第三章 地上戦開始!
◆◆◇◇ 視点変更◇隊長さん ◇◇◆◆
「隊長!もはやここまでです!」
「そうか、仕方ない撤退する!」
なんということだ、まさかここまでとは…
我が隊にグリフォン討伐の依頼が来たのは先週のことだ。その時の偵察では10匹に満たなかったはず。だが目の前に居るのは…
「なんとういう数、20匹近いのでは?」
「しかし、撤退すらさせてくれるかどうか」
すでに我々は囲まれている。50名もの兵が居ても、手も足も出ぬ。
「とにくかく一点突破だ!後方に穴を開け一気に突っきるぞ!倒れた者には構うな!少しでも突破して行くしかない」
やむおえまい、これが一番犠牲が少ない方法だ。
「よし、俺が先に行く!続け!!」
「はいっ!」
最も薄い場所に向かって突進を開始する。しかし、
「隊長!もう駄目です!」
次々と兵達がやられていく。我々の攻撃はほとんどダメージになってない。分厚い鎧が奴らの爪の一振りで、まるでバターのように切られていく。
「おい、お前達!隊長に道を作って差し上げるのだ!」
「何を言っている!」
「隊長…我々はもう無理です。せめて誰か一人だけは…街に帰ってこのことを報告しなければ。これはきっと何かあります!」
「そうです!それには隊長しかいません」
「お前達…」
「がはぁあ!」
その時、グリフォンが群れを成して我々に突っ込んできた。
「おい、しっかりしろ!」
「行ってください!倒れた者に構うなと言ったのは隊長でしょう」
グリフォンに弾き飛ばされ、瀕死の状態でそう言ってくる。くっ、こんなことが…
そして、俺の目の前には、爪を振り上げたグリフォンが…ここまでか…なに?上半身が斜めにずれて?
と、轟音と共にグリフォンの群れの中心が爆発した!
「こりゃひでーな。おい、アーチェ」
「分かってるわよ」『リザレクション!』
すると、瀕死の兵士の傷が…みるみるうちに塞がっていく。
「こ、これは…あれは…子供?」
そこには数名の子供達が…なぜ、こんなとこに子供が?
その中でも最も小さな子供が、身の丈以上の立派な大剣を構え、
『魔刃剣・一閃!』
剣を振りかぶる…すると、その前に集まっていたグリフォンが次々と輪切りになっていく。馬鹿な!?剣など届いてないはず!
「おおー、スゲー。だいぶ奥のほうの奴までスパッといったな…つーかなにその剣?とんでもなくキラキラなんですが」
「うむ、我が国の秘宝『聖剣・アステリアクェイサー』だ」
「なに持たせてんの!?」
そこへ、一際輝く鎧を着た…あれは!アステリア王家の紋章!!そんな…アルシュラン陛下だとぉ!!
次々とグリフォンを倒していく子供達。いったいどういうことだ?まさか、あれがアステリアの八星と言われた…
「ちょっとソーヤ、なんかテイマーとかすんじゃなかったの?」
「いや無理だって。口から火ー吹いてんだぞ?どうやって近寄れと?この世界のグリフォンは半分ドラゴン入ってんのか?」
グリフォン共が一斉に火炎を吐く、だが、大きな盾を持った子供が一人で止めてしまった。
これはきっとあれだ、俺はもう死んでんだろうな。あの世って子供フィーバーな世界だったんだな。
「ほら、あそこに小さなグリフォンが居るわよ?あれぐらいなら大丈夫じゃない」
「おっ、子犬サイズかー。いいんじゃね」
そう言って子供グリフォンに近寄り、なんか変な踊りを?
