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アイ・ファンタジア  作者: ぬこぬっくぬこ
第二部◆前略、…異世界で嫁が出来ました!?◆
22/90

第七章 パラレルステージ

◆◆◇◇  視点継続◇ソーヤ  ◇◇◆◆


「いきなり現われたと思ったら人にキスして、なにこの変質者!」


 ちょっ、蹴るなって、やめ、金的は止めろよ!


「ちょっ、ちょっとアーチェやりすぎだよ。それにほら、地が出てるよ。ちゃんとお淑やかにしとかないと追い返されるからね」

「あら、わたくしとしたことが、ほほほ」


 そう言いながらも蹴るのは止めないのな。


「それにしても君だれ?急にあんなことするなんて、アーチェじゃなくても怒るよ?」

「なに言ってんだ?オレだよオレ」

「…オレオレ詐欺の方ですか?」


 なんでだよ!?え?マジで知らないの?いくらサプライズと言ってもこれはないだろ!


「女王様…ちょっと女王様!これいったいなんの冗談!?」

「うわ…上空に向かってなんか叫んでいる…ちょっとユーリ、病院連れて行った方がいいんじゃない?」

「そ、そうだね。ちょっと君、そこまで一緒しようか。大丈夫、いい医者知ってるから」


 病気じゃねえよ!やめてよ、オレ正常ですよ?


「あ、逃げたわね」

「何事だ?」

「あら生徒会長さん、もう準備はよろしいので?いえ、先ほど変質者に…」

「なんと、そんなことが、最近暖かくなって来たからな。注意せねばな」

「そうですわねー」



◇◆◇◆◇◆◇◆


 ハァ、ハァ、いったいこれどうなってんだ?魔法にしてはリアリティがありすぎる。魔素の動きもないし。

 とりあえず宿にでも…


「は?ソーヤさん…うちにはそんな人は泊まってませんが?」

「何言ってんだよ。オレだよオレ」

「…オレオレ詐欺の方はご遠慮させて頂いております」


 マジか。宿屋のおかみさんまでオレのことを知らないときた。

 これはあれか、パラレルワールドってやつか?異世界のパラレルワールド…もうわけわかめ。


「まいったなあ。今のオレ無一文だぞ?せめて服装が元の冒険者のに戻ってりゃなあ」


 そうなのだ、今のオレのカッコは例の結婚式で着替えさせられたタキシードのまんまで、荷物がなにも無い。武器も無い、財布も無い。女王様、せめてぽっけにお金入れてくれてたら良かったのに。

 とりあえずお金を稼がねば、迷宮にでも行けばいいのか?あ、身分証も無いや。まあ隠蔽の魔法で…いやいやいや、武器もねーのに、死ぬよな。

 学院にでも行ってみるか、1人くらいオレのこと知ってる奴が居るかもしれねーし。


「ちょっ、ちょっとそこの君、今ここに、学生が4人ほど通りかからなかったであるか?」

「え、4人?見てないなあ、って、ホーネスト先生!?」

「ふむ、私のことを知っておるのか?」

「オレだよオレ」

「…オレオレ詐欺の方に知り合いは居ません」

「もうそれはいいから!」


 ずいぶんと慌ててるな。


「何かあったので?」

「うむ、学院の方で揉め事があったらしくてな。我が校の生徒が迷宮に行くとか言ってたらしく、それを止めようと探しておるのだ」

「詳しく」

「なんでも、我が校に優秀な生徒がおってな。まあ、ちょっとばかり派手にやらかして、生徒会長に目をつけられたらしく、直々に指導に当たるとゆう話になったらしくてな」


 どっかで聞いた話だな。あれは確かオレ達が入学して間もない頃だっけ。そういえばアーチェの身長がやけに低かったような…


「ちなみに今は何年何月で?」

「2022年7月であるが?」


 2022年ってオレが学院に入学した年だな。そんで7月ってーと、生徒会長に連れられて迷宮行った時か、オレが居なくてもアーチェは相変わらずなのな。


「その生徒って、アーチェ?」

「ふむ、君は彼女の知り合いなのかね?いや、生徒会長の方か?」


 オレのカッコを見ながらそう言う。


「いや、これは違うんだ。ちょっと結婚式から抜けだ…って、アーチェ達ならもう迷宮着いてるんじゃないか?」


 あの時、迷宮に行く準備してたとするともう入ってる頃か。


「なんと!これは早急に迷宮に行かねば!」

「あ、オレも付いて行っていい?」


 そしてあわよくば魔石を拾って…


「いや、迷宮は危険であるぞ。君のような子供が…」『サンダー!』「は?」

「ふふふ、なにを隠そうこのオレは、雷の魔法の伝承者なのであーるぅ!」

「な、なんだってぇえ!」


 そう、この世界が、オレの居なかったと仮定された世界なら、まだ雷魔法は普及していないはず。ということは、雷魔法はオレの専売特許!あれ?これで食っていけんじゃね。ようし、パパ、雷魔法塾作っちゃうぞう。


