第十一章 武闘大会
◆◆◇◇ 視点継続◇ソーヤ ◇◇◆◆
いよいよやって来ました武闘大会、今日は貴族街へ向かう列車に乗っております。
これがまたスゲーの。外場や中心街の列車はまあ普通だが、この列車、どこのホテルかよってくらい、床は絨毯、中は広いテーブルに豪華な椅子、壁には魔石のオブジェが光ってる。そして半透明の壁。すげー景色だ、列車の癖に空飛んでら。
もうずっと乗ってたいなー、このまま折り返したいなー、降りたくないなー、
「ほらいつまでも現実逃避しないでくださいまし。ワタクシはもう諦めましたから」
「…エントリー表突きつけないでくれない?」
エントリー表、そう武闘大会のエントリー、そうなぜかうちのクラス全員の名前が…どうしてこうなった!?
「ほらこっからここまでがソーヤ君の分で」
「全部じゃないかよ!」
「ワタクシだと、いざというときどうすることもできませんわよ?」
「オレにも無理だって!」
ああホント、当日大嵐呼ぶかなー。
「ソーヤは麻呂付きでおじゃるからな!他の者はそちが面倒見るでおじゃる」
「………………」
いやそんな、訴えるような目で見られても…
「どうして居るのよ?」
「貴族街を案内してやろうと思ってじゃな。麻呂は総合にしか出場せんから時間もあるしな」
「………………」
だからアーチェまでそんな目をすんなよ。オレが呼んだ訳じゃないぜ?後、やめろってんのに、みっちりエントリーしたのお前だぞ。
「よし、もう運を天に任せてオレは麻呂姫と遊びほうけよう!」
「ほうけるでおじゃる!」
麻呂姫はにこにこしながらオレの膝の上に座って来た。うむかわええな。なでなで。
「いやしかし、案内するにしても気をつけねばどんな揉め事を起こすか。ほんとに大丈夫か?」
「麻呂が付いて居るから大丈夫でおじゃる!」
殿下も心配性だなあ。アーチェじゃないんだし。
「ソーヤ君?」
「なに?」
「なんで王族が2人も居るのかな?」
ワタクシ先生はどこか遠い目でそう聞いてくる。
「いやーなんか王族専用列車乗せてくれるって言うから、どうせならそれでみんな行けばいいかなあと。まさか迎えに来てくれているだなどとは思ってなかった」
「王族専用なんだから、王族が乗って居ないと動かないとは考えなかったのですか?」
「………………」
なんという盲点。
「ちょっと委員長、王族が相手だなんて聞いてないよう?」
「じゃあ降ります?私はたとえ誰であろうと諦めません!」
「そ、そうだよね!ソーヤ様は平民ですもの、王族とどうこうなんてないよね!平民である私こそが一番チャンスがあるものね!」
クラスの皆はさすがに恐縮してるな。
「というか、普通の態度でいれるソーヤ君が常識外ですのよ?」
ワタクシ先生が呆れながらそう言う。そして、オレの膝に座る麻呂姫を見、
「しかし、あの気難しいお姫様がねえ…ワタクシ自分の目が信じられませんわ」
「うむ、妹姫にあのような歳相応の面があるなど、我も知らなかったわ」
最初の頃はむずがった麻呂姫だったが、今じゃ自分からなでてとねだってくる。根はきっと素直な子なんだ。たぶん。
「兄上や王宮の者が見たら腰抜かすであろうな」
「王宮には近づかぬから大丈夫でおじゃる!」
まあ、バレても問題無いだろ?
お?列車が止まったな。
「もう着いたのか?」
「直通でおじゃるからな」
おお、ここは?
「王宮でおじゃる!」
さっき近づかないって言ったよね?