「おい!こいつ爪で衝撃派放って来てるぞ!?」
「きようによけるわねー」
「感心してないで助けろよ!?」
「しかし、迷宮外だと手加減しなくていいから楽でおじゃるな」
「えっ、手加減しなくていいの?」
「崩壊の心配はないでおじゃるからな」
「よし!「おい、やめ…」」
なんか必死で魔法を使おうとしてる子を止めている。なぜだ?早くやつらを倒さねば。む!?そういえば俺も驚愕してるだけだな。
「おい!生き残ってる者は居るか!反撃だ!!」
「おおー!!」
◇◆◇◆◇◆◇◆
それから数刻で、全てのグリフォンを討伐し終わったが…
「くっ、シュハンツ…帰ったら俺、結婚するんだって言ってたのに…」
犠牲が多すぎた…半数以上が…
「これはまたグロいわねー。なんとかなるの?」
「まだピクピクしてんだろ?とりあえずくっつけてリザすれ」
子供達が死体を集めていく。くっ、子供達にばかり任す訳にはいかぬな…我々も供養せねばな。
『『『リザレクション!』』』
子供達の内3人が集めた死体に魔法を?なななな、なんとぉおお!!
「うう、アルセイシア、俺もう…ってあれ?なんともない?ええっ!?」
「これは、なんということだ!たしかに死んでたはず!?」
えええ?なに?どうして?さっきまで肉片だった我が兵が、まるで生き返ったかのように…
「すごい光景だな。まさか本当に蘇生させるとは…これは我輩も聖女を祭らねばならぬのか?アレを?」
「性能はピカイチでも、中身がなあ…」
「なにソーヤ?中身がなんだって?」
「…いえ、立派なレディでごさいます」
「へ、陛下っ!おい、お前達も!」
そう言って俺たちは陛下に向かって膝を付いた。
「これは、なんとお礼を申し上げて良いことやら…」
「よいよい、今は治療中であろう。しっかり体を確かめ、今の内に十分に治療して貰っておくとよい」
「ありがたきお言葉!」
次々と我々を回復していってくれる少女。
聖女…あれが聖女様なのか!蘇生の話は聞いた。しかし、今の今までまったく信用してなかった。そんな俺達を…もう聖女様に足を向けて寝れぬな。
蘇生した者は呆然としているな。俺も未だに信じられん思いだ。
と、その時、急に地面が揺れだし…
「隊長!あれを!!」
一人の兵士が空を指差し…そこには、空を埋め尽くさんがばかりのグリフォンが…
「な……!?」
「おわー、団体さんのお出ましだなー。あんなに居たら一匹くらい懐いてくれねーかな?」
「無理じゃない?だいぶおかんむりっぽいわよ」
なにを暢気な!まずい、直ちに撤退を!!
と、再び地面が揺れだし、
「おい、なにか下から来るぞ!」
「パオォオン!!」
轟音と共に地面から…グリフォンが舞い上がった!あれは!
「グリフォン・ロード…そうか…奴がこの元凶だったのか!」
地面に隠れていた…?いや、仲間を呼んでいたのか!?
「パオォオンって像かよ!?しかしでかいな、マンモスぐらいあるんじゃね?」
「マンモスってあれでおじゃるか?氷河期の。またあのアニメ見せてたもれ」
「いや、今はそれどころじゃねーだろ?」
なぜ、この子供達はアレを見て平気でいられるのだろうか?我が隊の者でも漏らしている者や、おっとげふんげふん。
「ちょっとソーヤ、いくらなんでもこれはピンチじゃないの?」
ひとり、歳のいった女性が「ごばぁあ!」
「誰が歳のいったって?」
なぜ、考えている事が分かった!?
「まあ、そうだな。あれ全部いっきにきたらヤベーな。おいアーチェ、アレやれよ」
「え?アレってサンクチュアリ?」
「それでどうすんだよ?アンデットじゃねーんだから、目くらましにしかなんねーだろ。ほら、村でゴブリンロードにやったやつだよ」
「あーあれねぇ。でもアレ、かなり疲れるのよねー」
「…全力で撃つなよ?いや、やっぱやめ『サンダーバースト!』聞けよ!!」
とたん、グリフォン・ロードを中心とした球体が現われ、カッと光ったかと思うと、その中を光が狂うように踊り…破裂した!
