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吶喊! H大学文芸部  作者: 江南
8/26

虹の谷で五月(下)

~虹の下には宝があるというが~

(1年GW)

 観光名所も遊具もないが、土地だけはある「虹の谷」。時間と体力を持て余す若人向けにかバスケリングとフットサルのゴールがあって、ちゃんとしたラインはないものの適当ルールなお遊びには充分だ。

 ということで、3on3だったり1on1だったり球蹴りだったりを楽しむ面子もいれば、昼食までの朝寝を貪る徹夜組もあり。

 なんでもこの部の合宿は「みんな揃って食事」「午後のミーティングには全員参加」「ハラスメント厳禁」以外の縛りはないそうな。つまりは結構好き勝手。ちなみにナラ先輩への「こず姉」呼びはハラスメント扱いにならないのだとか。どういう基準だ。

 昼食に間に合うようにか2日目組第1陣がやってきて遊びに割り込んだり、昼食後に1日目組がゴミと共に帰ったり、2日目組第2陣がミーティング直前にやってきたり。いやもう好き放題。カオス。


 晩飯は北海道のお約束・味付ジンギスカン。でも山型な専用のアレではなく何故か土鍋。何故だ。


「肉をタレごと煮込んで、色変わったら野菜も入れて、煮えたら茹でうどん投入」

「うどんがタレ吸い上げるから無駄なく美味なんだよー」


 なんかもう言うまでもなく食はほぼ全て佐伯先輩の支配下だ。自炊派つまり包丁持たせて危険のない人間には食材切りを、料理スキルのない者には食材洗いや鍋の見張りを任せ。自分もガシガシ動く。主に火加減と味付け。足りない言葉は叶浦部長と高瀬先輩が冗談混じりに補って。


 そういうわけだ。美味でした、はい。


 帰った1日目組はクルマ1台4人とゴミ。やってきた2日目組はクルマ2台に6人と土鍋と食材。うん、絶対この部の男は全員佐伯先輩に胃袋掴まれてるよ…。


 そうして夜はやっぱり酒盛り恋バナ猥談。佐伯先輩以外の女子はバンガローへ。佐伯先輩は酒を呑みつつ朝用スープの仕込みに入る。


「先輩、こないだの新玉サラダは無理ですか?」


 思わず問うた背は振り向きもせず、


「ドレッシングの材料持ち込んでないから無理」


 とにべもなく。

 でも。


「キャベツと海苔のサラダ鶏照焼き乗せなら出してやる」


 なにそれ贔屓ー! とのお声も定番になりそうな気配満々。嬉しいのでガン無視するがな!


 そしてそれもやはり美味でした。


 *  *  *


 帰りの運転あるから就寝! との高瀬先輩のお言葉に従って、男3人は日付が変わったところでテントへ撤収。明日の運転と無縁のひとは徹夜だそうで、佐伯先輩はそちらへ合流。なんでも朝用スープをツマミで喰い尽くされない為の監視役だとか。まぁ監視には鍋放置で焦げ付かぬようという意味もあるのだろうが。

 とにかく貫徹2日。何ぞの〆切前でも普通しまいが、昼飯まできっちり面倒をみて、帰りの車中で爆睡するという。その為に、2日目組幽霊さんがオヤから借り出した3ナンバー7人乗りの後部2列が倒され寝床とされる。勿論、毛布と枕も積み込んである。ちなみに運転手は部で一番上手とされるひとがメインで、提供してくれたオヤを持つひとがサブで助手席。そんな優遇措置に、女子も文句は言わなかった。メシ作ってくれるひと最上級最優先とナラ先輩が言い含めたのかも知れないが。包丁扱いに振り分けられた女子少なかったし。


 だがしかし。


 シート倒して背もたれのなくなった所に「お世話役」として運転者から同席を命ぜられた俺の立ち位置って一体…? 1年だからってのは絶対ない。それなら女子に振るだろ普通。

 しかもそれに文句言いまくったのが部長と高瀬先輩って…。


 ちなみに二人は高瀬先輩所有車使用。往時は俺と佐伯先輩も同乗させて頂いた。復路には荷物とゴミが乗るそうな。俺にゴミの世話をさせたかったのか?!


 …違うのは分かっているが、与太話にしたくもなる。フツー雑魚寝だろうテントの中で、厳寒期でもないというのに左右から寝袋越しとはいえ寄り添われて朝を迎えればな!!


 佐伯先輩抜きであの二人と密室たる車中に篭る勇気はない。


 …佐伯先輩、どうぞごゆっくりお寝みください。寝返る度に蹴られる毛布をちゃんと掛け直すくらいは当然のこと。枕もちゃんとあてがいます。ご要望とあらば膝枕でも何でもしますてかその余禄に艶やかな髪を撫でさせて下さいとまでは言いませんが! 美味しいごはんのささやかなお礼です。


 なのでできればあの二人どうにかしてください切実に。


【end】

とりあえず合宿修了。次はどうしよう…。


「煮込みジンギスカン」は、北海道は名寄の名物だそうで。

つい最近知りました…。知らずにフツーに作ってたよ…w(150211)

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