう判断された結果、わたくしという存在が産み落とされたのだと思われます。

 先程は世界の意思とおっしゃいましたが、世界に意思があるわけではありません。わたくしは、ただ、発生したウィルスを駆除する為に抗体が生み出されるがごとく、そうして生み出されたのでしょう。


 しかし、生み出されたばかりのわたくしは幼く、視る事しかできない日々が続きました。

 件の異世界人はすぐに見つかりました。幼くとも芯のある、周りに振りまわされても恨む事なく、人に傷つけられても憎む事もなく、ただ、ただ、一生懸命に生きている1人の人間でしかない。

 自我を持つこととなったわたくしは、排除が必要な存在とはとても思えなくなりました。

 それからも、その異世界人をずっと視続けて…たしかに彼がこの世界に与えた影響は図りしれません。

 しかし、排除など…なにせ視てて面白…こほん。まあ、彼が一生を終える分ぐらいは待ってもいいかなと思っておりました。


「ふむふむ、だったらなんでこんなことすんの?」


 あれ?ソーヤさん?どうしてここに…?ここはわたくしの仮想世界、普通の人が来れる場所じゃ…って、死んでる!?いえ、仮死状態!?

 画面の向こう、すなわち、先ほどまで迷宮にいたソーヤさんがぐったりしてます。そして目の前には半透明なソーヤさんが…


「いやー神の力が影響してんのなら、アポカリプスで神並みに力を上げたらいけるかなって、試して見たんだわ」


 ええ!?何やってますの!


「なんとかアーチェは転送できたんだがー、体が動かなくなってなー」


 そりゃ当然でしょ!ただでさえ魔力の少ない体。アポカリプスを発動した時点ではじけてもおかしくありませんわよ!


「なぜ、それ程までにアーチェさんを?」

「それ程ってこともねーだろ?それなりに大切に思ってんぜ?」

「とてもそうは見えな…まあ、ソーヤさんはけっこう恥ずかしがり屋さんでしたか」


 なんだかんだ言って好き放題させてますしね。


「それよりも、これはいったいどういうこと?なんでパラレルワールドなんて?」

「…別にソーヤさんをどうこうしようと言うつもりはありませんでしたわ。ただ、アーチェさんと結ばれるとなると…あなた1人ならば見過ごしもできますが、子供ができるとなると、その子まで魂が混ざり合ってしまっては手が付けられなくなるのです」

「なるほどな…つーことは、子供を作らなければ問題がない訳か?」


 そうは言いますが、今後5年、10年、成長したアーチェさんに迫られて、なんとかなるおつもりですか?


「…無理だな」


「ですが、わたくしも鬼ではありません。そ・こ・で!ソーヤさんとアーチェさんの絆を確認させて頂きたかったのです!」

「…なんか出歯亀な感じがしてきたぞ」


 いえいえー、そんなことある訳ないじゃないですかー。わたくし世界の一部ですよぅ。


「それに、思った通り、二人の絆は固い物のようですね。ほらご覧なさい」

「ん?これは迷宮内を映した鏡か?」


 そこには、迷宮のボス部屋まで再びたどりついたアーチェさん達が…


「ちょっと早く扉を破壊できないの!?」

「おお、なぜそっちからアーチェが!?」

「中に居たんじゃないの?」


 てっきり中に居るとばかり思ってたアーチェさんが通路から現われて、それまで扉を破壊しようとしていた二人が驚いています。


「早くしないとHENTAIさんが!」


「HENTAI言うなよ!」

「ここで叫んでも向こうには聞こえませんでございますわ」


 アーチェさんは扉に手をあて、


「アポカリプス!アポカリプス!」


 そう言っています。


「なにを言っておるのだ?アポカリプス?なんか魔剣の名前とかか?」

「なに言ってんのよこの厨二。中に居るHENTAIがアポカリプスって唱えたら、急に体が光りだして…そして無理やり私を転送させたのよ」

「なるほど転移魔法か。ならば自分も転移しておるのではないか」

「そうかな…?でもだいぶ無理してるように見えたの」


「そうだ!思い出した。アポカリプス。たしか、レジェンド級の魔法で…命を削る代わりに神の力を得る魔法だ」


 しばらく考え込んでいた厨二会長がそう言いました。


「厨二会長…」


 あら、言いえて妙でしょ?