「ユーリ!麻呂姫!エクステントバリアだ!急げ!!」
『『エクステント・バリア!!』』
そして、我々は光に包まれ……
◇◆◇◆◇◆◇◆
「………………」
俺は、死んだのだろうか…あたりを見渡しても何もない。これが地獄か…
「おい、これどうなったんだ?見渡す限り荒野なんだが」
「うむ、アステリアホースを置いてきて正解であったようだな」
「なんでおじゃるかこれは!」
「…私は悪くないよね?」
「「「「「わりーよ!」」」」」
おっと少年の口調がうつってしまったな。
しかし、そうか、聖女か。うむ、我が国の聖女はとても規格外のようだな。
◆◆◇◇ 視点変更◇ソーヤ ◇◇◆◆
「おい、聞いたか?なんでもアステリアの聖女が、グリフォン100体を一瞬で討伐したとか…」
「ああ、しかも一つの森林を荒野に変えたらしいな」
「なんということだ、しかもアステリアには聖女以外にも、八星やら、守護者やら、とんでもない子供が居るらしいではないか」
ずいぶん噂になってんなー、大分誇張されているが。ここはベルガンディア、例の壺好きの王様が治めている国だ。道中だからついでに寄ったのだが。
「このままでは我がベルガンディアは征服されてしまうのではないか?」
「うむ、こうなれば先に打って出るしか…」
「ちょっとニャーな王様、ずいぶん物騒な事言ってる人が居るけど、大丈夫なの?」
「うむ、うちのやからは血気盛んな奴が多いからな。まあ、きょうび、わざわざアステリアの国王が来てくれたのだ。大体的に報じ友好をアピールしとけば良いであろう」
そうか、それじゃあ今夜は酒池肉林だな!
「お主、子供の癖に碌な言葉を使わんな」
「ちょっと、アーチェ。こないだの魔法を教えるでおじゃる!」
「えー、どうしよっかなー。ソーヤに止められてるしねー」
「むむっ、ならばソーヤ!麻呂に!麻呂にも範囲魔法を!」
持ってるだろ?普通にフレアとか出せるだろ?
「オリジナルがいいでおじゃる!アーチェだけ不公平でおじゃる!」
「ちょっと、私の魔法が知りたかったんじゃないの!?」
「ふふふ、アーチェのなど、ものとも言わせぬ魔法を覚えるでおじゃる。どうでおじゃるか?『コスモビックバン!』とか」
…どっかで聞いたセリフだな。お前達はこの星を破壊したいのか?
「しかし、あの森林を荒野にしたという噂は本物なのか?」
ニャーな王様が聞いてくる。
「まあ、大体あってんじゃね?ほんと陛下が一緒に居てくれて良かったよ。じゃないとオレ達お尋ね者だぜ?」
「ふむう、あれだけの回復魔法に加え、攻撃魔法もか…これは至上4人目の聖人の誕生ではないのか?」
「ん?聖人?」
聖女と何が違うんだ?
「聖人とは、人でありながら神の力に匹敵する能力を身につけた者だ。これまで2人の人間が聖人となり、1人の人間が聖人となったであろうと言われている。神帝国はその聖人の1人が興した物で、そこの聖女はその血を引いていることになっておる」
「アーチェが聖人?そう言えばリーシュも聖人となるであろうと言われておったな」
アルシュラン陛下が言う。誰にだよ?
「そろそろ神殿でも建てねばならぬではないか?そうすればワシの国も神帝国のなまぐさ坊主など追い出し、そっちの神殿につくのだがな」
宗教戦争はダメダメよ?
「アーチェが神殿ねえ。…それ破壊神を祭るの?」
「だれが破壊神よ!?」
さすがメリ姉だ、的確な。
「祭るとしたら慈愛と再生のって感じじゃね?」
ほら破壊って度々、再生と兼ね合わされるじゃ?
「それ矛盾しておらんか?」
ばれねーって。
「破壊から離れなさいよ!」
「それよりもソーヤ!ぜひ見て欲しい壺があるのじゃ!」
「えっ?」
うわ、ヤナ予感。
「そうだセイカ。アルシュラン陛下からなんか剣貰ったんだってな」
オレは急いで話題をすりかえることにした。
「はいっ。こないだの初迷宮の記念だって言われまして」
そんなんで聖剣くれんの?いくらなんでも甘やかしすぎじゃね?
「うむ、あれほどの才能、まさしく聖剣に相応しいと思ってな」
ほんとか?単にちっちゃい子だったからあげんたんじゃないよな?
「ちょっと見せてもらっても?」
「はいっ」
いい返事でオレに聖剣を差し出してくる。
ふむ、なに!?判定不能だと!これマジモンじゃね?