「ぜひ!ぜひ!雷魔法の伝授をぉぉ!!」


 やっぱ食い付きがいいなホーネスト先生。研究バカは今も変わらずですね。でも、今それどころじゃねーだろ?


「こんなとこで何やってんの?」

「おお、メリンダ殿。いや、雷魔法の伝授をだな」

「子供達が迷宮に向かったって聞いたんだけど、違ったの?」

「いや違わないであるが?」

「だったらなんでそんなことしてんの?いっぺん死んどく?」


 そこには息を切らしたメリ姉が立っていた。


「あ、メリ姉」

「オレオレ詐欺の方は…」

「まだ何も言ってないだろ!」



◇◆◇◆◇◆◇◆


「こんなとこでオーガ?」


 うむ、以前と同じだな。以前と違うとこは、


「ガァアァア!!」


 こんなに好戦的じゃなかったってとこかな。迷宮に入って2階層に着いたと同時にオーガが現われた。以前は満腹状態で襲って来なかったが、今は随分お腹が減ってるらしい。ホーネスト先生とメリ姉の二人とで、攻略速度が速かったからかな。


「まずいね!ちょっと時間かかりそうだよ」

「せめて足止めができれば、私の魔法で…」


 相も変わらず前衛不足。ホーネスト先生とメリ姉は二人掛かりでオーガの攻撃を受け止めている。しかし、足止めか。


「ちょっとホーネスト先生。魔石少し分けてくんない?」

「今は報酬の分け前の話をしている場合ではなかろう」

「違うって、ちょっと試してみたい事があるんだって」


 そう言ってホーネスト先生から魔石を貰う。よし、こいつで…


「ほら二人ともこっち来て」

「なんだい?」


 二人を魔方陣の上に乗せ、


「なんだ!景色が変わった?なんと!一瞬でオーガとの距離が…」


 そう、転移魔方陣の出番だ。オーガの背後の少し距離を取った地点にオレ達は転移した。ほんと便利だな。視界が届く範囲なら魔方陣も飛ばせるし。設置に時間がかかるのがネックだが。

 オーガは急に居なくなったオレ達を探してキョロキョロしている。


「ほら先生、今の内だよ?」

「う、うむ」


 先生はオーガに向けて魔法を放つ。おお、一撃か。そういや先生が攻撃魔法使うとこ見たの初めてだな。


「すごいなー、先生、実は強かったの?」

「うむ、私はその昔、冒険者にこの人有りと…というか、今いったい何が…」

「これは…ファンレーシアの転移魔方陣?」


 メリ姉が魔方陣の上を行き来しながら分析している。さすがメリ姉だな見ただけで分かるのか。


「ああそうだよ。ファンレーシアの迷宮行って、転移魔方陣を解析して使えるようになったんだ」

「「はぁ?」」


 二人ともあごが外れてますよ?