「王族専用だからな、行き着く先は王宮しかなかろ」
「これだけは仕方ないでおじゃる」
「………………」
なんという盲点。ってこれはもういいか。
おーこれまた立派な。天井はガラス張りかー。すっごいなー、地面が動いてら、いやまじで、足元の地面がまるまる動いてんだぜ?ベルトコンベアみたいなまがい物ではない!なんかオラわくわくしてきたぞ。
「すごいですわねー」
「先生も初めてなの?」
「そりゃ誰が、王族専用ルート通る機会があるというの?」
「そりゃそうか」
クラスの皆もはしゃいでいるな。おいアーチェ、触るなよ!壊すなよ!?
「ほらソーヤこっちでおじゃる!」
麻呂姫がオレを引っ張って行く。
「ちょっと待った。先に競技場に行っていい?」
「……壊すなよ?」
殿下が疑い深そうな目で見てくる。
「大丈夫だって、ちょっと保険をかけとくだけだから」
「保険…?」
ということで、オレ達は競技場へ向かう事にした。
(お、おい、あれリーシュフェール姫様だよな?)
(お、おう、そのはず…なんだあれ!?)
(姫様が手を引いているの誰だ!姫様の笑顔など始めて見たぞ!おお!あんなに嬉しそうにはしゃいでいる。まるで別人のようだ!)
(歩く不機嫌とまで言われていたのにな。いったいどうなってるんだ。そういや最近王宮に居ない事が多かったが…)
(しかしあれを見ていると、なんだかこっちまで笑顔になってくるな)
(ああ、そうだよな。よく考えると、姫様まだ9歳なんだよな。こんなギスギスしている空気で健気に耐えていたのだな…)
(何者かは知らんが、姫様のお気に入りなら我らも注意せねばな)
(ん?待てよ?あいつは…)
(どうした?)
(あっ!あのガキ!確か聖女をたぶらかしている奴だ!)
(な、なんだとぉ!)
(なんでも、聖女の幼馴染とかで、それを笠にきて甘い蜜を吸ってるとかなんとか。巷では聖女の想い人とか)
(な、なにぃい!それなのに今度は姫様をたぶらかそうとしておるのか!!)
(ジゴロっていうのは、生まれたときからジゴロらしいぞ?)
((あのガキ亡き者にせねば!))
ブルブルブルなんだ急に寒気が…あれ、回りの兵隊さん達、オレのこと親の敵のような目を向けてきてるんだが?…オレなんかしたか?
◆◆◇◇ 視点変更◇ワタクシ先生 ◇◇◆◆
「ちょ、ちょっとどういうことなの!!」
「フォンシーズ先生!あれはいったいなんなのだ!」
「いや、優秀だとは聞いていたが……全員無詠唱?しかも無詠唱にも係わらず、威力が…」
「昨年のリーシュフェール姫様を超えてますわね。姫様のときも度肝を抜かれましたが…」
「ええ、そりゃ苦労して…ほんっっと苦労して育てた子達ですもの!」
ほんとにねえ…初日から窓ガラス全破、修練場は練習の度に大破。街でもめごとがあったって聞いた日には、心臓がはりさけそうな思いでしたわ。
「くっ、私達の中でも一番出世が遅かったくせに」
あら?ワタクシ思いますの、出世よりなにより、平穏な日常が一番大事だと。ええ痛感いたしておりますわねえ。
あなた達も一日アーチェさんを受け持って見なさい。きっとそう思いますわよ?
