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アイ・ファンタジア  作者: ぬこぬっくぬこ
第一部◆ 間 話 ◆
15/90

アサシンクリード

 私の名はクリード。漆黒の蒼刃と呼ばれているアサシンだ。


「それではこの娘を?」

「そうです。これはこの国を揺るがす一大事にて」


 まだ子供ではないか。


「あなたが、女、子供を避けておるのは重々承知でございます。しかし、今回だけは、今回だけは!どうしても必要なことなのです!」


 そして、そやつは私の前に大金を重ねる。とんでもない金額だな。この国の貴族だけではないなこれは。

 そろそろ私もアサシンから足を洗おうと思っていたところだ。聞けば、聖女を騙って貧しい者から甘い蜜を吸っておるようだしな。


「分かった引き受けよう。ただし、そちらに落ち度があればすぐさま手を引かせてもらう」

「おお!お願いできますか。この国一のアサシンであるあなたであれば、あの者の命も風前の灯ですな」



 まずは下見だな。

 そう思い私は聖女が居るといわれている宿へ向かった…のだが、


「む?どういうことだこれは?」


 一向に辿り着かない。まさかこれは結界か?この私が気づかない程の高度な魔法だと?あの娘だけではないなこれは、何かとんでもない裏がありそうだ。

 しかし、一度引き受けてしまった以上、依頼は達成させねばな。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「は?結界破りの最高位護符をお求めで」

「そうだ」


 私は行き付けの魔法屋に行き、その結界を破る手段を手に入れることにした。


「最高位というと億は超えるのですが…よろしいので?」

「かまわん」


 そういって私は高位護符を見せた。


「これはまた…これほどの高位護符がぼろぼろとは…いったいどこへ忍び込むおつもりで?王宮でもこうはなりますまい。まさか神帝国…」

「いや、ただの下町の宿だ」

「は?」


 そうただの下町の宿だ。なのにこれ程の結界…きっと何かあるに違いない。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「くっ、最高位の護符でさえこの状態か。一体何者なのだこの結界を張った者は。神帝国の神殿ですらこれ程ではないぞ」


 最高位護符を持って来たというのに、今にもはち切れそうだ。これは心してかからねば!

 とりあえず宿の壁をすり抜け…すり抜けられないだと!壁、窓すべてに魔法がかかっているだと!ありえん!どれほどの魔術師が居るのだ?まさか魔術結社…


「あら、何してるの壁に体当たりして?新しい遊び?あんま宿壊してるとまたソーヤが怒るわよ?」


 む、ターゲットが向こうから来たか。え?というより私が見えておるのか?私の隠蔽の魔法…いまだ破られたことはないのだが…


「お前が聖女とか名乗っておるものか」


 私は警戒しながらそう聞いた。


「え?なに、サインでも欲しいの?仕方ないわねー」


 そう言って無警戒に寄ってくる。これはチャンスか?


「そ、そうだ、ぜひここへ…」


 私はそう言いながら、寄って来た聖女へ毒の付いたナイフを…

 と、その時、最高位護符がはじけとび、爆発が起こった!

 ばかな!最高位護符がだと!…最後にとんだへまをしたものだ、しかしこれならば聖女も助からぬだろう。依頼は達成か…私も助からぬがな。私は四肢を吹き飛ばされながらそう自嘲した。



◇◆◇◆◇◆◇◆


「あら?目が覚めたみたいね」


 ん?私は死んでおらぬか。なに!無傷だと!?

 そこには無傷の聖女が居た。


「ごめんなさいねー。咄嗟の事で、自分と宿屋しか守れなくて。でもちゃんと復活させたから大丈夫よね?」


 そう言いながら辺りを伺う。誰かを気にしているようだが?辺りには誰も居ない。

 しかし、最高位護符の爆発だぞ!この宿ごと吹き飛んでなければおかしいはず?


「あー、後これなんか魔道具みたいだけど、とりあえず直しておいたけど大丈夫?」


 そう言って最高位護符を私に手渡してきた。

 これは!今までとは比較にならないほどの威力を秘めておる!


「こ、これはそなたが?」

「うん。私が壊したんじゃないよね?ソーヤには言わないでよ?」


 ソーヤ?そいつが裏で糸を引いておるものなのか?