「ちょ、ちょ、ちょっと待つである。転移魔方陣を使えるとな!?そんな話聞いたことないであるぞ!」

「これ自由に設置できるの?」

「ん?魔石がありゃどこにでも。ああ、そういや外に脱出用の魔方陣設置しとくんだったなあ」


 失敗したな。外に設置しとけば危険があればいつでも出れたのに。


「ば、馬鹿な。これが自由にだと…これは…この世界の常識を塗り替えるであるぞ」

「この子いったい何者なの?道中も変わった魔法使ってたし…」

「ぜひ、ぜひに!この魔方陣の原理を!!」


 だから今はそれどころじゃないって言ってるだろ?またメリ姉に睨まれるよ?あと、その原理オレもよく分からねえから。


「そんなことより、次の3階層、ジャイアントバットが群れをなして居ると思うけど、なんとかなる?」

「どうしてそんなことが分かるのだ?3階層だぞ、ジャイアントバットなど居る訳が…」

「まあ、居ないならそれに越したことはないけど」


 あいつら数多いからな。空飛んでるし。オレの転移魔法だと上空はあまり高いと効果を発しない。思わぬ弱点だな。


「まあ、居ると仮定して対策を取っていても損じゃないね。なんかこの子の言うこと、下手に聞き逃さない方がいいような気がして来たし」


 メリ姉が答える。さすが一流のスカウトは違うな。


「そうであるか。なら風の防備魔法を発動させておこう。ジャイアントバットならこれだけで近寄れぬしな」


 そうなんか?生徒会長ももっと勉強しとけよぅ。


「よし、ボス部屋まで急ぐよ」


 3階層に着きさそっくジャイアントバットがお出ましになったが、近づくそばからバタバタと落ちていく。でかくても所詮蝙蝠、空気の気流には弱いみたいだな。

 それらを一匹づつオレとメリ姉が止めを刺していく。いやー楽チン楽チン。


「しかし子供達は、これらと出会わなかったのだろうか」


 まあ、オレのスキルのせいだし。アーチェたちは普通のモンスターと戦ってたと思うよ。

 ようやっとボス部屋が見え始めたころ、


「む、あそこに居るのは子供達ではないか?」


 そこには今、ボス部屋に入ろうとしているアーチェ達が見えた。間に合わなかったか。


「まあ、ここまで無傷みたいだし、大丈夫なんじゃない?」


 メリ姉がそう言う。まあ、オレが一緒じゃなきゃボスもレアじゃないだろうし。


「いや、そうとも言い切れぬのだ。ここ最近、この迷宮ではレアモンスターの発生頻度が増しているである。先ほどもオーガやジャイアントバットが居たであろう。万が一という可能性もある」

「しかしもう入っちゃったよ」

「まいったであるな。こうなればレアモンスターでないことを祈るしか…」


 最近レアモンスターの発生頻度が多くなってる?いや、オーガやジャイアントバットはオレの所為だろうが。なんか嫌な予感がするな。

 とりあえずボス部屋の前まで来て、


「これ入れないの?扉ぶっ飛ばすとかしたらダメなの?」

「迷宮のボス部屋の扉は特に頑丈に作られているであるからな」


 うーむ、転移も向こうに魔方陣をセットしてないと意味ないし。

 おれはそっと扉に手を当てて、ふうむ、意外と薄そうだな?いけるか?魔方陣を扉に描いてっと、これを向こう側に出力するように…


「何をしておるのだ?」


 そんでこっちにもっと、おおお!やべっ、いきなり転移した!

 扉を挟むように転移魔方陣を描いたらうまくいった。しかし、魔方陣に手をついていたので、設置と同時にボス部屋に…


「やはり、マジックリビングアーマーか!?」


 そこには、いつぞやのマジックリビングアーマーと、取り巻きのゾンビ達がひしめいていた。



◇◆◇◆◇◆◇◆


「おい、生きてるか?」


 4人とも無事のようだな。モンスターたちと睨みあっている。まだ、無謀な突っ込みはしてないようだな。

 さてと、こいつらどうするか…無視してさっきの魔方陣でって、消えてる?

 扉に設置した魔方陣が消えているぞ。もしかして、オレがこっちに来た事で新たに扉が生成されなおされたとかか?

 まずいな、また作るとなると時間かかるぞ。


「あなたはさっきのHENTAIさんではないですか?」


 蹴るなよ!言葉遣いは丁寧でも、乱暴さは変わってないな。


「な、なんだね君は!?ここには4人しか居なかったはず。はっ、まさかモンスター!」


 なんでだよ!いや、何回か死んでっから、アンデットって言われても仕方無いかもしれないが。つーかいい加減蹴るの止めろよ!


「おい、冗談言ってないで、ここを突破する方法考えなくていいのかよ」

「どうしろというのだ…もはや絶望的ではないか…」


 よーし、今度は間違わないようにしないとな。


「おいアーチェ、見とけよ、これが『ターンアンデット!』」


 とりあえずゾンビの一体を魔法で浄化する。つもりだったが、オレのじゃ大して効いてねーな。


「ほらアーチェ。今のがターンアンデットだ。間違ってもサンクチュアリすんなよ?」

「ほらって言われましても、いったいわたくしにどうしろとおっしゃるので」

「いや、アーチェならできるだろ?」


 無言で蹴るなよ…そういや今のアーチェの魔力、たいして高くないな。あれ?まじでピンチじゃね?