「命を削って…?」

「アーチェ、ダメだよ。そんな得体の知れない魔法…それに、アーチェがそこまでする理由も…」

「理由ならあるじゃない。私達、いったい誰のおかげで助かったの?」


 アーチェさんは扉に手をあて、なおも魔法を使おうとしています。


「…アーチェの言う通りだね、ボクも手伝うよ。確かにあのままだと命を落としてただろうし。命の恩人には報いないと!」


「ユーリ…お前が男じゃなけりゃなあ…」


 ほんと残念な方ですよね。


「「よし、いくよ!」」『アポカリプス!』


 そして二人の体が輝きだし…


「くっ、きついわね…魔法で破壊するわよ」

「分かった!」


 二人はなんなく迷宮の扉を破壊しました。


「なんと、これ程のゾンビが!」

「先生、いけるかい?」

「なに、ただのゾンビだ。数が多くとも…よし、会長、副会長は私の指示に従うである」


 ホーネストさんと会長、副会長、メリンダさんはゾンビとマジックリビングアーマーを攻撃しだしました。

 アーチェさんとユーリさんはソーヤさんの所へ行き、


「ちょっと、HENTAIさん生きてる?」

「まずいよ…脈が…」

「こら!起きなさい!」


 そう言って…


「早く戻らないと大変なことになりそうですよ」

「戻るってどうやって?」

「ここの鏡に飛び込めばいいですよ」

「いや、あの往復ビンタが終わってからでも…ちょ!押すなよって、おい!」


 ほらほら、あまり心配かけるものじゃありませんですわよ。


「絶対楽しんでるだろ!」


 そんなはずありませんわよぉ。


「お、おい、やm…いだだだだ!やめて!往復ビンタはやめて!」

「ちょ、ちょとアーチェ、もう気が付いてるみたいだよ」

「あら、ちょっと夢中になっちゃって」

「ビンタに夢中ってなんだよ!」


 そしてアーチェさんはソーヤさんの頭を胸にかかえて、


「でも、良かった…」

「…………」


 いい雰囲気ですわね。ちょっと妬けてございますわよ。

 そしてそのままソーヤさんを膝枕して、


「まったく無茶するわねー」

「そう言うおまえこそな」

「まあ、仕方ないわね。私の魅力にやられたんじゃねえ」

「ハハハ、ワロス。いででで」


 また軽口を言ってアーチェさんにつねられています。


「もう大丈夫なの?」

「ああ、おかげでな」

「だったら少し寝ててもいいわよ。とりあえず戦闘終わるまでは無茶しないようにね」

「そうか、それじゃお言葉に甘えて…」


 そう言ってソーヤさんは目を閉じました。




◆◆◇◇  視点変更◇ソーヤ  ◇◇◆◆


 ん?ちょっとのつもりがけっこう寝ちまったか。

 あれ?アーチェの服装がウェディングドレスに…元に戻ったのか?


「あら、やっと目が覚めたの?急に気を失うんだもの。そんなに私とのキスが良かったの?」

「ここは…オレが誰か分かるか?」

「なに言ってんの?ソーヤでしょ。どっか頭でも打ったの?」


 どうやら元の世界に戻れたようだな。


(もう十分視させてもらいましたから)


 例の声が頭の中で響く。まったくなにが視せてもらいましただ。この出刃亀神め。


(ふふふ、それでは、その出歯亀はおいとましますよ。お詫びに神の奇跡をお見せ致しますわ)


 とたん、部屋中に光り輝く桜の花吹雪が吹き荒れた。おい、ちょっと、普通ここは天使の羽とかじゃねーのか?あと威力強すぎ。

 吹き荒れた桜吹雪は上空に集まり、そしてゆっくりと落ちてくる。これ誰が掃除すんだろな。


「綺麗ねー。なんだかんだ言ってもソーヤものりのりじゃないー」


 そう言ってアーチェが笑いかけてくる。オレの仕業じゃねーんだがな。まあ、あえて言うまい。


「ふふふ、寝言で言ってたのばっちり聞いたわよ。私のこと大切に思ってんだってね?」


 …まさか、仮想世界でのことずっと寝言で言ってたんじゃねえだろうな。


「ん?なんかそれだけはっきりと口に出してたわよ。不自然な風に。もう、照れくさいからって寝言風に言わなくてもー」


 くねくねすんな。つーかあれか、あの出歯亀神、わざわざそこだけ口に出させたな。これからは出歯亀ではなく出歯神と呼んでやる!あれ、なんか出っ歯の神みたいだな。いでっ!なんか桜の花びらが刺さったぞ。


「それじゃあ、続きでもしましょうか。たった二人きりの結婚式になっちゃったけど」

「そういえば誰も居ないな。今何時なんだ?なんだか真夜中っぽいけど」

「もうみんな寝静まってる頃よ。あと数時間もすれば、お日様も顔を出すかもねー」


 そんなに寝てたのか。え?その間ずっと膝枕してたの?