「ちょっ、これ、結構すごいやつじゃね?」
「うむ、その名の通り、我が国を象徴する聖剣だ。記念式典では毎回使われておる。伝承では、王城一つをまっぷたつにしたと言われておる」
なに渡してんの!?今後の記念式典どうするの?
「毎回、セイカが来れば良いであろう」
「えええっ」
この陛下、それが目的か…
「ほら、ソーヤこれじゃ。これが今回ワシが購入した壺でな。割った時に念じた姿に変われるらしいのだ」
「何持って来てんのぉ!?」
「え?ほんとに?えいっ」
「ニャー!(なにやってんだよ!!)」
「にゃぁ(え、だってぇ)」
「にー(こ、これは、かわいい…)」
「なお(アーチェ…)」
「ファッー!(バカでおじゃるか!ボケでおじゃるか!!)」
「みゃみゃ(おお、ほんとに変わったな)」
「にゃん(リーシュが…セイカが…いいなこれ!)」
「にゃふー(はぁ、これ元に戻れるの?)」
さて、誰がどのセリフでしょう?
◆◆◇◇ 視点変更◇ベルガンディア国王 ◇◇◆◆
「それでは、二人だけになった所で真面目な話をしようではないか」
「うむ」
子供達は街に見学に行った。大丈夫かなワシの街…
「ほんとに大丈夫だよな?ふとみたら荒野になっておらんだろな?」
「……では、留学の話をだな」
「おい、なぜ目をそらす!話をそらす!」
アステリアの国王はこっちを見ようとしない。
「まあ、ソーヤもメリンダ殿もついておるし…」
「それでもお主の国は、一部が荒野になったのでは?」
「……では、留学の話をだな」
…仕方ない。心配しても始まらぬしな。ソーヤを信じるしかないか。
「それにしてもあの壺は良かったのか。なんなら我輩が弁償を…」
「よいよい、元々その効果をソーヤに聞くつもりであったのだからな。壺も立派に直してもらい前よりも良くなった程だ」
うむ、なんと言ったか、こいまりなんとかとか言っておったな?元とはまったく違う形になっていたが。
「して、留学の話であったな。ワシの国から2名程そちらに向かわそう。ソーヤが居なくとも八星と共に学べれば、得るものも多いであろう」
「承知した。帰り次第、整備を整えておこう」
せめてリザレクションくらいは覚えてくれないかのう。
「これからファンレーシアに直行か?」
「そのつもりだ。よその国に迷惑もかけれぬからな。もし国外で……我輩やっぱ早まったか?」
「うむ、とんでもない子供達だからな。ちょっと連れ出すにも大事であるな」
しかしグリフォン100体か…とんでもないな。
「100は言いすぎだがな。まあ、あの状況、100だろうが1000だろうが変わらんだろうが…。なにせ、この王城一つ分は吹き飛ばす威力だったからな」
「…ほんとに大丈夫か、ワシの街」
窓から街を見渡した。うむ、今のところ何も問題のないようだ。
「ほんとに、さっさと神殿でも作って篭ってっもらった方がいいのではないか?」
「アーチェ1人を押し込んでも無駄であろうな」
あのソーヤという子供か…。いったい何者なのか。
「もしや聖人の生まれ変わり?」
「そうかも知れぬ。聖人が人の世に姿を現したという噂はここのとこ、とんと聞かぬしな」
「そうなれば迂闊に手も出せぬな。もし、ソーヤが旗揚げなど起こしたら…なんとかなると思うか?」
「……そうならぬ為には、リーシュとの婚姻、なんとしてでも成立させねばな!」
◆◆◇◇ 視点変更◇ソーヤ ◇◇◆◆
ブルブルブルなんだ急に寒気が?ここんとこなかったのにな。いやな予感が…
「ソーヤ、なぜでおじゃるか!なぜ麻呂は肩車でないでおじゃるか!」
「まあまあ、セイカの方が歳も低いんだしいいだろ?」
「良くないでおじゃる!」
ただいま町の見物中、今回はセイカを肩車している。
「お父様、この町は武器屋や防具屋が多いですねー」
「そうだなー、近くに迷宮もあるらしいし、あと王様が脳筋だしなー」
「くっ、麻呂の、麻呂のポジションが奪われていく…」
「落ち目ねー」
「なにおう!アーチェなどとっくに落ちきっておるでおじゃろう!」
こら、喧嘩すんなよ。もうお前ら手に負えないんだからな?