「あと、目のやり場に困るから、さっさと帰った方がいいかも」


 そう言って私の体を指差す。そうか、四肢がふっとんだものな…ん?ばかな!無傷だと!?

 そこには無傷の私の体が!素っ裸だが。


「いやー服は粉々で、一部燃え尽きてたから直せなかったのよねー」


「癒したというのか?この私を?」

「まあ、リザレクションで一発だし。まだ死んでなかったし。余裕よね」


 ……聖女…聖女がここにおる!



◇◆◇◆◇◆◇◆


「なにぃい!聖女様をターゲットだとぉおおお!」

「お、落ち着け。暗殺は失敗だ。げぶぅうー」

「今宵は御主の命日だ!」

「ま、まて、話せば分かる!話せば!!」


 聖女の情報を得る為、行き付けの酒場に行ったところ、昔なじみが居たのでつい口を滑らせてしまい…

 私は酒場の連中にさんざん袋叩きに合った後、酒樽に縛り付けられた。


「聖女様はなあ!助からないといわれたうちの娘を救ってくれたのだぞぉ!」

「オレが迷宮で大怪我をし、もう助からないと思ってたところを、ただ通りがかったというだけで無償で回復してくれたのだぞ!」

「そうだ、オレが作った御輿を馬鹿にするどころか、気に入ってずっと乗ってくださったのだぞ!」


 私が聞いた話とは全然違うな。まさしく聖女がごとき所業。ボレスが作った御輿を気に入るなど!

 しかし、私もプロだ!一度依頼を受けた以上…


「どうしてもというのなら…お前とは長い付き合いだったな」

「そうだな…私も散々ひどいことをしてきた。これは報いなのかも知れぬな」

「そうか…」


 こいつの手にかかって終われるならそれでも良いか。アサシンとなると決めたときに、碌な死に方はできないだろうと思っておったしな。


「あら?何してんの?なんか樽に巻かれてる人が居るわねー。いじめダメ絶対。ソーヤに言いつけるわよ」


 そこへ例の聖女が入って来た。


「聖女様、どうしてここへ?」

「んー、その人の忘れ物届けに来たの」


 そう言って、毒の付いたナイフを差し出す。


「どうやって私の居場所を?」

「探知の魔法使えば一発よ?」


 そんな馬鹿な!?私は尾行すら許したことはないのだぞ!


「馬鹿だなー、聖女様をそこらの魔術師と一緒にするなよ?死者すら蘇らせたのだぞ」


 …ありえん。だが、私を癒した場面を考えれば…


「聖女様、この者はあなた様の命を狙った者なのですぞ。そのナイフは毒塗りですな。それで聖女様を亡き者にしようと」

「えっ、ほんとに?あ、ほんとだ、サーチしたら毒反応出るわね」


 ここまでか。これほどの術者、もはや私に敵うはずがない。

 と、おもむろにナイフで縄を切って…


「はい、とりあえず毒は危ないんで、浄化しておいたわよ」

「ちょ、ちょっと聖女様なにを!?その者はアサシンなのですぞ」


「そうねー、もし私が死んだら、今度はソーヤから口付けかもねー。いいわねー」


 何を考えておるのだこの子は?


「はい、『リザレクション!』」


 そして私の傷を治し、


「アサシンなんて辞めなさいよ?今や死んだ人まで復活できる世の中なのよ?やるだけ無駄だわねー」


 そう言う。いつのまにそんな世の中になったのだ?

 私は知らず涙を流し…


「ほらほら、いい大人が泣かないの。ちょっと失業したぐらいで馬鹿ねえ。今度はガードマンとかどう?その体躯なら十分やっていけると思うわよ」


 そう言って私の頭をなでる。ガードマンか…いいかもな。……私は聖女を守るガーディアンになる!



◇◆◇◆◇◆◇◆


「なにぃい!聖女様をたぶらかしておる男が居るだとぉおお!」

「そうだ、なんでも同じ村の出身で、聖女様が熱を上げておる男がおってな」


 なんということだ、私の聖女様をたぶらかすなど!フッ、早速私の出番か。



「聖女様をたぶらかすなど言語道断!私が成敗してくれる!」

「なにこのお方?アサシン?えっ暗殺者?うわっ!レベルたけー!!」


 このソーヤという者か。うむ、見れば見るほど悪人づらだな。


「御覚悟!!」

「えっ、やめっ!ひぃー!!」

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