「申し上げます!水の部門にてフォルテイシア魔法学院の生徒が一番になりました」
「これで各属性競技は全制覇ですわねー」
「ま、まだ総合が残ってますわ!今年のリーシュフェール姫様は、昨年とは比べ物にならないほど成長してますわよ!」
そうですわねー。なんせソーヤ君とパーティ組んで迷宮潜ってますしねー。まあ、アーチェさんには敵わないでしょうけど、他の生徒では太刀打ちできませんわね。
と、報告を持って来てくれた兵士の方が、
「あのー、全然競技にならないのですがー。これ他の学院の生徒、やる気をなくすどころの騒ぎじゃないかとー」
「………………」
仕方がなかったのですの…ワタクシでは彼女らを止める事など…それにちょっとくらい自慢させてもらってもいいかと。
ほんとみなさん、ワタクシのこと羨望の眼差しですわねー。ワタクシあまり大したことしてないですけど。
「とうとう世に出してしまったであるか」
「あら、バシェード先生、久しぶりでありますわね。ほんと、ぜひ握手を」
「ん?握手であるか?」
ええ、ここはちゃんとお礼をしときませんとね。
「あばばばばば・・・、ちょっ電撃は反則でござる!」
「ほんと今までどこで何してましたの?せめてなんか言うことはないのですかね?」
「い、いや…ほらちゃんと言ったであるぞ?「これから大変なこととなるが、挫けず頑張ってくれ」と」
「それ後任への挨拶の常套句じゃない?そんなのでこの状況を予測しろと?」
「お、おい、それなんだ、体の回りをバチバチいってるのはなんだ?詠唱なんてしてないよな?」
王立学院の教師の一人が驚愕した顔で聞いてくる。
「あらワタクシ、彼女らの教師ですわよ?聖女であるアーチェさんはともかく、他の子には負けませんわよ?」
「ば、馬鹿な。私達の中でも一番落ちこぼれだったはず…?」
「人は成長するものですの。成長しないとやっていけない環境でしたしね…」
「ど、どれほどの訓練を…もしかしてそれは新たな魔法なのか?」
ええ、編み出したのはアーチェさんですけどねー。まあ、どれほどって言われる程訓練してませんけどね。ソーヤ君の言う通りにしてれば普通にできますわよ?あら、もしかしてワタクシ、少し常識がやばくなって来たかしら?
「うむ、ソーヤ君は回りをチートにさせるスキルでも持っているのかのう」
「そんなことよりバシェード先生は、今まで何されてたので?」
「私か?私は新たな系統、雷魔法を魔石につめる研究をしていたのだ。ソーヤ君の言う電気?とやらを使った装置を開発していたのである」
「なにげに、バシェード先生もソーヤ君の影響受けてますわね…」
電気ですかー、まあ確かにこの魔法、色々なことに使えそうですわね。
「うむ、ここ王都では魔石を使った装置で成り立っておる。それに対抗して、電気で成り立つ街を、副都心として作り上げようと企画しているところだ」
「へー、それはまた、大掛かりなことをしてますわね」
と、そこへ煌びやかな鎧を着た兵士が入って来て、
「ヨークセリア・フォンシーズ殿、ヨークセリア・フォンシーズ殿はござらんか!」
「ヨークセリア・フォンシーズはワタクシですが?」
「そうか、すぐさま私に付いて来てくれ、国王がお呼びだ」
「えっ……」
ワタクシは絶望的な顔をバシェード先生に向ける。
「まあこの状況、そうなるわな。諦めて行って来るである。ちょっ、私の裾を掴むでないぞ、私はもう学園の教師ではないであるからな」
「そ、そんなことを言わずに!それじゃあせめてソーヤ君を呼んで来て!」
「いやいや、一介の平民を国王の下へ行かせることはできんじゃろ?」
そこで不思議そうな顔の他の教師が、
「なぜ嫌がっているのだ?国王に呼ばれるなど光栄な事ではないか?」
「そうよ!なんなら私が変わりに行きたいくらいだわ」
「じゃあ、変わってよ!あれの説明なんてできないですわよ!」
ああ、そうですわよね。彼女らを世に出せば王宮も慌てますわよねー。ええ分かってましたわよ、ええ分かってて…もう少し気づいていない振りをしたかったですわね…
「なーに、全部お主の手柄である。ソーヤ君は気にしないであろう」
「そういうことを心配しているのじゃないですわよ!」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「では、行ってくるでおじゃる」
「あら、姫様は今から競技場へ?」
ワタクシが王族専用の閲覧室に着いたと同時に、リーシュフェール姫様が中から出てきた。
「そうでおじゃる。麻呂の晴れ姿、よく見ておくでおじゃる!」
「ええ、見させてもらいますわ」
「おいリーシュ、必ず競技前にソーヤに付き添ってもらえよ?」
中からフィフス殿下が姫様にそう声をかける。
「分かっているでおじゃる!」
そう言って姫様は駆けていった。
これはソーヤ君を呼べる状況じゃなくなりましたわねー。
王様は去っていく姫様を複雑な表情で見つめている。なんでしょうか?