「今度、セイカのご飯に唐辛子をいっぱい入れて…」
「バカねー、そんなことしたらすぐソーヤにばれるわよ?嫌われてもいいの?」
「…………アーチェもセイカも!他にいくらでも男は居るでおじゃろう!!麻呂は!麻呂はソーヤしかおらぬでおじゃるぅ!!」
あ、おい、どこ行くんだ。迷子になるぞ!
「行ってくださいお父様。私も昔、ああ言って前のお父様を困らせたことがあります。寂しくて、辛くて…そんな時、お父様は追いかけてくれて、抱きしめてくれました」
「まだまだ子供ねー、今回は譲るわよ。ほら」
そうか、なんだかんだ言っても二人とも仲間思いだな。
「ちょっと探してくるよ」
「はい」
そう言ってオレは走り出した。
「アーチェお母様は良かったので?」
「大丈夫よ、最後は必ず私の元に返って来るわよ」
「随分な自信ですね」
「それに、別にソーヤとどうこうなれなくても…私はずっとソーヤと一緒に居るつもりよ?ユーリだってそうじゃない?」
「そうだね」
「まだまだ子供だねえ。まあそれくらいが可愛げもあっていいかね?」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「ほら、泣くなって」
「うっ、ぐすっ、ソーヤは麻呂がどこに居ても見つけるでおじゃるな…」
こういうとき、魔法を使うのは反則なのかもなあ。
「ソーヤは…ソーヤは麻呂のことをどう思っておるでおじゃるか?ソーヤにとって麻呂はお荷物でしかないでおじゃるか?」
そう言って不安そうな目で見つめてくる。
「お荷物はオレの方だろ?戦闘はいつも麻呂姫達にまかせっきりでな。まったく男らしいとこの一つも見せれやしねーな」
「ソーヤはお荷物でも良いでおじゃる。麻呂があの世にまで背負って行くでおじゃる!」
女の子に言わせるセリフじゃねーな。
「そうか、ありがとな。でも、そうじゃないだろ?片方が、片方のすべてをしょいきる…それってただの依存だよな」
オレは麻呂姫の頭をなでながら、
「オレ達はもっと固い絆で結ばれないか?オレだって麻呂姫の役に立ちたいし、もちろん麻呂姫もオレの役に立ってもらいたい」
「ソーヤ…ソーヤはいっぱい、いーっぱい麻呂の役に立っているでおじゃる!ソーヤが居なければ麻呂は、麻呂は!」
そう言ってオレにしがみついてくる。
「だから麻呂はもっと、もーっとソーヤの役に立ちたいでおじゃる!置いて行かないで欲しいでおじゃる!」
「バカだなー、なんで置いて行かれると思ったんだ?そんなことする訳ないだろ?」
「でも、セイカがいれば、麻呂など必要ないでおじゃる…」
必要か必要じゃないかだけでパーティ組むもんじゃないだろ?そんなこといったらオレなんて村八分だぜ?それにな、
「オレにとって、アーチェもユーリも、もちろん麻呂姫だって、必要じゃない奴なんて1人もいない。人生において不必要な人間なんていねーよ」
「ソーヤ…!」
「ほら涙をふけよ、かわいらしい顔が台無しだぞ?」
「うん!うん!!」
オレは麻呂姫を肩車し、
「それじゃあ皆のとこへ戻ろうぜ。皆心配してるぞ」
「ま、待つでおじゃる。まだ、涙でぐしゃぐしゃでおじゃる」
「じゃあゆっくり行こうか。ゆっくりな。オレ達にゃまだまだ時間があるんだ。そんなに早急になんでも決める必要は無い。まだまだ子供なんだ、子供にしかできねーこと、いっぱいやって大人になろうぜ」
そうゆっくりな。子供の時代なんて一生に一回しかないんだぞ?転生しないかぎりはな。