「私とハネアス君で血路を開く!君達は扉が開き次第、中のゲートに飛び込むんだ!」


 ん?ゲート?そうか!なにも自分の魔方陣に転移しなくとも、ここなら、王宮が作ったゲートへ転移できるじゃないか。


「おい、ちょっと待てって。こっちにみんな集まって」

「なんだというのだ」


 オレは生徒会長を引っ張って、


「これから1階のゲートへ転送するから」

「は?」


 そう言って生徒会長を転送させる。


「な!?生徒会長様!」

「ほら次は副会長」

「どういうこと?君はいったい…」


 副会長とユーリも転送させ、


「ほらいいかげん蹴るのやめてこっち来いよ」

「いかがわしい場所に転送したりしませんわよね?」

「なんでだよ!」


 よし、アーチェも転送させてって、あれ?転送しない!?


「どうしましたの?」

「いや、なんか転送しないんだよ?重量オーバーか?ぶへらっ!」

「誰が重いって!?」


 いいパンチ持ってるな…まずいぞ、だんだんゾンビがこっち寄ってくる。会長達が居なくなって魔法障壁も弱くなっている。


「ちょっと、わたくしだけでは、これだけの…もう、持ちませんわよ」


 しかし、なんでだ?なんでアーチェだけ?


「おまえなんか拾い食いとかしてないか?ぶへらっ!」

「ほんと失礼な奴ね!なんなんのよあんた!」


 口調が戻ってるぞ。つーかなんでお嬢様言葉なんだ?


「仕方ないでしょ、お淑やかにしとかないと村に突き返されんだから!」


 なるほど、そういうことになってんのか。


「試しにさっきのターンアンデット、使ってみないか?」

「その間、誰が魔法障壁はるのよ?」

「そういや、もうアーチェしか居ないか…」


 まあ、魔法障壁はできないが、


『インビジブル・セカンド!』


「もう魔法障壁が!って、あれ?襲ってこない?」


 これまたオレのオリジナルだ。インビジブルって隠蔽魔法を2種類に分けてな。セカンドは魔物のみ、ファーストは人間のみ隠蔽できるようにして。少ない魔力で、かつ効果も抜群な、とてもエコな性能となっている。


「よし、今の内に部屋の隅っこに行くぞ。そこで魔力回復だ」


 オレ達はいそいそと部屋の隅に行き、


「どうだ、魔力は回復しそうか?」

「そんなに簡単に回復する訳ないでしょ?」


 ふむ、回復の速度遅いな…オレの知ってるアーチェだと即効で回復していたが。何が違うのやら…


「そんなことより、ほんとあんた何者なのよ?妙に馴れ馴れしいし」

「ん?オレか、そうだなー、前世で夫婦だったとか?」

「は?」


 いや、前世になるかどうか知らないが。


「あんた、あの生徒会長の仲間なの?服装もアレだし」

「ちげーし。オレは決して厨二病ではない。そんな風に呼ばれたことは決してない!」


 そう呼ばれたことはない。呼ばれたことはな…嘘は言っていない…はずだ!


「ほんと調子狂うわねー。いきなり現われたと思ったらあんなことして。そして前世は私の夫?あんたもしかして私の隠れファンなの?」

「オレが?アーチェの?ハハハ、ワロス。いででで」

「ほんとむかつく奴ねえ」


 そのすぐ手が出るの直せよ?全然お淑やかじゃねーぞ?


「ところで、残念なお知らせです」

「なによ?」

「魔力が尽きそうです。やべえ、敵に見つかるぞ」

「なんでもっと早く言わないのよ!」


 くっ、アーチェの魔力も全然戻ってないな。もう一回全力で転移を試すか?魔力無いから体力減るが…オレの分まで残るかな?

 一か八か…


(無駄な事はおやめなさい)


 その時、突然頭の中に声が響いた。やべえ、幻聴が聞こえる。魔力の使いすぎか?


(幻聴ではありません。わたくしはこの世界の意思より生み出された者。いわゆる神の意思を代弁する存在と申しておきましょうか)


 自分で自分のこと神って言ってるよ、この幻聴。オレもいよいよ…


(…今、あなたが経験していることは、本来この世界としてあるべき姿、異世界人のあなたが居ない、本当のこの世界でございます)


 本物なのか…


(世界は異世界人のあなたに影響され、多くのことが変動してしまいました。その中でも…アーチェス・アングローバー…彼女は聖女と呼ばれることもなく、ここで…)

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