「ん?そちはなんだ?」
あら、ワタクシお呼ばれじゃない?お呼ばれじゃないなら仕方ありませんわねー。
「ちょっ、何戻ろうとしておるのだ。この者は例のフォルテイシア魔法学院の生徒達の教鞭をとっておる者です」
説明しなくていいのに。向こうが忘れてるならそっとしといてくれれば良かったのに。
「それでは、そちがあの、各種競技で優勝を攫っている彼女らの教師であるか」
「はっ、ワタクシの生徒達であります」
「素晴らしいと言うかなんと言うか、ありえないのだが…」
ここは王族専用の閲覧室、競技場の全貌がよく見渡せますわねー。しかし、見たくない物もよく見えますわね…。競技場の修理代、出せとか言われませんですわよね?
「いったいどういうことなのだ。あの者達はあきらかに一般生徒を越えておる。いくらフォルテイシア魔法学院が、この国でも上位に入る魔法の専門学校であるにしても、あまりにも…」
「まったくだ、王立学院の生徒など手も足も出んではないか。リーシュの才能も度肝を抜かれたが…あれは普通の生徒なのだよな?」
王様に続いて、フィフス殿下の兄上も驚愕の表情で聞いてくる。
「はい。彼女らと同期で、伝説の魔法を扱う者がおります。その者と共に、様々なこれまでない魔法の習得方法を試してみたのです」
「ほうほう」
なんとかごまかさないとねえ。えーとなんでしたっけ、とりあえずこれまでの常識を壊すとこから始めたのでしたっけ…これ説明できませんわね。
「と、とにかく、ワタクシだけの力で彼女達があのように成長した訳ではありません。後日、その者と共にご説明に上がりましょうか」
とりあえず今をクリアしませんとね。ええ、ここはぜひ元凶の方に出向いてもらわねば。
「いや、よい。巷で騒がれておる聖女とやらであろう」
いえ、違いますけど。
「して、彼女らの今後の処遇なのだが」
やはり来ましたか。無詠唱で、普通にそこらの本職より威力がある魔法使ってますものね。
「ここ王立学園に特別学部を作り、そこへそなたと共に移籍してもらうこととなるであろう」
王立学園所属ですかー。ワタクシも大出世ですわね。ん?待てよ…アーチェさんやソーヤ君が貴族街に通う?これやばいんじゃ…
くっ、いやな汗が止まりませんわね。ああ、なんとか回避できないものでしょうか。
「また、その学部とここ王立学園との混合教室も作ろうと思っている」
混合ですか。もうだめぽ。
「そこで聞いておきたいのだが、今まで女子生徒のみであったろうが、男子生徒も可能か?」
まあ、そうですわねー。女性ばかり力をつけて、男性が弱くなっちゃ国としては困ったことになりますわね。
「そこは生徒と相談してみないことには…ワタクシ的には問題ありませんが」
「そうか、ならば人選はそちらにまかそう。今は8名だったな、新たに6名ほど王立学園から選出するとよい」
王立学園からですかー。そうなると、姫様も一緒になるでしょうねー。こりゃソーヤ君に頑張ってもらわないとだめですわねー。
と、とたん競技場が騒がしくなってきた。あら、いよいよ姫様の登場ですわね。ん?向こうの方のモンスターの檻、なんか変ですわね?