「ふふ、久しぶりにじっと顔を見れたわねー」

「ずっと見てたの?なんか、恥ずかしいじゃないか」


 今日のアーチェは随分しおらしい。いつもこんなだったらいいのにな。

 そして、アーチェはオレに指輪を渡して、


「こほん、それでは誓いの証として、愛する二人に指輪の交換をしていただきます」


 神父の真似事をしながらそう言ってくる。

 そして、伏目がちに自分の指輪をオレに差し出してくる。アーチェでもこんなかわいらしいシーンが来るとは。なんか感動してきたな。

 オレ達は互いに受け取った指輪をはめ、


「あれ?これ抜けないぞ。ちょっときつかったのか?」

「ああ、それ、相手が死ぬまで抜けないから」

「は?」


 え?なに?なんだって?


「なんか祝福の指輪って言うらしいわよ。指輪を交換した互いが死ぬまで外れないんだって」

「それ祝福じゃなくて呪いだろ!」


 ほんとにもう、アーチェはもう!さっきまでの感動を返して!

 とりあえず呪い解除で…


「あ、私が全力で補助魔法かけてんで、たぶんソーヤでもはずせないと思うわよ?」

「何やってんだよ!」


 ほんとだ効きやしねー。


「後、無理にはずすと爆発するようにしてるから気をつけてねー」

「………………」


 それ、一番先に言えよな。オレの指が泣き別れするだろ!




◆◆◇◇  視点変更◇執事さん  ◇◇◆◆


「女王様なにを見ていらっしゃるので」

「あら、セバス。いえなにちょっとホールの監視カメラをですね」


 監視カメラ?ああ、あのアステリアより輸入した、遠くを見る事ができる魔法具ですか。

 おや、聖女様達が映ってますな。


「覗き見は関心いたしませんが…」

「いえいえ、何をおっしゃっておられますやら…ほら安全確認はちゃんとしませんとね。なにせ今や我が国の英雄ですしね」


 そう言いながら笑っていますよ。

 しかし、英雄ですか…たしかに、昼間のあの場面、メドゥーサをまったく寄せ付けない強さ。絶句して声も出ませんでしたね。


「ほんとにまだ子供だというのに、アステリアの教育はいったいどうなっているのでしょうな」

「いえいえ、彼と聖女様が特別なのですわよ。八星といえども上級者に毛が生えた程度。しかし、あの二人は異常ですわね。おっと、リーシュフェール姫も、最近はとんでもない力を身につけているのでしたっけ」


 しかし、笑い事ではないですぞ。ほんとこれ、アステリアに一物あれば、他国などあっという間に征服されてしまいますぞ。


「あら、そうなるとソーヤ様が帝王ですかね?彼が国につくことはないでしょうしね」

「随分彼をかっておられますな。それ程までに?」

「ええ、彼は私達の観念とは別の思想を持っています。まるで別の世界から来たかのような…」


 ハハハ、そんなことあるはずないでしょう。


「まあ、どちらにしろ、多くの血が流れなければよろしいのですが」

「そうですわね。でもソーヤ様なら一滴も血を流さず統一しそうですわね」


 ハハハ、そんなことあるはずないでしょう。ないですよな?


「我が国が建国以来、ずっと攻略を目指してきた迷宮『標なき宮殿』…たった一日で攻略されてしまいましたな…」

「そうですわね。まあ、攻略されるかもとは思ってましたが、たった一日とは…」


 未だに夢のようですな。しかし、確かに迷宮から立ち上る光、メインホールに飾ってある巨大な輝く魔石…迷宮は攻略されたのだ、そう攻略されたのだ!


「迷宮が攻略されたことにより、この国の治安もどんどん良くなって行くでしょう。商業大国にとってはこの上ない情勢になりますわね」

「そうですな。女王様もこれからどんどん頑張ってもらわねばですな」

「…セバスこそ、頑張ってくださいね」


 そんな牽制しても無駄ですぞ。きっちりと業務はこなしてもらいますからな。




◆◆◇◇  視点変更◇ソーヤ  ◇◇◆◆


 う、なんか重…セイカが布団の中にもでも入って来たのか。それにしては全身が重…って、吸うなよ!朝からオレの魔力吸うなよ!

 翌日朝方、なんか体が重いと思ってたら、ピヨ子様がオレの魔力吸っていた。おい、干からびたらどうすんだよ!しゃれになんねーぞ。


「ん?どうしたのソーヤ」

「いや、こいつが朝っぱらからオレの魔力を吸っててって、なんでアーチェが居るんだ?」


 たしか昨日の晩、別々の部屋に入ったはずだが?あれ?壁がなくなってないか?


「ほら、新婚初夜でしょ?別々に寝るのも変かなと思って女王様に言ったの。そしたら壁壊してもいいって」

「良くねーよ!ここ王宮だろ?王宮破壊してもいいのかよ!?」


 いかん、早く救世主ピヨ子様にアーチェの魔力を吸ってもらわねば。今度はどこを破壊するやら。


「うーん、お父様どうされたので」

「セイカか、ごめん、起こしちまったか」

「いえ、そろそろ起きようと思ってた所です」


 セイカがそう言って起き上がってくる。ん?なんか見慣れない剣が…


「あ、これですか。女王様が報酬にとくれたんですよ。その名も…」

「いや、いい。見なかったことにするから」

「なんでも国宝で、大地をまっぷたつにしたとか言ってたわよー」


 いいって言ってるだろ!もうオレに面倒かけるなよ!大地なんかまっぷたつにした日にゃ、即効で逃げるぞ。


「私、実は二刀流ってちょっと憧れてたんです」


 憧れるだけにしろよな。そんな伝説級、同時に振るったら世界が終わるぞ。


「そんなことより、アーチェほら、こいつに朝ごはん頼む」

「仕方ないわねー。ほら、こっちいらっしゃい。あ、なんか今のやり取り夫婦っぽい」

「なにが夫婦っぽいでおじゃるか!」


 そこへ、ドアを開け麻呂姫達が入ってきた。


「卑怯でおじゃる!こっそり同じ部屋にしているでおじゃる!」

「いいじゃないー、私達新婚さんよー」

「むぐぐぐ、兄上、兄上ぇ!早くアステリアに戻るでおじゃる」


 まだ、魔方陣作んなきゃなんねーから、数日かかるぞ?


「いっそのことここで麻呂も挙式を…」

「何言ってんの重婚禁止よ?」

「早く!早く、魔方陣作るでおじゃる!」


 いや、今日の魔力、先ほどすっからかんになったんだが。


「くっ、このアホウ鳥めっ。ん?なんかこのヒヨコ、光っておらぬか?」


 ん?そういや光ってんな。おいアーチェ、一気に与えすぎじゃねーの?


「そんなこと言っても、この子が好きに吸ってるから私にはどうしようもないわよ」


 と、一際強く輝いたと思ったら…姿が変わっていき、


「なんだこれ?迷宮のラスボスだから、てっきりフェニックスとかかと思ってたのに…フェアリー?」


 そこには…一糸纏わぬ妖精さんが。なにこれ、超かわええ。おお、ふわふわ飛んでおる。


「きゃー、なにこのかわいい物体!もしかして私とソーヤの愛の結晶?そう言えばどことなく私達に似てるわねー」

「そんなはずないでおじゃる!よく見るでおじゃる!…そこはかとなくアーチェに似てるような気も…そんなはずはないでおじゃる!」

「なんか目もとはソーヤにそっくりだね」


 ユーリまで夢中になって妖精さんを見ている。


「ソーヤ…これどこに行けば買えるのだ!」


 突然ガシッと肩を掴まれたかと思うと、アルシュラン陛下がそう言ってくる。いや、売りもんじゃねーから、買えないかと。


「ほらほら、私ママよ。ほらママって言ってみて」

「…まー」


 おお、しゃべったぞ!ほうらパパだぞう。パパって言ってみて。


「…ぱー」


 おお、かわえええ!ダメだコレ、これはきっと人をダメにする魔法。


「うらやましいでおじゃる…麻呂も!麻呂にも愛の結晶が欲しいでおじゃる!」


 うん、そのセリフはやばいからやめような。


「それじゃあ、立派な名前をつけてあげないとね」

「えっ、名前ならあるだろ?」

「どんな?」


 なに言ってんだ、昨日から何回も呼んでんだろ、つって、心の中でだけか。こいつはな、救世主


「ピヨ子様」

「「………………」」


「ねえ、シュリーフェルトとかいいと思わない?」

「麻呂とソーヤの名前を取って、ソリーとかでどうでおじゃるか」

「何でおじゃる姫となの?」


 おい、無視すんなよ!