◆◆◇◇ 視点変更◇フィフス殿下 ◇◇◆◆
「む、なんだあれは?モンスターの檻の方がなんだか騒がしいぞ」
兄上が立ち上がり窓の方へ歩いていく、が、
「アルシュラン様、お下がりください。危のうございます」
兄上の取り巻きの一人が押し戻す。うむ、あやつはたしか元王宮魔術師の…
我も立ち上がり競技場を見渡した。うむ、妹姫のそばにはソーヤがおるな。なら大丈夫か。
む、なんだ、近衛兵が我の回りを囲んできた。
「此度は姫様のたっての希望で、強力なモンスターを呼び寄せております。それで少し揉めておるのでしょう」
「ま、まさか…」
ん?兄上が急に真っ青な顔になったな。
「アルシュラン様も決断なされたはず。これは我が王国にとって必要なことでございます」
「くっ、しかしまだ早すぎる!まだ幼いというのに!」
「幼いからこそ影響のでない内に、もう姫様に取り入ろうとした貴族は把握済みです」
父上が椅子から立ち上がり、
「アルシュラン、フィフス、これよりなにが起ころうともここから出ることは許さぬ!他の者達もここでの出来事は他言無用だ!」
「…どうしてワタクシ、こんなに間が悪いのでしょう……」
と、その時大きな音と共に檻が吹き飛んだ。中からは…あれは!地竜か!!
「地竜だと…馬鹿な、大惨事になるぞ!」
兄上が叫ぶ。
「良い、あそこに居るのは姫の取り巻きどもばかりだ」
だが父上は動じず、
「貴族どもの力を分断させ、国を安泰させるにはこれが一番なのだ。すでに陰謀は動き出しておる。ここで手を打たねば内戦になるであろう」
「そんな馬鹿な。9歳の子供を担ぎ出して何をしようと言うのだ!?」
「知らぬのか?リーシュは今や我が国一の魔術師と言われているのだぞ。昨年使った、伝説の魔法…闇系統最強『デビルダム』を忘れたか?」
あれかー、ソーヤがノリで考えた奴。迷宮でも使える魔法ってことで、敵の周囲を闇で包み、そのまま圧縮する奴。確かにとんでもない威力だが、いつのまに伝説になったであるか?
「魔術を重視する貴族どもがここぞとばかりに担ぎだしたわ。いずれリーシュは聖人となるやもしれんとな」
「そんな馬鹿な…確かにリーシュの成長は目を見張るものがある。なぜ急に成長しだしたのかは分からぬが…」
もしかして我のせいか?我がソーヤに引き合わせたのが原因か?
「ワシももう長くはない。争いが起こる前に手を打たねばならぬのだ…」
…これが政争の結末であるか。
暴れている地竜は競技準備をしてた妹姫に向かっていく、妹姫は地竜を凝視した後、こちらに向き…悲しげな笑顔を見せた。
あれは…分かっておるのだろうな…
「ぐぉおお!堪えられん!離せ!離さぬか!!」
兄上が暴れだした。
「フィフス!お前もなぜそんなに悠々としておる!リーシュが今までお前につらく当たってきたことを恨んでおるのか!」
兄上は近衛兵に取り押さえられた状態で、我を見てそう言ってきた。
「分からぬか!あれは全てお前の為にやっていたと!あやつはお前に取り巻きができぬよう、そう言って牽制して、かつ自分がすべてを背負って終わらす気であったのだ!」
そうであったのか…いや、気づいておったよ。我が妹様は優しいことぐらい…
なに、心配することはない。妹姫には奴が付いておる!
「兄上、父上、お二人がどう決断されたか存じませぬ。王国に政争は付き物だということも分かっております。しかし我は納得は致しませぬ」
「フィフス…そう思うならリーシュを!」
「案じますな兄上、たとえ何があろうとあそこにおる者がなんとかしましょう」
そう、ソーヤなら妹姫を決して見捨てぬはずだ。あやつがおる限り、妹姫は、リーシュは大丈夫だ!
「何を馬鹿なことを、相手は地竜だぞ!」
地竜が妹姫に向かっていく、しかし妹姫は何もせずじっとしている。まさか!抵抗しない気か!?
そしてソーヤが辿り着く前に、地竜は妹姫に…