◇◆◇◆◇◆◇◆


 結局名前は、アーチェのシュリーフェルトにすることに決まりました。

 ピヨ子…なにが悪いのか、分かりやすくていいと思うんだがな。なあ、お前もそう思うだろ?あれ、なんでアーチェの方へ行くの?


「しかし、一体なんなんだろなこの妖精。サーチしても判定不能だし。ただの妖精じゃないとは思うんだが」


 妖精さんはきょとんとした顔でこっちを見る。うむ、かわええ。


「ほら、できたわよー」

「なにが?」

「いつまでも素っ裸じゃアレでしょ。服作ったのよー」

「ほう、器用だな。って、オレの布団!なに布団切り抜いてんだよ!」

「それしか材料なかったしー」


 自分の使えよ!あと、それ王宮の備品だからな。後で怒られても知らねーぞ。


「ソーヤ、では行こうか」

「どこへ?」


 アルシュラン陛下がなんか戦闘準備状態で立っている。


「迷宮に決まっておるだろう!我輩も妖精さん欲しい!」

「…まだ、早いんじゃないかなあ」


 この陛下、目標を見失ってるような。さすがに、そうすぐ迷宮のラスボスは復活しないかとー。

 それに暫くは魔方陣の作成にかからないとな。


「ソーヤ殿、ソーヤ殿はご在籍か。少し相談があるのだが入っても良いだろうか」


 扉の向こうで黒騎士さんの声がする。ほら、みんなちゃんと見とけよ、アレが普通なんだぞ。いきなりバーンとか、壁バーンとか、特に壁バーンはやめろよ。


「入ってもいいよ」

「うむ、例のヒヨコの件でな。飼育方法を詳しく聞きたかったのだ」


 部屋に入ってきた黒騎士さんはそう言ってヒヨコを差し出す。すると、妖精さんがヒヨコに近づき、キュッと抱きついた。


「な、なんだこのかわい死にしそうな生物は!」


 かわい死にって初めて聞いたな。河合さんが死にそうなのか?


「おお、そうだ。まだ一匹居たではないか!」


 アルシュラン陛下が我が意を得たとばかりに言う。


「どうだそのヒヨコ、我輩に100兆ほどで売ってはくれまいか」

「…兄上ぇ、国が傾くでおじゃるぞ?」


 この兄上…いつかロリコンをこじらせて、国を売っぱらうんじゃないか?


「申し訳ありません。この子はファンレーシアの守護獣としてって、え?これ、このヒヨコが成長した姿、え?…申し訳ありません。この子は私の子供ですので」


 急に言い訳が変わったな。


「実は、この生活環境の所為か、かわいいものに目がなくてな」


 そう、こっそりと言ってくる。なるほど。


「どうすればいい。どうすればこのように成長するのだ!」

「んー、とりあえず、魔力を餌としてあげればいいんじゃね?だよなあ」


 オレは妖精さんに問いかけてみる。妖精さんはアーチェの方に手を伸ばし、


「まーま、まーまー」

「あら、どうやらお腹がすいたようねー」

「分かるのか?」

「じゅる…」


 …黒騎士さんよだれ、涎たれてるよ?


「おっと。うむ、そうか、魔力だな。うむ、私も何を隠そう、魔力は高い方なのだ」


 アーチェより数桁落ちるがな。


「ようしパパ頑張っちゃうぞう」


 そこはパパじゃねーだろ?女性に戻るんじゃないの?つーかそっちの相談は?


「何を言っている。今それどころじゃないであろう」

「…いや、いいならいいけど」


「どうだ、我輩の魔力も捨てたモンでないであろう」


 ちょっと目を放した隙に、アルシュラン陛下が妖精さんに魔力を与えている。


「うむー、せめてここにいる間だけでも。そうだアーチェ、隣の部屋、我輩とリーシュの部屋となっておる。ここと同じように壁をバーンとな」

「そうでおじゃる!アーチェだけ卑怯でおじゃる!麻呂たちも一緒の部屋にするでおじゃる」

「あ、それじゃあ逆の部屋、ボクの部屋だからついでに」


 だから壁バーンはやめろっつってんだろ!

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